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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら11泊目
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1192116918/
1 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/12(金) 00:35:18 ID:5ytk/+MG0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

前スレ「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら九泊目」
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1185925655/

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
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ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/
2 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ 投稿日: 2007/10/12(金) 00:47:05 ID:mq/uwqFRO
`_ ∧ ∧_
| ( ゚Д゚)|早く向かえ
|\⌒⌒⌒⌒\ にこいよ
| \     \
\ |⌒⌒⌒⌒⌒|
 \|_____|
3 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/12(金) 02:11:50 ID:SQjjw07S0
>>1
スレ立て乙です!
4 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/12(金) 04:37:41 ID:JKnN6qvQ0
ほしゅ
5 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/13(土) 07:24:21 ID:oUVSaZ2YO
保守
6 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/13(土) 16:02:08 ID:wx1hBhVd0
期待
7 名前: レッドマン ◆U3ytEr12Kg [sage] 投稿日: 2007/10/13(土) 19:12:04 ID:Dbjcbn8WO
>>1
(*^ー゚)b グッジョブ!!
8 名前: タカハシ ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/10/13(土) 23:15:37 ID:32qNDRSy0
>>1
スレ建ておつです!
9 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/14(日) 01:15:31 ID:ZzBzmdVA0
>>1お疲れ〜
10 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/15(月) 00:11:30 ID:KCeqaYQy0
新スレでもよろしくお願いします。
では、本編投下です。

LOAD DATA 第五話(前スレ)>>664-677
11 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/15(月) 00:11:57 ID:8um0n2Fv0
丁度支援
12 名前: 風前風樹の嘆【1】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/15(月) 00:14:06 ID:KCeqaYQy0
ライター…使うとメラの効果がある。何度か使うと壊れる…800G
ボールペン…貫通力がある刺突武器。字も書ける…200G
輪ゴム…モンスターの顔を目掛けて放つと、怯ませる事ができる…550G
フリスク…眠った仲間に食べさせると目を覚ます…150G
ガム…魔物を大人しくさせる。人が口にすると呪われる…Priceless

この世界の価値基準、やっぱりおかしいだろ。
フリスクとライターは良いとして、輪ゴムとボールペンは明らかに間違ってるって。

俺の世界の道具(ほぼガラクタだが…)を売った金で旅の準備を整え、
馬車を300Gで買い取った俺達が向かっているのは サンタローズ。
オラクルベリーから北に向かった先にある、サトチーの思い出の村。

『輪ゴム>馬車』の方程式が成り立つ価値観が平気でまかり通るんだよなあ。
う〜ん…やっぱり、コッチの価値観は俺には理解できないや。

今更ながらのカルチャーショックを感じる俺をよそに、
上機嫌なサトチーとヘンリーが手綱を操りながら談笑する。

「へえ〜。そのサンチョさんの作る飯はそんなに旨いのか。」
「うん、凄く。特に自家製バターを使ったキノコのバター炒めは絶品だよ。」
―♪♪―
「ははは…もうすぐブラウンも、お腹いっぱい美味しいご飯を食べられるよ。」
サトチーにとって、10年ぶりの故郷だもんな。
村を目指すサトチー足取りは軽く、自然と俺達の足まで軽やかになる。


「そう言えば…イサミ。お前だけ武器を買わなかったけど平気なのか?」
「う〜ん。銅の剣じゃあ心細いけどさ。俺に使えそうな武器が売ってなかったし。」
「この辺りにはそんなに強いモンスターは生息していないから、銅の剣でも充分だよ。」

実際、道中何度かモンスターに遭遇したが、どれも大した苦戦もなく撃退できた。
13 名前: 風前風樹の嘆【2】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/15(月) 00:14:49 ID:KCeqaYQy0
「しかし、お前も小さい体で頑張るなぁ。パワーなら俺達の中で一番じゃないのか?」
―♪☆♪☆!―
俺の正直な賛辞に、オラクルベリーで仲間になったブラウニーのブラウンが胸を張る。

後をついて来た時は、こんなチビスケ足手まといだと思ったけど、なかなかどうして。
人は見かけじゃ判断できないって事か……コイツは人じゃないけど…

ブラウンのパワーは凄まじく、襲って来るモンスターをほぼ一撃で仕留める。
正直、アウルベア―を一撃で昏倒させた時は内心ビビッた。
コイツとの戦闘の時に喰らわないで良かった…本気でそう思った。

「当たればデカイんだけど、問題は相変わらずの大振りなんだよな…痛ぇ!!」
ヘンリーが小さく呟いた言葉に反応したブラウンが、ヘンリーの脛を木槌で小突く。
「こっ…おま…木槌没収!コラ逃げるな!!…痛ぇ!てめ…もう許さねえ!」
ヘンリーをからかう様に小突きながら逃げるブラウンと、逆上して追うヘンリー。
まるでトム&ジェリーの様な二人を見て声を出して笑う俺とサトチー。

「で?サンタローズってのは、まだ先なのか?」
「いや、もうすぐ見える筈…ホラ、あの村……………え?」
「…どうした?」

村の方向を指差したサトチーの表情が凍り付く…
「サトチー?」
直後、サトチーが全力で駆け出した。
「サトチー!」
サトチーが指差した先に目をやる。
そこには遠目からでも廃墟とわかる、まるで生気を感じない村が見えた。
14 名前: 風前風樹の嘆【3】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/15(月) 00:15:29 ID:KCeqaYQy0
「サトチー…」
ヘンリーの言葉が続かない。掛ける言葉がないとはこのような時に使うのだろう。
自分の家。見知った人々。澄んだ風にそよぐ花々。長年帰る事を夢見た思い出の地。
それが、今では見る影もなく焼き払われたままの姿を晒している。
かつて自分の家であった瓦礫の山。自分を大事にしてくれた人の姿はない。
美しかった花畑は焦げた土で覆われ、風は絶望の残り香を運ぶ。

「…っああぁぁぁ……くぅ…」
サトチーの嗚咽が漏れる。初めて聞くサトチーの絶望しきった声。
いつも優しく、強く、俺を助けてくれた友人に俺は何もしてやれない。

俺は無力だ。
仲間が自らの心を潰されかけている時に、何も出来ない。
何をすべきかわからない。
何を言うべきかわからない。

サトチーの慟哭をすぐ傍で聞きながら、立ち尽くす事しか俺には出来ない。


「…っ…済まない。取り乱したね……行こう、誰か町に残っているかもしれない。」
何分くらいそうしていただろう。
焦げた地面に突っ伏していたサトチーが顔を上げた。
サトチーは本当に強い男だ…心からそう思う。

その目に涙の痕跡はない…けど…

「サトチー。」

先を歩き始めるサトチーを呼び止める。
その目に涙の痕跡はないけどさ…わからないほど俺は馬鹿じゃないよ。
15 名前: 風前風樹の嘆【4】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/15(月) 00:16:39 ID:KCeqaYQy0
両手を大きく広げ、想像する…彼の泣き腫らしたまぶたが元に戻る事を…
強引に涙を拭って赤くなった瞳が、元の澄んだ色を取り戻す事を…

いつも、サトチーが俺に施してくれた回復魔法。
温かい、安らぎに満ちた光。

俺には、サトチーの心を癒す術はない。
俺自身には、何も出来ない。
だから…この村に僅かに残る、思い出の残り香に呼び掛ける。



…俺の仲間を…大事な仲間を救ってくれ。



俺の呼びかけに応え、一陣の風が吹く。

優しい風は絶望の香りを押し流し、懐かしい香りを運ぶ。
故郷の風が渦を巻き、俺達を…サトチーを優しく包み込む。
サトチーが良く知る風が安らぎのメロディーを奏でる。
サトチーを良く知る風の歌は、癒しの言霊となって光り輝く。

風の歌声 名付けるなら そう ―安らぎの歌―


風が止んだ時、彼の瞳は元の澄んだ輝きを取り戻していた。
「古い知り合いに会うのにさ…赤いままの目じゃあ…その…格好悪いだろ?」
「イサミ…済まない…いや、ありがとう。」
16 名前: 風前風樹の嘆【5】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/15(月) 00:17:32 ID:KCeqaYQy0
山間にある美しい花と緑に囲まれた小さな村。
…そうサトチーから聞いていただけに、俺達の見た光景は衝撃的だった。

「…そうですか…ラインハット軍がこの村を…」
「そうじゃ、その際に多くの村人が傷を負い、命を落とした者もおった。
 生き残った村人達の多くは、この村を捨てて別の町へ移ってしまったわい…」
崩れかかった一軒家で俺達を迎えてくれたのは一人の老人。
パパスさん…つまり、サトチーの親父さんの知人だという老人は茶を淹れながら、
10年前にこの村で起こった出来事を俺達に語った。

「この村を攻めたラインハット軍の将校がワシ等に告げおった…
 ラインハットの王子が攫われたのはパパス殿の責任。即ちパパス殿は国の怨敵。
 そのパパス殿の住んだこの村の存在もまた国害と…」
ギリ…と、サトチーが唇を噛み締める。
小さく聞こえたサトチーの唇が軋む音…そして、次に聞こえた音はあまりにも唐突。

ガタン!

俺の横に座っていたヘンリーが、椅子を倒して立ち上がる。
無言のまま、サトチーを見つめるその目には……涙?

そうか、ラインハットはヘンリーの…

「……っ!」

悲痛な顔を俺達から逸らし、開かれたままの扉に向かってヘンリーが走り、
そのまま、呼び止める暇もなく走り去る。
…いや、呼び止める事なんて最初からできなかった。

「…どうかなさったか?」
「ヘンリーは…彼は僕と一緒に攫われたラインハットの王子です。」
「…そうじゃったか…辛い思いをさせてしまったのう…」
17 名前: 風前風樹の嘆【6】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/15(月) 00:18:29 ID:KCeqaYQy0
クイ…クイ…と、足をを引っ張られる感覚がした。
足元を見ると、ブラウンが俺のズボンの裾を引っ張っている。


「お前もヘンリーが心配なのか?」
―☆☆!―
「…でもな、今はそうっとしておいてやるのが一番…」
―!!?!―

俺の言葉が終わりきらないうちに、ブラウンがヘンリーを追って飛び出す。

「……悪い。ちょっとヘンリーの様子を見てくる。」

言葉は通じないけど、ブラウンの言いたい事はよくわかる。
いや、わかってないのは俺だけだ。
何をするのが一番かなんて、俺が決める事じゃないのに…
小さなモンスターの行動は、俺の勝手な理論の数歩先を行く。


いた。

いつも強気なヘンリーが小さく背中を丸め、淀んだ川のほとりで膝を抱えている。
その横に、ちょこんと座るブラウン。

ブラウンに語りかけるヘンリーの小さな声が聞こえる。
「俺…サトチーの事を友達だって思ってたけどさ…俺にはそんな資格ないよな…
 …俺がサトチーから大事な物を奪っちまった…馬鹿なイタズラをしたせいで…
 …サトチーの時間も…パパスさんも…この村も…全部俺のせいで…」
18 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/15(月) 00:19:02 ID:8um0n2Fv0
支援
19 名前: 風前風樹の嘆【7】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/15(月) 00:19:35 ID:KCeqaYQy0
―☆☆!!―

ヘンリーの横で大人しく座っていたブラウンが立ち上がり、ハンマーを地面に下ろす。
丸っこい胸に大きく息を吸い込み、短い両手をいっぱいに広げ、目をギュッと閉じる。
「…ブラウン?」

あの動作は…

小さな体をプルプルさせ、頭巾に覆われてほとんど見えない顔を真っ赤にして力む。
―!!!―
「お前……イサミの真似してるのか…」
―!!!!!……??―
肩で息をしながら『あれ?』と、いった表情でヘンリーを見つめるブラウン。
その小さな頭の上に、日焼けしてボロボロの大きな手が乗せられる。

「ありがとうな…ブラウン…」


「ヘンリー…」
いつの間にか、俺の横にいたサトチーの呼びかけに、俺とヘンリーが同時に振り向く。
サトチーの目がまっすぐにヘンリーを見つめる。
ヘンリーの目がその視線を避けるようにそらされる。
俺の目が二人の間を行き来する。

「サトチー………俺のせいで…」
「この先の洞窟に、父さんが僕に遺した物があるらしいんだ。
 …ヘンリーとイサミに一緒に来て欲しい。父さんの墓はないけれど、せめて…
 せめて、父さんの形見に僕の親友を…ヘンリーとイサミを紹介したい。」

『ヘンリーは親友。何があっても変わらない。』そんなサトチーの想いが伝わる言葉。
20 名前: 風前風樹の嘆【8】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/15(月) 00:20:54 ID:KCeqaYQy0
堰を切ったようにヘンリーの涙が溢れ出す。
「サトチー…ごめん…」
「ヘンリー。言葉を知らない男は嫌いだったんじゃねえの?」
「…ああ…ありがとうサトチー…それに、イサミも…(ゴン!)
 痛え!…大丈夫、忘れてねえよ。ブラウンも、ありがとうな。」

グイッと胸を張るブラウンを見て、三人の顔に笑みが漏れる。

「ふふ…ブラウンも頼りにしてるよ。それじゃあ、行こうか。」
「そうだな、か弱い子分達だけで危険な場所に行かせられねえもんな。」
「ふーん。さっきまでメソメソしてたのは誰かねえ?」
「うるせえ!イサミこそ影でウジウジしてやがったくせに!」

…あ…バレてたの?

「でもまあ…サトチーと…お前と知り合えて良かったよ…」

ポソッと、ヘンリーは聞こえないように言ったつもりなのだろうが、
その言葉ははっきりと俺の耳に入った。

「!!…ホラ、お前等ボサッとすんな。行くぞ!!」
赤面して走り出すヘンリーを見て、クスクスとサトチーが笑う。
「昔っからああなんだ。素直じゃないよね。」

しっかりとサトチーの耳にも入ってやがんの。本当、素直じゃねえヤツ…

まあ…俺の考えてる事もヘンリーと同じだけどな。
21 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/15(月) 00:23:16 ID:KCeqaYQy0
第六話前半はここまでです。

この世界ではガムはプライスレス。売れませんでした。
呪われたキャンディーとして買い取ってくれなかったようです。
22 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/15(月) 02:52:05 ID:qQV+bnNf0
このスレに触発されて、またDQ5をはじめました。
ブラウニーって、ほんと頼りになりますね。袋(?)を背負って歩く姿もかわいいし。
イサミもブラウンも、いい奴ですね。
ヘンリーも心中おだやかでなかったでしょうね。
すべてを受け入れて前に進むサトチー、かっこいいです。


23 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/15(月) 12:22:14 ID:43U3iXlY0
サトチーの心情がリアルすぎてたまらんな。
また5やりたくなってきた。
最高だよアンタw
24 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/15(月) 13:09:41 ID:6UpsK5Er0
呪われたキャンディー噴いたw

しかし落ちてるのを踏むとなかなか取れないし
呪われてるってのもある意味正解かw
25 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/17(水) 17:39:22 ID:p6dys0Lc0
なんと、もょもとは保守の剣を手にいれた。
26 名前: 風前風樹の嘆【9】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/18(木) 00:16:53 ID:/Kcy+Dv30
「なあ、サトチー?この洞窟には強いモンスターはいない…そう言ったよな?」
「うん。確かに言ったよ。」
「だったら何で…っと、また来やがった!」
「撤回するよ。ここのモンスターは強い。皆、気を抜かないで。」


パパスさんの遺した物を取りに向かったのは、サンタローズの洞窟。
サトチーは6歳の頃にここを攻略した…そう聞いていた。
だから、安心していた…否、油断していた。

ここのモンスターは、スライムやブラウニーとは比べ物に(ゴン!)
…訂正。ここのモンスターのレベルは、スライムやガスミンクとは比べ物にならない。

毒を仕込んだ槍を振り回すガイコツ兵。スカラで仲間を強化する土偶戦士。
前面に気を取られていると、背後からともしび小僧のメラが襲う。

厄介なのはガメゴン。
巨大な亀のモンスターが背負う強固な甲羅は、銅の剣では文字通り刃が立たない。


「…っ!イオ!!」


洞窟内の空気が圧縮され、小規模な爆発を起こす。

サトチーの魔力を回復に回さなければならない現状では、
ヘンリーの放つ爆発魔法が、ガメゴンに対抗できる唯一の手段だ。


「ふひゅー…こいつはしんどいわ。」
事も無げに軽く話すヘンリーの息は荒い。
休みなく攻撃魔法を放つヘンリーの疲労は相当だろう。
27 名前: 風前風樹の嘆【10】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/18(木) 00:19:27 ID:/Kcy+Dv30
「どうする?今なら引き返して体勢を整えるって手段も取れるけど?」
「そうだなあ。ヘンリーの魔力が尽きる前に一度戻るのも考える必要があるかもな。」
サトチーが提案する一時撤退。
戦略的撤退とも言える提案だが、ヘンリーは頑として首を縦に振らない。

「ここまで来て引き返す?冗談じゃない。パパスさんの形見はこの先なんだろ?
 親分として絶対サトチーをそこまで送り届けてやるさ。
 イオの10発や100発で根を上げるヘンリー様じゃねえ!」
ダンッ!と地面を打ち鳴らし、ヘンリーが啖呵を切る。
あまりに芝居がかった仕草に、俺とサトチーの口からプッと笑いが漏れる。

「わかった。でも絶対に無理はしないこと。いいね?」
「ヤバくなったら言うさ。大事な子分達の命は俺様の魔力が頼りなんだからな。」
「頼りにしてるぜ。親分。」
ヘンリーが、任せとけ!…と、胸を叩く。

「じゃあ、作戦変更だ。がむしゃらに進んでも途中で力尽きる。
 ヘンリーの魔力は対ガメゴン用に温存。それ以外の相手はイサミとブラウンが前線。
 僕がチェーンクロスで相手を足止めするから、その隙に各個撃破。作戦はこれで。」
「了解。二人共、援護は任せたからな。」
「ヘッヘッヘ…子分が頑張ってるうちに親分は休ませてもらうぜ。」
「…静かに…」

サトチーの顔が強張り、武器を構える。
辺りに漂う腐臭。
地の底から響くような無気味な声。

『…オォオ…』

「…どうやら、そう簡単には休ませてくれないみたいだね。」
28 名前: 風前風樹の嘆【11】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/18(木) 00:20:34 ID:/Kcy+Dv30
地面が盛り上がり、人の姿が現れる。
いや、人の形をしているのはソレの後に伸びる影だけ。
朽ち果て、ボロボロの衣服…それよりもなお崩れ落ちた皮膚。
どんよりと淀んだ眼球…そこに意思の色はない。
筋肉が弛緩して、開いたままの口からはドブ色の体液が流れ落ちる。
辺りに漂っていた腐臭がより強くなり、鼻腔の奥のほうをチリチリと突き刺す。

「腐った死体…」
サトチーが口にしたのは、まさに目の前のコレそのものを体現した名前。

『…オオォォォオオォーー』

爪が剥がれ、内部組織が剥き出しの腕が振り下ろされる。
…が、動きは遅い。
剣で受け止めて受け流す。ガラ空きの側面に一撃を…

ドガッ!!

受け止めた…が、重い…受け流せない…こんなボロボロの体のくせに…

「イサミ離れろ!吹き飛べ化け物!!イ…」
「使うな!イサミまで巻き込む!!」
背後でイオを放とうとするヘンリーをサトチーが一喝。ヘンリーの動きが止まる。
サトチーは鞭を構えたまま動けない。この距離では俺にまで鞭が当たるから。

「イサミ!腐った死体相手に真っ向勝負は危険だ。一旦下がれ!!」
サトチーが大声を上げる…が、俺も動けない。
一歩でも後退すれば、こいつの腕が容赦なく俺の体に食い込む。

―!?!!―

ベゴン!と、嫌な音がして腐った死体が体勢を大きく崩す。
29 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/18(木) 00:21:07 ID:CvBUJuQE0
支援
30 名前: 風前風樹の嘆【12】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/18(木) 00:22:13 ID:/Kcy+Dv30
ブラウンのハンマーが腐った死体の後頭部にその頭部をめり込ませている。

チャンス!

上から押さえつけていた力が緩んだ隙に剣を振り上げ、両腕を跳ね上げる。
さらに、銅の剣をボロボロの胴体に叩き込む。

腐敗臭を放つ肉片と体液を撒き散らし、腐った死体は文字通り崩れるように倒れた。

「ふぅ…。」
動かなくなった腐った死体を確認し、銅の剣を背中の鞘に戻す。

「ヒヤヒヤさせやがって。今回はブラウンのナイスアシストだな。」
―☆♪☆!―
「イサミもお疲れ様。動けるかい?」
「ああ、ブラウンのお陰で助かった。」

こんなヤバイモンスターが集団で出てきたらたまらないな…
何がヤバイって、あんなのが集団で出た時の匂い…想像だけでヤバイだろ…

チラッと後ろを振り返り、動かない姿を確認する。

南無南無…安らかに成仏しろよ。

「あのモンスターが気になるのかい?」
サトチーが歩きながら俺に尋ねる。
「気になるって言うか…アレ…人なのか?」

「昔、父さんから聞いたんだけど…腐った死体は元は普通の人間なんだって。」
なんとなしに問い掛けた俺の疑問に、サトチーが答える。
31 名前: 風前風樹の嘆【13】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/18(木) 00:22:55 ID:/Kcy+Dv30
「未練を残して倒れた死体が、邪悪な魔力によって蘇った存在。それが腐った死体。
 死体だから、痛みも疲れも忘れて生きた人間を襲い続けるんだ。
 それこそ、休む事も眠る事もなく体が動く限り…ね。
 彼等が安息を得るのは、人間との戦いに敗れて灰に還った時だけ…
 だから、本当は安息を求めて彷徨っているんじゃないかな。」
「…で、人間を手当たり次第襲うってか?冗談じゃねえって。
 死体は死体らしく一生土の中で眠ってろってんだ…一生は終わっちまってるけど。」

後味悪りぃー…
モンスターを倒すたびに感じていたけど…元人間かあ…

魔力によって安息を奪われた元人間…
安息を得るために望まぬ戦いを続ける元人間…
自分を灰に還す人間を求めて彷徨い続ける元人間…

やるせねえな…

アイツを灰に還してやった事が弔いになるのかな?



…灰に……還してやった?



「うわあぁぁっ!!」

気付いた時には既に遅く、背後から聞こえるヘンリーの悲鳴。

しまった…まだ終わっていなかった…

アイツはまだ…灰に還っていない!!
32 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/18(木) 00:28:36 ID:/Kcy+Dv30
第六話中編を投下完了です。第六話は三編に分かれます。
33 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/18(木) 00:53:21 ID:22d0ncbjO
>>32
乙です。
この展開はスミス来るのかな?
34 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/18(木) 03:06:35 ID:XE6CjWhI0
ゲームやってる時は気づかなかったが、
文章で表されると物凄い気持ち悪いモンスターだったのねw
35 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/19(金) 10:04:08 ID:4XkaLWLGO
スライムは呪文を唱えた!「保守!」
36 名前: 作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ [sage] 投稿日: 2007/10/19(金) 15:29:27 ID:ziCgFva70
全スレの続き……orz

――――――――――――――――

……アレン。
君は世界を救った後、やがて一国を担う者となるんだろう?
妃として私は到底相応しくないはずさ。

  「そういう逃げ方はズルいです」

当然本心ではないのだからアレンは納得しない。
でも結果としては君の手から逃げるんだから同じだろう?
そんな風に返してしまうのは、まだもう少しでも一緒にいたいからか。
アレンが納得しない限りは側にいれるのだから。

  「他の人のところへ帰るんですね」

背中に手を回して逃げれないように捕まえられてしまった。
それで言葉遊びは終わりだと感じる。
だからその胸に顔をうずめた。

  「しなのさん……」

アレン、私も好きだよ。
でも君とは一緒に行けない。
やり残した事があるんだ。
だから、帰るよ。
37 名前: 作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ [sage] 投稿日: 2007/10/19(金) 15:32:42 ID:ziCgFva70
  「しな――」

何か言いかけたアレンの口を塞いだ。

  「……」

私のファーストキス。
受け取ってくれたかな。

  「……やっぱりしなのさんはズルいです」

アレンの話を遮ったからか、一緒にいる事を断られたからか、
それとも明らかな嘘をつかれたからか、アレンが寂しそうに目を閉じる。

勇者でも女がズルい生き物だって事は知らないんだな。
私が茶化して言うと、そのセリフには少しだけ笑ってくれた。
しかしな……本気にはしてくれなかったか。
残念だな。

  「元の世界に帰ったら、たまに僕の事を思い出して下さいね。
   僕もそうします」

あぁ、分かったよ。
そう言って彼の体温をいつまでも忘れないように確かめた後、
私はアレンの腕からするりと抜け出した。
ありがとう。
さよなら、ばいばい。


――最終章へ――
38 名前: 暇潰し ◆ODmtHj3GLQ [sage] 投稿日: 2007/10/19(金) 15:41:37 ID:ziCgFva70
ようやく終わりました。
以外に容量食っちゃって焦りました。

前スレでアリスちゃんを楽しみにしていた方ごめんなさい。
新スレで投下されるのをお待ちください。

そして◆IFDQ/RcGKIさんにもごめんなさい。
アリスちゃんは埋め用なのに僕が埋めてしまいました。

と言うかしなのさんがイケナイんだ!
短編予定なのにあんなに長々と旅してくれちゃってさ!!(`ω´ )プンプン
なので苦情はしなのさん宛てにお願いします。
ではでは。
39 名前: 暇潰し ◆ODmtHj3GLQ [sage 伝え忘れ] 投稿日: 2007/10/19(金) 15:53:04 ID:a9eBz6DDO
前スレで支援して下さった方、ありがとうございました!
40 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/19(金) 16:04:11 ID:fcMnCnV10
お疲れ。また一つ一段落だね。
スレ一つまたいで、ちゃんと終わりまで進むといいな。
41 名前: ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/19(金) 16:25:30 ID:CjfdCU/w0
>暇潰しさん
投下お疲れ様でした! 感想及び諸々は避難所にて書きますが、
いろいろとお気遣いいただき、こちらこそ申し訳ないです。

そしてアリスをお待ちいただいている読者様方、本当にすみません。
執筆中ではありますが、もう少しかかりそうです。
42 名前: レッドマン ◆U3ytEr12Kg [sage] 投稿日: 2007/10/19(金) 16:51:04 ID:ji8VEmHA0











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  この話は超濃厚な卑屈的内容であり、嫌気が注します!免疫がない方は読まないで下さい!




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43 名前: レッドマン ◆U3ytEr12Kg [sage] 投稿日: 2007/10/19(金) 16:53:13 ID:ji8VEmHA0

○対立○

ムーン「もょもと、私達は抜けさせてもらうわ。」

ムーンがいきなり俺達に別れを告げてきたのだ。

  もょ「どうして……?」
ムーン「貴方のもう一人の人格のタケは竜王の手先じゃない。そんな人と一緒なんて信用できないわよ!」
  もょ「そんなことないぞ。タケはおれにとってはかけがえのないなかまだ!」

サマル「もょも少しおかしいんじゃないのかい?ギィンが呼び出したタケを仲間だって……リアもそう思うだろ?」
  リア「わ、私は……」
ムーン「まぁいいわ。私達は貴方と別れることにするのだわ。だっていつ殺されるか心配だもの。」
サマル「それにタケがいなければもょは何も出来ないんだろ?全く最低だよ。」

このクソガキ共黙っていりゃあ好き勝手な事に言いやがって……『俺の怒りが有頂天になった』といってもいい…。

タケ「あっははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!
     素晴らしい発言やでホンマ!素晴らしすぎて笑いが止まらんわ!!」
 もょ「タ、タケ!?」

 タケ「こいつら頭がおかしいんじゃないかな?かな?お礼すらいえない王族だってよ!!最高の話やで!!」

ムーン「な、何笑っているのよ…いきなり笑い出して……気持ち悪いわ。」
  タケ「人が黙って聞いていたら好き勝手な事を言っているなぁ…このクソガキ共が!!」
  もょ「い、いったいどうしたんだ?」

 タケ「もょ、お前には悪いがこれからこいつらに説教タイムや。言わんと分からん馬鹿共に色々教えてやらんとなぁ…
     しかもこいつ等も卑怯モンやで。文句があれば俺に直接言ったらええのによぉ…!」
 もょ「お、おれが……わるいのだから……べつにいいよ。」
 タケ「もょ!お前は黙って見とれ。ここからは大人の喧嘩や。――――――――覚悟せえよ!!」
44 名前: レッドマン ◆U3ytEr12Kg [sage] 投稿日: 2007/10/19(金) 16:55:47 ID:ji8VEmHA0
―――――――――――――――――――――大人の喧嘩―――――――――――――――――――――


即ち、頭脳戦――――――――いかに自分のペースに持ち込むかが課題だ。


ムーン「あ、貴方が何の用なの!!関係ないでしょ!!」

  タケ「十分大有りなんじゃボケ!!散々俺等のプライドを砕いてくれたなぁ……この淫乱雌犬が!!」
ムーン「な、何ですってぇ!?だ、誰が淫乱雌犬よ!!」

  タケ「お前な、ギィンとのもょもとが傷ついているのに何で治療せえへんかったんや!?」
ムーン「そ、それは……その……」

  タケ「怖かったからか!?そんな下らん理由で仲間を見捨てるなんて最低なクズやで!そりゃもょもとと別れようとするわな!
      プライドが高いお前にはその事実を認めたくないモンな!!」  

ムーン「うう………」


ムーンが泣いてもおかしくない状態になっていたが更に追い討ちをかける事にした。


 タケ「そりゃお前の親父もハーゴンに殺されるわな。娘のお前が悪党なら親父は大悪党やで!!
    お前の親父が行った悪事の影響で俺ごときに罵倒される目になったもんな!因果応報じゃ!この淫乱女が!」

ムーン「い、いい加減にしなさいよ!幾等なんでも侮辱しすぎだわ!根拠も無いくせに!!」

45 名前: レッドマン ◆U3ytEr12Kg [sage] 投稿日: 2007/10/19(金) 16:57:42 ID:ji8VEmHA0
 タケ「ふーん……それがどないしたんや!?そりゃこっちの台詞やで。この雌犬!!もょもとが一番可哀想や。
    お前等を自分自身の力で守れないから俺を信用して託したにも拘らず、殺されるとか最低など罵倒とかするからなぁ〜?オイ!?
    信じていた仲間達に裏切られたんだから。てめぇらの勝手な判断のせいでな!」

ムーン「そ、その………………………………」

 タケ「後な、トーマスやカタリナが今のお前の姿見たら失望するだろうよ。
    こんなクズが度量も全くない一国の王女なんやから…
    救い様がないわ。あの二人がホンマに可哀相やで。
    それに俺達にお前を頼むって言われたにも関わらず当の本人がこれやからなぁ…
    お前の下らん発言がトーマスやカタリナの気持ちを蹂躙する事になるんやで!
    そこまで考えた事があるか!?王女様よぉ〜?」

ムーン「あ、ああ………」

ムーンは体を振るえさせながら俯いていた。

 タケ「泣いたら許されると思っているのか!!そんなん甘い考えや!
    そのまま一生立ちすくんでおけや!!嫌やったらさっさとムーンペタに帰れ!!」

  タケ「サマル、俺達の事最低って言ったよなぁ〜!?」
サマル「あ、ああ…!言ってやったさ!」
  タケ「お前の親は一体どう育て方をしたんや?お前の様な下衆に懐いているリアにも気が知れへんわ。」
サマル「な、何を根拠にいっているんだ!」
 
 タケ「俺は見たんやで……リリザで妹とはいえ、お前が罵倒している場面をなぁ!」

サマル「!!!!」
  リア「!!!」

流石にこれは二人に衝撃が走ったようだ。やはり弱みを握っている方が口撃しやすい。
46 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/19(金) 16:58:56 ID:EO6+SVo0O
支援
47 名前: レッドマン ◆U3ytEr12Kg [sage] 投稿日: 2007/10/19(金) 17:00:28 ID:ji8VEmHA0
サマル「そ、そんなの嘘だッ!!」
  タケ「お前も雌犬以上の愚かやのぉ…こっちはお前らが腹違いの兄妹って言うのは把握済みやねん。これでも言い逃れするか?」
サマル「で、出鱈目だ!」
  タケ「お前の知らん所でこっちは色んな相談受けているねん。リア本人から。いい加減認めたら!?見苦しいで。」
サマル「………………………………うわあああああああああああっ!!」

いきなりサマルが槍で攻撃を仕掛けてきたがあっさりと回避できた。

 タケ「……事実を言っただけでそんなにムキになるとは…やっぱり救い様が無いガキや。
    自分が追い込まれたらビビッて何もする事が出来へんし情けないわ。――――――――それに今のは宣戦布告と捕らえてええんやな?」

サマル「あ、あ……」
ムーン「そ、そうよ!これは貴方に対しての宣戦布告よ!絶対に許せないのだわ!」

  リア「も、もうやめてよ…」
  もょ「タケもムーンもやめろ!!けんかしているばあいじゃないだろう!」

  タケ「もょやリアには悪いが……吐いた唾は飲み込む事はできへんのや。いいか、良く覚えておけ。
     自分の行動には自分自身で責任を持たないといけない事をな。」

  タケ「それなら始めるとするか……1対2でも俺は別に構わん。かかってこいや!」
  もょ「やめるんだ!!」
  
  タケ「……………………許せ、もょ。」
 
  もょ「お、おいっ!!なんだ………?は、はなすのがくるしい…」
  リア「も、もょもとさんはどうなったの?」
  タケ「心配せんでええ。ちょっと干渉されるのをやめる様にしただけやで。じゃあ始めよか。」

自分自身の怒りの感情を高める事によってもょもとからの干渉を退く事ができた。
嫌な戦いが始まるが・・・・・・・早かれ遅かれ来る運命。仕方があるまい!
48 名前: レッドマン ◆U3ytEr12Kg [sage] 投稿日: 2007/10/19(金) 17:02:03 ID:ji8VEmHA0
  タケ「その前に、お前らにハンデをつけてやる。」
ムーン「ハンデですって!?」

  タケ「魔法剣や防具ありなら俺が必ず勝つからやってもつまらん。素手と防具無しで相手してやるわ。」

ムーン「バッカじゃないの!?」

サマル「い、いや…、逆にこれはチャンスだよ。とりあえず勝てればいいんだ!!」

  タケ「ほー、まだサマルの方がまだ戦況判断能力が高いな。
     割合的には4対6で俺が不利って所やけど、じゃあボチボチやりまひょか。」

ムーン「言われなくても始めるわよ!!バギッ!!」
ムーンがバギを放って来たが大した威力は無い。俺自身もレベルアップしている証拠か。

  タケ「なんやぁ…このショボイ呪文は。ゼシカやククールより更に劣るで。」
ムーン「くっ……………」

  タケ「よーこんな呪文で今までやって来れたのが奇跡や!ホンマ情けない…お前の今の価値はベホイミ専用の薬箱位しかあらへんわ。」

サマル「な、ならばこれでどうだ!」

サマルの攻撃が腰を引けている。ボクサーで例えると腰が入っていない手打ちパンチと同様。
この攻撃も大した事がない。すんなりと懐に潜り込めた。

  タケ「油断しやがったな。槍は超接近戦では不利なんや。素手でも人を撲殺できるんやで…」
サマル「えっ!?」


まずは顎に思いっきりストレートパンチを食らわせ、サマルがよろけて羽帽子が脱げた所にテンプル(こみかみ)に更にパンチを打ち込んだ。 
この2箇所は大概の人間が鍛える事ができない場所。確実に決まればまず立ち上がることが出来ない。
49 名前: レッドマン ◆U3ytEr12Kg [sage] 投稿日: 2007/10/19(金) 17:04:53 ID:ji8VEmHA0
ムーン「サ、サマル!!」
  タケ「無駄や。意識がぶっ飛んで立つ事すらも出来へん状態やで。」

ムーン「も、もしかして素早く行動するために武器と防具を…」
  タケ「ビンゴ。無防備と油断したお前らが悪いで。」

サマル「くっ…頭がグラグラして立てない…」
  タケ「普通オチてもおかしいのに意識があるとは。やるじゃん。安心するのはまだ早いがな。」


俺はサマルの槍を持ち顔に向けて構えた。


  タケ「ふっふーん。チェック・メイトやね。」
サマル「ああっ…」



  タケ「耳をかっぽじってよく聞け。神への祈りは済ませたか?小便は?
      この場でガタガタ震えて命乞いする準備はOK?」



サマル「た、たすけて……」
  タケ「だーめ(^o^)…………じゃあ顔面にこいつを貫通させて死んでもらいましょ。」

実際殺すつもりはなく掠らせてびびらそうとしたのだが、サマルは気を失って倒れこんだ。

 タケ「やれやれ……歪んだ動機だが立ち向かって来た事に関しては敬意を表するわ。
    しかし、これが実戦なら確実に死んでいたで。後、お前一人だけやなぁ…」

ムーン「あ、貴方ごときに負けはしないわよ!!」
50 名前: レッドマン ◆U3ytEr12Kg [sage] 投稿日: 2007/10/19(金) 17:06:53 ID:ji8VEmHA0
 タケ「
       巛彡彡ミミミミミ彡彡
       巛巛巛巛巛巛巛彡彡
   r、r.r 、|:::::           |
  r |_,|_,|_,||::::::     ⌒   ⌒|
  |_,|_,|_,|/⌒     -="-  (-="     ぁぁそうでっかそうでっか
  |_,|_,|_人そ(^i    '"" ) ・ ・)""ヽ    なるほどね・・・
  | )   ヽノ |.  ┃`ー-ニ-イ`┃
  |  `".`´  ノ   ┃  ⌒  ┃|
  人  入_ノ´   ┃    ┃ノ\
/  \_/\\   ┗━━┛/ \\
      /   \ ト ───イ/   ヽヽ

       巛彡彡ミミミミミ彡彡
       巛巛巛巛巛巛巛彡彡
   r、r.r 、|:::::           |
  r |_,|_,|_,||::::::     /'  '\ |
  |_,|_,|_,|/⌒      (・ )  (・ )|
  |_,|_,|_人そ(^i    ⌒ ) ・・)'⌒ヽ   ・・・で?
  | )   ヽノ |.   ┏━━━┓|
  |  `".`´  ノ   ┃ ノ ̄i ┃|
  人  入_ノ´   ┃ヽニニノ┃ノ\
/  \_/\\   ┗━━┛/|\\
      /   \ ト ───イ/   ヽヽ              」

※AAはイメージです。
ムーン「本当にムカつくわね!!殺してやるのだわ!!」
  タケ「あっそ。お前がそんな発言しても全く威圧感が無いんやけど。ギィンやドルマゲスに比べたら迫力が無いわ。ダセェw」
ムーン「呪文なら絶対負けないのだわ!」
  タケ「どーせバギやイオなど下らん呪文やろが。」
ムーン「それはどうかしら。これで息の根をとめてやるのだわ!」
51 名前: レッドマン ◆U3ytEr12Kg [sage] 投稿日: 2007/10/19(金) 17:10:36 ID:ji8VEmHA0
ムーンから4メートルくらい大きな竜巻が発生した。しかしムーンは血を吐いた状態で呪文を詠唱している。

ムーン「あ、貴方には呪文同士だけで戦う度胸はないでしょうね……ゴホッ……ゴホッ…」

  タケ「無理しやがって……けど、命よりプライドをとるお前の行動に応えないと男が廃る。
     じゃあ俺もこいつでいくとするか!!」


ゼシカと同じ呪文メラミで対抗する事にした。しかし体に大きな負担がかかるが
どれぐらい自分自身耐えれるか分からない。だが、プライドに関してはムーンに負けたくない。




ムーン「これで終わりよ!!バギマ!!」
  タケ「貫けぇ!!メラミ!!」





メラよりも3倍くらい大きい火炎球を出す事を成功したのだがその瞬間、眩暈や全身に痺れ込んできた。
しかも口から大量に血も吐いている。

肝心な呪文の方だが軍配はムーンに上がった。
俺のメラミが竜巻の中で分散され、小さな火炎球がムーンに当たるがあまり危害がない。
逆に俺には飲み込まれた炎の竜巻が襲い掛かる!!

しかし大防御が取れればいいのだが、痺れの影響で体を動かす事ができない。……それ以外の対処方法が無い。
諦めかけた時、もょもとが俺をかばった。

52 名前: レッドマン ◆U3ytEr12Kg [sage] 投稿日: 2007/10/19(金) 17:16:01 ID:ji8VEmHA0
  もょ「だ、だいじょうぶか……タケ。」
  タケ「な、何でやねん…?かばう必要は無いのに…ゴホッ!!ゴホッ!!」
  もょ「いっただろ。かけがいのないなかまだって。」
  タケ「す、すまねぇ…」
ムーン「あはははははは!!私が勝ったのだわ!!……ゲホッ!ゲホッ!」
  もょ「………それはちがうぞ。ムーン。」
ムーン「はぁ!?何言っているのよ!もょもと!!」
  もょ「ムーンはいつからじゅもんをならいはじめたんだ?」
ムーン「3年前よ!それがどうかしたの!?」
  もょ「タケがじゅもんをおぼえたのはごくさいきんだぞ。かってあたりまえのじょうきょうで
     まけたときのほうがぎゃくにはずかしいぞ。」
ムーン「い、一体何が言いたいのよ!?」

  もょ「タケがじゅもんじゃなく、けんやパンチ、だいぼうぎょをつかうやりかたならかくじつにムーンはまけていた。
     タケはあえてムーンのとくいぶんやでいどんだんだ。それすらわからないのか?」

ムーン「くっ…でも勝ちは勝ちよ!!」
  もょ「………もういい、わかった。はなしをきいていたらどうかんがえてもタケのほうがただしい。
     ムーンやサマルはひきょうものだ!ここでおれたちとおわかれだな。」
 リア「そ、そんな!!」
 タケ「お、おい…ホンマにええんか…?」
 もょ「ああ…いくぞ、タケ。おれたちだけでハーゴンをたおそう!」

もょもと&タケ
Lv.18
HP: 21/130 
MP: 0/  9
E内服(布の服) 鋼の剣 鋼の鎧 鉄兜 錆びた剣
特技 共通技:チェンジ
もょもと専用:隼斬り・魔人斬り・ドラゴン斬り
  タケ専用:かすみ二段・強撃・ゾンビ斬り・大防御・メラ
        火炎斬り
53 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/19(金) 18:49:25 ID:xee8CfR+0
>暇潰し ◆ODmtHj3GLQさん、
うは、1レスすすむごとに大どんでん返し、いい意味で予想を遥かに上回る驚きの連続です。
それと、しなのさん、かっこいい。
思えば、この3人が(しなのさんも)であったのは必然だったのかもしれませんね。

>レッドマン ◆U3ytEr12Kgさん
すごい急展開。
しかし、ムーンやサマルがこんなに性格悪かったとは・・・。
この先、どうなってしまうんでしょうね。
54 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/19(金) 19:22:07 ID:EO6+SVo0O
とりあえず乙。
前半部分がかなり生々しいな。
このスレ初めてじゃないのか?仲間同士で争うのは。
55 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/20(土) 01:07:16 ID:BEUp8zJv0
第六話後編投下します。

LOAD DATA 第六話中編 >>26-31
56 名前: 風前風樹の嘆【14】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/20(土) 01:08:26 ID:BEUp8zJv0
ゆっくりと起き上がった…死体。
相変わらず足取りは鈍いが、その朽木のような両足はしっかりと地に付いている。

「ビビらせやがって!今度こそ永遠に眠らせてやる…イオ!」

ヘンリーの魔力によって引き起こされた爆風で、腐った体が枯葉のように吹き飛ぶ。
そして、また立ち上がる。
飛び散った中身を拾う事もせず、何かに突き動かされるように。

「ヘンリー止めろ!相手にもう敵意はない。」
サトチーがイオの詠唱を制して、ヘンリーと腐った死体の間に立つ。
確かに、さっきまで充満していた明らかな殺意が消えている。

たどたどしく、弛緩した舌を動かして声を発する死体。
「…ナゼ…逃げなイ…?」
その機能を失った脊髄をククッと曲げ、俺達に問いを投げかける。
「私ノ…姿…怖れなイ…か?…死ぬ…怖く…なイか?」
自らの掌を…ボロボロの手を見つめる瞳に嘆きの色が浮かび、滲み出す…

「ふん。親分が子分を見捨てて逃げたら末代までの恥だろうが。」
ヘンリーは強気な口調で

「後列でへばってる親分を庇うのが優しい子分の役目だろ?」
俺は皮肉めいた口調で

―☆☆☆!!―
ブラウンは(言葉はわからないけど)胸をはって

「誰も死なせない。そして、誰も悲しませない。
 誰にでも帰る場所がある。待つ人がいる。どんな状況でも皆で生きる術を探すさ。」
サトチーは強く答える。
それは、表現こそ違えど全員同じ答え。
57 名前: 風前風樹の嘆【15】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/20(土) 01:09:11 ID:BEUp8zJv0
死んだ魚のように濁った目から零れる濁った涙。
「…帰れナイ…悲しませてゴメン…逢イたイよ……」
その言葉から、涙から感じられるのは、確かな意思。

逢いたい?
そうか、こいつは故郷で帰りを待つ人を残して逝くのが未練で…

「…帰りタイ…愛しイ…マチュア…」
湿っぽい土の上に数滴落ちる雫。
僅かな光源を反射するソレは、キラキラと輝いて見えた。


          ◇           ◇


「なあ、死体の旦那。一番奥の小部屋ってのはまだなのかい?」
「…もう少し…」
「かぁーっ!さっきからそればっかじゃねえか。本当に覚えてるのか?」

腐った死体の道案内。
思い出を呼び覚ましてくれたお礼にと、腐った死体が先導してくれているわけだが、
正直、脳味噌まで腐っているようなモンスターの案内は不安でしかない。

いやいや、(元)人を見かけで判断するのはいけないんだけどさ…

「なあなあ、死体の旦那。もういい加減着いても良いんじゃねえの?」
「…もう少し…」
「本当だな?信じてるからな?頼りにしてるからな?」
ヘンリーもイライラしてるようだが、それなりに打ち解けている。
あの、人当たりの良さは一種の才能なんだろうなあ。
58 名前: 風前風樹の嘆【16】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/20(土) 01:09:53 ID:BEUp8zJv0
「どうしたんだい?何か考え込んでるようだけど。」
そして、仲間の様子に敏感に反応するサトチー。これも才能だよな。

「大丈夫。別に悩んでるとかそういうのじゃないからさ。」
「…そう?それなら良いんだけど…」
「それより、アレに案内を任せて大丈夫なのか?正直、俺は不あn…」
言いかけた俺の足元を銀色の何かが駆け抜け、それに遅れて通過の余波を感じた。

何だアレ?やたらと速いけど、モンスターか?
「…メ…」

め?

「メタルスライムだ!!」
先を歩いていたヘンリーが叫び、興奮した様子で銀色に斬りかかる。
…が、ヘンリーの鎖鎌は掠りもせずに空を切る。

「逃がすな!ヘンリーとイサミは退路を塞げ!!ブラウンは全力で攻撃!!」
「おうよ!任せろ!!…って、畜生!チョロチョロすんな!!」

何だ?あのテンション…

「あぁっ!逃げる。追うぞ、ヘンリー!!」
「うおおぉぉ!逃がさねえぞおぉぉぉ!!」

銀色を追いかけて洞窟の方へ走りだすサトチー達。
完全に置いて行かれた俺と…腐った死体…

「…あの…行っちゃいました…ね?」
「…走って行っタ…方向…部屋…」

あ…そう…じゃあ問題ないね。
59 名前: 風前風樹の嘆【17】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/20(土) 01:10:42 ID:BEUp8zJv0
腐った死体の言う通り、少し先にそれらしい扉を発見した。
…けれど、サトチー達の姿はない。メタルスライムを追って走り回っているのだろう。
さらに、扉には鍵がかかっているらしく、押しても引いても動く気配はない。

「参ったね。サトチー達と合流するまでここで待つしかないのかね。」
ジメジメした上の階とは違い、石畳で覆われたこの階の地面は乾いているので、
座って休む事に躊躇しないで済む。

俺と向かい合うような形で、腐った死体も腰を下ろす。
道中、会話らしい会話は全くなかったけど、最初に感じた嫌悪感は消えており、
むしろ、二人きりの状況では、コイツのタフさはとても頼りになる。

「はぁ…しかし、だいぶ傷だらけになっちまったなあ。」
聞いているのか聞いていないのか、俺の声に全く反応を見せない腐った死体。
頭蓋骨が陥没したままの状態で、だらりと足を投げ出して休んでいる姿だけを見ると、
コイツが動いたり話したりするのが信じられなくもなる。
「あんたの怪我もそのままだったな。」
「…私ハ…痛みを感じ…なイ…平気…」
目を伏せたまま、やっと返ってきた反応はそっけない。

「…あんたは平気でもね…」
改めてその凄惨な怪我を目にして平気でいられるほど俺は冷酷じゃない。

ふぅ…と、一息ついて安らぎの歌を呼ぶ。
陥没した頭蓋骨を完全に治すには至らないが、傷口から滲み出る体液は止まった。

「サトチーのベホイミほどの効果はないけどさ、何もしないよりはマシだろ?」
「…ありガとう……デも…そノ技ハ…」

「肝心なトコで何で外すかな?このノーコンハンマー。」
―!!!!!―
「まあまあ、ブラウンのせいじゃないよ。」
60 名前: 風前風樹の嘆【18】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/20(土) 01:16:45 ID:BEUp8zJv0
呟くような腐った死体の声を掻き消して、一気に賑やかになる空間。
サトチー達が戻ってきた…けど、あの様子じゃあメタルスライムは取り逃したのかな?

「だってよお、コイツのハンマーが当たってれば…アレ?何やってんだイサミ。」
「ナニやってる?散々人を放置して第一声がソレ?」
素っ頓狂なヘンリーの言葉に俺の機嫌が一気に悪くなる。
「いやあ、済まない。メタルスライムを見たら、思わず血が熱くなってね。」

いつも冷静なサトチーが熱くなる存在。メタルスライム…
コレもこっちの世界の常識なのかね?

「…で?ココで待ってるって事は、この扉の先にパパスさんの形見があるって事か?」
「らしいね。でも、鍵がかかってて扉が開かないんだ。」
「どれどれ…あぁ、このタイプの鍵なら…ホラ、簡単。」

サトチーが鍵穴に何か…と、思ったら一瞬で開錠。

…ソレ、ピッキングって言うんじゃねえの?

「子供の頃に覚えたんだけどね。このタイプの鍵なら目をつぶってても開けられるさ。」
得意げに物凄い事を話しながら、扉を開けるサトチー。

…気にするな…きっと、コレもこっちの世界の常識なんだ…

十年振りに開け放たれた扉。
その奥に安置された一振りの剣。


剣の心得など全くない俺にもわかる眩いばかりの神性を放つ剣。

その剣を前に、俺達は暫し時間を忘れて立ち尽くしていた。
61 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/20(土) 01:17:32 ID:BEUp8zJv0
イサミ  LV 11
職業:異邦人
HP:45/65
MP:10/10
装備:E銅の剣 E鎖帷子
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌
62 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/20(土) 01:25:04 ID:BEUp8zJv0
第六話投下終了です。
腐った死体の描写が必要以上にグロくなったのは申し訳ないです。
ドラマがありそうで好きなモンスターなんですけどね…
63 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/20(土) 01:28:05 ID:BnV7Gxk50
DQ世界を知らないイサミからすれば
メタスラ狩りに熱くなったりするのは理解できないよなw
そしてあの時覚えたカギの技法はピッキング技術だ確かにwwww
64 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/20(土) 09:52:47 ID:+nPDpNEd0
小説ドラクエXを好きな俺は、腐った死体にドラマを感じる事に同意せざるを得ない。
しかし、はたから見るとグロいにも程があるのに、余裕あるなw
65 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/20(土) 10:17:34 ID:89QzY+EN0
メタスラ狩り、いいですね。まさに目の色をかえるという感じでしょうか。
はぐれメタルなんかでた時にはすごいことになりそう(wwwwwwwwww

腐った死体さんが動くっていうのはゲームだとただの敵キャラですけど、リアルに考えるとこわいですよね。
腐った死体さんの願い、かなうといいですね。でも、会えたとしても、この姿だとお相手さんもびっくりですよね。悲しいけど・・・。
66 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/20(土) 10:34:50 ID:kJjJ+8voO
スミス(仮)にもドラマがありそう。
メタスラ狩りは同意出来るな。
暇つぶし、レッドマンも乙。
しかしこのスレでノリさんAAが見れるとはw
67 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/20(土) 13:13:12 ID:P1xeMY6M0
週末に向けての怒涛の投下!
作家さんたちGJ!

堪能しました〜
68 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/20(土) 13:42:51 ID:8mcUQYMo0
すげえ……
作者にはそれぞれの色が出ているな。
各主人公で例えると

しなの…ピンク
 タケ…ブラック
イサミ…パープル って感じかな。
69 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/21(日) 06:39:45 ID:OdbIyG/4O
作者の皆さんには感謝している。
続きを読むのがすごい楽しみ。
70 名前: Stage.9.5 hjmn ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/21(日) 18:03:39 ID:OQlcC0ua0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。まずのっけからごめんなさい。アリスちゃんもうちょっと待ってくださーい!」
アルス「嬉しそうに見えるのは気のせいか?」
タツミ「とんでもない! お待ちいただいてる読者様に申し訳なくて、ああ胸が痛ひ……」
アルス「え〜冗談抜きですんません。現在本編の方で、物語の根幹に関わる部分を書いてまして、
   本編をキリのいいところまで進めてから投下させてください」
タツミ「では前回ご感想いただいた読者様へのサンクスコール!」

タツミ「前スレ>>580様、ドキドキしつつの初リアルタイム支援、ありがとうございます!」
アルス「同じく前スレ>>581様、狙った終わり方になってる?w 楽しみにしていただいて感謝!」
タツミ「そして毎回、たくさんのご支援にも助かっております」

アルス「しかしこの話、リアルサイドとゲームサイドで飛ぶから、流れつかみにくくないのかね?」
タツミ「あるかも。時々番外も入るし、『あれこっちの最後どうなってたっけ?』なんてねー」
アルス「一応、前話へのアンカーと一緒に各サイドの最終アンカーを入れてるけどな」
タツミ「登場人物も多いしね。すでに忘れられてる人もいるよ、きっとw」
???「たとえば僕なんかそうですよね」
タツミ「うわ! え、どなた?」
アルス「お〜久しぶりじゃん! えーと……なんだ、ほら、あれだ」
???「あれだ、はないでしょう。コーラおごったのに。ショウですよ」
タツミ「あ〜いたね、黄色シャツの謎のゲームサイド人。で、なにかご用?」
ショウ「実は今回、僕がけっこう多く出るもので」
アルス・タツミ『へ?』


ショウ「というわけで、今回はアナザー中心『Stage.9.5』をお送りします。
   それでは本編スタート!」


【Stage.9.5 Border Breakers】
 [1]〜[9] リアルサイド・アナザー
71 名前: Stage.9.5 [1] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/21(日) 18:05:47 ID:OQlcC0ua0
  Prev(マエスレ) >>567-576
 ----------------- Rial-Side Another -----------------

 ――彼は「勇者」となるべく育てられた。

 勇者は常に、慈愛に満ちた存在でなければならない。特定の人間に愛を傾けず、世の中
のすべての人間を平等に慈しみ、他人を助け、他人を優先し、他人の非を許せる優しさを
持たねばならない。
 また勇者は、憎悪や嫉妬などの醜い感情を持ってはならない。他人を憎んだり、ねたん
だりするのは「悪」であり、そのような感情はみずから速やかに排除し、自省できる人間
でなければならない。
 また勇者は、清廉潔白でなければならない。俗人と同じ劣情を持たず、他者の感情に左
右されず、泰然としていなくてはならない。
 また勇者は、他者に弱さを見せてはならない。常に平静な状態を保ち、どのような問題
にも完全に対処できなければならない。
 また勇者は――。勇者は――。勇者は――。


 世は文字通りの暗黒時代。
 竜王の魔力によって陽の光は厚い雲に遮られ、真昼でも夜のように暗い日々が続いた。
人々は魔物に怯え、寒さに震え、飢えに苦しみ、ただじりじりと滅亡の道へと追い込まれ
ていくだけだった。

 英雄が必要だった。絶望の淵に追い込まれた人間たちが、最後の心の希望としてすがり
つくための存在が必要だった。
 ゆえに、本来は結果論であるはずの「勇者」をゼロから作り上げるという行為が、どれ
ほど不自然なことなのかも、誰一人気づくことはなかった。

 伝説の再来から、救世の終わりに至るまでの間……誰一人として。

   ◇
 
72 名前: Stage.9.5 [2] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/21(日) 18:07:25 ID:OQlcC0ua0

 腹に突き刺した鉄杭を、さらに正確に蹴りつけてきた相手の格闘センスに、アレフィス
タ・レオールドは内心で舌を巻いた。ただのガキだと思ったが、なかなかどうしてやるじゃ
ないか。さすが伝説の英雄、そうでなければ倒し甲斐がない。

「なあ、本当に大丈夫なのかよ、アレフ。くそ、あの野郎なんなんだよ」
 傍らで不安そうにしている少年は、さっきから同じことを繰り返している。
「わけわかんねえよ。なんでいきなし強くなんだよ。タツミの野郎、運動しんけーとかそ
んな悪くなかったけどよ、あんなんじゃねえよ。なんなんだよ」
「少し黙れ」
 いい加減うっとうしくなり、アレフは低い声で呟いた。少年はビクッと肩を震わせると、
顔色をうかがうように上目遣いにアレフを見つめた。
「わ、わかったよ」
 どうにも使えそうにないヤツだ。未だにあれが別人だと気付いていないのも鈍すぎて呆
れるが、ここは説明してやることにする。
「あいつは、お前が言うミツハラタツミという人間じゃない。俺と同じく、ゲームの世界
からこちらに来た人間だ」
「なんだと!?」
 大声を出す少年を、人差し指を唇に当てて黙らせる。
「たぶん、ミツハラタツミと入れ替わったんだろう。俺が、お前の妹と入れ替わったのと
同じように、な」

 少年の名はエージ……一條栄治という。『現実』に来て最初に出会った人間であり、自
分が入れ替わりのために犠牲にしたプレイヤーの実の兄である。
 妹が異世界に飛ばされたにも関わらず、こいつは「すげぇ!」を連発し、自分に常人以
上の力があると知るや、「タツミというガキを半殺にしてくれ」と頼んできた。話を聞け
ばそれなりの情状はあり、衣食住の世話から武器の調達までおこなってくれたことへの礼
として引き受けたのだが――それがまさか、偉大なるご先祖様だったとは。
「これも運命か……。まあいい、ひとまずここを離れるぞ」
 追っ手がかかれば面倒なことになる。今日は出直した方がいい。
 
73 名前: Stage.9.5 [3] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/21(日) 18:08:26 ID:OQlcC0ua0

「――なるほど、その子に頼まれてやったことだったんですね」
 いきなり声が掛かった。
 木の陰から現れたのは、鮮やかな黄色の服を着た少年だった。首や腕にジャラジャラと
装飾品をぶら下げ、左耳にピアスが光っている。
 肩に妙な形をした大きめの黒いケースを背負っていた。エージの家にもあった、ギター
とかいう楽器をしまうものだったか。
「でも、平穏な生活を望んでいるマジメなPCに手を出すのは、良くないですよ?」
 少年は人の良さそうな笑みを浮かべたまま、二人を交互に見ている。
「なんだぁ? てめえ誰だ……わっ」
「下がってろ」
 吠えかかるエージの襟首をつかんで後ろに転がし、アレフはナイフを抜いた。
 同じ「におい」がする――こいつも、明らかに向こうの人間だ。

「ピーシー、とはなんだ。ヤツのこちらでの名前か?」
 距離を調整しながらアレフが聞く。
「いいえ、まさか。PCというのは、プレイ・キャラクターの略です」
 少年はクスクス笑いながら、ギターケースを地面に置いた。
「僕やあなたのようにゲームから来た人間のことを、僕らはそう呼んでるんですよ。ゲー
ム側の人間、とか、いちいち言いづらいじゃないですか」
 説明しつつ中から取り出したのは、ギターなどではなかった。ジャキッと慣れた様子で、
なにか禍々しさを感じる複雑な構造のもの――間違いなく武器だ――を携える。
「ちなみに、入れ替わりの対象となるプレイヤーのことも、単純にPLと略してますが」
「……嘘だろ、あれ銃だぞっ。やべえよ、あんなんで撃たれたらぜってー死ぬって!」
「だったら逃げろ!」
 また騒ぎ出したエージをアレフが突き飛ばした瞬間、ダン! っと腹に響く音がした。
 現実側の人間よりも遙かに優秀な知覚を持つアレフには、二人の間をなにかが高速で突
き抜けていくのがわかった。撃たれる、というのは今のを食らうことらしい。
「ひ、ひぁ! アレフぅ!」
「行け、邪魔だ!」
 アレフに怒鳴られ、エージはつんのめるように森の奥へと走り出した。
「へえ……現実の人間なんかどうでもいいタイプだと思いましたが」
74 名前: Stage.9.5 [4] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/21(日) 18:09:56 ID:OQlcC0ua0

「どうでもいいさ。だが、まだ後見人は必要だからな。少々頼りないが」
 相手の皮肉に苦笑で返しつつ逃走ルートを探す。まともにやりあうには分が悪すぎる。
 少年も気づいているのか、ゆっくりと退路に回り込むように動いてくる。
「やめた方がいいですよ。まだ半端なあなたでは無理です」
 瞬間、目の前に少年がいた。とっさに両腕を十字に組んで防御するが、一見ぞんざいと
も見える蹴りに、身体ごと後方に吹き飛ばされた。
 頭ひとつ分の身長差がある、どちらかといえば小柄な少年に簡単にパワーで押し切られ、
アレフは相手が言った「半端な」の意味がわかった。
「っぐ……貴様、制限がないのか?」
 ゲーム内では自身の何倍もあるモンスターを剣一本で両断できるだけのその力を、現実
でも最大限に発揮している。少年が相変わらずの笑顔で肯定した。
「僕はもう移行が完了してますので。ですから、時間制限もありません」
 セリフが終わると同時に、先刻聞いた重い音が轟いた。
 彼の持つ銃器はライフル。本来はストック後端にあるバットプレートをしっかり肩に固
定して狙い撃つものだが、少年は長身の銃器を片手で軽々と持ち、常人なら脱臼しかねな
い強烈な反動も意に介さずトリガーを引いている。  
 ほぼ動物的勘で弾道を読み、危ういところを避けたアレフに、少年が再び肉薄した。ロ
ングレンジの武器を持つにも関わらず接近戦をしかけてくるのは、あまり撃ちたくないた
めか。繰り出したアレフのナイフをスライディングするような姿勢で避け、すり抜けざま
銃の柄で脇腹を殴りつけていく。たまらず膝をついたアレフに容赦なく蹴りが入る。
「あなたのようにおかしくなっちゃう英雄が多いんですよね。そういうPCを『狩る』の
が僕の仕事です。勇者狩り、とでも言うのかな」
「がぁっ……!」
 背中を踏みつけられる。それだけで肋骨がきしみ、呼吸ができなくなった。
「ここではショウと呼ばれてます。どうぞよろしく」

 ダン! ダン! ダン! と間近で立て続けに発射音が響いた。
 同時にアレフの意識も吹き飛ばされた。

   ◇
 
75 名前: Stage.9.5 [5] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/21(日) 18:18:20 ID:OQlcC0ua0

 ショウは「ふう」と息をつくと、動かなくなった青年を足で転がし、仰向けにさせた。
 PCは総じて現実の人間より遙かに体力も耐久力もあるが、さすがに大型獣用の麻酔弾
を3発もぶち込めば、しばらくは起きないだろう。
 と、胸元で細かい振動が起きた。マナーモードにしていた携帯電話だ。付近の封鎖にあ
たっていた組織の人間からで、逃げた少年についての処置を尋ねてくる。
「いえ、放置してください。まずはこのPCの搬送を頼みます」
 相互置換対象の実兄となれば、一條栄治もまた、他のPCと入れ替わる現象が起きるか
もしれない。泳がせておく方が得策だろう。
 確保したばかりのPCの扱いを手短に指示し、携帯を切る。愛用のライフルをギターケー
スにしまうと、自分はさっさとその場を離れた。

 ふと、たった今逃がしてやった不良少年が、現在監視下にある他のPCに要らぬちょっ
かいをかけていることを考えた。
 あのPCは――タツミと言ったか――今のところ良識的に行動しており、移行完了後の
スカウトも検討している。移行前の半端な状態では使い物にならないので様子を見ている
が、その障害になるようなら、やはり一條栄治も監視しておくべきか。
「いつまでも僕一人じゃキツイしなぁ。タツミ君も早く割り切れればいいけど……」


 ショウは公園を出てその場でタクシーを拾い、1時間後には中央区に戻った。
 オフィス街の一角にある高層ビルの前で車を停めさせる。ビルのフロントにIDカードを
示してギターケースを預け、エレベーターで一気に最上階まで昇り、いくつものセキュリ
ティを通ってたどり着いた先の広いオフィスで、一人の青年が待っていた。
「やあ、お疲れ様」
 やや長めの黒髪を後ろで結い、上品な濃紫のスーツを着ている。
 彼の傍らには美しい秘書が二人控えており、そのうちの一人が無言で進み出た。見事な
ストレートブロンドをゆるやかに編んで肩にかけ、緑のスーツをまとった大人らしい雰囲
気の女性だ。中央にある応接セットのソファに優雅に腰を下ろし、ショウを見て微笑む。
 彼はわずかに眉をひそめたが、にこやかにこちらを見守っている青年を見て、小さくた
め息をついた。ソファに大股で近づいて、秘書の太ももを枕に、乱暴にドサッと背中から
横たわる。
76 名前: Stage.9.5 [6] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/21(日) 18:19:47 ID:OQlcC0ua0

「相変わらず手際がいいね。今度の『勇者』くんはどうだった?」
 青年も向かい側のソファに腰を下ろし、気軽な口調で尋ねてきた。
「どうもこうもないですよ。一度は世界を救った英雄だろうに、どうしてこうネジが外れ
ちゃうんでしょうね」
 ショウは目を閉じたまま、億劫そうにひらひらと手を振った。
 その手ですでに、二人の『狂った勇者』をこの世界から抹消している。現実側での生も
死も仮のものでしかないとわかってはいるが、決して気持ちのいいものではない。
「仕方ないさ。それだけの大命を果たしたからこそ、よけい『現実』とのギャップに苦し
むんだろう。君だって最初、たった一枚のディスクの存在だと知ってどうだった?」
「僕はそれどころじゃありませんでしたから」
 即答する。現実もゲームも、ショウにとってはどうでもいい話だった。
「あなたはどうだったんですか?」
 横目で見つつ逆に問い返すと、青年はあごに指をあてて少し考え込んだ。
「私の場合は……それほど驚きはしなかったな。私の世界にも妖精界だの魔界だの、いく
つも平行世界があったから、『現実』もそんなに突拍子のない話じゃなかったしね」
 自分の息子が伝説の勇者だと知ったときの方がよっぽどショックだったよ、と笑う。

 そこにもう一人の秘書が、コーヒーを煎れて戻ってきた。
 こちらの女性は白を基調としたスーツに身を包み、ほぼ黒に近い濃紺の長髪の上半分を
まとめ、残りを背中に流している。枕にしている方と比較するとやや幼い印象を受けるが、
その物腰には深窓の令嬢を思わせる慎ましさがあった。
「ありがとう。君もここへ」
 ソファを叩いて隣に座らせた彼女を、青年は自然な動作で抱き寄せた。

 どちらの女性も現実の人間だ。青年がゲーム内で妻とした女性たちによく似た人間をわ
ざわざ捜し出し、そばに置いているのだという。
 最初、妻が二人という意味がわからず、重婚ではないのかと聞いたところ、青年はあっ
さり肯定した。こいつのPLはよほど女好きらしいな、と内心で毒づいたものだ。
 あるいは逆に、表向きはとんでもない堅物で、内側に鬱屈を溜め込んでいたタイプか。
どちらにしろ、こいつのプレイヤーも褒められた性格ではなさそうだ。
 
77 名前: Stage.9.5 [7] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/21(日) 18:21:31 ID:OQlcC0ua0

 PL(プレイヤー)の性格や生活環境が、ゲームの未表現領域の設定(ゲーム上で表現
されない詳細設定)に大きく関与していることは、今までの研究でわかっている。
 DQシリーズのコンセプトが「主人公=プレイヤー」である以上それも道理であるが、
問題は、PLの隠れた願望や深層心理が、より顕著に影響を与えるという点にある。
 PLの現実生活が歪んでいれば、それだけ理想や願望は大きく強くなっていく。それら
が強引に投影されることにより、PCは本来のストーリーとの軋轢によって過剰なストレ
スにさらされ続け、あげく『現実とゲーム』というショッキングな事実に直面し、精神に
異常をきたしてしまうのだ。
 先刻確保したPCも、肉親を奪われたにも関わらず懇意にしている一條栄治の異常な行
動を見れば、PLである妹のゆがみ具合もおのずと察せられる。
 アレフも被害者なのだ。でなければ、彼もひとつの世界を救うほどの人物であり、たと
え異世界でも立派にやっていけるだけの器量を保っていられたはずである。

 ――それに自分だって、狂ってない、とは言い切れない。
 しょせんおのれも、PLを犠牲にしてこちらに来た時点で、他の連中と大差はない。
 ただ目的を果たすため、より詳細な研究データを集めるのにやむをえず、この役を引き
受けているだけだ。

「すみません、僕、そろそろ戻ります。向こうにも顔を出さないとまずいし」
 ショウは身体を起こした。
「もう行くのかい?」
 つまらなそうな顔をする青年に「あなたもヒマじゃないでしょう」と言い捨てて、さっ
さとドアに向かう。
「――八城翔君」
 振り返ると、青年はやはり人の良さそうな、少し子供っぽいほどの笑顔で手を振った。
「君の愛しい彼女にヨロシク」
「…………」
 こいつのPLには一度会ってみたいものだ。

   ◇
 
78 名前: Stage.9.5 [8] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/21(日) 18:22:44 ID:OQlcC0ua0

 フロントでギターケースを受け取り、ビルの前ですぐタクシーを拾った。どうせ経費は
すべてあの青年が持つので、遠慮せず楽な方法を使う。
 込み入った中心街を抜け、20分ほどで自分の今の家に着いた。庭付きの一戸建て、こ
のあたりでは割と広い方だろうか。
 ショウが戻ると、やや年かさの母親が満面の笑みで出迎えた。
「おかえりなさい、ショウちゃん。今日は早かったのね。お昼はどうする?」
「さっき軽く食べたから、もう少しあとでいいよ」
 なかなか面倒見のいい、気の優しい親だ。春休みにも関わらず毎日のように出かけてい
ることや、いつも持ち歩いているギターケースについては、大学のサークル活動だと説明
している。中身を知ったら卒倒するに違いない。
「ちょっと疲れたんだ、少し寝るね」
「あら大丈夫なの? 無理しちゃだめよ」
 心配そうにする母親をなだめつつ、ショウは2階の自室に入った。

 ついこの間まではアニメの美少女グッズが山と積まれた最悪の部屋だったが、ショウは
ろくに中身を確認せずに一掃した。万が一、大切な彼女をおもちゃにしたような書籍など
出ようものなら、その場でPLを始末してしまいそうだったからだ。
 ヤシロ・ショウ。 
 最初の旅の頃からずっと相手の生活を夢で追っていたが、どうしようもないクズだった。
入れ替わり、少しいい目を見させてやっただけで、肉親も生活も捨てた無責任な人間だ。
 最近はまた帰りたいと嘆いているらしいが――いまさら遅い。

 まずテレビの電源をつける。音量はゼロにしている。テレビには電源が入りっぱなしの
ゲーム機が接続されており、とあるゲームが無音で始まった。
 自分が生まれ育ち、旅をし……そして一度は救った世界が、そこにある。
 ショウは画面の中が無人であることを確認すると、部屋のドアに鍵を掛けた。
 ピアスなどのアクセサリーを外し、服もすべて脱いで準備をする。食事を取ったのは3
時間以上も前なので、胃の中に未消化物も残っていないはずだ。

【自分以外のいっさいの持ち込み・持ち出しができない】
 
79 名前: Stage.9.5 [9] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/21(日) 18:24:38 ID:OQlcC0ua0

 それが、自分たちが未だに突破できない障壁であり、最大の研究テーマだ。
 唯一の例外は携帯電話である。ショウはいつものアドレスに向け、空メールを送信した。
 少年の身体の輪郭がぶれ、その姿がメールの送信と共に消えていく。


 ――次に目を開けると、視界が一転していた。
 木調に統一された簡素な室内。長年過ごしてきた、本当の自分の部屋だ。
 衣装ダンスから服を引っ張り出して袖に腕を通す。生地の肌触りなどは現実の物の方が
いいが、こちらの格好の方が落ち着く。黄色のチュニックのポケットに携帯を入れ、ブー
ツを履いて部屋を出ると、鉢合わせた部下がサッと敬礼した。
 自分よりかなり年配の兵士だが、年若い上司によく仕えてくれている。ショウも敬礼を
返し、長い廊下を渡って王宮に入った。

 いくつも階段を上り、最上階のテラスに出たところで、ようやく目当ての姿を発見した。
 この城の王女にして、幼なじみ。そして、永遠の忠誠を誓った愛しい人。
「あまり風に当たりますと、お身体に障りますよ」
 声をかけると、艶やかな黒髪を風に遊ばせていた少女が振り返った。少年の姿を認めて
花のような笑顔を浮かべる。

「――エイト!」

 駆け寄ってきた少女を抱きとめて、彼も微笑んだ。
「ただいま戻りました、ミーティア姫」
 現実では誰にも見せない、心から湧き出す純粋な笑み。
 それが八城翔の名前と人生を奪った少年の――

 トロデーン国近衛隊長・ラグエイト=ハデックの素顔だった。


80 名前: Stage.9.5 atgk ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/21(日) 18:32:34 ID:0HfV2Tjp0
本日はここまでです。
本当はアサルトライフルかショットガンを持たせたかったのですが、
それだと麻酔弾が使えないのでライフルで我慢。
レミントンM700シリーズに代表される、命中精度の高いボルトアクション方式です。
っていうか、ますますDQ離れしてますね……(^_^;
81 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/21(日) 19:11:38 ID:u5b1NhJo0
乙です。

もしかして火器持ち込もうとしてるんだろうか…
82 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/21(日) 20:09:54 ID:H0ghTqO00
>>80
乙でした
かなりwktkな展開なんだけど
ここらでちょろっとまとめかあらすじが必要な気がしてきた
個人的には十分付いてこれてるんだけどさ
このスレ始まって以来の複雑な話だと思うんで(もちろんいい意味で)
83 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/21(日) 23:24:11 ID:U+E6ti/c0
乙です。だんだん話が大きくなってきたなぁ…。
完全に移行しちゃうと、現実とゲームの間を自由に行き来できるのか。
エイトのPLはいったいどうなってるんだろう…(((゚Д゚;)))
84 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/22(月) 00:02:02 ID:sEJiGKSP0
未消化物があった場合・・・(阿鼻叫喚
85 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/22(月) 01:55:40 ID:lKZU9rDxO
R氏乙。
エイトも微妙な位置にいるな。善とも悪とも言いきれない感じだ。
しかしあの無表情でライフル振り回してるの想像すると笑えるw

>>82
なんか前の話の後書きで、まとめやるみたいなことR氏本人が言ってたよ。
86 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/22(月) 03:15:50 ID:oW1JLbvB0
乙!今回も楽しく読ませて頂きました。
V主人公がラスボスっぽいですねぇ。
いや〜次回も楽しみです。
87 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/22(月) 05:39:24 ID:5D4V6BEj0
おはようございます。
早朝に第七話前半投下です。

LOAD DATA 第六話後編 >>56-61
88 名前: 剣魂一擲【1】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/22(月) 05:40:37 ID:5D4V6BEj0
天空の剣

嘗て、天より舞い降りた伝説の勇者が用いた剣。
その白金の刀身は、一切の穢れを祓うかの様に荘厳な光を放ち、
柄に装飾された竜神のレリーフは、一切の不浄を退けるかの様に鋭く瞳を輝かせる。

天空の剣、鎧、兜、盾が本当の所持者…伝説の勇者の元に揃った時、
この世界と魔界との境界が切り開かれる。

…この世界と魔界との境界を切り開く力…
それは、別世界との境界を切り開く力…
もしかして…その力があれば、俺も元の世界に帰れるんじゃ…

「父さんは…根拠のない迷信の類いは信じない人だった。」
剣と共に安置されていた手紙…
サトチーの父親…即ち、パパスの遺した手紙に目を通していたサトチーが口を開く。

それはつまり…その伝説の勇者の話は…

「手紙の内容は真実だと思う。勇者の話も、天空の武具の話も、母さんの話も…」
手紙に記されていた内容は、伝説の勇者の話以外にもう一つ。
魔界に捕われているというサトチーの母親の話。
サトチーの母親を魔界から救出するには、魔界に渡れる伝説の勇者の力が必要。

「僕は世界を廻って天空の武具を揃える。そして、必ず母さんを助ける。」
10年の時を跨いで受け継がれた父の遺志。
己の決意を口にするサトチーの目は、あの剣のレリーフの目よりも輝いている。
89 名前: 剣魂一擲【2】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/22(月) 05:41:45 ID:5D4V6BEj0
天空の剣を手にした俺達は、サンタローズを後にしラインハットに向かう。

旅に出ようにも、ラインハット王家の勅命によって、港は封鎖されている。
ただの旅人であるサトチーが開港を嘆願するよりも、王家の人間が間に入ったほうが
話も通じやすいだろうというヘンリーの意見。

ただ一つ、気になる事。
巷では王家の評判はすこぶる悪い。
現に、サンタローズの惨状を目の当たりにした後ではその噂も真実味を増す一方。

「ま…王家で何かおかしなことが起こってても、俺様の凱旋で元に戻るだろうさ。」
ヘンリーの口調はいつも通り軽いが、その表情はどことなく曇っている。

王家に異変が起こっている事を確信しているんだろうな。

思考を邪魔されるのは、いつも同じシチュエーション。
ギャアギャアと、耳障りな声を上げて迫り来るモンスター達。
「おちおち話してもいられねえな…ピッキーの群れか。」
「じゃあ、さっきと同じくヘンリーが後方支援。僕とイサミとブラウンが前線。」
「了解。間違っても俺に魔法を当てるなよ。」
「ガンガン飛ばしていくからな。イオ!」

もうすっかり日常となった光景。
ヘンリーの放つ魔法の弾幕で怯んだ相手に前線の俺達三人が踊りかかる。

サトチーのチェーンクロスが、ピッキーの丸っこい体に絡みつき叩き伏せる。
ブラウンのフルスイングが、鳥型モンスターを遥か彼方までかっ飛ばす。
そして俺の剣が振るわれた先では、赤い液体と極彩色の羽が舞う。

一つ違うのは、俺の武器。

俺の手に握られているのは『天空の剣』
90 名前: 剣魂一擲【3】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/22(月) 05:44:41 ID:5D4V6BEj0
まあ、俺の存在自体がこっちではバグなんだろうなあ。

その剣は、それ自体が意思を持ち、勇者以外の者には持ち上げる事すら叶わないと言う。
事実、安置されていた剣を手にしたサトチーは、持ち上げるのが精一杯と言った様子で、
それを構えて振り回す事など、傍目から見ても不可能である事は明らか。

「参ったな。まるで鉄の塊を持ち上げてるみたいだ。」
カラン…と、まるで重さを感じさせない音をたて、剣が地に置かれる。
どちらかと言えば小振りで薄刃の剣は、怪力のブラウンですら持ち上げるのが辛そうだ。

「さて、こんなに重いんじゃあ持ち運ぶのも一苦労だな。」
「俺が運ぶよ。サトチー達が自由に動けなくなったら大問題だからな。」

情けない話だが、戦闘スキルに於いては俺の存在はパーティーの中で一歩劣る。
肉弾戦に優れるブラウン。魔法戦に優れるヘンリー。総合力で優れるサトチー。
この三名のいずれかが、行動を制限される事は戦力的に大きな損失だろう。

「じゃあ、お言葉に甘えようかな。本当に重いから気を付けてね。」

腰をやらないように、しっかりと足を地に付けて柄を両手で強く握る。

持ち上がらなかったとか…恥ずかしすぎるよな。気合入れねえと…

深呼吸を一回…二回…そして、一気に持ち上げる。
「おりゃああ!!……でええぇぇぇぇ!?」

あっさりと跳ね上げられた剣は、クルクルと回転しながら天井まで跳ね上がり、
必要以上に力を込めていた俺は、その反動で後ろに思いきりスッ転んだ。

( ゚д゚)<ポカーン ( ゚д゚)<ポカーン ↓ブラウン

一同絶句…
91 名前: 剣魂一擲【4】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/22(月) 05:45:36 ID:5D4V6BEj0
「いやあ、あの時は驚いたね。まさかイサミが天空の勇者?…って。」
馬車の前でサトチーがクスクスと思い出し笑いを浮かべる。

きっと、俺の派手な転びっぷりも笑いに一役かってるんだろうな…orz

「イサミはこの世界の人間じゃないから、この世界の伝承に当てはまらない…だっけ?
 ずりいよなあ。つい最近まで剣術のケの字も知らなかったクセにさあ。」
「まあ、おかげで苦労なくこの剣を運べてるんだ。結果オーライじゃね?」

この世界の流れから外れた存在…バグ…特異点…
あっちの世界の法則がこっちの世界で通じないように、
こっちの世界の法則が俺自身に通じない事もあるんだな。

「…ダガ…イレギュラーは常に良イ結果をもたラス物でハなイ…」
「どういう意味だい?スミスの旦那。」
馬車の中から呟いたのはサンタローズで知り合った腐った死体。
『恋人にもう一目会うために旅をしたい』…と、同行を願い出てきた。

「…例えバ…私ノ存在…死と言ウ概念から外れタ…イレギュラー…
 死ト言う…概念を外レ…死ヲ超越シた代償…ガ…この肉体ダ…
 …概念…法則…逸レる事…常に影ガ…付きマトう…」
「つまり、イサミが天空の剣を使いこなせた事で逆に不幸が起こるってのかい?
 スミスの旦那。死体だからって、辛気臭い話は勘弁してくれや。」
「…イサミ…個人…それガ必然デ…アレ…ば…問題ハ…ないの…ダガ…」

俺が伝説の剣を振るう…必然…であるわけないよな。
それは、概念の外。即ち、バグ技。
バグ技にはデメリットが存在する…これは当然。

それっきりスミスは黙り込み、俺達まで無言になった。
92 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/22(月) 06:35:02 ID:iTkypMcQO
支援
93 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/22(月) 07:14:09 ID:5D4V6BEj0
第七話前半部分投下完了です。

仲間モンスターの選択に悩む今日この頃。
人気の仲間モンスターで固めるか、マイナー路線で行くか…
94 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/22(月) 07:40:45 ID:ha9HNS7j0
使える特技で決めるのもいんじゃね?(戦闘描写的な意味で)
95 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/22(月) 11:27:37 ID:psm2A7iz0
天空の剣装備可、かっこえーーー。
だけど、バグってなんだろう。まさかプーーーーという音とともにいきなりフリーズするとか(滝汗
気になる。
96 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/22(月) 13:36:42 ID:AtK5IYnJ0
え?勇者でてきたらどうすんだって思ったら
なるほどバグで天空の剣装備できたのか
97 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/22(月) 22:44:39 ID:+tBDBbaD0
>>お二方とも
乙であります。

軽く個別に
>>R氏(って呼んでおk?)
連想させてくれる書き方は大好きだわw
確かにまとめ欲しくなってきたかも
いまんとこでギリっすw

>>GEMA氏(ほっほっほw)
スミスいたんだw
ここで天空装備できたらそらスタメンだわなwww
ポカーンワロタw

モンスターは愛着があればなんでもおkじゃね
98 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/23(火) 04:05:30 ID:2csESLk60
第七話後半投下
…の前に、仲間モンスターについての助言ありがとうございます。

全種類はさすがに無理ですが、話の中で出来るだけ色んなモンスターを
活躍させられるように頑張ります。

スライムを仲間にしそびれた異端作品orz。どうぞお楽しみください。
では投下です。
99 名前: 剣魂一擲【5】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/23(火) 04:06:26 ID:2csESLk60
星すら見えない夜の森の中、焚き火の前に座り込む人の姿。
赤々と燃える炎によって、血色の悪い顔色を橙色に照らされているスミス。

夜営時の見張りと火の管理は彼の役割。
アンデッドである彼の体は睡眠という物を欲しない。
日中は太陽の光を嫌うアンデッドの体質ゆえに、馬車から滅多に姿を出さないが、
日光の届かない場所や夜間の戦闘では、そのタフさとパワーが非常に頼りになる。

「…起きてイタ…のか?」
「ああ…ちょっと目が冴えちまってね。」
彼の目は火を見つめたまま動かない。

「…夕飯のスープの残リ…温メてあル…飲ンで休メ…」
「サンキュ。」
夕食後にスープをわざわざ火に当てて温めておく様な事は普通はしない。

俺が眠れないでいるの、最初から気付いてたんだな。

節くれだった手で渡されたスープを受け取り、少しづつ喉に流し込む。
銅製のカップに注がれたスープは、熱過ぎず、ぬる過ぎずの丁度良い温度。
遠火で温めてあったのだろう。愚鈍そうにな外見に似合わぬ細やかな気配り。

お互いに無言のまま、静かな時間が流れる。
聞こえるのは焚き木のはぜる音と、俺がスープをすする音。


「…私ノ言葉…気にしテ…いるノダろう?」
相変わらず目は火に向けたまま、感情の読めない声でポツリと呟くスミスの言葉に、
カップを傾けていた俺の手がピタリと止まる。

俺の沈黙を肯定と取ったのだろう、淡々と無感情な言葉が続けられる。
100 名前: 剣魂一擲【6】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/23(火) 04:08:06 ID:2csESLk60
「私ハ…私自身に定めラれタ…生命ノ概念カラ…逸れタ…存在…
 ソノ代償…私自身に降リかカり…この体ト言う咎(トガ)ヲ背負っタ…
 …この世界ノ全てノ概念カラ…逸レた…存在…イレギュラー…
 ソノ…代償…咎が向かう先…恐ラく…世界…」

スミスが言う『この世界のイレギュラー』とは、俺の存在だろう。
言いづらい事をアッサリと言ってくれるな…

スミス個人に発生したバグの代償が、スミス本人に降りかかったように、
この世界そのものに発生したバグの代償は、恐らくこの世界全てに向かう。
俺の存在が世界を狂わせる…

「イサミが振ルう…天空の剣…私ノ目にハ…神性ヲ全く感じナい…
 剣自体ハ素晴ラしい逸品ダガ…それダけノ剣に見えル…
 剣ノ…真の所有者デないカラ?…それとモ…世界ガ…」

気付いていた…実際に剣を振るう俺が一番に。
あれほど荘厳に輝いていたのに、今では神性を感じさせない伝説の剣…
それは、俺が剣の真の所有者じゃないから?
それとも…

「…それとモ…世界ガ…伝説が…イレギュラーを起こし始めテいる…?」

ガツンと、頭の奥のほうを殴られたような感覚。

俺の存在が、世界を狂わし始めている…

「そンな顔ヲするナ…マダ…推測ニ過ぎナい…」

あまりに重すぎる最悪の推測…そうだ、まだ推測の段階だ…
でも、どんなに楽観視しようとしても心の中が押し込まれて苦しくなる。
101 名前: 剣魂一擲【7】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/23(火) 04:09:10 ID:2csESLk60
「…私ハ…私の身に降りカかる咎ヲ…乗り越エてみせル…
 なぜナラ…それガ生きてイる者ノ役目…ダロウ?
 ……喋りスギた…もウ休メ…明日に障ル…」

乗り越える…乗り越える…絶対に乗り越える…
何があっても…それが、生きている人間の役目…

スミスに促され、悶々としたまま野営用のシェラフに入ったが、
胸から消えない感じた事のないプレッシャー…世界に押し潰される…恐怖…

その夜の夢見は最悪だった。



イサミ  LV 12
職業:異邦人
HP:68/68
MP:10/10
装備:E天空の剣 E鎖帷子
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌
102 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/23(火) 04:14:05 ID:2csESLk60
第七話はここまでです。

イサミの振るう天空の剣の威力は、破邪の剣レベル。
少し値の張る市販の剣と同等の威力です。
振っても凍てつく波動は出ません。
103 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/23(火) 12:05:13 ID:6HSNYSQq0
腐った死体という名前とその外観からくる嫌悪感とは裏腹に、スミスってほんといい奴ですね。
もし、できることなら、肉体が再生して、マチュアさんと再会できるといいですね。マーサさまならもしかしたら・・・・。
ただ、死後何年経っているんだろう。マチュアさん、まだ生きてるのかな・・・。

しかし、伝説がイレギュラーをおこしはじめる・・・。
するとどうなるのだろう。
伝説の勇者が出現しなくなるとか、この剣が本来の所有者である伝説の勇者に使えなくなるとか。
うーん、心配だ・・・。
104 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ 投稿日: 2007/10/23(火) 15:04:16 ID:kItbzrEbO
片言の台詞が読みづらい
昭和の文豪かよ
105 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ 投稿日: 2007/10/23(火) 16:13:26 ID:JFv12fYKO
はよ消せや
106 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/23(火) 20:59:24 ID:C+csvYdQ0
>>101
お前まだガム持ってるのかwwww
天空の剣から神性消えたって興味深いな
イサミの存在がバグだからかな…
107 名前: Stage.10 hjmn ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/24(水) 01:11:52 ID:E3XTDxMH0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。今回はゲームサイドか……前回はどうなったんだっけ?」
アルス「あん? 確か、勇者資格がまだ仮免中で、急いで本試験を受けなきゃいけなくて、
   そういうこと事前に説明しとけよ!って俺にキレて電話したらなぜかユリコが出て、
   びっくりしたところで終わってた。――ってかお前が聞くな!」
タツミ「そのあと君のことが心配で電話かけまくってたら、ユリコに怒られたんだよなー」
アルス「……………………MP無駄遣いしてんじゃねえよ」
タツミ「はいはい。では恒例のサンクスコールに参りまーす!」

アルス「>>81様、乙ありがと。ふむ、DQに火器持ち込んだらどんくらい強いんだろうな」
タツミ「魔法と違って初動に時間がかからないのがほとんどだからね、いい線いくかも。
   >>82様、込み入った話ですみません。現在まとめ制作中です。
   次のStageとの間に投下予定でおりますので、もうしばらくお待ちください」
アルス「>>83様、八城翔ってオタク大学生はどうなったんだろうな。俺も心配だ」
タツミ「ではショウ君本人からどうぞw」
ショウ「いきなり呼ばないでください。僕のPLですが、ちゃんと生きてますよ。ええ。
   あと>>84様、準備しないと脱ぎ散らかった服の上に胃酸たっぷりの○○が
   ぶちまけられていて、帰ってきたときの始末が大変です」
アルス「食事中の方すみませんでした。お、次の人もお前についてだぞ」
ショウ「了解です。>>85様、自分では正義か悪かとか、あまり考えてないですね。
   詳しくは言えませんが、目的のための手段として請け負ってるだけですので。では」
タツミ「じゃあね〜。>>86様、Vさん(仮)みたいなタイプがラスボスだと、僕はありがたいけど。
   有無を言わさず世界制服な魔王様と違って、交渉でカタがつきそうだし」
アルス「>>97様、R氏でおk! まとめは上記の通り。あとちょっと我慢してくれな」


アルス・タツミ『それでは本編スタートです!』


【Stage.10 事情それぞれ】
 ゲームサイド [1]〜[9]
108 名前: Stage.10 [1] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/24(水) 01:12:52 ID:E3XTDxMH0
  Prev >>71-79 (Game-Side Prev (マエスレ)>>478-484
 ----------------- Game-Side -----------------

 勇者資格の本試験までまだ若干の日にちがあったから、まずは当初の予定通りエジンベ
アに直行した。ゲームのルールなんて知るかいな。こっちは常識に合わせて行動してるん
だ、それで通らなきゃゲームがおかしいっつーの。

 というわけで、例の差別主義な門番。やっぱり通せんぼをしてきたんだけど、
「ロマリア国王から事前に書状が送られてるはずだけど? ここにあるポルトガ王の紹介
状も疑うわけ? エジンベアは二国の王を敵に回す気か? 国際問題だぞ? あんたごと
きが責任取れんの? ああコラ?」
 詰め寄ってやったら、泡食って上司に報告しにいった。
 こっちは「アルスが襲われて意識不明」なんて話をユリコに聞いた上、彼女からの連絡
待ちの状態でイライラしてるんだ。余計な神経を使わせるな。

 んで、王様から地下への立入許可をもらったはいいけど、これまた予想通りというか。
縦横100マスくらいの広大な地下室に、池やらドクロマークのタイルやらが点在し、動か
す岩も50個以上という超難解なパズルになっていた。
 徹夜で解いて「渇きの壺」をゲット。賢さ245をナメんなよ。

 その後、即行でアリアハンにルーラして一泊。明日の早朝にランシールに向かえば、ギ
リギリ本試験の前日までに到着する予定だ。

 ちなみに、ランシールの本試験は、言わずもがな、例の「一人でお使いできるかな?」
な単身洞窟攻略だ。
 通常、神殿へ入るには「最後の鍵」が必要なのだが、試験のときは特別に開けてもらえ
るとのこと。ここはゲーム本来のストーリーを無視してもOKらしい。
 どうもこの旅は、フラグが立つ基準がよくわからない。ストーリー外のショートカット
が使えるなら素直に使わせてもらうが、またあとで面倒になるのは嫌だなー。

   ◇
 
109 名前: Stage.10 [2] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/24(水) 01:14:52 ID:E3XTDxMH0

 そんなこんなで、僕たちは久々にアリアハンに帰ってきた。
 仲間はそれぞれの家に帰り、僕は今、アルスの実家に戻っている。
 もちろん実のお母さんを騙すわけにもいかないから、エリスたち同様、彼女にも僕がニ
セモノであることは出発前に説明している。
 出がけの慌ただしいときに、いきなり重大な話を告げるのも申し訳ないと思ったんだけ
ど、その時のDQ版お母さんの反応は以下の通り。
「あらまぁ、ちっとも気付かなかったわ。言われてみれば、確かに少し違うかしらね」
 さすが勇者の母。

 ちなみに彼女の名前は「サヤ」さん。突然現れた怪しい異世界人にも関わらず、また笑
顔で出迎えてくれたサヤお母さんに、「こんな素敵な人が僕のお母さんだったらいいな」
と素直に話したら、「嬉しいわ」とまたギュっとされました。ちょっと照れるなー。

 そしてもうひとり。
「タツミ君、と言ったかな。旅はどうじゃね?」
 これまたのんびりしたお人柄のデニーおじいちゃんが、夕食のテーブルを挟んで聞いて
きた。僕はヘニョにちぎったパンをやりながら、事前に用意しているセリフを答える。
「アルス君が一級討伐士の資格を取ってくれていたお陰で、とても順調ですよ。仲間も彼
を取り戻そうと、一丸となって協力してくれてますし」
「そうかそうか。しかしあの子も、元気でいるのかのう」
 自慢の孫が消えたんだ、やっぱり心配だよね。本当のことを教えてあげたいけど……

【本人は豆乳に花見に大はしゃぎな挙げ句、サイコな男に襲われて意識不明らしいです】

 ……やっぱり事実を告げるのは僕にはムリです。代わりにアルスをヨイショしておく。
「彼はルビス様に選ばれた、かけがえのない世界でただ一人の勇者です。きっとご無事で
いらっしゃいますよ。――すみません、僕ごときが彼を騙るのは心苦しいのですが」
「いいえ、あの子のために頑張ってくれているんですもの。さ、おかわりはどう?」
 フワンと笑顔を向けてくれるサヤお母さん。そのあたたかい笑みが逆に心苦しい。
 僕は明日の準備を理由に早々に席を辞して、ヘニョを連れて二階に上がった。
 
110 名前: Stage.10 [3] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/24(水) 01:16:52 ID:E3XTDxMH0

 久しぶりに戻ってきたアルスの部屋は、急の帰宅であるにも関わらず、きれいに掃除さ
れていた。
 出るときはゆっくりする余裕もなかったけど、こうして見てみると、文化の違いはあれ
ど年頃の男の子らしい部屋だと思う。
 壁には剣と盾の飾り。怪物と闘う勇ましい騎士の絵がピンで留めてあって(ポスターみ
たいなものかな)、落書きを消した跡とか、なにかおもしろくないことがあって暴れたの
かヘコんでるところもあったり。
 ロダムに取ってくるよう言われた「一級討伐士」の仮免許証を探す。知らないで置いて
出てしまったもので、本試験で必要とのこと。
 それは机の引き出しの中にすぐ見つかった。金色のプレートに彫られている名前は、
【Arsed Deny Rangbart】

 アルセッド=D=ランバート。
 16歳という史上最年少の若さで、特別職一級討伐士の一次試験に合格した、アリアハン
の天才少年。世界的にも有名な討伐士オルテガ=S=ランバートの息子ということもあっ
て、冒険が始まる前から伝説が始まっちゃってるような人物。
 ……なんだそうだ、実は。
 改めて話を聞くと、とんでもないヤツだったんだねー。周囲の反応から薄々感じてはい
たけど、まさかここまでとは。彼のネームバリューの高さも、これで納得がいったよ。


 アルスという少年が、このあと本当に伝説の英雄になれることを、僕は知っている。
 家族から愛されて、世界から愛されて。普通の少年らしい一面を持ちながらも、勇者に
足る能力と資格を有し、実際に過酷な使命を成し遂げてみせるだけの――。

「…………」
 なんか胸につっかえる感じがする。少し外の空気を吸ってこようか。
「ヘニョも行く?」
 まん丸の目で僕を見上げたヘニョは、当然のようにピョンと僕の腕に飛び込んできた。
抱っこ犬とか抱っこ猫とかはよく聞くけど、こいつは抱っこスライムなのかな。
 ヘニョを抱いて階下に降りる。
111 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/24(水) 01:16:53 ID:+YAKNage0
そういえばヘニョいたんだっけなww支援
112 名前: Stage.10 [4] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/24(水) 01:18:52 ID:E3XTDxMH0

「ちょっと散歩してきますね」
 台所の方に声をかけたが、サヤお母さんの姿がない。どこに行ったんだろう。

   ◇

 玄関を出て城壁沿いに歩いていった。
 アリアハンは初夏を迎えた頃。現実側よりはだいぶ暖かいけれど、夜風はまだ肌にひや
りとして、身体の熱と一緒にくだらない考えも奪っていってくれる。
(ま、アルスはアルスで、僕は僕なんだし……)
 正面入り口を守る夜番の兵士さんに挨拶しつつ、適当にブラブラしていたら、やがて共
有井戸がある広場に出た。いつの間にか街の端っこまで来ちゃったらしい。

 そろそろ戻るか。そう思ってUターンしようとした、その時だ。 
 風に乗って女性の声が聞こえてきた。聞き覚えのある――サヤお母さん?

 広場の隅の薄暗いところに人影が見えた。間違いない、サヤお母さんだ。人目を忍ぶよ
うな暗い色のマントを着ていて、彼女の前にも同じような格好をした背の高い人がいる。
 そのもう一人が、低い声で言った。
「そなたはなにを考えておるのだ。これ以上好きにさせておく法はないであろう?」
「しかし真相がはっきりするまでは、様子を見るべきかと存じます」
 深刻そうな空気を感じて、僕は咄嗟に物陰に隠れた。
 相手は男の人みたいだけど……ん?

 えーー!!?? こんな夜に男の人と密会デスカ? これなんてFLASHネタ?

「余はもう我慢がならんのだ! あのような紛い物がアルセッドの名を騙り、世界を偽り、
遊び半分に勇者ごっこをしておるのだぞ?」
「ですがいきなり捕らえるとは性急にすぎます。もしあの子の言っていることが真実だと
したら、ルビス様の遣いを害することになる。そうでございましょう、陛下?」

 “これなんてFLASHネタ?” じゃねーや。思いっきり僕のことじゃん。
113 名前: Stage.10 [5] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/24(水) 01:20:51 ID:E3XTDxMH0

 どうやらアリアハン国王その人が、僕の処罰をどうするか、サヤお母さんに聞いている
ようです。
 まあ王様にはバレてて当然か。僕の仲間は全員、城勤めの人間なんだから――。
「ルビスの遣いなどと、そんなたわごとを信じろと? おおかた、どこぞでご子息を見か
けたあやつめが、似た容姿を利用して成り代わろうと画策したのではないのか」
「しかしそれでは、うちの息子がなぜそれを許したのかが……」
「そこらの小童に遅れをとるような子ではないが、ご子息は情が深い。聞けばあの紛い物
め、頭は回るようだからな。騙されてどこぞに封じられておるのやもしれん」
 苦々しく吐き捨てる王様の言葉に、僕は思わず苦笑が漏れた。
 ま、普通はそう考えるよねー。ある意味、この世界に来て一番常識的な意見を聞いた気
がする。実際「ルビスの遣い」なんてデタラメだしね。
 王様は怒り心頭といった様子だ。
「忌々しい。いっそ今すぐ捕らえ、手足の一本も落とせば吐くのではないか? もっとも
亡き親友の忘れ形見を偽った罪、その程度で済ます気はないがな」
「おやめください陛下。仮に偽りであったとしても、魔物に親を殺されたかしたみなしご
が、生きるために取らざるを得なかった手段かもしれません」
「今の世に、親のない子が他にどれだけいると言うのだ。みなそれぞれに働いて生きてい
る。勇者を騙る理由にはならん!」
「ですが、アルセッドと同じ年頃の、それもうり二つの子に、そんなひどい目に遭わせる
なんておっしゃらないで。あなたはもっと優しいお方のはずです」
「……まったく、優しいのはサヤ殿だ。そなたは昔からそうであったな」
 そうか、王様とオルテガさんって親友だったんだ。あの親しげな雰囲気を見るに、昔は
サヤさんを巡って2人が争ったり、なんて青春の日々もあったのかもしれないなー。 

「紛い物、か」
 必要とされているのはアルスであって、僕ではない。ここに僕の居場所はない。
 最初からわかっていたことだ。
「誰かそこにおるのか!?」
 王様が鋭く叫んだ。
 僕はヘニョにこの場で静かにしているよう言いつけて、両手を挙げて出て行った。
「すみません、聞いてしまいました」
114 名前: Stage.10 [6] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/24(水) 01:22:52 ID:E3XTDxMH0

   ◇

 サヤお母さんが、まるで僕を庇うように王様との間に入った。
「なりませんよ、陛下っ」
「……わかっておる」
 咄嗟に剣の柄に手をかけていた王様が、しぶしぶという感じで一歩下がる。どうもサヤ
お母さんには弱いらしい。
 この王様も、基本的にはいい人なんだろうね。
「ご処断はお任せします」僕は言った。「手でも足でも、どうぞ」
「なにを言うの!?」
 驚いているサヤお母さんを制して、僕は王様と向かいあった。
「ただし、それは僕が旅に失敗してからにしてください。僕が勇者の後継を任されてここ
にいるのは本当です。そして旅が無事に終われば、本物のアルスが戻ってくるということ
も。でも、僕が勇者でなくなったら、それは叶わない」

 神龍の前で交わした契約の中に、「主人公」をやめない、というのがある。
 主人公、つまりこの世界における中心キャラクターとしての特別な立場を放棄、あるい
は資格を失うと、物語を進める力がなくなるんだとか。
 たとえば僕が「勇者」でなくなり、町民Aみたいな1NPCになってしまえば、普通に生
活はしていけるだろうけど、魔王を倒すことも、神龍に再び会うことも出来なくなる。
 でなければ、僕は「勇者」なんてとっくに辞めていただろう。ただ神龍に会えばいいだ
けなら、もっと合理的な方法が他にいくらでもあるしね。

 ひゅんと風を切る音がした。
 王様が剣を抜き放ち、その切っ先をぴたりと僕の喉もとに据えていた。
「貴様は何者だ」
「言えません」
「アルセッドはどこにいる」
「言えません」
「なぜ言えない?」
115 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/24(水) 01:23:53 ID:ValBstli0
支援を唱えた!
116 名前: Stage.10 [7] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/24(水) 01:24:52 ID:E3XTDxMH0

「僕にとってもアルスは大切な人間だからです。僕は絶対に彼を連れ戻します。あなたが
信じようと信じまいと関係ない」
「答えになっておらんわ!」
 気色ばんだ王様は、次の瞬間にフッと笑った。
「本試験は明後日だったか。貴様の条件からすれば、まず試験に合格しなければ、勇者で
はなくなるぞ?」
「そうですね。ですから、その時は」
 ご自由に。

 しばし無言の時が過ぎた。
 射殺さんばかりに睨み付ける王様の目を、僕はただ見返していた。
 すうっと頭の芯が冷めていく、いつものあの感覚。
 こんな時の僕は、きっとまた冷淡な人間になっているんだろう。

「――まるで正反対だな。その目、見ているだけで虫酸が走る」
 王様が剣を収め、マントを翻して背を向けた。サヤお母さんを一瞥し、通りに向かって
歩き出す。
 二人の兵士が音もなく寄ってきて、王様を守るように前後につくと、彼らは闇に紛れる
ように去っていった。

「もう……タツミさんっ。私でも怒るわよ?」
 サヤお母さんが僕の腕をつかんで、強い口調で言った。そりゃそうだよな。僕に騙され
てたんだと、明白になったんだから。
「ごめんなさい、サヤさん。確かに今は言えないんですけど、でも近いうちに……」
「そうじゃなくて!」
 遮られて、僕は口をつぐんだ。
「なんであんな無茶をするの。無茶な約束を平気でしちゃうの。冗談じゃ済まないことだ
とわかってるでしょう。もっと自分を大切になさいっ」
「サ、サヤさん?」
「どうせなら『知らない』とシラを切ればいいのに、『言えない』なんて正直に言っちゃ
うんだもの。あの子よりよっぽど賢そうなのに、あなた、アルセッドより無鉄砲だわ」
117 名前: Stage.10 [8] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/24(水) 01:26:52 ID:E3XTDxMH0

 あのぉ、えーと。……ど、どうしよう。
 僕の頭が珍しくパニックを起こしている。こんな予想外の反応をされるとは。
「そんなことより、アルス君のことは気にならないんですか?」
「だから『そんなこと』とか言わないの。もちろん気になるわよ、実の息子のことだもの。
でも元気でいるのは本当なんでしょう?」
「ええ、まあ(ちょっと今は寝込んでるみたいだけど)」
「ならいいわ。あなたの言い分だけを信じることもできないから、あの子が帰ってきたら、
一緒にみっっちり話を聞かせてもらいます。いいわね?」
「は、はいっ」
 ぶんぶん首を縦に振る僕に、サヤお母さんはまたいつものフワンとした笑顔を浮かべた。
マントを脱いで僕の肩にかけてくれる。
「なにが起きてるか、私にはよくわからないけれど。でもあなた、あの子を庇ってくれて
るんでしょう? ありがとう、ごめんなさいね」

 ああ、お母さんなんだな――と思った。
 この人は、アルスが自分の意志で消えたことをわかっている。でも、そこには必ず正当
な理由があるはずだと信じてる。そのせいで僕に迷惑がかかっているのなら、責任は母親
の自分が負うべきだという覚悟も持っている。
 そして、僕を真っ直ぐに見る彼女の目には、ちゃんと僕のことも映ってる。アルスへの
信頼と同じように、僕のことも信じようとしてくれている。

 参ったな。今ちょっとでも気を抜いたら……泣きついちゃいそうだw

 僕は慌ててヘニョを呼び出した。我慢しきれなくなったみたいに勢いよく飛び出してき
たスライムに体当たりされて、その場にひっくり返る。
「ごめんヘニョ、忘れてたわけじゃないってば」
 プニプニの身体をなぜてやると、まん丸の目がウルウルしている。スライムにまで気を
遣われるとは情けない。

「王様との約束に関しては心配ありません。僕もそこまで無謀じゃないですよ、それなり
の計算はあります。試験には絶対に合格しますから」
118 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/24(水) 01:27:35 ID:ValBstli0
「支援は装備できないけど、それでもいいかい?」
119 名前: Stage.10 [9] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/24(水) 01:28:53 ID:E3XTDxMH0

 僕が断言すると、サヤお母さんは「本当に?」と念を押してきた。しっかりうなずいて
安心してもらう。僕だって腕や足を切られたかないもんね。
「ただ世の中に100%なんてないですし、これからエリスの家に行って、打ち合せしてき
ます。今晩はそちらに泊まりますけど、いいですか?」 
 サヤお母さんはまだなにか言いたいことがあるみたいだったけど、
「わかったわ。でも無理はしないでね」
 僕のおでこにキスをして、家に戻っていった。


「ま……やるしかないよな」
 自分に喝を入れるという意味では、今回の厳しい条件も良かったかもしれない。
 正直なところ、胸の内はまだちーっとも整理がついていない。アルスが羨ましいのは本
音だし、なんで僕がこんな苦労しなきゃなんないんだとも思うし。
 でも僕には、そうするだけの理由がある。立場を完全に交換するわけにはいかないけど、
少しくらいなら、わがままを叶えてあげたい。
 伝説の勇者に実際に会ってみて、ショックなことも多かったけどさ。それでも僕にとっ
てアルスは命の恩人なんだよね。一方的な話ではあるけど。

「向こうは……5時間か。さすがにもう起きたかな」
 携帯を取り出し、リダイアルボタンを押す。最近はこれしか使ってないな。
「もしもし片岡? アルスの様子は……って、え? アルス!?」
 出た相手は、ユリコではなくて彼本人だった。
「ケガは大丈夫なの? うん、うん。ならいいけど――って、はぃい? 片岡のお父さん
と? 試合? ちょ、なにやってんの! ええ?」
 なんか向こうはえらく盛り上がっている。
「ふーん……。あーそう、良かったね」
 話を聞いているうちに、僕は再びイライラしてきて、話の途中で通話を打ち切った。
 こっちは君の立場を考えて、自分の命もヤバイところで駆け引きしてるってのに……。

 ああもう! 電源も切っちゃえ! エリスのとこで試験準備してこよう。
 え、なに話したかって? 次のリアルサイドで本人に聞いてください。ではまたねっ。
120 名前: Stage.10 atgk ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/24(水) 01:38:45 ID:lKUj41AlO
本日はここまでです。
さるさん回避のために、2分置きくらいに投下しているのですが、
ここで引っかかりました……携帯から投下です。

>>111様 はい、ちゃんとヘニョいますよ〜w
他のご支援の方々も、いつもありがとうございます。感謝!
121 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/24(水) 12:13:44 ID:RMFdoqHU0
サヤさん、萌え・・・・。
王様にもばればれだったのね・・・。
122 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/24(水) 15:59:19 ID:u6DqBPRC0
職人さん達に質問です。
初めて読んだ小説って覚えていますか?
123 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/24(水) 16:49:25 ID:ql8Y0aI90
それは避難所向けの話じゃないかな? スレに関係ないし。
表に出るのを嫌う職人もいるだろうから、
名無しのままで応答するとしたら、ただの名無しの雑談になっちゃうし・・・。
124 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/24(水) 20:37:23 ID:X1CL9aLb0
>>120
いつもながらに乙

やべぇ。ちょっと泣いた。
いい母さんだな。
125 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/25(木) 12:01:12 ID:YvU0JoYd0
そういえばアリアハンの王様、やたらとアルスの家をひいきしてて、
そのせいでご近所から嫌がらせされてたって過去にあった。
サヤさん目当てか王様ww
126 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/26(金) 03:35:05 ID:2FnjT+LA0
第八話前半投下です。

いつも湿っぽい表現が多い文章を書いてますが、今回は特に顕著です。
では、どうぞ。

LOAD DATA 第七話 >>88-101
127 名前: 入り旅人に出女【1】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/26(金) 03:36:14 ID:2FnjT+LA0
その町のメインストリートである大通りを歩く人々の顔は暗い。
通りに沿って並ぶ家々の窓は全て壊され、人同士の争いの醜い傷跡を残す。
路地裏では、複数の衛兵が一人の男をを取り囲み、私刑の真っ最中。
それでも、道行く人々の誰もが、我関せず…
荒廃したスラム街。かつては北方の都と呼ばれたラインハット城下町の今の姿。

城下町に入ってから、ヘンリーはずっと険しい顔のまま歩き続けている。
その表情から読み取れるのは、国民を苦しめる王家への怒り…
愛する国が荒廃しきっている現実の悲しみ…
不可抗力とは言え、国を守れなかった自分への悔しさ…
それでも、メインストリートの奥にそびえる城を捕える眼光は力強い。

サトチー・ヘンリー・ブラウン・俺の四人は、逸るヘンリーを抑え、
城に程近い場所にある寂れた宿で部屋をとる事にした。
勿論、サトチーや俺にとっても、急いで城へ向かいたいのは同じだが、
夜営続きで一行の疲労は頂点に達しており、この状態で厳戒態勢の城へ
向かうのは危険だというサトチーの判断だ。
日中は出歩きたがらないスミスは、馬車番として町の外れで待機している。

寂れた宿の埃だらけの窓から見える、スラム街と化した城下町とは不釣合いな城。
ヘンリーの生家でもある城の城門は固く閉ざされ、一切の来訪者を拒むように
物々しい雰囲気を漂わせている。

「確かに、城の内情が把握しきれていない現状では、正面からの突入は危険過ぎる。
 城の外堀から城内へ通じる、王族専用の地下通路を使って浸入しようと思う。」
夜の話し合いで、ヘンリーが出した提案を採り、俺達は明朝ラインハット城内へ
地下から浸入する事が決定した。

「それじゃあ、今夜は良く休んで明日に備えよう。明日の隊列と作戦は…」

窓から見える夜のラインハット城は、昼間と同じく不気味な沈黙を保ったまま、
ちっぽけな俺達を見下ろして威圧しているかのように建ちそびえていた。
128 名前: 入り旅人に出女【2】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/26(金) 03:37:19 ID:2FnjT+LA0
          ◇           ◇
…眠れない…

今夜に限った事じゃないけどさ。
何度も窓の外の月に目をやって、何度も無為な時間が過ぎた事を実感する。
森の中でのスミスとの会話が離れない…

―世界の流れを狂わせるバグ―

気持ちを落ち着かせようと、枕元の水差しを手に取る…が、水差しは空っぽ。
「…井戸はすぐ近くだったよな。」

宿帳をチェックしている女将さんに声を掛け、宿のすぐ傍にある井戸へ向かう。

井戸から掬った水は冷たく、渇いた俺の喉に染み渡り、血が上った頭を休息に冷やす。
色々と不便な世界だけど、こっちの世界の水はミネラルウォーターよりも純粋で旨い。

…今の俺がどうこう出来る問題じゃないのはわかってるけどさ…あれ?

「あれ?イサミ…そっか、お前も眠れないのか。」
カップを片手に宿から出てきたのはヘンリー。彼もまた眠れずにいたのだろう。

「水か?ほら。」
「ん。ありがとな。」
水差しから注がれた冷たい水を飲み干し、ふぅ…と、一息。
そして…暫しの無言。

「王家は…デールはどうなっちまってるんだろうな…」
月に照らされた城の方の目を向け、ヘンリーが口を開く。

デール…確かヘンリーの異母弟で、今のラインハットの国王だったな。
ラインハットが狂っている現状では、国王のデールに何かあったと見るのが当然だ。
129 名前: 入り旅人に出女【3】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/26(金) 03:39:19 ID:2FnjT+LA0
「もし、この国がこうなっちまった原因がデールの弱さによるものだったら、
 俺は王家に戻って、デールを支えて国を建て直す。だが、もし…」
城の方に向けていたグリーンの瞳を地に落とし、深く呼吸をする。

「もし、元凶がデール本人であるのなら…俺がこの手でデールを斬る。」

王家の人間としてではなく、兄としての決意。
そうでないで欲しい…いや、そうでないに決まってる。
悲し過ぎる決意と、小さな希望。

「…全部、明日になればハッキリするんだよな…」
そう言うのが精一杯。何の答えにもなっていない曖昧な返事。
俺達が願う希望は夜の星のように小さい。

気が利かない薄雲は、夜空に広がって小さな星すらも覆い隠す。
薄雲に消え入りそうになりながら、儚く浮かぶ月はそれでもなお公平に、
荒れた町と、狂った城でもがく俺達を照らしている。

そろそろ戻ろうか…そう言い掛けた俺達の耳に入る轟音。
ドン! ドン!と立て続けに数発、夜を引き裂くような轟音。

そして、元通りの夜の静寂。

「な…なんだ?城の中から…」
「イオよりも派手な音だな…こりゃ、本当に城の中がおかしいぞ。」
「とにかく今日は宿に戻ろう。全部、明日になればわかる。」

怪訝な顔をするヘンリーを促し、宿に戻る。
宿に戻った俺達の表情を見て、女将さんが溜息をつきながら話す。

「ふぅ…今夜も派手にやってるわね。驚いたでしょう?」
130 名前: 入り旅人に出女【4】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/26(金) 03:41:27 ID:2FnjT+LA0
薄暗く、堀に通じるからかジメジメとした地下通路。

「…で?本当にヘンリーの王家はどうなってるわけ?」
いきなり喧嘩腰だが、今日の俺は機嫌が相当悪い。
と言うのも、昨夜は結局明け方まで眠れず、やっとの事で眠りについたところで、
ブラウンのハンマーによる爽やかな痛恨の一撃で起こされた。
朝一で側頭部にハンマーの一撃を喰らって、当然悶絶。
寝た筈なのに、HP15位は減った気がする。

本来の寝起きの悪さ+ブラウンによる爽やかモーニング+今の状況
これだけの要素が揃って陽気でいられるほど俺は聖人じゃない。

「いやあ、確かに外敵対策としては素晴らしいんだろうけどね。」
「サトチーも笑い事じゃねえってば。城の地下通路にモンスターが放し飼いって、
 どんなセキュリティーシステム採用してるんだよ?」

王族専用非常脱出経路に、ガメゴンやクックルーや腐った死体を放し飼いにする王家。
これじゃあ、いざ脱出って時にモンスターの餌になっちまうだろ。

まあ、機嫌の悪さが一つの原動力になってか、ここのモンスター達に苦戦はしない。
守りに入ったガメゴンですら、固い甲羅の上からの怒涛の連撃で叩きまくる。

コノヤロウナニビビッテヤガルゴルァテメエノスズシゲナメツキガキニクワネエンダヨグゲァーカミツキヤガッタコンチクショウ…

「…イサミ、相当荒れてるね…」
「まさか、あそこまで寝起きが悪いとはなあ…」
「ブラウンに『起こしておいで』って、曖昧な命令したからまずかったのかなあ…」
「あ…凄え、ガメゴンを剣で叩き潰しやがった。」
「…あれ?おかしいなあ。」
131 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/26(金) 03:45:34 ID:0Zy6ehcBO
セルフ連投回避
132 名前: 入り旅人に出女【5】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/26(金) 03:57:05 ID:2FnjT+LA0
「ふぅ。相変わらず固ってえの。」
半ば八つ当たりでガメゴンを叩き潰し、一息。さすがに疲れるな。

「はーん…なるほどね、イサミはハンマーで起こせば戦力が上昇するんだな。」
ヘンリーがニヤニヤしながら恐ろしい事を言う。
「勘弁してくれよ。毎朝痛恨じゃ溜まったもんじゃ…ん?どうした?サトチー。」

普段は真っ先にねぎらいの言葉と回復魔法を掛けてくれる筈のサトチーの反応がない。
難しい顔をして、なにやら考え込んでいるような…

「サトチー?」
「ん?…ああ…お疲れ様、イサミ。怪我はないかい?」

やっぱり様子がおかしい。

「なあ、サトチー。何かあった?」
「え?…いや…そうそう、さっきガメゴンに噛み付かれたところ治療しなきゃね。」

サトチーが俺に回復魔法をかける。
その温かな光はいつもと同じだけど…

「あの…サトチー?…もう治ってるけど、いつまで続けるんだ?」
「え?…ああ、済まない。ついボーっとしちゃって。」
「おいおい、大丈夫か?サトチーも寝不足なんじゃねえの?」

ケケケと笑うヘンリーに、心配ないと返すサトチーの表情はいつもと同じ。
続いて、ブラウンの治療に入るサトチー。優しい言葉をかけながら回復魔法を唱える。

…いつもと同じ…かな?気にし過ぎか。

「はい、おしまい。ブラウンとイサミは最前線で消耗も一番激しいだろうからね。
 どこか調子悪くなったらすぐ言うんだよ。」
133 名前: 入り旅人に出女【6】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/26(金) 03:57:47 ID:2FnjT+LA0
「そう言えば、ここは城の地下牢も兼ねてるんだったな。」
治療中、周囲を警戒していたヘンリーがボソッと呟く。

冷静に周囲を見渡してみると、なるほど鉄格子がいくつも見える。
囚人は皆、生気のない恨めしそうな目で俺達を眺めている。
何となく、俺達が奴隷として放り込まれた神殿の宿舎を連想させて嫌な気分になるな。

「あれ?…まさか、あの人…」

突然、数多く並ぶ鉄格子の一つ目掛けてヘンリーが走り出す。
誰だ?知り合いか?

「誰か?わらわを助けに来てくれた者かえ?」
その初老の女性は他の囚人と違い、薄汚れてはいるが豪華なドレスを身に纏い、
言葉使いからも高貴な身分の出身である事が窺える。

「なんで…なんで太后のあんたが牢に入ってるんだ?デールはどうした?」
ヘンリーが牢の中の女性に詰め寄る。

ラインハット大后…王妃のいないこの国では、王に次ぐ身分の筈だが、
その王家の有力者が地下牢に幽閉されている。

「そなたは…まさか…ヘンリーかえ?」
「ああ、ヘンリー=ブローマ=ベルデ=ド=ラインハット、あんたの義理の息子だ。」
「おお、10年間よくぞ生きて…許してたもれ、わらわが間違っておった。」

大后の口から告げられた告白は衝撃的だった。
10年前、奴隷商にヘンリーを攫わせたのはこの大后。
王家の長男であるヘンリーを消し、自分の実の子であるデールを王位に就かせようと
裏で画策をした…とんでもねえ女だな。放置しといて良くね?…あ、ダメ?
134 名前: 入り旅人に出女【7】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/26(金) 04:07:37 ID:2FnjT+LA0
「待てよ。あんたがここにいるって事は、誰がこの国を動かしてるんだ?
 誰がこの国を腐らせてやがるんだ?」
てっきり、大后が国を動かしていると思っていたのであろうヘンリーの語気が強まる。

「他でもない…我が子にして、ラインハット国王デールじゃ。」

場の空気が凍る…

呼吸も出来ないほどの冷たい空気…

湿っぽい地下牢の空気が、乾いた物へと変わる…

「デールは、ラインハット王国を世界の頂点に君臨する国にしようと国民に重税を課し、
 若い男達を兵役に就かせ、税金と兵役労働の者を使って他国侵略の準備を進めておる。
 さすがにやり過ぎじゃと進言したわらわをここに幽閉したのも…」

大后の言葉を聞いたヘンリーの顔色が見る見る青白くなり、唇が震え出す。
当たって欲しくなかった最悪の予測…


「ヘンリー…まだ、僕達は全てを知ったわけじゃない。城へ行こう。」
サトチーがヘンリーの肩を叩く。

そうだ、まだ実際にデールに会っていない。
直にデールの口から真実を聞くまでは…

「わかってる…大后さん、暫く待ってな。近い内に出してやるからさ。」
「待て!待つのじゃヘンリー!まさか、そなたデールを…」

無言で踵を返すヘンリーの目は、今まで見た事のない荒々しく悲しい炎を宿し、
その手は、腰に下げた鋼の剣に掛けられていた。
135 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/26(金) 04:12:10 ID:2FnjT+LA0
第八話前半投下完了です。
ちょっとずつバグが出てます。
136 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/26(金) 04:16:40 ID:nvQ6wGBx0
>>135
乙です!
大后の勘違いかと思ったら、本当にデールの仕業だったのか…。
ヘンリー…(つД`)
137 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/26(金) 08:41:52 ID:bn3lGS660
乙です。
バグの影響で色々変化あるのかな?よくわかんないから先が楽しみだ。
あと、なんかそのうち天空の剣折れそうな予感。
138 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/26(金) 10:39:08 ID:nGp1eD+o0
乙です。
少しずつ動き出してきた感がたまらんです。
デールと偽大后がどうなるのか楽しみ。
139 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/26(金) 12:43:46 ID:KAb42TgF0
カメごん破壊攻撃といい、バグで、なんか異常な攻撃力になってるですね。
サトチーさんがとまどったのは、なにかイサミの様子がおかしくなってるのだろうか。

偽大后でわなくてデールさんが悪の元凶だったとわ・・・。
140 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/27(土) 17:13:13 ID:L0fk9FKj0
今の避難所が携帯対応じゃないっぽいので、こっそり作ってみました。
【DQ宿屋スレ避難所 in したらば】
http://jbbs.livedoor.jp/game/40919/

あくまで今の本家避難所の補佐的にどうかな?というテスト段階です。
ご意見をお願いします。
141 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/27(土) 20:22:05 ID:pp+BTL+00
>>140
補佐ってよりそちらに完全移行したほうがいいと思うので、
避難所のほうは11月中に削除しようと思います
(管理も全然できてないしOTL)
142 名前: タカハシ ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/10/27(土) 22:24:23 ID:/eqXYdx10
みなさまお疲れ様です。
まとめは恐ろしく遅れていますがお待ちください。

>>140
お疲れ様です。
まとめサイトへの反映はしばらくお待ちください。

>>141
これまでの運営ありがとうございました!
避難所のおかげでたくさん助けられたと思ってます。
これからもよろしくです。


では合作の投下を始めたいと思います。
143 名前: タカハシ ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/10/27(土) 22:25:46 ID:/eqXYdx10
           FF・ドラクエ板

 『もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら』

         10スレ記念合同作品


    〜作り合わされし世界〜

    → 冒険をする
        1:しなの  Lv8
     → 2:ヨウイチ Lv8
        3:タロウ  Lv6
144 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/27(土) 22:27:10 ID:7W9evhlN0
→ 支援をする
145 名前: タカハシ ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/10/27(土) 22:28:19 ID:/eqXYdx10
二十六、 ドラオの変化

「ああ! スラぼう大丈夫かー!」

スライムはむくむく元の大きさに戻りましたが、その目はひどくおびえています。

「おおお、おい! 降参してるのに攻撃してくるなんてヒドイぞ!」

ナイトが恨めしそうにヨウイチを睨み、ドラオはもうろうとしていました。

「ドラオ、なんでこんなことを!」
「きぃ」
「おい!」

ドラオをつかみゆさゆさしながら問います。

「もう戦いは終わったんだ、わかったな!」
「き…」
「!!」

ヨウイチは驚きます。
つかむ手を、ドラオは振りほどき噛み付いたのです。
手には歯型が残っていました。

「お… おい…
 なんで、どうしたんだよ…」

声が届いているようには思えません
146 名前: タカハシ ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/10/27(土) 22:31:13 ID:/eqXYdx10
「もしかして… こうなったのはお前が変なことを…!」

ヨウイチはナイトにつめよりました。

「中途半端に手なずける技が効いてしまったからかもしれない。
 だがそれはオレのせいじゃないぞ! お前が…」
「どうでもいい! 早くもとに戻すんだ!」
「いや、出来ない。 戻し方は知らない」
「知らないって適当な…!」

ドラオがふらふら飛びながら壁にぶつかって、そのまま意識をなくしてしまいました。

「大丈夫か…?
 気を失っただけか… とにかく!
券は渡したんだから、さっさとすごろくいって来い!」
「む。 言われなくたってスラぼうが元気になったら行く。
 そっちこそここから早く出て行ってくれ!」

ヨウイチは黙ってドラオを抱え洞窟を後にします。
入るときよりも早く出口を抜け、マウントスノーへと急ぎ足で戻るのでした。
147 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/27(土) 22:32:27 ID:7W9evhlN0
ドラオ……( ´・ω・`)
148 名前: タカハシ ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/10/27(土) 22:36:03 ID:/eqXYdx10
二十七、 もうひとつの世界

「…キィキ…」

呼び声がします。

「キィ…」

ぼんやりする意識のなか目を開けると、ドラオがふわふわとんでヨウイチに話しかけていました。

「……!? ドラオ…」
「キィー!」

ドラオは普段のドラオでした。
いつものように顔へしがみつかれ、いつもと同じように羽で叩かれます。

「ここ… ライフ、コッドじゃ…ない?
 ……ああ マウントスノー、なんだな。
 俺… そうか、お前がおかしくなって町へ戻って様子を見てたら眠って……
おまえ、元に戻ったんだな、よかった」
「キィ?」
「大丈夫だ。 俺はどれくらい寝てた?」
「キィキィ」
「一晩…!? たったの一晩……」
「キー?」
「…俺、眠っている間にもう一つの世界を生きてきた。
 こことは別の、似たような世界で。
タカハシとメイ… トルネコやテリー…
彼らと一緒に、長い時間を」
149 名前: タカハシ ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/10/27(土) 22:40:34 ID:/eqXYdx10
ヨウイチは寝ている間、夢とは違う現実を過ごしたのです。
あまりに長い時間だったので、目覚めてもここが元の異世界だとは実感することが出来ずにいました。

「おはよう、ヨウイチくん。
 スライムナイトにすごろく券を渡してくれたんだね。
 町のものに様子を見に行かせたら洞窟はもぬけの殻だった。
感謝する、さあこれを」

声を聞いて部屋へと入ってきたブルジオが、石版を手渡してくれました。

「あ…」

石版を手にしたヨウイチはようやくこの現実へと戻ることが出来ます。

「…ありがとうございます。 いろいろ助かりました」
「こちらこそ助けてもらったよ。
ヤツがいない間に対策を考えねばならない。
そこでどうだろう、君の助けがあれば良いアイデアも出てくると思うのだが」
「…お手伝いしたいのはやまやまですが、すみません。 先を急がないといけないんです」
「そうか。
 ふむ、私が貸してあげた道具は全てもらっていってほしい。
 それから、君の道具袋に食料や薬草を補充しておいた。
君達を苦しめた吹雪は来年までこないからすぐふもとへ降りられるだろう。
私はすぐに対策会議を開かねばならないので失礼するよ。
出発するまでここを好きにしてもらってかまわない。
では気をつけてな、感謝している」

そういい残し、ブルジオは部屋から出て行きました
150 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/27(土) 22:43:33 ID:7W9evhlN0
メイ……( ´・ω・`)
151 名前: タカハシ ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/10/27(土) 22:45:34 ID:/eqXYdx10
「…おまえ大丈夫だよな。
 あれはスライムナイトのせいでちょっとおかしくなったんだよな…」
「キキー!」
「覚えてないか。 まぁ、平気だろ」
「キィキー?」
「寝ている間の話を聞きたいって?
 話すには、時間がなさ過ぎるよ。
長かった。 とても、永かったんだよ」

ドラオは目をきょとんとさせています。
ヨウイチは一言だけ、小さくつぶやきました。

「でもあの生きた時間は、足りないのかもしれない……」

気持ちの奥にゆらゆらする、不思議と寂しい思いがなんなのかヨウイチにはわかりません。
ですがどうしても、あの二人を思い出すとそういう気持ちになってしまうのです。

 なんの意味があったのか。
自分には到底わからないことだ。
けれど、誰に意味があるのかは知っている。
 きっとこれ以上考えてあの時間を乱してはいけない。
確かに現実だったけど、あれは自分の現実ではなかったに違いない。
一人の心においておくべきだ。

そんなふうに考え、ヨウイチはこれ以上寝ている間の事についてあれこれと考えるのを止めることにしました。
そうして、渡された石版を改めてしっかり掴みます。

「それより石版、やっと手に入ったな!」
「キキィー!」

石版をくるくる回していろんな方向からゆっくり観察します。
何か文字か絵のようなものが彫ってあるくらいで、後は欠けた石の板でした。
152 名前: タカハシ ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/10/27(土) 22:50:11 ID:/eqXYdx10
「こんなので本当にもとの世界へ帰れるのかな。
 どうも信じられないよ…
けど、今は他に手がかりはないんだよなぁ」
「キィ〜、キーキィ」
「うん。 ちょっと危ない目にもあったりして手に入れたもんな。
 ゲレゲレを信じて次は神殿を探そう!」
「キー!」

二人はすぐに身支度を整えブルジオの家を出ます。
町は最初に訪れた時よりも明るく見えて名残惜しくなってしまいましたが、門をくぐり山を降り始めます。
目指すべき神殿が何処にあるのか、噂ですら聞いたことはありません。
ですが、一つの大きな目標を達成した二人にはなんの躊躇も無く、ひたすら道を進むのでした。
153 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/10/27(土) 22:55:07 ID:/eqXYdx10
今日はここまで。

ごめんなさい、早速まちがいがありました。
名前欄を「作り合わされし世界」にするのを忘れています。
そして、出だしの冒険の書一覧でのしなの編のレベルが間違っていました。
正しくは「1:しなの  Lv10」になります。
申し訳ないです。

最後に確認ですが、前スレの最終レスは706でよいでしょうか?
もし違っていたら、どなたか過去ログをアップローダーにあげてもらえませんか。
DATでもHTMLでも構いません。
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/
よろしくおねがいします。

ではまた。
154 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/10/27(土) 22:56:16 ID:/eqXYdx10
>>150
支援ありがとうございました。
155 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/27(土) 22:56:23 ID:3Yeof0n+0
おさるさん防止支援
156 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/27(土) 23:00:47 ID:7W9evhlN0
乙〜
前スレは706であってますよ〜
157 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/27(土) 23:01:13 ID:3Yeof0n+0
ドラオさん、とりあえずなおった?みたいなのでよかったです。
さて、石版を手にいれていよいよ大詰めですね。
wktkしながら次の投下を待ちますね。
158 名前: タカハシ ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/10/27(土) 23:04:28 ID:/eqXYdx10
>>156
あってましたか〜
確認ありがとうございます。

>>157
支援ありがとうございます。
なかなか進展させてあげることができませんが、157さんのwktkでwktkして頑張ります。
159 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/28(日) 09:50:48 ID:/yXpBg2Z0
新避難所管理者です。
前避難所管理者様から正式に委任されました。
ありがとうございます。今まで本当にお疲れ様でした。
今後ともよろしくお願いいたします。

【DQ宿屋スレ避難所 in したらば】
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/
160 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/29(月) 04:30:34 ID:3mypkaVw0
こんな物を見つけてしまいました。
ttp://lou5.jp/?url=http://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1192116918/
161 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/29(月) 08:03:35 ID:0WtuWhw1O
>>160
なんだこれwwwwww面白過ぐるwwww
162 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/29(月) 13:57:11 ID:qhKiAf880
しかも、レス番までずれるところが、芸がこまかい・・・。
なんぢゃこりゃ。
163 名前: Stage? [雑談] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/10/30(火) 00:50:33 ID:qc6FGwzF0
* 本日の雑談はアルス君とユリコさんにお願いします。

アルス「ほいさ。んじゃあ、ユリコってタツミのどこに惚れてんの?」
ユリコ「どこって……。そうねえ、そう言えば前にこんなことがあったわ」

ユリコ「たまには回転寿司もいいわね」
タツミ「そうだねー」
ユリコ「ところで、なんで魚って赤身と白身があるの?」
タツミ「それ先週テレビでやってたな。確か……、
  『我々 ”日常生活謎解き隊” は魚の赤身と白身の違いを探るべく、魚の生態に詳しい池上氏の
  元を訪れた。「謎解き隊の榎本です! こちらは竜探大学の池上博士です」「よろしくお願
  いします」「さっそくですが池上先生、魚には赤身と白身がありますが、どうしてですか?」
  「それは魚の筋肉の種類に関係があるんですよ。魚の筋肉には、瞬発力は高いが持久力のな
  い速筋(普通筋)と、逆に持久力が高い遅筋(血合筋)があります。後者の遅筋にはミオグ
  ロビンという赤い色素蛋白質が多く含まれているため赤く見えます。マグロのように長距離
  を泳ぐ魚は遅筋を多く持つので赤身になり、ヒラメなど海底であまり動かない魚は筋肉組織
  のほとんどが速筋なので白身になるのです」「なるほど! ところでサケとかマスはピンク
  じゃないですか。これは、え〜速筋と遅筋の半々だからなんですか?」「違います。サケや
  マスは実は白身の魚なんです」「白身?」「はい。これはアスタキサンチンというカロチノ
  イド系色素が関係します」「ア、アスタ……」「アスタキサンチンです。カニやエビの体表
  を赤くしている色素で、餌から取り込まれます。甲殻類のプランクトンを食べることで、ア
  スタキサンチンが蓄積され、白身に赤い色素が混じることでピンクになるわけです」「よく
  わかりました! 池上先生ありがとうございました」「いえ」こうして我々 ”日常生活謎解
  き隊” は日常の何気ない疑問をまた1つ解決したのであった! ジャジャジャ-ン!!』
   ……とか言ってたよ。わかった?」

アルス「み、店の中でまるまる再生してみせたってか」
ユリコ「うん、一人芝居で。登場人物の表情とか仕草とかすごい臨場感あって、
   ビデオ観てるみたいだった。こんなおもしろいヤツ他にいないでしょ?」
アルス「俺はそばにいたくないけどな……」
164 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/30(火) 11:38:06 ID:o/qaNjuI0
おもいだすの特技、すごいですね。
そういえば、赤くなるえさをあげなければ鮭の身はしろっぽくなるってきいたことありました。
そういうことだったんですね。
竜探大学ってドラゴンクエスト大学?(wwwww
165 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/31(水) 01:39:22 ID:QkZkkLvU0
第八話後半投下です。

LOAD DATA 第八話前半 >>127-134
166 名前: ◆xl1KPT9CWI [sage] 投稿日: 2007/10/31(水) 01:40:15 ID:QkZkkLvU0
地下通路を抜けた先。ラインハット城の中庭は驚くほど静かだ。
無駄な戦闘は出来るだけ避け、見張りの衛兵を数名ぶっ飛ばして城内へ侵入。
そのような作戦を立てていたのだが、見張りどころか人の話し声すら聞こえない。

「安心しきってるのかもな。王家の有力者以外は地下通路の事を知らない筈だし。」

予想外に容易に進入できた事に安堵してはいるが、周囲の警戒は怠らない。
地下牢にモンスターを放つような国家だ、城内だろうが油断は出来ない。

「ヘンリー。アレ…何だい?」
周囲の様子を注意深く探っていたサトチーが指差す方向には、妙な形状の金属塊。
丸みを帯びた鎧のような、人型のような…何かが数体。
無残に焼け焦げている物、痛々しい貫通痕を残す物、バッサリと切断された物。
残された全てが酷く損傷しており、その姿からは本来の姿を想像できないが、
胴体(?)の部分から伸びた、弱々しいまでに細い手足は昆虫のそれを連想させ、
千切れた手足の内部からは、多数の無機質な繊維状のものが覗く。

「何だコリャ?人形…にしちゃ変な形だな。」
「鎧にも見えるけど、こんな鎧に合う体型の人間なんていないよねえ。」

その沈黙すらも不気味ではあるが、動かないソレに対して警戒心が緩んだのか、
無防備にペタペタと触りながら正体を模索する。
「…コレが何かはわからないけど、コレをここまで壊すのは普通じゃないね。」

硬質の金属で出来たコレを、破壊し尽くした存在…明らかに人間技じゃない。

「なあイサミ、昨日の夜に聞いた音…覚えてるだろ?」

ヘンリーの言葉を聞いた途端、背中を冷たい汗が伝ったのがわかった。
正体不明のオブジェ…正体不明の破壊音…正体不明の破壊者…
自分が恐怖を覚えている対象がわからない…
きっと、何もわからない事が恐怖なのだろう。
167 名前: 入り旅人に出女【9】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/31(水) 01:43:58 ID:QkZkkLvU0
暫くの間、触ってみたり、ひっくり返してみたり、ハンマーで殴ったりしていたが、
中庭のアレについては、今の段階では何もわからない。
わからない物の正体を探るよりも、今の俺達が優先すべきはデールに会う事。
中庭に繋がる勝手口から城内へ侵入し、デールがいるであろう謁見の間を目指す。

「ストップ。」
先頭を走るヘンリーが大きな扉の前で立ち止まり、後に続く俺達の足を止める。

「大広間の中から大勢の人の気配がする。」
渡り廊下の突き当たり。謁見の間から階段を下りた真下に位置する大広間。
豪華な装飾が施された巨大な扉は閉じられ、中の様子を窺い知る事は出来ないが、
ヘンリーの言う通り、扉の向こう側からざわめきが聞き取れる。

ほんの少しの扉の隙間から中を覗き込むと、多数の兵士の姿が見える。
「なるほどねえ。ここに城の兵士が集まってたから、警備が手薄だったのか。」
「城下守衛兵に王家近衛兵…番兵まで集まってるな。一体、何が…」
「静かに。何か始まるみたいだ。」

ざわついていた扉の向こうが一瞬で静まり返り、空気が緊迫した物に変わる。
コツ…コツ…と、張り詰めた静寂が支配する広間の中に己の足音を大きく響かせ、
大広間と上階とを繋ぐ階段をゆっくりと下りてきた男。
女性の様に艶やかな金髪とはアンバランスな、鋭い眼光が印象的だ。

「…あれは…デール…」

…あの人がヘンリーの弟、現ラインハット王デールか…イメージとは随分違うな。

ヘンリーの口から聞いていたデールは、優しい性格だが気弱で鈍臭い面もある…
いわゆる、イイ人なんだけど頼りない彼…って感じのイメージだったのだが、
今、姿を現したデールから感じられるのは、猛禽類のような油断のない目と、
王…と言うよりも、暴君のような威風堂々とした立ち振る舞い。
事前情報が間違っているのではと錯覚させる、冷たい威圧感を感じさせる。
168 名前: 入り旅人に出女【10】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/31(水) 01:44:57 ID:QkZkkLvU0
恰幅の良い貴族風の男―大臣だろうか?―が、最敬礼を持って王を演説台へと導く。

「我がラインハット軍は、近日中に商業都市オラクルベリーを侵攻・制圧する。」

女性のような艶やかな金髪とはアンバランスな、鋭い…冷たい目で広間を見渡す。
王の言葉に、若干どよめく兵達…それを一通り眺め、さも満足そうに手を上げる。

ぴたり…と、元の静寂を取り戻す広間。王の演説は続く。

「自治都市であるオラクルベリーを落とし、それを拠点としてポートセルミに侵攻。
 西方の物資さえ手にすれば、テルパドールやグランバニアの軍も恐るに足らず。
 北方、西方、南方、東方、全ての大陸を制覇し、我がラインハット王国は未来永劫、
 世界の頂点に君臨する国になる!諸君等はその輝かしい歴史の目撃者となるのだ!」

熱を帯びたデールの言葉に、広間の中に歓声が挙がる。
城の中、全てが狂ってる…侵攻…侵略…制圧…誰もそれをおかしいとは思わないのか?

「デールの奴、マジで言ってるのか…」
世界の制圧…それを口にしたのは、紛れもないデール本人。
眉間にしわを寄せたまま、ヘンリーの手が鋼の剣に掛けられる。

「待つんだ。今、騒ぎを起こすのはまずい。」
今にも扉を蹴り飛ばして広間に乱入しそうなヘンリーを、サトチーが押し留める。

―元凶がデール本人であるのなら…俺がこの手でデールを斬る―
俺の頭の中でリフレインするヘンリーの言葉。

「ところで…」
声量は大きくないが、歓声を突き破って聞こえる王の声。
先ほどの熱が冷めたように、底冷えのする冷たい声。

「扉の外に来客のようだ。丁重にもてなせ。」
169 名前: 入り旅人に出女【11】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/31(水) 01:46:42 ID:QkZkkLvU0
!!バレてる!?

頭が認知した時には既に広間の扉は開け放たれ、槍を構えた兵達に取り囲まれていた。

「参ったね…まさか、最初からバレてるなんて思わなかったよ。」
大人しく手を上げ、無抵抗の意思を示すサトチー。
さすがに、多勢に無勢。俺も仕方なくそれに従う。(ちなみにブラウンも)

「先日、オラクルベリーに浸入した密偵から―南の修道院に怪しい三人組が漂着した―
 そう連絡が入りましてね。調べてみたら、ヘンリー兄さんの可能性が大。
 本当にヘンリー兄さんだったら、城門が閉ざされていても王家の地下通路を通って、
 城の中に侵入してくるはず…まあ、僕の予想通りです。」

クスクスと笑いながら愉快そうに話すデール。
対峙するヘンリーの目は、明らかな敵意を放ち続けている。

「デール…さっきの話は本気なのか?」

剣の柄に手を掛けたまま問い掛けるヘンリー。それをデールは余裕の表情で眺める。

「よく聞いていなかったみたいですね。僕は本気ですよ。」

あっさりと肯定するデール。その言葉を合図に、ヘンリーが鋼の剣を鞘から抜き放ち
…かけた所で、その先の動作は再度サトチーによって阻止される。

「賢明ですね。兄さんが剣を抜いていたら、こちらにも多少の犠牲は出たでしょうが、
 僕の所に刃が届く前に、そちらは全員串刺しになっていましたよ。」

デールは相変わらず冷たい笑みを浮かべたまま、懐から取り出した葉巻を加え、
横に控える大臣に手を差し出す。
大臣から手渡されたのは、豪華な細工が施された小さな金色の…
170 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/31(水) 01:47:28 ID:s+up9XRu0
通りがかり支援
171 名前: 入り旅人に出女【12】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/31(水) 01:51:29 ID:QkZkkLvU0
「どうです?貴方達もラインハット軍に協力する気はありませんか?
 今なら、それなりのポストは用意できますが…」

金色の物体から迸る小さな炎を葉巻に点け、細く煙を吐き出す若い王。


…え?


アレって…もしかして…

「…っざけるなあっ!!」
怒りが理性のタガを弾き飛ばし、ヘンリーが剣を抜き放つ。

「抜きましたね…残念です。」
笑みの消えた表情…大臣が手にした灰皿に葉巻を押し付け、王が手を上げる。
手が振り下ろされた時、広間内の全ての兵が俺達に槍を突き出すのだろう。
そして、その瞬間は思ったよりもあっさりと…

「…やれ。」

無常な合図に、広間を支配する怒号…雄叫び…
一瞬視界から消え、その一瞬後には同時に繰り出される無数の先端…
剣を構える暇もない…死を覚悟する暇さえも…
誰かに肩を掴まれる…視界が真っ白になる…

思わず、目を瞑る…

…が、その瞬間はなかなかやって来ない。


そぉーっと目を開けると、ラインハット城下町の光景が目に入ってきた。
172 名前: 入り旅人に出女【13】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/31(水) 01:52:14 ID:QkZkkLvU0
「危なかったね。キメラの翼を使うタイミングが遅れていたら今頃は…」
あの瞬間。サトチーが宙に投げたキメラの翼は、俺達を城下町の外れまで転送した。

そうだ…ヘンリーは?
弟の心変わりを目の当たりにしたんだ。正気でいられる筈が…

「何をボーっとしてるんだ?早くここを離れないと追っ手が来るぞ。」
俺の心配をよそに、ヘンリーは御者台に上がり、馬を繰る手綱を握っていた。

…あれ?意外と冷静。

「デールはオラクルベリーに侵攻すると言っていた。そして修道院も…
 今は修道院のみんなを安全な所へ非難させるのが先決だろ?」
言いながらヘンリーが手綱をグイッと引き、パトリシアが軽くいななく。

「ほら。イサミも早く乗り込まないと置いて行かれるよ。」
サトチーに促され、慌てて馬車に乗り込むと同時に全速力で走り出す馬車。

逃げるわけじゃない。守るのが俺達の役目。俺達はその為に戦う。

馬車に揺られながら、ふと、御者台に乗るヘンリーに目をやる。
荷台からは、手綱を操るヘンリーの顔は見えない。けど、その表情は想像できる。

ヘンリーは、俺達に背を向けてさめざめと泣くような弱い男じゃない。

「…な?ブラウン?」
よくわからないという表情を浮かべるブラウンの頭を軽く撫でてやる。


夕暮れの道を馬車が走る。

守る物の元へと急ぐ男達を乗せる馬車は、逢魔ヶ時の暗がりの中で一層輝いて見えた。
173 名前: 入り旅人に出女【14】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/31(水) 01:52:49 ID:QkZkkLvU0
          ◇           ◇

日没の夕闇に溶け込むラインハット城、謁見の間。
玉座に座らせた女性の膝枕に寝そべる若い王と、その前に跪く大臣。

「申し訳ありません。追っ手を差し向けたのですが、取り逃がしました。」

深々と頭を下げる大臣を見下ろして、クスリと笑って見せるのは若い王。

「深追いせずともよい。どうせ、行き先はオラクルベリー南の修道院だろう。
 逃げ道を塞ぐ為に、わざわざ情報を与えてやったのだから…ねえ、ママ?」

ママと呼ばれたのは、王の頭をその膝に預ける女性。

その身を包むのは、華やかな紫のドレス。宝飾品の類は一切身に着けていない。
薄紫のベールに覆われた顔は、その目からしか表情を探る事は出来ないが、
鮮やかに彩色された長い爪が、王の柔らかな金髪をサラサラと撫でる。

恍惚の表情を浮かべながら、王が告げる。

「アレを放て…標的は、国賊ヘンリーとその一味。」



イサミ  LV 14
職業:異邦人
HP:56/71
MP:11/11
装備:E天空の剣 E鎖帷子
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌
174 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/10/31(水) 01:55:51 ID:QkZkkLvU0
支援ありがとうございます。
第八話はここまでです。

166でタイトルをコピペする場所をミスりました…
正しくは―入り旅人に出女【8】―です。
175 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/31(水) 01:57:30 ID:s+up9XRu0
>>174

寝る前にいいもの読ませてもらったんだぜ
いよいよオリジナル展開だな
続き超期待
176 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/31(水) 08:19:37 ID:0rVsNHlA0
先が楽しみすぎる展開に乙。
ジッポとか、どっから出たんだろうなあ。
微妙に本来の展開から外れていくのがワクワクして堪らん。
177 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/31(水) 13:04:47 ID:TAW1c/M20
デール、こ、怖ぇぇーーー。
それと偽大后はやっぱりいるのね。

サトチー、GJ。
ライターも、謎の鎧の固まりも気になる。さまようよろいとかぢゃないのね。
178 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/31(水) 13:48:34 ID:2sCfMMab0
投下乙です

一瞬ドロイド兵とかの類かと思ったけどよく考えたらDQ世界にはもっとふさわしいのがいるな。
179 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/31(水) 14:07:46 ID:3WgSOctz0
乙!
wktkが止まらねぇ
180 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/31(水) 14:28:33 ID:Jt/WFBF40
先が読めないオリジナル展開って燃えるなw
181 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ 投稿日: 2007/10/31(水) 14:29:28 ID:dngXiD9/O
ちゃんと馬糞が売れるか実験する
182 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/10/31(水) 14:59:43 ID:i7/qFPQH0
>>181
馬糞販売業者乙
183 名前: 俺の名を言ってみろ ◆yeTK1cdmjo [sage] 投稿日: 2007/11/01(木) 22:16:37 ID:kki4ihLe0
前回のあらすじ前スレ>>238-243

 ここで俺ですよ。
 キム皇との魔法特訓を無事に終え、色々と魔法を使えるようになりましたよ。
 基礎の魔法とはいえ短期間で色々覚えた俺ってばすごくね?
 きっと俺の中に眠っていた力がドラクエ世界に来たことで覚醒して(ry

 んで。俺達は今ラダトームの宿屋でまったりしている真っ只中。
 リムルダールまで行ったのになんで今更ラダトームなのかっつうと。
 初めてラダトームを訪れた時に渡された120Gと鍵と松明の「贈り物」を王に投げ返してきてやったわけだ。
 ファミコン神拳のおかげで金は1万以上あるし、鍵もジジイから安く買い叩いたし、ダンジョンを暗記している俺に松明は不要。
 ついでに王を罵倒してきた。

『まだ竜王を倒せぬのか?』
 返した後にこんなこと言われたらキレて当然でしょ。

『ヤバイ。ラルスヤバイ。まじでヤバイよ、マジヤバイ。ラルスヤバイ。まずセコい。もうセコいなんてもんじゃない。ツルセコい(ry』
『ローラの下痢便を肛門から直飲みしたいやつ』
『このヘアースタイルがサザエさんみてェーだとォ?』
『120Gしか渡さないおとこのひとって…』
『そんな事より大臣よ、ちょいと聞いてくれよ。スレとあんま関係ないけどさ。このあいだ、初めてラルスに会ったんです。ラダトームの。そしたらなんか(ry』
『ローラはともかく、マナカナのどっちが好みか語ろうぜ!』
『ノアだけはガチ』

 ラルス涙目wwwざまあwwwwwwwwwwwwwwwwww
184 名前: 俺の名を言ってみろ ◆yeTK1cdmjo [sage] 投稿日: 2007/11/01(木) 22:18:23 ID:kki4ihLe0
「ところで、お前の名前を聞いてなかったな」
 宿屋で作戦を立てた後、ミヤ王が改まって聞いてきた。
 つうか、今更聞くことじゃないよね。ファミコン神拳がおかしいの?名乗らない俺が悪いの?

「俺だよ」
「そういうことじゃなくてですね……」
「だから俺なんだよ」
「酔ってるんだすか?」
「酒ないのにどうやって酔うんだよ」
「名前を聞いてるのに俺だ俺だ言うからだ」

 意外に頭の悪い連中――とも言えないか。
 名前が名前だ、仕方ない。

「俺のフルネームは姓は江良井、名前は俺――って、この世界じゃオレ・エライか」
「……本名か?」
「本名だよ。戸籍謄本でも何でも見て確認してみろ」
「それはなんとも」
「冗談のような名前だな……いや、バカにしているつもりはないんだ」
「気にすんな。よく言われる」
「オレ・エロイとは……ドエロじゃないっすか」
「お前は死ねばいいと思うよ^^」

 我ながら凄い名だとは思うし、コンプレックスを持っていたのも確か。
 だが、名前をからかった教師をクラスのヤンキーがフルボッコにしてくれて以来、人の価値は名前で決まるもんじゃないと理解した。
 その出来事がきっかけでヤンキーとは仲良くなり、今でも付き合いがある。
 そもそも彼の結婚式に出るために俺は上京してきたんだ。
 なぜかアレフガルドにいるけど。
 人生って不思議ですね。
185 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/01(木) 22:20:46 ID:VJbQAcS/0
支援!
186 名前: 俺の名を言ってみろ ◆yeTK1cdmjo [sage] 投稿日: 2007/11/01(木) 22:22:10 ID:kki4ihLe0
 翌日、キム皇のルーラでリムルダールに飛んだ。
 キム皇曰く、「あてが使うルーラは勇者ロトが使っていた時代に使われていたルーラだす」とのこと。
 FC版公式ガイドブックによると3勇者がゾーマを斃したのは400年以上前。嘘だと思うなら73ページを読んでくれ。
 400年も前なら使い手がいなくなったり、性質が変わっていても不思議じゃない。
 恐らくギラもいつの間にか変わっていったんだろう。
 俺の予想では今使われているギラはメラが変化していったものと推測する。
 今の俺には何の関係もないことだけど。

 リムルダールに飛んだ俺らが何をしているかと言うと。

「どこじゃキメラああああああああああああああああああああああああああああ!」
 リムルダール島に棲息するキメラをひたすら捕獲してますが何か?
 聖なる祠付近に出るキメラをひたすらに、ただただひたすらに捕獲。
 キメラ以外の魔物はどうでもいい。

「ウララー!!」
 ゴールドマンはアパッチの雄叫びで。

「お前はもう死んでいる」
 骸骨には北斗神拳で。

「オーロラサンダーアタック!」
 鉄のサソリは凍らせて。

「男は度胸!なんでもためしてみるのさ」
 リカントマムルは掘って。

 ま、そんなこんなでキメラだけを捕獲。
 携帯の時計では現在18時6分。キメラ捕獲開始したのが7時過ぎだったから11時間くらい?
 さすがに疲れたがその甲斐はあった。

「キメラ、計151匹ゲットだぜ!」
187 名前: 俺の名を言ってみろ ◆yeTK1cdmjo [sage] 投稿日: 2007/11/01(木) 22:24:03 ID:kki4ihLe0
「お前らの中に人間の言葉を話せる奴いるか?」
「少ιナニ″レナナょら言舌せゑ」
         なんという聞きにくさ・・・
         一言聞いただけでイライラしてしまった
         この言葉は間違いなくギャル語
                
            / ̄\
           | ^o^ | 
            \_/

「お前らを殺さず、捕まえたのには理由がある。――お前らと取り引きしたい」
「耳又丶)弓|、キ?」
「そうだ。俺達四人を魔の島に運んでもらいたい。そうすればお前達キメラの命は保障する」
「正気τ″言っτレヽゑ@カゝ?」
「幸か不幸か、俺の頭は正気さ」
「断ゎっナニらー⊂″ぅナょゑ?」
「戦闘だな。この場にいるお前達を皆殺しにした後で別のキメラを探すだけさ。要求を呑むキメラが現れるまでな」
「……我々≠乂ラ一族レニ竜王様を裏七刀れー⊂言ぅ@カゝ?」
「逆に考えるんだ、『裏切ってもいいさ』と考えるんだ」

 黙るキメラ。
 それもそうだ。逆に考えられるわけないだろ、常考。

「今すぐに答えを聞かせろとは言わない。明朝、俺達は魔の島に一番近い場所にいる。その時に答えを聞かせてもらいたい」
「人質を取っておくだすか?」
「人質を取ったら脅迫になるからな。――俺が保障するキメラの命はキメラ一族の命全部ってことだけは言っておく」
「ー⊂″ぅレヽぅ⊇ー⊂ナニ″?」
「魔の島まで送った後、俺達は永遠にキメラを襲わない。もしも一人でもキメラを襲ったら俺がそいつを殺す。俺が襲っても同様だ」
「……日月朝、答ぇを出ξぅ」
188 名前: 俺の名を言ってみろ ◆yeTK1cdmjo [sage] 投稿日: 2007/11/01(木) 22:25:53 ID:kki4ihLe0
 キメラ達との交渉後、さすがに疲れたのでリムルダールの宿屋でダラダラしている。
 ファミコン神拳の3人はどっか行った。

 ベッドの上でゴロゴロしていたわけだがゴロゴロも飽きた。
 かといって飲む気はないし。
 寝るには早い時間だし……久々にDSでもするか。つうか、充電大丈夫か?

「なんだこりゃ?」
 電源は入りっぱなしだった。
 いつから入ってたんだ?と思うよりも先に、俺はDSの画面に目を奪われていた。
 上画面には「もし目が覚めたら そこがDQ世界の宿屋だったら」と書かれていた。
 左側にドラゴン、中央に「もし目が覚めたら そこがDQ世界の宿屋だったら」の文字、右側に人のシルエット。
 この画像には見覚えがある。FF・ドラクエ板のスレのはずだ。どどどどういうこと?
 下画面にはドラクエのコマンド画面が6分割されて表示されている。

  ゲーム   じゅもん
  どうぐ    そうび
  つよさ    きろく

「はなすコマンドは必須だろ!」
 いや違う。ツッコミ入れてる場合じゃない。

 とりあえず「ゲーム」を選んでみる。
 ドラゴンクエストの序曲とともに上画面にドラクエ1のタイトル画面が表示される。ご丁寧にFC版だ。
 下画面にはアレフガルド全域の地図。
 光点が光っている場所と光っていない場所があるが、行ったことがあるか否かってことだろう。
 ラダトーム、ガライ、マイラ、沼地の洞窟、リムルダールだけには光点が光っているがそれ以外は光点すらない。
 試しにタッチペンでリムルダールをタッチしてみると、上画面のFC版のロゴが消えてリムルダールの地図と説明が表示される。
 武器屋防具屋で売っている物の種類や値段、宿屋の値段……随分と親切な設計だなオイ。

 ……何か引き返せないようなヤバい感じがビンビンなんだけど、どうするべえか。
189 名前: 俺の名を言ってみろ ◆yeTK1cdmjo [sage] 投稿日: 2007/11/01(木) 22:28:43 ID:kki4ihLe0
 深く考えても仕方ないかということで続けて「じゅもん」を選択。ポチッとな。
 俺が唱えることのできる呪文の一覧が下画面に表示。上画面は使用MPと呪文の説明。お約束と言えばお約束だ。
 一つ気になるんだが、呪文のコマンドが存在する=DSLを使って呪文の使用もできる、でおk?
 試したいのは山々だが、また宿屋の中でギラを発動させるわけにもいかないので自重しておこう。
 ただでさえ宿屋の親父に断わられかけたんだ。 あの騒ぎのせいで。

 続きましては「どうぐ」のコマンド。
 上画面には選んだ道具の説明と個数。
 下画面は二分割されていて、左側の一番上には俺の名前と俺が持っている道具の一覧。
 右側一番上には「ふくろ」と書かれていて、道具欄には何も入っていない。

 ……ペンでドラッグ可能だよな。
 消えても嫌なので、とりあえずタバコを移動させてみる。タバコなら消えても惜しくないし。
 タバコを右にドラッグ――うおおおおおお!
 手元にあったタバコが消えたあああああああああああああ!
 こここ今度はタバコをひひひ左にドドドドラッグ――うぎゃああああああああ!いきなり手元に出たああああああ!!
 KOEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!111!

 すっかりお馴染みの「つよさ」は俺の強さが表示。
 FC版のステータスの他にかっこよさとかも出るんだけど……俺ってこんなにダメだったか。イケメンじゃないとは知ってたけどさ。

 んで、「きろく」だが。これが実にシンプルに怖い。
 上画面に『これまでの冒険を 冒険の書に記録しますか?』と表示。勿論答えは「はい」か「いいえ」の二択。
 この世界での死=現実世界での死、だとしたら記録すべきだろう。
 しかし記録することによって俺はこの世界に繋ぎとめられるのかもしれない。
 セーブすることでこの世界に縛られるのか、セーブしないことでやり直しがきかなくなるのか。


 俺は、どちらを選べばいいんだ――
190 名前: 俺の名を言ってみろ ◆yeTK1cdmjo [sage] 投稿日: 2007/11/01(木) 22:32:27 ID:kki4ihLe0
「ゆうていが対竜王のことで話があるそうだ。ゆうていの部屋に来てくれ」
「はいはい、今行く」

『ピッ』

「……おい、今聞き慣れた音しなかったか? Aボタンを押したような音」
「何のことかわからないが、お前のケイタイとかいうやつの音じゃないのか?」
「……先言っててくれ」

 恐る恐るDSLの画面を見、混乱。その後にミヤ王への「はいはい」=「はい」だと理解。
 そして俺は叫んだ。

俺「おまえ何やってるんだDSL――ッ!」
DSL「最高に『ハイ!』ってやつだアアアアアア!」




『冒険の書を記録しています 電源を切らないでください』




LV:11
HP:26/39  MP:27/27
E:炎の剣 E:Tシャツ+鎖かたびら E:皮の盾
呪文:ギラ ホイミ レミーラ ラリホー
特技:思い出す 舐めまわし 百裂舐め ぼけ つっこみ 雄叫び 口笛 寝る 穴掘り
    急所突き マヒャド斬り 
道具:携帯電話 網
DSL:聖水 100円ライター 臭い靴下 古びたトランクス アディダスのジャージ
    タバコ×7 鍵×18 曲がった釘×6
191 名前: ◆yeTK1cdmjo [sage] 投稿日: 2007/11/01(木) 22:37:29 ID:kki4ihLe0
投下終了です。
次回ラストバトルになります。

>>141
これまでありがとうございました。
本当にお疲れ様でした。

>>159
お疲れ様です。
早速投下予告スレを利用させていただきました。
192 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/01(木) 22:43:42 ID:Mt1NpCHwO
次回ラスト!?
楽しみだが早いような。
しかし名前、本当に俺だったのかww
193 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/02(金) 08:08:41 ID:dClhBlNT0
色々突っ込みどころが多すぎるが乙。特技増えすぎだろw
あとどうぐの反応に吹いた。確かに怖いよな、消えたり現れたりしたらw
ラストバトル、楽しみにしてます。あといいヤンキーが幸せになって俺歓喜。

勿論最終決戦であって最終回とは限らないんだよな!
194 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/02(金) 13:28:12 ID:ymkck0W10
セーブするかどうかの入力画面のまま、「はい」って発声してしまったから、セーブしたことになったのか・・・(wwwwwwwww
ギャル言葉のキメラ、萌へ〜。
195 名前: 番外編 at 三日遅れ ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/03(土) 01:17:30 ID:YvlvMMRk0
※今回の内容は本編とは関係ありません。

「Trick or treat!」
「うぉ!モンスター!!…なんだイサミか、ビビらせるなよ。」
「山賊ウルフの格好なんかして何やってるんだい?」
「俺の世界にはハロウィンってのがあってさ。夜にオバケの衣装を着てビビらせて
 お菓子を貰うってお祭り。だから二人ともお菓子くれ。」
「なんだか性質の悪りぃ祭りだなあ…」
「まあ、そういう儀式なら驚いた僕達の負けだよ。はい、ヌーバキャラメル。」
「悔しいがビビった俺が悪いか。ホラ、エテポンゲキャンディーだ。持ってけ。」
「サンキュー♪」
「行っちゃったね。妙な儀式だけど、楽しそうだね。」
「こっちの世界でも流行ったら面白いかもな。」

「「とりっく おあ とりー…」」
ぬわーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!

「何?今の凄い声…って、うわ!何やってるんだ?二人して。」
「いや、イサミの真似をしてはろうぃんってのを試してみたんだ…村の人に。」
「…そしたら…逃げて…行った…」
「今の人、お菓子じゃなくってお金を置いて行ったけど、失敗かな?」
「そりゃ強盗って言うんじゃね?」
「…コー…ホー…」
「で…因みに今の二人の格好は何?」
「僕?デッドエンペラーだよ。レヌール王に王冠を借りてね。」
  サトチー Eかしの杖 Eただのぬのきれ Eレヌールの王冠
「…俺は…さまようよろい…」
  ヘンリー E鋼の剣 Eさまようよろい
「外せ!今すぐ外せ!!お菓子のために呪われてるんじゃねえ!!」
「ははは…昔からヘンリーはイタズラには手を抜かないからね。」
「…人のビビる顔を見るためなら…喜んで呪われて…やる…」
「ハロウィンはそんな殺伐とした祭りじゃねえ!!」
196 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/03(土) 05:47:16 ID:qrBh+ZQzO
ヘンリーwwww
体張りすぎだろ、常識的に考えて…
197 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/03(土) 12:45:21 ID:qzfARRZg0
ぐはぁ、さまようよろい・・・。

知らない人相手にやったら、ただの嫌がらせでしかないですよね(wwww
198 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/03(土) 13:22:46 ID:qtWD4ula0
―起床の起―

考え抜いたた末の行動が考え通りにいくとは限らない。
それはゲームの世界でも同じことらしい。

俺はその日もいつもと同じように目覚めたはずだった。
199 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/03(土) 13:23:50 ID:qtWD4ula0
――

ああ、朝か。今何時だろう?
4時間くらいは眠ってたかな。
寝てたときの時間の感覚なんて当てにならないけどさ。

眠い。もう一回寝ようかな……。
なんか俺どんどん夜型になってるような気がするなー。
人間のバイオリズムって24時間よりも少し長いって聞いたことがある。
だからどんどん後ろにずれ込んでいくんだろうな。
普通は決まった時間に起きて修正するんだっけ。
俺の場合、研究室にはいつ行っても構わないからいけないんだよなぁ。

あーあ、大学院まで行ったのに俺って何やってるんだろうな。
確かに研究は好きだけどこのままでいいのか俺。
好きなだけじゃどうしようもないこともあるんだよ。
将来のことを考えると今の研究じゃ食っていけないよなー。
だからといってほかにやりたいことなんて見つからないし。
あー、こうやって問題をずるずる先延ばしにしているだけなんだよなぁ。

なんだかつまんないこと考えているうちに目が冴えたな。
……起きるか。

それで結局、今何時なんだろう。
あれ、時計がない。……ん、テレビもない。ラジオまでないぞ。

ここ俺の部屋じゃない……

嘘だろ。じゃあここはどこだよ?
200 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/03(土) 13:24:49 ID:qzfARRZg0
紫煙
201 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/03(土) 13:24:51 ID:qtWD4ula0
ここはブランカの宿屋だそうだ。
なんだよブランカって。
どっかで聞いたことあるんだよな。どこだっけ。
そもそも宿屋ってなんだよ。まるでドラクエじゃないか。

……思い出した。ブランカってドラクエの城だよ。
脳に電撃ビリビリっときた感じで頭に浮かんだ。ドラクエ4だ。
むかし散々やったよドラクエ。そっか、ドラクエの城かー。
ドラクエ4の中でもかなり地味な城だけどよく覚えていたな俺。

だから何で俺はそんなところにいるんだよ……。

いや待て。まだドラクエ世界のブランカだと決まったわけじゃない。
調査をして確かめてみなければ。通りを行く人の会話に聞き耳を立ててみよう。

「西のほうにトンネルを造るなんて話があったけど、ちゃんとできるのかしら?」
「今ごろ必死にいたずらモグラを集めてたりしてね。」

「いっこうに現れない地獄の帝王って遅刻の帝王なんじゃないか。」
「おまえスタンシアラに行くといいよ。でも二度と帰ってくるなよ。」

「昨日は不思議な踊りの真似して遊んだんだ。お母さんにも見せてあげるね!」
「あやらだ。母ちゃん魔法使えないから意味ないわよー。」

はい。ドラクエ世界で間違いありません。イメージとだいぶ違うけど。
結論が出ました。ここはドラクエ4のブランカです。
202 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/03(土) 13:25:53 ID:qtWD4ula0
それにしても何故ブランカの宿屋なんだ。
ブランカといえばドラクエ4の城の中でも特に地味なところじゃないか。
ゲームしててもブランカの宿屋なんて1度も利用したことないぞ。
なにせ特にイベントもないし近所にただで止めてくれるきこりの家があるからな。
あれか。1度も泊まらなかったことに怒った宿屋の親父の呪いでここにきてしまったのか。
うわー、まったく根拠はないけど何か凄くありそうだな。

呪いのせいでここに来たとして、俺はこれからどうすべきなんだろう。
それをこれから考えなければなるまい。
ここがどんな世界なのかで場合分けし、それぞれの場合でどうするのが最適か検討しよう。

はじめに考えられるのはこれが夢だという場合だ。
まあ、これが一番考えられることだよな。
これが夢だとしたら特に何もする必要はない。
目が覚めるのを待つだけだ。

次に考えられるのはこれが俺の妄想だって場合だ。
これも特に何もする必要はない。何もしないまま終了だ。
もっとも現実と妄想の区別がつかないとなると別の意味で終わってるけどなー。
全部が幻だったなんてありそうで怖い。

あとはここがドラクエ4をモチーフにしたテーマパークか何かという場合。
だがこれだけ大規模なテーマパークというのは考えにくいよな。
それにこんな物ができたなんてニュースなんて聞いたことないし。
この場合、閉園の時間になったら係員が出口まで誘導してくれるだろう。

それからこれがリアルなゲームだってことを考えておかなきゃならないな。
たとえばバーチャルリアリティの技術がここまできてこういう体験をしているとか。
無理あるよなー。それに体験ゲームなら俺は勇者になっていなきゃ変だ。
ここが体験ゲームならそのうち誰かが止めててくれるだろう。
203 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/03(土) 13:26:31 ID:qtWD4ula0
それにしても何故ブランカの宿屋なんだ。
ブランカといえばドラクエ4の城の中でも特に地味なところじゃないか。
ゲームしててもブランカの宿屋なんて1度も利用したことないぞ。
なにせ特にイベントもないし近所にただで止めてくれるきこりの家があるからな。
あれか。1度も泊まらなかったことに怒った宿屋の親父の呪いでここにきてしまったのか。
うわー、まったく根拠はないけど何か凄くありそうだな。

呪いのせいでここに来たとして、俺はこれからどうすべきなんだろう。
それをこれから考えなければなるまい。
ここがどんな世界なのかで場合分けし、それぞれの場合でどうするのが最適か検討しよう。

はじめに考えられるのはこれが夢だという場合だ。
まあ、これが一番考えられることだよな。
これが夢だとしたら特に何もする必要はない。
目が覚めるのを待つだけだ。

次に考えられるのはこれが俺の妄想だって場合だ。
これも特に何もする必要はない。何もしないまま終了だ。
もっとも現実と妄想の区別がつかないとなると別の意味で終わってるけどなー。
全部が幻だったなんてありそうで怖い。

あとはここがドラクエ4をモチーフにしたテーマパークか何かという場合。
だがこれだけ大規模なテーマパークというのは考えにくいよな。
それにこんな物ができたなんてニュースなんて聞いたことないし。
この場合、閉園の時間になったら係員が出口まで誘導してくれるだろう。

それからこれがリアルなゲームだってことを考えておかなきゃならないな。
たとえばバーチャルリアリティの技術がここまできてこういう体験をしているとか。
無理あるよなー。それに体験ゲームなら俺は勇者になっていなきゃ変だ。
ここが体験ゲームならそのうち誰かが止めててくれるだろう。
204 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/03(土) 13:27:32 ID:qtWD4ula0
あとは本当にドラクエの世界があってそこに迷い込んだという場合。
しかしゲームの世界だなんて本気で考えなきゃならないのか……

いくら俺がドラクエが好きだからといってゲームの世界にくることはないよな。
俺がドラクエはじめたのは姉ちゃんに勧められてやったのがきっかけだっけ。
その姉ちゃんといえば結婚して子供まで産むっていうんだからな。
何ていうか身内の出産ってちょっと引くよなー。
そんなこと気にする年でもないんだけどさ。
こういうの考える時点で駄目なんだろうけどな。
あ、そうだ。姉ちゃんの出産祝い何か考えとかなきゃ。

……そうじゃなくて、ここがゲームの世界だって話だったな。
この場合ゲームをクリアすれば元に戻れるってことだろうか。
クリアするってことはピサロかエビルプリーストを倒せばいいのか?
でもそこに俺の介入する余地はないよな。
黙っていても勇者が世界を平和にしてくれる。
俺のやるべきことはないな。
205 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/03(土) 13:27:39 ID:qzfARRZg0
1度も泊まらなかったことに怒った宿屋の親父の呪い、噴いた(wwwwww
206 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/03(土) 13:29:05 ID:qtWD4ula0
なんだ。結局どの場合でも何もしないということになるじゃないか。
……いいのか?
ゲームなのに何もしないというのはありなのか?

そういえば遭難したときは動き回らずひとつの場所にじっとしてるのが鉄則らしいな。
俺のこの状況はそれに近いのかもしれない。
うん、そう考えれば何もしないというものありだと思えてきたぞ。

そもそもこの世界で俺に何ができるのかということを考えてみよう。
話を聞く限りまだトルネコは洞窟を掘っていないようだ。
つまりゲームで言うと少なくとも3章は終了していないということだな。
思うに今はゲーム開始時点なのではないだろうか。
つまりバトランドではライアンが行方不目になった子供たちを捜すところだ。
ライアンといえば彼がホイミンが並んでいたらどっちがモンスターか分からないよな。
いや、分かるけど。分かるけど害がなさそうなのはホイミンのほうだって。
とにかくゲームの世界だというならゲーム開始時点に来るのはありそうなことだ。
決め付けは良くないがほかに考えようもない。

そしてゲームでの出来事がドラクエの歴史だという仮説を立ててみる。
そうすると俺はこれからこの世界で起きることを知っていることになる。
自分が何故ここにいるのか分からないのに奇妙な話だな。
俺が勇者たちの手助けをすれば冒険がスムーズに進むのではないだろうか。
いや、俺が勇者たちに介入することで歴史が変わることになりかねない。
勇者が世界を平和にしてくれないのは非常に困る。
やはり何もしないのが正解なのだな。
よし決めた。俺は何もしない。

こうして俺の何もしない試みが始まった……はずだった。

―「承諾の承」へ続く―
207 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/03(土) 13:39:38 ID:qzfARRZg0
一段落かな。
投下乙でございます。
主人公が勇者ではなく、何もしない(ように努力する)というのも面白い設定ですね。
次回も楽しみにしてますね。
208 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/03(土) 13:41:59 ID:1vkawdv70
dion軍規制解除でやっと感想書き込める!
新しい設定の新作乙です
何もしないと決めたのに巻き込まれる展開楽しみ〜
209 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ 投稿日: 2007/11/04(日) 15:31:33 ID:sTfqlIBh0
過去レスのアリーナむっちゃ萌えます!
当方、D道塾ですけど道着に着替えて空気イスや柔軟(逆エビ)したらスンゴイきますよ^^
道場の皆さんにちょっと罪悪感、、、orz
でも短大の頃にPS版のドラクエWやってから、アリーナ目当てでドラクエの関連商品を集めるようになりました。
D道塾もその頃から始めました。アリーナのコスじゃなく、格闘技の習得にいくところが我の特色ですw
右手の親指で左足の親指を引っ掛け、弓手で右足を同じようにする逆エビ。関節も筋もよく解れるし、適度な負荷が全身にかかります。
でもデスピサロの足元でやるときは枷有りに決まってるから、つらさ的にはアリーナはこんなもんじゃないんだろうな。
いつでも姿勢を自分の意志で解除できるか否かは重要。
それを考慮しても、やっぱりサントハイムよりデスパレスに居る方が、アリーナには幸せかもね。デスピに愛されて・・・。
デス様のことだから、きっとアリーナのために擦過傷を極力防ぐための細工をした非金属・非繊維の何かを用意しているでしょう。
ピサロ×アリーナまた新しいの読みたいです。
210 名前: Stage.10 hjmn ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/04(日) 20:17:21 ID:MaX8wX3a0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。今回はリアルサイドの続きですね。では前回のおさらいです」
アルス「それ恒例化してんの? 俺がアレフとかってサイコ野郎と喧嘩したあと意識不明になって、
   ユリコの家で介抱されてたんだけど、目が覚めたらいきなしユリコの親父にひっぱたかれた。
   タツミとの確執のとばっちり食らったみたいだから、ちょっと試合でもしてカタつけてやろうか、
   ってところで終わってた」
タツミ「ユリコのお父さんにはえらく嫌われてたからなー、僕」
アルス「いい迷惑だ」
タツミ「そう言うなよ。それではいつもの、届け!愛のサンクスコ〜ル!」
アルス「おいw」

タツミ「>>121様、いいお母さんだよねー。どうして息子はこんなヒネクレたクソガキに……」
アルス「うるせえよ。>>124様、おふくろも優しいのはいいが、なんでも笑って許しちまうから、
   近所のバカもつけあがるんだと……まあ俺が黙らせてたからいいけどさ……」
タツミ「素直に心配だって言えばいいのに。反抗期?」
アルス「だからうるせえよ!」
タツミ「>>125様、へぇ、そんなことあったんだー。確かにあの王様、サヤさんも持て余し気味だったな」

アルス「続いて雑談のサンクスコール」
タツミ「>>164様、竜探大学には付属の竜探幼稚園〜竜探高校まであります。
   しかし片岡……『おもしろい』から好きってどうなんだよ」
アルス「良かったなぁ、お前の奇人変人ぶりに惚れてくれる女の子がいて」
タツミ「うるさいよ! って、さっきと逆転したな」
アルス「さーて、ユリコの親父さんをあんまり待たせるわけにもいかないし――」


アルス・タツミ『それでは本編スタートです!』


【Stage.10 事情それぞれ】
 リアルサイド続編 [10]〜[16]
211 名前: Stage.10 [10] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/04(日) 20:19:21 ID:MaX8wX3a0
  Prev >>108-119(Rial-Side Prev (マエスレ)>>567-576
 ----------------- Rial Side -----------------

「なに考えてるのランバート君、危ないよ。まだ起きたばかりだし」
 ユリコが慌てて俺の腕を引っ張った。まあまあと抑えて、先を歩き出したあのオッカネー
親父さんの後についていく。
 しかし広い家だな。エキゾチックな庭園がずーっと奥まで続いている。池があって、小
さな橋までかかってるし。タツミもすごいトコのお嬢さんに惚れられたもんだ。
「ランバート君! さっきのことは代わりに謝るから、まずタツミに連絡取って……」
「アルスでいいぜ、アルとか。別に叩かれたのを怒ってんじゃねえよ。ただ、せっかくの
チャンスを利用しない手はないだろ? 今は俺が『タツミ』なんだから」
 ユリコは先を行く父親の背中に視線を向け、少し黙った。俺の真意に気付いたようだ。
「でも、もしラン……アル君になにかあったら、あたしがタツミに怒られるよ。お父さん、
ああ見えて免許皆伝なの。意味わかる?」
「強いってこったろ? 雰囲気がそうだもんな。――だからこそなんだが」
 あれだけ厳格な父親が、自身も相当の腕前を持ってて、娘にもしっかり武道をやらせて
るってことは、だ。価値観もそういうところにあるタイプと見ていいだろう。
 あの手合いを黙らせるには、実力を認めさせるのが手っ取り早い。まだあちこち痛みは
あるが、こっちの人間相手なら、このくらいのハンデがあって丁度いい。
 こういう荒事は、あのお人好しは苦手だろうし。
「一肌脱いでやるさ」
「なに?」
「いや。そうだ、すまないが時間を計っておいてくれないか」
 それに、早いとこ自分のステータスを正確に把握しておきたい、という理由もある。
「もし試合の途中で俺の力や動きがガクっと落ちたら、それがリミットらしい。まあ負け
ることはまずないと思うが」
「よくわからないけど……じゃあ時計、見ておくね」

「なにをこそこそ話しとるんだね。着いたぞ」
 長い渡り廊下の突き当たりに、これまた古風な趣の家が独立して建っていた。板張りの
床で、真四角の広い空間になっている。壁にいくつも竹製のカタナが掛けられていた。
 この国流の稽古場らしい。
212 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/04(日) 20:19:45 ID:DNyKG5aB0
初のリアルタイム支援!
しかも一番楽しみにしていたIFDQさんとはっ。
213 名前: Stage.10 [11] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/04(日) 20:21:22 ID:MaX8wX3a0

「そういや、戸田和弘はどうしたんだ?」
 小声でユリコに聞くと、彼女は少しバツが悪そうに答えた。
「適当にごまかして先に帰ってもらったよ。すごく心配してたけど……」
 あいつもイイヤツだもんなぁ。本当のことを伝えるかどうかは別として、あとで謝っと
かないとな。

 さて、と。
「まさかとは思うが、真剣でやる気かね?」
 ユリコの親父さんが、俺の手元を見て小馬鹿にするように笑った。
「ああ、そうですね。怖いんでしたら、そこに掛かってるのに換えますけど」
「――口だけは達者だな」
 向こうも控えていた女中にホンモノを持って来るよう命じた。マジで真剣勝負に乗って
くれちゃうらしい。いいねー、俺はこういう思い切りのいいオッサン好きだぜ。
 ユリコは頭を抱えているが。
「あ・ん・の時代錯誤のバカ親父〜! まさか試合中の事故で片付けようって魂胆!? ア
ル君、本っ当に大丈夫なんでしょうね?」
「どうかねぇ」

 軽く身体をほぐしてから、中央に進み出る。
「そうだ、俺、外国で剣術を習ったんで、日本式の礼儀とかは全然わかんないんですよ。
そこは許してもらえます?」
「好きなようにしたまえ。しかしそれならなおさら、日本刀など扱えるのかね?」
「心配ご無用♪」
 一級討伐士、いわゆる「勇者」の認定条件においては、初級剣術や初級槍術の他に特殊
武器の技術も必要とされる。鎖鎌からブーメランなんてものまで使いこなせなくちゃなら
んのだ。俺もそういう訓練をしてきたから、手に持っただけでだいたいその武器の特性を
つかめたりする(だから鉄杭でも戦えちゃうわけ)。
 それに……この日本刀ってやつ。なんというか、慎ましくも凜とした雰囲気がどこか俺
の愛剣に通じる物があって、妙に手に馴染む。
「では、いざ尋常に――」
 勝負!
214 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/04(日) 20:23:19 ID:CtzstB1q0
しえん
215 名前: Stage.10 [12] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/04(日) 20:23:23 ID:MaX8wX3a0

   ◇

「……っつーわけで、ユリコパパをゲットしちゃったわけ。すっかり気に入られちゃって、
すっげーごちそう出てさぁ♪」
 最初はマジで危なかったんだが(オッサン本当に強かったよ。ナメてましたごめんなさ
い)、上手に引き分けに持ってったら手の平返したみたいに待遇が良くなったのだ。
 実は会った瞬間に、このオッサンとは気ぃ合うなと思ったんだよ。「男は黙って拳で語
れ!」って感じの武闘派バカ(またもや失礼)、俺も嫌いじゃないからさ。
「まさかこんな劇的にうまくいくとは思わなかったけどなw」
『あーそう、良かったね』
 携帯の向こうで、タツミは思いっきりふて腐れたような声を出している。
「なに怒ってんだよ、むしろ感謝してほしいぞ。これでお前も彼女と堂々と付き合えるだ
ろ? 悪い印象ってやつは、いったん覆したら逆に前よりずっと良くなるもんだしな」
『でもそれは……僕じゃないもん。ってか君は僕をそっちに戻す気ないんじゃなかったっ
け? 適当なこと言うなっつーの』
「そこはフェアだろうが。クリアすれば帰れるんだし、俺はそれを邪魔することはできな
いってルールなんだから。なんだよ妬いてんのか? お前もけっこう――」
 プッ ツー ツー
 あ、切られたw あいつも素直になりゃいいのに。

「アル君……タツミなんて言ってた?」
 ユリコが顔をのぞかせた。気を利かせて離れていたらしい。
「僕のユリコに手ぇ出したらタダじゃおかない、ってさ」
 携帯を放ってやると、受け取ったユリコはカァっと耳まで赤くなった。
「冗談でしょ? あいつそんなこと、絶対言わないわよ」
「確かめてみれば?」
 ユリコは少し携帯を見つめていたが、なぜか小さく首を振って、俺に返してきた。
「今度ね。それより、お父さんのせいでまたケガ増えちゃって、ごめん」
「え、いや俺の方こそ、親父さんケガさせちまって悪かった」
 思った以上に腕の立つ相手だったから、無傷で済ませられなかったんだよな。どちらも
軽傷とはいえ、今は片岡氏もあちこちに包帯が巻かれている状態だ。
216 名前: Stage.10 [13] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/04(日) 20:25:21 ID:MaX8wX3a0

 もっとも、本人はまったく気にしていないようだが。
 俺が中座していた宴席に戻ると、片岡氏は庭に面した廊下(エンガワというらしい)で、
静かに酒を飲んでいた。
「終わったのかね?」
 続きをやろう、と盃を掲げてみせる。ハイ、最初は未成年だからと断ったんだけど、片
岡氏があんまり勧めるのでいただいちゃってました。「ダイギンジョウ」ウマー。 

 外は夕暮れ。ここから見る庭にも見事な桜があって、薄桃色の花を風に散らしている。
 漆塗りの雅な盃に、ユリコがいい香りの酒を注いでくれる。「こーん」とたまに小気味
のいい音を響かせているのは、シシオドシというらしい。風流だねぇ。
「しかし、少し見ない間にずいぶん変わったものだ。まるで別人だな、今の君は」
 そりゃあ別人ですから。
「タツ……じゃない、以前の俺と、そんなに違うんですか?」
「まったく違う。あの頃の君は『自分の命などどうでもいい』という者の目をしていたぞ。
あんな生きた屍のような人間に、大事な娘は近づけられんよ」
「はぁ? え、そうなの?」
 なんかすごい言われようだぞタツミ。ってか、お前そういうキャラだったっけ?
「ちょっとお父さん、変なこと言わないでよ! ……ええとほら、本人の前で」
「ははは、失礼。だが今は、あれだな、親の屍を食ってでも生き残るようなしたたかさを
感じるよ。そういう人間は信用できる」
 そ、そうすか。俺もすごい言われようだな。ってユリコ、今度は笑ってるし。
 片岡氏はしみじみと酒をすする。
「この子の母親は早くに亡くなってね。私も過保護だとは思っているんだよ――」 
 ふむ。人にはそれぞれの事情ってのがあるんだな。

 そのとき、ピリリリリリ! と甲高い音が鳴った。一瞬タツミからかと思ったが、片岡
氏が胸元から携帯を取り出してその場を離れた。
 今までとは違うせわしない口調で、なにやら難しい単語をやりとりしている。
「やはりイグリス社か? そのルートだけは必ず確保しろ。私もすぐ行く」
 仕事のことでなにかトラブルが発生したらしい。こっちの人ってよく働くからなぁ。
「すまんな三津原君、急用ができたので私は失礼するよ」
217 名前: Stage.10 [14] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/04(日) 20:27:22 ID:MaX8wX3a0

「ああ……じゃあ俺も帰りますよ」
「なに、ゆっくりしていきたまえ。ユリ、あとで送ってあげなさい」
 言うだけ言って、片岡氏は颯爽と去っていった。
「あんなにタツミのこと毛嫌いしてたくせに……なんなのよもう」
 ユリコもすっかり呆れていたが、俺と目が合うと苦笑に変わった。
「まあいいや、結果オーライよね。もう一杯いかがですか、勇者様」
「お、もらおうかな。こんな美人の酌なら何杯でもいけるやね♪」
「っぷ、どこのおっさんよぉw アル君って、本当に異世界で魔王を倒した勇者なの?」
 実はちょっと自信なくなってきたかも。すまんゾーマ、宿敵がこんなんでw

 と――。
「あの、アル君。もしかしてだけど……タツミから、なにか聞いてたりする?」
 ユリコが急に神妙な声で切り出してきた。
「なにかって、なにを?」
「あいつが人を避ける理由。アル君にはなにか言ってるかなって思って」
「いや、そんな話はしてないけど」
 俺が首を振ると、ユリコは「そう……」と、少しだけ肩を落とした。

「タツミってけっこうモテるのよ。顔はいいし頭もいいし、性格だって悪くないし。でも
誰とも付き合おうとしないのね。っていうか、友達も作らない感じ。要領がいいから周囲
に悟らせないようにうまく逃げてるけど。休みになったら、ほとんど外出もしない。あた
しと戸田くらいかな、しつこくまとわりついてるの」
「なんだそりゃ」
 ヒキコモリっぽいとこがあるなぁ、とは思っていたが、そこまで徹底していたとは。
「だから今日の花見みたいに、強引に誘うこともあるんだけど。……あたし、実はタツミ
にフられちゃったのね。去年の暮れかな、あいつに『もう僕に近づかない方がいい』って
言われたんだ」
 ユリコの表情は硬い。その時も、そんな顔をしていたんだろうか。
「でもその理由が理解できなくて。正直、今でもどう受け取っていいかわからないのよ」
「あの親父さんが怖くて、適当な理由で遠ざけたんじゃねえの?」
「普通はそう考えるわよね。でもそれにしては、なんか強烈な言い訳だったし」
218 名前: Stage.10 [15] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/04(日) 20:29:24 ID:MaX8wX3a0

 そこで逡巡するユリコ。
「タツミね……『僕は何人も殺してる人間だから』って、そう言ったの」
「こ、殺してる?」
「うん。『君まで巻き込みたくない』って……。亡くなったご両親も自分が殺したんだっ
て、そんなこと言うのよ」

   ◇

「亡くなったご両親――? タツミの親、両方とも死んでんの!?」
 俺は思わず叫んでいた。ユリコの方は別の意味で驚いている。
「知らないで入れ替わってたの? あいつが引っ越したあとのことで、詳しくは知らない
んだけど。事故でお父さんが亡くなって、その3ヶ月後にお母さんも亡くなったって」
 おいおいおい、なんだその話。じゃあ今マンションに同居してるあのオバチャンは誰な
んだ。単身赴任とやらで遠くにいるはずの父親って?
「一緒に住んでる人はタツミのお母さんのお姉さん、つまり伯母さんよ。彼女は独身だか
ら他に家族はいないと思うけど……。アル君、いったいどういう風に聞いてたの?」
「聞いてたっていうか、勝手に覗いてたっていうか――」
 タツミの生活については、俺が向こうにいる間に「夢」を通して知ったのだ。それが事
実と食い違ってる部分は今までにもあったが、まさかここまで違うとは思ってなかった。
 本人に確かめたくても、なーんかずっとバタバタしてて聞きそびれていたし。

 ……いや、俺も無意識に、タツミに聞くのを避けていたかもしれない。
 あいつ、一度も俺を問い詰めてきたことがないから。いきなり命懸けの冒険を押しつけ
られればわめき散らしたって当然なのに、タツミはいつも「仕方ないなあ」って感じで飲
み込んでくれてて。
 だからなおさら、こっちだけ詮索するのも悪い気がして。

「でも殺したってのは、尋常じゃないよな……。他には?」
「ううん。あいつ、肝心なことはなにも教えてくれないもん」
 昨日カズヒロも同じようなこと言ってたな。
 こうなったら腹を据えて聞いてみるか!
219 名前: Stage.10 [16] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/04(日) 20:31:27 ID:MaX8wX3a0


 ――おかけになった番号は、電波の届かないところにおられるか、
   電源が入っていないため、かかりません。

 ........... orz 

 またかよ〜。もしかして本格的にスネちゃったんか?
「つながらないの?」
「ん。まあそのうちかかってくるだろ。連絡が取れたら、あんたにもすぐ伝えるよ」
 俺が立ち上がると、ユリコは心配そうに袖を引いた。
「帰るの、危険じゃない? 今日はうちに泊まっていったら」
「いやーさすがにタツミに悪いから帰るよw」
 別にやましいこたぁないけどさ。それに、ゲームがどこまで進んだかモニタリングしと
かないと、俺の方も連絡をつけるタイミングが計れない。
「それでユリちゃん、ちょっと頼まれて欲しいことがあるんだが―――」



 その後、ユリコにタクシーを呼んでもらい、俺はタツミのマンションに帰ってきた。
 くだんの「伯母さん」はまたでかけているようだ。甥っ子の面倒を独りで見ているわけ
だから、もしかしたら夜系の仕事でもしているんだろうか。
 ゲーム画面は、帆船が夜の海を西に進んでいた。ランシールに到着し、一行は真っ直ぐ
宿屋に入っていく。「一晩」たてばほとぼりも冷めるだろうし、少し待ってもう一度かけ
てみよう。
 それにしても、両親を殺した、なんて冗談で言えることじゃないよな。

(自分の命などどうでもいい、そういう者の目をしていたよ――)

「タツミ……お前いったい、なにしたんだよ」
 ゲームキャラの俺よりプレイヤーの方が謎って、なんか変じゃね?
220 名前: Stage.10 atgk ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/04(日) 20:32:52 ID:MaX8wX3a0
本日はここまでです。
今日の夜中の12時くらいから、お約束の「まとめ」を投下させていただきたいと思います。
その時にはまたよろしくお願いいたします。
221 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/04(日) 20:33:01 ID:CtzstB1q0
支援
222 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/04(日) 21:22:48 ID:Vpxzm+RZ0
うは、真剣をつかって勝負とは・・・。お互いに軽傷ですんでよかったですね(滝汗
大吟醸、おいしそう。だんだんこちらの世界になじんできますね(笑)

しかし、タツミくんの過去・・・。尋常じゃないですね。気になる・・・。
話が進むうちに明らかになっていくのでしょうか。
223 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/04(日) 23:54:02 ID:NksgkbF30
おお!このままリアルサイドの続きが読みたいような

とにかく乙です!
224 名前: Stage.10.5 mtm ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/04(日) 23:58:37 ID:MaX8wX3a0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。数時間ぶりですが改めまして、みなさんこんばんは♪」
アルス「今回の番外は、今までのまとめ、というか解説編だな」
タツミ「登場人物紹介、用語の説明、という形でお送りします」
アルス「ここだけの新事実発覚! みたいなのも多少あるらしい」
タツミ「DQ離れしたオリジナル設定が多い本作ですが、少しでも楽しんでいただけたらと思います」


アルス・タツミ『それではまとめ、スタートです!』


【Stage.10.5 まとめ】
 登場人物紹介/用語解説 [1]〜[11]
225 名前: Stage.10.5 紹介 [1] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 00:00:36 ID:/C7eX2Ut0

 ■主人公1■

【タツミ】 本名:三津原辰巳(ミツハラタツミ)
 本作の主人公の1人。ドラクエ3の世界に飛ばされ、元の世界に戻るためにイヤイヤな
がら勇者をやりつつ、ゲームクリアを目指す。見たものを写真の様に記憶できる「直感像
記憶力」と超スピードで本を読める「ラピッド・リーディング(速読)」の特技を持って
おり、それがゲーム世界では「思い出す」の能力として扱われている。
 ゲーム中では一部の関係者にのみ自分がアルスではないことを告げているが、自分は
「ルビスに遣わされてやってきた」ことにしており、行方不明のアルスについては「魔王
に封じられたので魔王を倒せば戻ってくる」と嘘をついている。
 高校の成績は常にパーフェクトで首席。奨学金をもらっており戸田和弘いわく「一度も
学費を払ったことがない」。運動神経も容姿もなかなかと三拍子そろった少年。
 しかし、両親が幼い頃に立て続けに死亡するという不幸に見舞われ、現在は母親の姉
(伯母)と二人でマンションに暮らしている。一見すると明るくポジティブな性格だが、
「両親を殺したのは自分だ」と言い、現実ではさり気なく人付き合いを避けていた。
 一條英治に恨まれており、何度か金銭を巻き上げられている。片岡百合子の父親からは
「自分の命などどうでもいい、生きた屍のような目をしている」と酷評されている。
 無理やり勇者を押しつけられたアルスを、それでも大切な人間だと言い切り、一方的に
恩人としているようだが……。
 MPが最初から999あり、携帯電話を利用するたびに減っている。プリペイド方式で減っ
た分は増えない。現在呪文の習得は皆無だが、今後使う機会があればさらに減ることを懸
念している。

[誕生日]7月7日生まれ
[性格判断]ずのうめいせき
[よく観る映画]ダスティン・ホフマン主演の「レインマン」
[好きだった銘柄]ラッキー・ストライク(もうやめたけど)
[気に入った魔物]スライム(というかヘニョ)
[苦手なもの]血(見ると気分が悪くなりヒドくなると吐く)
[嫌いな食べ物]ピクルス
[関わりたくない人種]わがままな王族
226 名前: Stage.10.5 紹介 [2] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 00:01:40 ID:MaX8wX3a0

 ■主人公2■

【アルス】 本名:アルセッド=D=ランバート
 本作の主人公の1人。ドラゴンクエスト3(SFC版)の勇者であり、プレイヤーの三津
原辰巳と立場を交換する契約を交わした。ほんの少し目の色に青みがかっている以外は、
タツミと見分けがつかないほどそっくりな容姿をしている。ゲーム世界にいた頃から「夢」
を通してタツミに同調(シンクロ)し、彼の生活や現実の常識などを事前に学んでいた。が、実
際と食い違うことがいくつも発覚し戸惑っている状態。実はLv.99。
 現段階ではタツミとの入れ替え(移行)が不完全であり、ゲーム世界でのステータス値
が半分以下に制限された状態になっている。それでも常人より遙かに強靱な肉体と力を持っ
ているが、全力を出す時間にリミットがあり、無理をしすぎると激しい疲労に襲われ、意
識を失うこともある。今のところ呪文は使えない。
 タツミが元の世界に戻ることを諦めれば「移行」が完了し、上記のしばりが無くなる。
アルスもそれを望んでいるが、内心ではプレイヤーを犠牲にすることに躊躇している。
 仲間も家族もすべて捨てて異世界へと来たが、その理由が「あの世界には決定的なもの
が欠けていてどんなにあがいても救われない」ということを、自分だけが知ってしまった
ためらしい。
 言動は荒っぽいが、意外と常識的でリアリスト。八城翔(エイト)には「人の良さそう
な子」と評されている。

[誕生日]12月24日生まれ
[性格判断]くろうにん
[好きな飲み物]豆乳(以前は牛乳だったがすぐ腹を壊すので変わった)
[普段着の色]赤系か黒でまとめることが多い
[気に入ったゲーム]セガのHOD(簡単で飽きるけどまたやりてえw)
[やってみたい職業]商人・遊び人
[苦手な科目]地理とか歴史などの暗記物
[消したい人種]ねちねち意地悪するような連中は全員だ!
227 名前: Stage.10.5 紹介 [3] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 00:03:36 ID:/C7eX2Ut0

■主な登場人物・リアルサイド■

【ユリコ】 本名:片岡 百合子(カタオカユリコ)
 三津原辰巳の高校のクラスメイトでタツミを慕っている、ショートヘアの似合う元気で
明るい性格の美少女。実は格闘技をたしなんでおり、かなりの強さ。花見に行った際アレ
フに急襲され、それを機にアルスの正体を知ることとなる。大変よろしい感じに発育して
おり、アルスいわく「かなり着やせするタイプ」。
 大金持ちのお嬢様で広い日本屋敷に住み、家では着物を着せられている。母親を早くに
亡くしており、そのせいで父親からちょっと過保護にされている。

【カズヒロ】 本名:戸田 和弘(トダカズヒロ)
 三津原辰巳のクラスメイトで友人。人付き合いを避けているタツミを気遣い、ユリコと
二人でなにかと彼に構っている。高校では運動系の部活に所属しているスポーツ少年。
 父親は市議会議員で、タツミに絡んでいる一條英治のこともなんとかできないかと気に
かけている。一條英治とその取り巻きを「あいつら頭悪いからなぁ」と評している。

【エージ】 本名:一條 英治(イチジョウエイジ)
 三津原辰巳を憎んでいる不良少年。他校の生徒で(カズヒロによると三流高校)、学業
面だけでなく、すぐにカッとなりナイフを振り回すなど、普段の思考力においても優秀と
は言い難い。なぜこの少年の言うことをタツミが聞いているのかは不明。
 妹がおり、彼女と入れ替わりで現実に来たアレフの世話を焼いていた。アレフが強いと
知るや「タツミを半殺しにしろ」とけしかけたが、今のタツミがアルスだと知らずに失敗。
 実の妹が異世界に飛ばされてしまったことは、なんとも思っていないようだ。
228 名前: Stage.10.5 紹介 [4] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 00:05:36 ID:/C7eX2Ut0

■主な登場人物・ゲームサイド■

【エリス】 本名:エリス=ダートリー(魔法使い)
 タツミのパーティーメンバー。ルイーダの店の「冒険者名簿」の「特選」に選ばれてい
る優秀な魔法使いで、最初から「Lv.14」の実力を持つ16歳。現在は城に勤めている。ロ
マリアに留学経験があり、彼女のルーラで一気にロマリアまで連れて行ってもらった。
 アルスに強く惚れており、彼の役に立ちたいと幼い頃から猛勉強を積み、12歳にして正
式な「冒険者ライセンス」を取得した才女。行方不明になる前に、アルスから別離を告げ
られるも健気に慕い続けている。
 次項サミエル・ロダムと一緒に、タツミからは「アルスは魔王に封じられたらしい。自
分はルビスの遣いでアルスに代わり勇者をしつつ魔王打倒を目指す」と説明されており、
ニセモノの勇者と知りつつ同行を承諾する。

【サミエル】 本名:サミエル=レイトルフ(戦士)
 アリアハン第二近衛隊の副隊長を勤めるエリート戦士。「〜ッス」という口調で話す、
少々老けて見える22歳。オルテガに強い憧れを抱いており、魔王討伐の遺志を継ぐため
に同行を承諾。アルス奪還という点にはあまり重きを置いていない。だがタツミが懸命に
勇者職を勤めようとする姿を見て、タツミ本人に協力する気持ちが強くなっている。

【ロダム】 本名:ロダム=J=W=シャンメール(僧侶)
 アリアハン宮廷司祭見習いの32歳。若い頃は「神父」を目指していたが、妹夫婦の住む
村が魔物に襲われたのを切っかけに、殺生を許された聖職「僧侶」に転向した。常に穏や
かで落ち着いた雰囲気を保ち、パーティーの保護者的存在。タツミも内心で頼っている。

【ヘニョ】(スライム)
 ポルトガからエジンベアへの航海中、船に紛れ込んでいたスライム。「縁起が悪い」と
船員たちに海に捨てられるところを、その愛らしさに一目で参ってしまったタツミに庇わ
れ、そのまま飼われることになった。基本的には草食だがなんでも食べる。しかし消化の
様子がすべて透けて見えるため、与えるエサは考えないといけない。名前の由来は過去の
番外を参照のこと。
229 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 00:07:02 ID:HnUADTix0
  _、_     
( ,_ノ` )y━~~~紫煙
230 名前: Stage.10.5 紹介 [5] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 00:07:40 ID:/C7eX2Ut0

■主な登場人物・アナザーサイド■

【ショウ】 現実での名前:八城 翔(やしろしょう)/本名:ラグエイト=ハデック 
 ドラゴンクエスト8の主人公であり、すでにプレイヤー八城翔への「移行」を完了して
いる。そのため現実におけるステータス修正がなく、ゲーム内での能力をフルパワーで発
揮することができる。呪文が使えるかは不明だが、ルーラらしき呪文を使用した描写があ
る。また自分の肉体のみに限定されるが、携帯電話を使って自由にゲームと現実を往来す
ることが可能。
 表向きは八城翔として普通の大学生をしているようだが、裏では謎の組織に所属してお
り、他のPC(プレイ・キャラクター)の動向を監視、場合によってはライフルなどの火
器を用いて拘束したり、「抹消」する任を負っている。
 彼のPL(プレイヤー)である本物の八城翔は美少女アニメのオタクで、ショウにクズ
呼ばわりされている。ゲーム世界から帰れなくなった状態らしいが、今どうなっているか
は不明。

【アレフ】 本名:アレフィスタ=レオールド
 ドラゴンクエスト1の主人公で、一條英治の妹と相互置換し、現実にやってきた。他の
PCと違い「入れ替わっても周囲の人間が気付かないほどPLとそっくり」というパター
ンに当てはまらない。まだ移行は完了していないため、ステータス修正・時間制限がある。
 一條英治の世話になり、タツミを半殺しにしろと頼まれて承諾するも、相手が自分の先
祖にして伝説の勇者ロトであることを知り、本気で襲う。ユリコに邪魔をされ逃走したあ
と、ショウに捕獲されどこかに連れ去られた。行きすぎた勇者教育を受けて育ち、人格的
に少々問題がある。アルスに「サイコさん」呼ばわりされている。

【謎の青年社長(?)】
 その言動から、ほぼドラゴンクエスト5の主人公と推測される。中央区のオフィス街の
高層ビルで、最上階のフロアにてショウを出迎えた。ショウが所属する組織の一員か、あ
るいはトップの人間かもしれない。移行が完了しているかどうかは不明。
 ゲーム内では正妻が二人おり、また現実でも似た女性たちをわざわざ探し出し、秘書と
してそばに置いている。
231 名前: Stage.10.5 紹介 [6] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 00:09:37 ID:/C7eX2Ut0

■その他の方々・リアルサイド■

【片岡氏(ユリコパパ)】
 お金持ちなユリコの父親。剣術は免許皆伝の腕前で、普段着は和装。一人娘のユリコを
大切にしており、三津原辰巳を毛嫌いしていた。
 タツミのフリをしたアルスと真剣試合をして一発で気に入り、すっかり仲良くなってし
まったが、ニセモノとバレた時が心配される。

【伯母さん(タツミの保護者)】
 タツミの保護者として一緒に暮らしている彼の伯母。幼い頃に亡くなったタツミの母親
の姉ということだが、それ以外はいっさい謎。昼間は寝ていて夜に出て行くことが多く、
これまでアルスとほとんど会話を交わしていない。アルスは「夜系の仕事をしているので
は」と推察している。

【タツミの両親】
 タツミが幼い頃、引っ越した先の街で二人とも死亡している。経緯は不明だが、タツミ
が話したがらないところから、ただの事故ではないことがうかがえる。
232 名前: Stage.10.5 紹介 [7] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 00:11:37 ID:/C7eX2Ut0

■その他の方々・ゲームサイド■

【サヤお母さん】
 アルスの母親。息子が急に姿を消したことを心配するも、タツミの正体を知っており、
タツミを信じてアルスの帰りをおとなしく待っている。またタツミのことも実の息子のよ
うに心配してくれる。おっとりしているようだが、優しくて芯の強い素敵な女性だ。

【デニーおじいちゃん】
 アルスの父方の祖父。アルセッド=D=ランバートの真ん中の「D」は、名付け親であ
るデニーおじいちゃんの「D」である。アルスのことに関するスタンスはサヤお母さんと
一緒だが、可愛い孫のことが心配でならない様子。

【アリアハン国王】
 オルテガを親友とし、忘れ形見のアルスを特別に可愛がっていた。母親のサヤのことも
強く気にかけている。タツミの話を信じておらず、アルスに成り代わろうとしている「紛
い物」をただちに捕らえて拷問にかけると言ってサヤに止められ、今度の試験の結果次第
で実行する、とタツミに厳しい条件を課す。
 ちなみに、世界退魔機構を提案したのがこの人。いち早く魔王の存在に気がついた国王
は各国に協力を呼びかけたが、先の大戦で大敗を喫し、世界統一国の成れの果てである弱
小国の提案に、他の国は口を揃えて「まずお前がやれよ」。親友であるオルテガを死地に
向かわせるハメになった(オルテガ本人はノリノリだったが)、という裏設定がある。
 決して悪い人間ではないのだが、いまいち空回り気味の王様である。
233 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 00:13:28 ID:AAevm/xRO
支援
234 名前: Stage.10.5 用語 [8] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 00:13:47 ID:/C7eX2Ut0

■用語/設定・リアルサイド■

【PC】ピー・シー
 プレイ・キャラクターの略。主にゲームの世界から現実にきた人間のことを指す。ショ
ウの組織で便宜上そう呼んでいる。

【PL】ピー・エル
 プレイヤーの略。本作では主にPCと入れ替わったプレイヤーのことを指す。これもショ
ウの組織で使われている呼称。「相互置換対象」と称することもある。

【相互置換】そうごちかん
 PCとPLが入れ替わる現象そのものを指す言葉。

【移行】いこう
 PCがPLと入れ替わって現実の存在となること。移行初期の段階では不完全な状態で
あり、能力に制限がかかる(ステータス修正)。完全に移行するためには「ゲーム世界の
プレイヤーがクリアを諦め、完全にゲーム世界の住人となる」という条件を満たさなけれ
ばならない。

【移行の完了】
 PCが完全に現実の存在となること。移行が完了したPCは、現実においてもゲーム内
同様の超人的な能力をフルに発揮できるようになる。
 また携帯電話を利用することで、ゲームと現実を往来することが可能となる。ただし自
身の肉体以外は、持ち込み・持ち出しできない(胃に残る未消化物さえも対象外)。
235 名前: Stage.10.5 用語 [9] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 00:15:36 ID:/C7eX2Ut0

【PCは単一的な存在】
 相互置換されたPCは、あくまでそのPLが所有するソフト内から出現した単一的な存
在であり、作品全体の代表としての存在ではない。
 ただし現段階では同タイトルから同キャラクターが移行した例はない。

【PLの影響】
 個々のPCについて、原作では表現されない詳細設定はPLの潜在意識に大きく影響を
受ける。どのような形で影響されるかは明確ではなく、PCの人格そのものに反映されて
いることもあれば、PCの生活環境や対人関係に影響を及ぼしている場合もある。

【PCのストレス】
 影響を与えるPLの潜在意識がゆがんでいる場合、PCに悪影響が及ぶ。
 たとえば、現実ではおとなしい性格の人間が、内心に暴力的な衝動を抑えつけ鬱屈を溜
めていた場合、PCが勇者にあるべからず凶暴な性格になってしまったり、PC自身は普
通でも周囲に暴力的な人間が多くなる、などの弊害が起きる可能性がある。
236 名前: Stage.10.5 用語 [10] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 00:17:37 ID:/C7eX2Ut0

■用語/設定・ゲームサイド■

【冒険者】
 魔物を退治して得たゴールドで生計を立てている人間の総称。「ダーマ冒険者協会」に
よって各専門職ごとにライセンスが発行されており、正式にライセンスを取得している冒
険者には様々な特典がある。しかし協会の管理下に置かれるのを嫌い、モグリでやってい
る人間も多い。

【冒険者職の中の「各職業」】
 「冒険者職」の中に「戦士」や「魔法使い」など専門職が区分されている。冒険者でな
くともライセンスは取れるが、ただの「魔法使いライセンス」よりも「冒険者職の魔法使
いライセンス」を取得する方が難易度が高い。また1年ごとに簡単な更新試験がある。
 基本的にこの世界における「職業」はすべて「やる気のある初心者を支援するため」の
制度であり、実務経験を問われることはない。取得後は全員が「Lv.1」からのスタートと
なる。

【冒険者職の中の「特別職」】
 ダーマ冒険者協会とは別の機関「世界退魔機構」が管理している特別な職業で、「勇者」
「賢者」などがこれにあたる。

【特別職の特典】
 特別職のライセンスを持つ冒険者は、以下の特典を受けることができる。
 ・加盟国、または加盟店のアイテムを安く提供してもらえる。
 ・ほぼ売買を拒否されない。
 ・アイテムの買取価格が、商品的価値の有無に関わらず売値の4分の3。
 ・宿屋に何時でもチェックイン可能。また宿泊拒否されない。
 ・真夜中でも教会の利用が可能。
 ・親族への生活補助金を、所属国家に支払うよう促す(強制ではない)。
237 名前: Stage.10.5 用語 [11] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 00:30:38 ID:pqiM/cEN0

【特別職の試験】
 かなりの難易度、年齢制限や一度不合格を取ると再試験は不可といった条件がある。
 1次試験と本試験とに分かれており、1次試験合格から3ヶ月は仮免期間で、その後の
本試験に合格してから正式なライセンスを取得できる。更新試験は半年ごとに行われる。
 ◆受験資格・30歳以下の健康な男女で、犯歴が無い者。初受験者のみ。
 ◆1次試験
  「ペーパーテスト」
   ・呪文理論 ・魔物学 ・その他学問全般
  「実技」
   ・初級剣術(各国の型でOK) ・初級槍術
   ・その他特殊武器(ブーメラン・鎖がま・杖などの特殊型の武器から選択)
   ・初等呪文(ホイミ・メラの成功率が100%・確実に発動する・確実に当てられる)
 ◆本試験
  「仮免期間の間に、以下の条件のうちいずれかを満たしていること」
   ・なにか大きな人助けをする
   ・魔物から村や町、教会など慈善組織(海賊等は含まれない)を護る、救う等
    (上記はいずれも援助対象者に真偽を確認し、虚偽が発覚した場合は
     ライセンスの永久剥奪及び罰金が科せられる)
   ・世界退魔機構が指定している試練をクリアする(ランシールの洞窟など)
 ◆更新試験
  「半年の実働期間中に本試験と同様の条件を満たしていること」

【勇者=「一級討伐士」】
 「勇者」の正式名称は「世界退魔機構認定特別職一級討伐士」という、「特別職」のひと
つである。以前は「一級討伐士」と呼ばれていたが、今は「勇者」という通称が定着してい
る。アルスやオルテガもこのライセンスを取得している。

【世界退魔機構(WMMO - World Monster Measures Organization - )】
 ほぼ世界中の国や街が加盟している、魔物被害の対策機構。エジンベアは未加盟国だが、
国内のほとんどの店は独自に加盟している。アリアハン国王が提唱・発足した。
238 名前: Stage.10.5 atgk ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 00:33:22 ID:pqiM/cEN0
本日の投下はこれにて終了です。
多数のご支援、ありがとうございました。
忘れている登場人物や設定、説明不足の部分などありましたら、
今後すこしずつ補完していきたいと思います。
239 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 02:33:26 ID:tPKJQVr20
久しぶりに来たが…これまた随分と本格的なのをやってるなw
240 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 08:02:34 ID:5xmqLCJWO
>>220
投下乙!
少しずつタツミの過去が明らかになってきたな。
アルスも本人に早く聞いちゃえばいいのにと思っていたが、
無意識に遠慮してたのか。

>>238
すげえ細かいな!
タツミとアルスの誕生日がわかりやすいww
241 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 20:05:26 ID:TUfCckLV0
では、予告どおり第9話を投下します。

LOAD DATA 第8話後半 >>166-173
242 名前: 迷鏡止水【1】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 20:08:28 ID:TUfCckLV0
「そうですか…ラインハット軍がこの修道院に…」

ラインハットから帰還した俺達の報告を耳にしたシスター・シエロ。
沈痛な面持ちで目頭を手で覆い、深い溜息をつく。
彼女達が毎日、神に祈ってきたのは『世界中の人々の平和』
それを裏切ろうとしているのは、他でもない人間そのもの。

「私達は…ここに留まります。」
シスター・シエロの決断。顔を上げ、窓の外に目をやりながら言葉を続ける。
「貴方がたの好意はありがたく思います。ですが、修道院の外は魔物だらけです。
 ここには老人や幼い子供もいます。連れて逃げるのは難しいでしょう。」

窓の外。手入れの行き届いた花壇の周囲を走り回る幼い少女。
それを幸せそうな顔で眺めるのは年老いた女性の姿。
多少の心得では、非戦闘員を庇いながらの逃避行は不可能だろう。

「じゃあさ、せめて近場の町まででも…」
言い掛けた言葉が詰まる。
ビスタ港が封鎖されている以上、逃げられる場所は三ヶ所。
まず、オラクルベリーは却下だ。ラインハット軍の第一目標に揚げられている。
次に、サンタローズ…ラインハット国境に程近いこの村も危険過ぎる。却下。
サンタローズの西に存在するアルカパの町は距離がありすぎる。
まさか、シスター達に樽に乗って逃げろなんて言えるわけもなく…

「…これは、八方塞がり…ってヤツだなあ…」
「こうなりゃ、もう一度城に忍び込んで力づくでデールを止めるしか…」
「いや、あれだけの騒ぎになった直後だ。それこそ難しいんじゃないかい?」

「ときに、ヘンリー様。一つお聞きしたいのですが…」
 黙ったまま、窓の外の小さな幸せを眺めていたシスター・シエロが口を開く。
243 名前: 迷鏡止水【2】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 20:10:09 ID:TUfCckLV0
「ヘンリー様の知るデール王は、そのような非道を冒せる御人でしょうか?
 兄のヘンリー様から見て、デール王の行為は本心からの物だと思われますか?」

どこまでも真っ直ぐなシスター・シエロの瞳がヘンリーを捉える。
ヘンリーは目を逸らさない。同じく真っ直ぐに、シスター・シエロを見据える。
「デールは俺とは違って、誰にでも優しい心の広いヤツだったよ…
 俺が子分と認めた男に、あんな外道な真似を出来るような男はいねえ。」

目線と同じく真っ直ぐなその言葉に、シスター・シエロの顔に笑みが浮かぶ。
「危険な場所ですので、本来はお教えするべきではないのかもしれませんが…
 南の塔の最上階に、ラーの鏡と呼ばれる真実を映す鏡が安置されております。
 ラーの鏡でデール様を映せば、その心の奥底に隠された真実が見えるやも…」

優しく心が広い弟。ヘンリーが語るデールの姿とは噛み合わない今のデール。
ラーの鏡…真実を映す鏡…それを使えば、デールの本当の心が見える。
きっと、ヘンリーが語る優しく心が広いデールが姿を現す。

「これは、決まり…でいいのかね?」
「ああ、あれがデールの本心であるわけがねえ。」
「行こう。急がないとラインハット軍が攻めて来る。」

三人で目を合わせ、頷き合う。
目的地は南の塔。

「今のヘンリー様が、ほんの少しでもデール王を信じておられるのでしたら、
 信じるままに王を導いて下さいませ。それが兄であるヘンリー様の役目です。」
子供をあやす母親のように、優しく語りかけながるシスター・シエロ。

優しい言葉と同時に向けられた笑みはどことなく悲しげにも見えた。
…のは気のせいだろうか?
244 名前: 迷鏡止水【3】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 20:12:16 ID:TUfCckLV0
          ◇           ◇
修道院の南に存在する、神の塔と呼ばれる建造物。
その巨大な門は、神に仕える修道女にしか開く事が許されない。

荘厳な建造物の前に跪き、祈りを捧げる女性はマリア。
俺達と一緒に神殿を逃げ出した後、洗礼を受け修道女となった彼女は、
俺達が神の塔に赴く話を聞き、自ら旅の同行を名乗り出てくれた。

神聖なレリーフが刻まれた重厚な門。
固く封印された巨大な門が、乙女の祈りに呼応してゆっくりと開く。

「さあ、参りましょう。」

足場の狭い塔の中。先頭をサトチーが進み、前方の安全を確実に確保。
二番手にはヘンリーが、非戦闘員であるマリアを守る形で進む。
隊列の最後尾を守るのは俺とスミス。
高い場所が苦手なブラウンには馬車番をしてもらっている。

太陽がギラギラと照り付ける広大な砂漠に程近い場所にありながら、
塔の内部は風がよく通り、ひんやりとして心地良い。

「ラーの鏡…だっけ?相当な宝物らしいけど、どこにあるんだろうな。」
「…上階から…何か神聖な力を感じる…」
「神聖な力?死体のあんたがウロついて平気なのか?」
「…私は…魔王の魔力の呪縛から逃れた存在…心配ない…」

か弱い女性を守らなければならない中、スミスの頑丈さは心強いが、
内心、神聖な力とやらでいきなり成仏されでもしないかと気が気ではない。

「…デール王…奇妙な道具から炎を出したらしいな…」
普段は感情に乏しいスミスにしては珍しい、興味の色を感じさせる声。
245 名前: 迷鏡止水【4】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 20:14:33 ID:TUfCckLV0
「…サトチー卿達は…それを魔法の道具の類だと認識しているようだが…
 私の生前の記憶では…そのような道具はこの世界には存在しない筈…
 お前なら…それが何かを知っているのではないか?」

目線は前に向けたまま、ぴくり…と俺の全身が反応する。
我ながらわかりやすい反応だと思う。肯定の返事は必要ないだろう。

アレに似た道具を俺はよく知っている。
アレは俺がこっちの世界に持ち込んだ道具。
豪華な装飾という違いはあれ、オラクルベリーで売り払ったライターそのもの。

「…魔法理論で作動する道具なら…力の発現には何かしら動作が必要となる…
 精神集中…呪文の詠唱…対外的な意思表現…それらを何も必要としない…
 それは魔法理論の定義から外れる…ならばなぜ炎が発現したか?
 恐らく…私達の知る理論とは別の要素で作動する道具だろうと予想する…」
その姿に似合わないインテリジェンスを発揮するスミスに驚くと同時に、
一つの疑問が俺の頭に浮かぶ。

科学の概念が存在しないこっちの世界で、容易くライターを扱って見せた王。
オラクルベリーの道具屋でライターを売ったという経緯こそあれ、
情報伝達、構造解明、技術伝播、製品開発、操作習得…
この世界の科学レベルを考えると、全ての段階におけるスピードが早すぎる。
ラインハットという国家が、たまたま高度な技術力を持っていたのか…
もしくは…
「…私が投げかけた疑問とは言え…思案に夢中になりすぎるのは感心できん…」

ぐしゃり、という耳障りな音にハッと我に返る。

天井からぶら下がった目玉が、血の通わない冷たい腕で握り潰される。
前方では、毒々しい紫の植物に鞭を振るうサトチーの姿も見える。

畜生。人が考え事をしている時に空気の読めないモンスターだな。
246 名前: 迷鏡止水【5】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 20:17:49 ID:TUfCckLV0
――――――――――――
「イライラさせるヤツだったなあ。眩しい光とか反則じゃね?」
「…接近戦主体のお前にとっては…相性の悪い相手だろうな…」
「ま、ヘンリー様がいれば、マリアさん他三名の安全は保証されてるって事よ。」
得意のイオでモンスターを蹴散らしたヘンリーが気分爽快と言った顔で笑い、
それにつられたかのように、マリアさんもクスクスと笑ってみせる。

俺はと言うと、初っ端にインスペクターの放つ眩しい光で目を眩まされ、
『目がぁ〜目がぁ〜!!』と、軽くパニック。
手に触れた触手を半ば強引に引き摺り下ろし、その目玉を剣で叩き潰した。

惚れ惚れするほど不細工な戦いだったな…畜生。

「はぁ、もう少し攻撃魔法を練習しねえとなあ…ん?サトチーどうした?」
俺達から少し離れた場所で、潰れたインスペクターの残骸を調べているサトチー。

何か宝物でも見つけたかな?
とどめを刺しきれてなかったとか?
実は『ぷるぷる ぼくはいいインスペクターだよ』だったとか…
まさかね。

「サトチー?」
「ん?…ああ、済まない。先を急ぐんだったね。」
二回目の呼びかけでやっと気が付いたらしく、俺達の所へ戻って来る。

「あの目玉がアイテムでも持ってたか?ホラ、親分に献上しとけ。」
「ははは…残念だけど何も持ってなかったみたいだね。」

ヘンリーと笑い合いながら、隊列の先頭を進むサトチー。

最近、サトチーが上の空になることが多いんだよなあ…人の事言えねえけど。
247 名前: 迷鏡止水【6】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 20:20:50 ID:TUfCckLV0
足場の悪い吹き抜けを恐る恐る通り過ぎ、いくつかの階段を上った先は、
狭く入り組んだ下層と違い、一直線にのびる通路のみという実にシンプルな、
下層とは明らかに雰囲気の違う空間。
その通路の奥の祭壇。燦々と差し込む太陽の光を浴びて輝く鏡が見える。
あれが、ラーの鏡…

だが、祭壇へ続く通路の途中には床の裂け目が存在し、俺達の行く手を阻む。
幅は10メートル強といった所か、助走つきのジャンプでも届かない距離。
裂け目の縁から下を覗き込むと、遥か下の方に中庭が見える。

「イサミ。ジャンプ。」(*´∀`)b
「斬るぞ。」
にこやかに俺の肩を叩くヘンリーに対して、思わず剣を向けそうになる。
落ちたら一階までまっ逆さま…潰れたトマトみたいになっちまう。
「マジになるな。冗談だよ。」

「神は、鏡を手にする者の勇気を試されると言われています。でも、これでは…」

…悪趣味な神だな。コレじゃあ身投げじゃねえか、せめてバンジーにしろよ。
マリアさんの語る神に、心で毒づきながら祭壇を見やる。
「ロープを引っ掛けるような取っ掛かりもないね。」
「…跳ぶしかない…な…」
「そうだよなあ…跳ぶしか……は?」

スミスには珍しい冗談か、もしくは俺の鼓膜がイカレたかと思ったが、
スミスは既に後方でクラウチングスタートの体勢を取っている。

「…落ちたらもう一回登れば良い…幸い…私は痛みも感じないしな…」
「ちょ…待…」

サトチーが静止するよりも早く走り出し、スミスが一気に跳んだ。
248 名前: 迷鏡止水【7】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 20:23:38 ID:TUfCckLV0
やっぱり跳躍力が足りねえ。スミスはタフだけど基本的に鈍い。
跳躍したスミスの体は、目標の手前で失速。放物線を描いて落下をはじめる。
その姿は、一秒後には床の裂け目の中に消えてしまっているのだろう。

…1…2…3…4…5秒が経過してもスミスは、まだ俺の視界の中にいる…

俺は呆然としながら、足場のない空間を歩くスミスを見つめる事しか出来ない。
不思議そうな顔をしながら歩を進め、祭壇に安置された鏡を手に取るスミス。

「…見えない足場があるみたいですね…」
腰を抜かしてしまい、自力で立つ事の出来なくなったマリアが呆けたように言う。

「…受け取れサトチー卿…ラーの鏡だ…」
何もない空間の上、駆けつけたサトチーに鏡を手渡すべくスミスが一歩進み出る。

               ||||
               |||| ヒュン!!
                ∧_∧
                (´∀` )
'''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''``````''''''''''''''''''

……
瞬間。スミスが裂け目に消え、数秒後には下のほうからドチャリ…と音がする。

「スミスーーーーーーー!!」
「あそこだけ、足場が途切れてたみてえだな。」
サトチーが叫び、妙に冷静なヘンリーが状況を分析。
マリアさんはあまりの事態に気絶しちまっている。

本当に悪趣味な神だな。人(?)の命をなんだと思ってやがる。
神様に会う機会があるのなら、チェーンソーを持参しようと思います。
249 名前: 迷鏡止水【8】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 20:29:49 ID:TUfCckLV0
慌てて一階に下りてみると…うん、予想通りと言うか…酷い事になってた。

体半分××ったスミスを中心に、駅のホームにぶち撒けてあるアレみたいなモノやら、
流し台の排水溝に溜まったソレみたいな残骸やら、夏場放置したカレーみたいな…(ry
…色んな○○がばら撒かれた中庭は、まさに地獄絵図。

「…鏡は無事だ…改めて受け取れ…」

そんな状況でも生きているのは、さすが痛みを感じないアンデッドと言うべきか、
ベホイミで治療を受けながら、平然とサトチーに鏡を手渡している。

「イサミよお…こう言っちゃ悪いが、スミスの旦那に任せて正解だったな。」
「ああ、俺達だったら破裂したミートパイみたいになってたろうな…」

「よし、これで大丈夫だ。どうだい?動き難い場所とかあるかい?」
「…問題ない…パーツは足りているし…再接合も上々だ…」
体のあちこちを動かしながら、スミスが事も無げに言う。

「それじゃあ一度、修道院に戻ろうぜ。マリアさんも疲れてるだろうしさ。」
「そうだね。軽く休息を取って、もう一度ラインハットに忍び込む作戦を練ろう。」

ラーの鏡が太陽の光を反射して輝く。
鏡の中にはどこまでも透明な空色が広がっていた。


イサミ  LV 15
職業:異邦人
HP:69/74
MP:11/11
装備:E天空の剣 E鎖帷子
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌
250 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 20:32:42 ID:TUfCckLV0
第9話投下終了です。

塔の最上階から落下しても無事なDQ勇者はミステリーだと思います。
251 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 21:12:18 ID:JgyGZVR80
乙。スミスが無駄に格好良すぎるw
ラーの鏡に、イサミ君がどう映るか心配するのはちょっと行き過ぎかね。
252 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/05(月) 21:13:44 ID:pOH88M600
投下乙でございます。
スミスかっこいい! 頭も良いし、鋭い洞察力もあるし、元は偉い学者だったり?
カタカナ語なくなりましたね。孤独だった頃と違って、常に回復してくれる仲間がいるから、
声帯器官も前より修復されたからでしょうか。
253 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/06(火) 00:54:37 ID:iD1GAL4l0
乙!
こんどやるときスミスを仲間にしよう
254 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/06(火) 10:44:39 ID:KXyBII/q0
乙!スミスかっこよすぎる!
「サトチー卿」と呼ばれると「サトチー」がすごくカッコいい名前に見えてくるなw
255 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/06(火) 12:11:22 ID:2/n6cuIq0
> 問題ない…パーツは足りているし…再接合も上々だ…
スミスさん、すごい・・・・

しかし、ライターはいかに・・・。
やはりこちらの世界からの人間なのだろうか・・・。
256 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/11/06(火) 21:41:51 ID:iRpgzK9P0
           FF・ドラクエ板

 『もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら』

         10スレ記念合同作品


    〜作り合わされし世界〜

    → 冒険をする
        1:しなの  Lv10
     → 2:ヨウイチ Lv9
        3:タロウ  Lv6
257 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/11/06(火) 21:44:55 ID:iRpgzK9P0
二十八、 始まりへの帰路

「なぁ。 さっきのモンスターってお前より強いのかな?」
「キィ! キキィキィ」
「メイジドラキーっていうのか。
 色違いなだけじゃなくて魔法まで使うし、やっぱり強かったんだろうな」

マウントスノーからだいぶ離れた後、ヨウイチは初めて攻撃魔法というものを経験します。
ドラオをピンク色にした外見だけでなく、不思議な炎の波を起こしてきました。
炎の波はメイジドラキーのつぶやきの後に起こったので魔法だと気づいたのです。

「剣で殴ってもなかなか傷をつけられなかったけど、負ける気はしなかったよ。
 なんてったってブルジオさんにもらった革の鎧があったからな!」
「キキ?」
「いや、熱かったよ。
 炎がこう… バァーっと。 お前も見ただろ?
これが旅人の服だと思うと恐ろしいよ。
…けど鎧の下は普通に布で出来た服だし、やっぱり恐いことに変わりは無いかも」

言いながらヨウイチは銅の剣を抜き、眺めます。
刃は若干こぼれており、切れ味を感じることが出来ません。
そもそも銅の剣は斬るというより殴りつけるふうに使うので、鋭い刃ではないのです。

「銅の剣… 何度も助けてくれたんだけどそろそろ限界だよ。
 そういったって、新しいのを買う金もないし…」

ふぅとため息をついてから、銅の剣を鞘へ収めます。
258 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/11/06(火) 21:48:29 ID:iRpgzK9P0
「まぁ、とりあえず今は大丈夫そうだからいいか」
「キキィ?」
「これからか…
 神殿の手がかりはなんにも無いし、いちどクレージュへ帰ろうか。
女将さんも心配してるだろうし」
「キー! キー!」
「ははっ。
 俺も早く女将さんのご飯を食べたいよ!」

後ろに大きな山が、だんだんと小さくなっていきます。

「この石版と… どこかにある神殿があれば元の世界に帰れるんだ、きっと……」

ドラオはふわふわ軽く飛んでいましたが、ヨウイチの足元には一歩二歩と踏み込めた後がうっすらと残っていました。
259 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/11/06(火) 21:52:10 ID:iRpgzK9P0
二十九、 モンスター

帰りは順調に進んでいる、つもりでした。
ところが、何処で間違えたのか帰り道とは違う土地へ入り込んでいたのです。
二人は気持ちを落ち込ませないために気づかないふうを装っていましたが、
嫌でも気付かされる事があり、元の路へと引き返そうとしていました。

「くそっ… ドラオ、薬草はいくつ残ってる?」
「キ… キィ」
「五つか。 まずいな…
 お前は怪我してないか?」
「キィキ」
「大丈夫だな。
 とにかく、なんとかしてここを…」
「キキィ、キキキ」
「それは、俺も気付いてたんだけど、間違いであって欲しかったよ。
 …お前の言うとおり、ここは帰り道じゃないみたいだ。
地形が似てるから大丈夫だろうと思ってたんだけど」

メイジドラキーと遭遇したときに周りを良く見渡せばよかったのです。
あの時から方向を見失っていました。

「モンスターが強すぎる…
 もうこの剣に鎧じゃ太刀打ちできそうには…
もしかするとここで…」
「キ! キーキーッ!」
「ふぅ、そうは言っても薬草は節約しなきゃだめだよ。
 とにかく、どこでもいいから町へいける路を見つけるまではガマンするよ。
目処がたつまでとにかくモンスターからは逃げるんだ」

ヨウイチのお腹には大きな爪痕がありました。
大きく削られたそこからは勢いこそなくなりましたが血がしたたります。
260 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/06(火) 21:54:34 ID:aGQ9ch840
支援!
261 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/11/06(火) 21:57:55 ID:iRpgzK9P0
「ここなら、隠れられそうだ」

ヨウイチが見つけたのは大きな岩に囲まれた平地です。
痛みと出血で弱った身体を休める事にしました。

「イテテ… まいったな…」
「キィ…」

ドラオが心配そうにヨウイチを覗き込みます。

「だいじょうぶ、少し休めば元気になるよ」
「キィ〜?」
「いや、いい。 ほんとに大丈夫だから」
「キキッキキキィィ」
「…わかったよ、薬草ひとつ食べるから。
 それだったらいいだろ? お前、戦えもしないのに探しにいくったって…」

ドラオはヨウイチのために薬草を探しに行こうとしていました。
ですが、こんなにもモンスターの強い場所で一人にさせるわけにはいきません。
ヨウイチは荷物から薬草一つを取り出し口へ放り込みました。

「むぐ、ニガイ………
 ほら、傷口がふさがったよ。 な?
もう大丈夫だ」
「キィ〜〜」

ドラオが安心したようにくるくる飛び回ります。
そんな姿を見ていると、なんだかずっと昔から友達だった気がして、ずっと一緒に旅をしたいとも思うのです。
けれどヨウイチは別世界の人間で、今まさに元の世界へ帰る方法を探しています。
帰ることが出来れば別れが訪れ、お互いは二度と会うこともないでしょう。
ですからこの瞬間をせめて楽しく、無事に旅を終わらせたいと強くつよく信じるのです。
262 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/11/06(火) 22:01:54 ID:iRpgzK9P0
「傷も治ったし、暗くならないうちにいこうか」
「キィ」

立ち上がり一歩、感じたことの無い不穏な空気があたりを包み始めました。
ヨウイチはとても嫌な予感がして、ドラオを促し早足でもときたであろう路を引き返し始めます。
空にはとうとう夕暮れが始まろうとしていました。

「…やばいな」

その時です。
はっきりと何かが駆け始めたと感じた瞬間、目の前に不安の正体が姿を現しました。

「くそ!!」

急いで銅の剣を突き出します。
ドラオも一生懸命にヨウイチのやや後ろへと下がりました。

「なぜ人間とわれわれ魔の者が行動を共にしている?」

全身をローブで覆われ片手に杖を携えるモンスター、まどうしです。

「お、俺達に戦う意思は無い! だから─」
「ドラキーよ、貴様はこの人間に操られているのか?
 ならばいますぐその縛を解いてやろう」

ヨウイチの言葉を無視し、まどうしがスライムナイトと同じような仕草を始めます。

「やめろ!!」
「…ラリホー!」
263 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/11/06(火) 22:06:54 ID:iRpgzK9P0
剣を振りかぶりまどうしへ切りかかりましたが、刃先が当たる瞬間身体から力が抜けてしまいます。

「う、あ、なんだねむい…」

とても我慢できるような眠気ではありません。
まどうしは何も無かったかのように再び、ドラオへおかしな術を施しています。
ドラオをみると怯えてはいましたが、目は釣りあがり明らかに変化し始めていました。

「くっ…」

ドサリと地へ身体ぜんぶを横たえ、重くなったまぶたと一緒に意識が薄れていきます。
どうにか目線だけをドラオへ向け、驚きました。
それはドラオではなく、ヨウイチを今にも襲わんとするモンスターと化していたのです。

「どう、して…… どらお… ドラオー!」

力を絞りドラオへ呼びかけます。
ドラオがどうしてしまったのかはわかりませんが、ヨウイチを見ながらただケケケと笑うだけ。

覚えているのはそこまでです。
もう完全にヨウイチは、求めない深い眠りへと落ち、生きているのか死んでいるのかわからなくなりました。
264 名前: タカハシ ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/11/06(火) 22:07:43 ID:iRpgzK9P0
今日は此処まで。
お粗末さまでした。

まとめ作業は停滞しております。
いましばらくお待ちください。
265 名前: タカハシ ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/11/06(火) 22:08:32 ID:iRpgzK9P0
>>260
支援ありがとうございました!
266 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/06(火) 22:26:54 ID:aGQ9ch840
乙!! ヨウイチもドラオもヤバイ……(´;ω;`)ブワッ
267 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/06(火) 22:47:34 ID:GzrDtcvZ0
ぐあ、まどうし、こぇぇぇぇ。
無事だといいな・・・・。
268 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/06(火) 23:57:03 ID:8RyexqQ60
おお、何てこった!ドラオよ〜
またエライとこで終ったなあ。続きが気になるううううううう!

タカハシさん乙でした!
269 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/07(水) 14:29:14 ID:2VBeNSHC0
いわゆるひとつの、次回お楽しみにってことだな。
270 名前: ◆Tz30R5o5VI [sage] 投稿日: 2007/11/09(金) 03:09:47 ID:xbdIqUd9O
>>1
271 名前: ◆Tz30R5o5VI [sage] 投稿日: 2007/11/09(金) 03:19:47 ID:xbdIqUd9O
携帯版まとめのほう、ロマリア編3と4が更新されてないけど誰に頼めばいいの?
272 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/09(金) 05:24:56 ID:gUqg4lxWO
>>271
まとめサイトにある報告BBSに書き込んでおけば、対応してくれると思いますよ
273 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 07:05:39 ID:q0MZk8+R0
―承諾の承―(>>198-206

俺はゲーム上の出来事に干渉しないため何もしないと決めた。
だが本当に何もしないというわけではない。
要するに導かれし者たちのような主要キャラに接触しなければいい。
ゲームでのイベントを変えるようなことをしなければそれで良いわけだ。

そう考えればいろいろできることは多い気がする。
俺はこの世界のことを知りたいという好奇心にかられてしまっているのだ。
建物、食べ物、服装、文化、風習、動物、植物。俺の興味は尽きない。
しかし、世の中知らない方がいいことがあるものだ。
だが俺は知ってしまった。この世界のモンスターの恐ろしさを。

俺はいつの間にかブランカの敷地から外に出てしまっていた。
そして何か見たことのない生き物に出くわした。
大きなくわがたのような昆虫。
分かった。あれはモンスターの「はさみくわがた」だ。

奴は俺に気がつくといきなり襲い掛かってきた。
巨大なはさみが俺の腹部を締め付けてくる。
はさみのとげが肉にぐいっと食い込む。

痛い。

さらにぐいぐいと食い込む。信じられないような力で締め付けてくる。
ぐいっ。ぐいっ。ぐいっ、ぐい、ぐいぐいぐいぐい……

痛い痛いいたい痛いイタイいたい痛い!
異常なほど腹が熱い。苦しい。息ができない。
はさみが取れない。取れない取れない取れない。
取れない外れない動けない逃げられない助からな……
274 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 07:08:43 ID:q0MZk8+R0
ああ、俺も終わりなのか、と思っていると急に締め付けがなくなった。
そして、直後に何か焦げ臭い匂いが鼻を襲う。
しかしそんなことを気にする余裕はなく、俺はぜいぜい言いながら空気を吸う。
痛みと苦しみから開放され、俺はやっとこの世界が夢ではないと実感した。

「そんな格好で町の外に出るなんて自殺行為よ。」
急に声をかけられて俺は少しばかり血の気が引いた。
声のしたほうを見ると女の子がいた。しかもすごい美少女。

「そいつはもう倒したから大丈夫よ。怪我はなかった?」
そう言われてはじめて、何かが燃えていることに気づいた。
焦げた匂いをさせていたのは、はさみくわがただった。
彼女が助けてくれたのか。ああ、まるで女神のようだ。見た目も含めて。
俺は地獄からいきなり天国に来てしまったようだ。

はさみくわがたの様子を見るから判断するにおそらくは魔法で倒したのだろう。
俺は改めて自分がドラクエの世界にいるんだということを思い知った。
この娘は魔法使いなんだろうか。
ドラクエ4の魔法使いといえばマーニャかブライだ。
だが、この娘はマーニャではないだろう。
この可憐な少女があのふんどし姉さんのわけがない。
いや、決してふんどしが嫌いだというわけではないのだが。
言うまでもないが彼女がブライのわけがない。あるはずがない。

つまり俺は彼女に干渉しても問題ないわけだな。よしよし。

「助けてくれてありがとう。何かお礼をさせてもらえないかな。」
俺は思い切って彼女に言ってみた。
彼女は少し迷ったようだがすぐにこう答えた。
「それじゃ私の買い物に付き合ってくれる?」
俺は二つ返事で承った。
275 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 07:10:45 ID:q0MZk8+R0
買い物といっても彼女が買うのは日用品ばかりだ。
洋服やアクセサリーではないけれど、そこまでデートっぽくなくても満足だよ俺は。
聞けば彼女は田舎に住んでいて、ときどきこうしてブランカまで買い物に来るそうだ。
村人の分も含め生活に必要なものを調達するのだという。
可愛い上になんていい子なんだ。
こういう娘は幸せにならなきゃ嘘だよな。
ああ、できることなら俺が幸せにしてやりたい。それで俺も幸せになりたい。

「重くない?」
「これくらい大丈夫さ。」
俺は彼女の買う品物の荷物持ちをしている。
ああいい子だ。俺のことを気遣ってくれる。いやーホント可愛いな。
こんな可愛い娘と知り合えるなんて現実世界じゃいないよなー。

いままで知り合った可愛い子を思い出そうとすると小学生時代までさかのぼってしまう。
同級生だったリカちゃんという可愛らしい子がいたんだ。
リカちゃんは自分のことを「僕」というんだよな。
そのことで皆にからかわれていたけど、俺だけ可愛くていいじゃないかって言っちゃってさ。
小学生にありがちなことだけど、今度は俺がからかわれたりしていたっけ。いい思い出だ。
そいうえば小学校の同窓会の話があったんだよな。
行ってみようかなー。いや、無事に帰れたらの話だけど。
でもこんなかわいい娘と知り合いになれるなら帰らなくてもいいかなーなんて……

「どうしたの。何か考え事?」
「いやなんでもないよ。」
彼女が俺の顔を覗き込むように見てくる。
俺の目の前に彼女の顔がある。
改めて見てもやっぱりいい。なんというか神秘的な美しさだよ。
276 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 07:12:47 ID:q0MZk8+R0
何かこうして2人で日用品を買うのって夫婦みたいだよな。
こんな嫁さん欲しいよなー。
朝起きたら彼女が朝食を作ってくれているのだ。
ええのう。実にええのう。

嫁といえばこんな童話がある。ネズミの嫁入りという話だ。
ネズミが最強の婿をもらおうと太陽に嫁入りしようとする。
しかし太陽は雲に隠されてしまう。そこで次は雲にもらわれようとする。
だが雲は風に飛ばされる。その風は壁にさえぎられてしまう。
壁に嫁入りをしようとしたときその壁はネズミに向かってこう言うのだ。
「私が最も強いだなんてとんでもない。壁を簡単に破る者がいるではないですか。」
それを聞いてネズミたちは悟ったのだ。
世界で一番強いのはアリーナ姫であると。

以上ドラクエジョークでした。絶好調だな俺。

しかし幸せな時間というものは長くは続かないものだ。
そのときは突然にやってきた。

「今日は荷物を持ってくれてありがとう。」
彼女の買い物が終了した。彼女はこのまま自分の村まで帰るという。

お別れか。お別れのときなのか。
このまま終わっていいのか。

否! なんとしても次につなげなければ。
「君はどこに住んでるの? 良かったら送るよ。」
俺は再び精一杯の勇気を振り絞って聞いた。
だが……
277 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 07:14:19 ID:q0MZk8+R0
「私の住んでる場所を聞いてどうするつもりなの!」
ああ、ものすごい拒絶反応……。ストーカーだと思われたのだろうか。
よく考えたらモンスターの出るなか俺が送るなんてできないんだよな。
そうだよ。俺がバカだったんだ。全ては俺のせいですよ。

俺が唖然としているのを見て彼女は自分の口調のきつさに気づいたようだ。
「ごめんなさい。でも、どうしても教えられないの……」
変に気を使わないでくれ。いっそのことばっさり切り捨てておくれ。
クリフトみたいにマホカンタしてる敵にザラキ唱えれば楽に逝けるかな……

振られた。なんだろうこの悲しさ、この寂しさは。
何か最近これに似た経験をした気がする。どこでだっけ。
思い出した。姉ちゃんが子供の名前を考えているときだ。
俺が「トンヌラというのはどうだろう?」と提案したときの姉ちゃんの反応。
もちろん冗談だったのに、姉ちゃん本気で嫌がっていたっけ。
あれ昔だったら乗ってくれていたよ。ちょっと寂しかった。
でも、意外なことにお義兄さんのほうが話に乗ってくれたんだよな。
姉ちゃんはいい人を見つけたもんだ。
それなのに俺ときたらゲームの世界ですらこのありさま……

名前といえばこの娘の名前を聞いていなかったじゃないか。
「せめて、せめて名前だけでも教えてよ。俺の名前はジンって言うんだ。」
その女の子はすぐに笑顔になってこう言ってくれた。
「名前なら教えてあげられるわ。」
しかし彼女の名前を聞かないまま別れたほうが楽だったのかもしれない。
俺は世の中には知らない方がいいことがあると改めて思ったのだ。

「シンシア。私の名前はシンシアよ。」

―「転職の転」へ続く―
278 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 11:40:35 ID:Hr84AUuX0
うは、女勇者きたーーー(・∀・)
279 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 12:03:24 ID:Bo4/6xxCO
シンシアは勇者じゃなくてエルフの方やんw
280 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 16:04:24 ID:YPLfSd2l0
おお、そうだった・・・・orz
281 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 17:50:34 ID:ou84x4oN0
>>277

スラスラと読めてしまうのは文章の巧さか
物語も今までのSSと違う切り口で絶妙!
続き楽しみにしてるよ
282 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 20:42:17 ID:IAR8AtOx0
干渉しちまったわけだなw
面白い。続き楽しみにしてます
283 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 21:23:32 ID:s21p2SaR0
作り合わされし世界

           FF・ドラクエ板

 『もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら』

         10スレ記念合同作品


    〜作り合わされし世界〜

    → 冒険をする
        1:しなの  Lv10
     → 2:ヨウイチ Lv10
        3:タロウ  Lv6


>>263より
284 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 21:26:37 ID:s21p2SaR0
三十、 こころ

クレージュの宿屋にいました。
身体は調子よく、天気はカラカラで気持ちよい気候です。

「女将さん、おはよう」
「ああ、今ちょうど暇になったところだよ」

そういって女将さんがお茶の入った器二つと一緒にヨウイチを席へ座らせます。

「おはよう。
 …どうだい、落ち着いたかい?」

まどうしとの戦いから、ヨウイチは眠ることもせずただクレージュを目指したのです。
宿屋へつく頃にはすっかり疲弊しきってあまり話もせず一晩を過ごしていました。

「うん…」

ヨウイチは一つうなずき話し始めました。

「…ドラオなんだけど、さ。
 ドラオは死んでしまったんだ。 理由、全部は俺が弱いせいだった」

285 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 21:33:15 ID:s21p2SaR0

「キ、キィィィ!」

瞳がぼんやりと世界を写し、ドラオの声と戦いの風を感じます。

「う… ど、ドラオ?」

まどうしが放つ魔法「ギラ」を素早い動きでかわすドラキー。
ヨウイチにはわかりませんでした。
ドラキーの身体は白く、まどうしと同じ攻撃魔法を使うのです。
ドラオのような雰囲気を持ちながら、けれどもドラオとは違っていました。

「お、おい! ドラオ… なのか!?」

まどうしはかなり弱っていましたが、巧みにギラをドラキーへと引火させます。
炎を浴びるドラキーもまた火傷や傷を負いつつ、鋭いツメで応戦していました。

「なぁ!!」

とっさに、戦いのさなかだというのに声を荒げてモンスターへと近づこうとしましたが、
どうやら眠らされている間に攻撃されてしまったようです。
足や腕に激痛が走り立ち上がるのがやっとでした。

「キッ!!」
「ぐぅっ!!」
286 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 21:38:44 ID:s21p2SaR0
その時、戦いは決着を見ます。
ドラキーの胴体にはまどうしの杖が飲み込まれ、まどうしの首はドラキーのツメによって切り裂かれたのです。
ヨウイチは動けず、お互いが崩れ落ちていくのをただ見ているしか出来ません。
やがてまどうしの首から噴出した血はわずかになり、地面をじわりと染めるだけになりました。
ドラキーは杖の当たり所が悪かったのかそのまま地面へ落ち、大きくゆっくりと呼吸を繰り返すだけです。

「あ… おい! お前はドラオなのか?!」

ヨウイチがようやく我を取り戻す頃には、白いドラキーの息も絶えつつありました。
腕に抱え上げるとその身体はとても重く、力が失われつつあることを知らしめます。
そして、顔を見てはっとしました。
表情はいつも見慣れたドラオだったのです。
色は違いますが元のドラオに戻り、戦っていたのです。

「き… きぃききぃきききききぃ…
 き、キィキー、キィー……」

ヨウイチの身体の傷が治るのと一緒に、ドラオの身体が不思議な光に包まれすぅと消えてしまいます。
両の腕は軽くなりそのまま空を抱くだけでした。
287 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 21:40:53 ID:BU4ljMjbO
支援(T_T)
288 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 21:43:39 ID:s21p2SaR0

「…ドラオが守ってくれたんだね」

女将さんはショックをうけていましたが、優しく言います。

「そう、ドラオ。
 最後に回復魔法をかけてくれて、それから言い残して…
どうして白い身体になったのかはわからないけど、そんなことより…」

悔しくて仕方がありません。
大事な友達が、ずっと一緒に歩いてきた友が、自分を守るために命を落としたのです。

「ヨウイチ」
「……俺はずっと、ずっと一緒に旅したいって。
 俺が守っていくはずだった、なのに眠って……
女将さん、ドラオは俺を恨んだりしてないかな」

女将さんは少し黙って、それからヨウイチの肩に手を置いて言いました。

「あんたはなんにも悪くないんだよ。
ただのモンスターから戻ったのも、ドラオのこころにヨウイチがいたからなんだから。
最後の言葉はきっと、守れてうれしかったんだろうね。
…恨んだりなんかしないよ、ドラオはヨウイチが大好きだったんだよ」
289 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 21:49:06 ID:s21p2SaR0
三十一、 旅の続き

「じゃあ、女将さん。
 たくさん、返せなかったけどいっぱい、ありがとう」
「いいんだよ。
 私もあんたと出会えてうれしかったし。
きっと、目的を果たせるといいね。
良い意味で、もう会うことがない事を祈ってるよ。
……まぁ、どうしようもなくなったらいつ戻ってきてもいいんだよ!」

その言葉にうなずいて宿屋を離れ、なるべく振り返らずクレージュの町を後にします。
少し外れた大地の上で大きな空を見上げて深呼吸し、それからまた歩き始めました。



それから二週間ほど後の晩、海の見える森の中にドラオの墓を立て言いました。

「いろいろあったよなぁ」

ネックレスをその墓へおき、旅やドラオやシエーナの女の人、そしてゲレゲレを思い出しくすりと笑います。

「しっかし、女将さんもよくこんな剣を手に入れられたな」

体のすぐ側に銅の剣よりもっと強力な破邪の剣を携えます。
女将さんが神殿の噂と一緒に入手しておいてくれたものでした。
290 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage 支援] 投稿日: 2007/11/10(土) 21:52:50 ID:q0MZk8+R0
.
291 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 21:55:00 ID:NYRwan280
支援
292 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 21:56:05 ID:s21p2SaR0
「…ドラオ、本当ならお前と一緒にこの場所にいたかもしれない。
 俺はお前が本当に俺と旅をしてよかったのかってまだ迷ってる。
もし、女将さんと一緒だったら死なずにすんだのに…
ほんとに俺を守れてうれしかったのか?」

クレージュを出てからどの町へ立ち寄ってもキレイな場所を見つけても、素直に喜べませんでした。
それは、今までならドラオと分け合ってきた喜びや感動が半分になってしまったからです。
もし、ちゃんとした別れが出来たなら半分にはならなかった、ヨウイチはそう考えていました。

「お前の行動に報いるには、俺はぜったいに帰らなきゃならない。
 …叶うならお前に会って一言だけでも交わしたい」

空は答えを与えず願いは叶いません。
流れ星がいくつか線を引いた後、やがてまどろみ始めます。

陽が昇ればまた旅は続きます。
目が覚めればいつものようにドラオを探してしまうでしょう。
それでも、歩かなければならないのです。
よく聞くことがあります。
293 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 22:02:43 ID:Sv/zpao+0
支援
294 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 22:03:24 ID:s21p2SaR0
『時間が全てを癒してくれる』

それは確かなことでしょう。
これからの路は全てが悲しいものではありません。
苦しくも楽しく、辛くとも幸せな事の繰り返しです。
そうやって悲しい記憶はたくさんの思い出の一つになって、ほんの少しだけ薄れるのです。
忘れるのではありません。

ヨウイチもそれは知っていました。
ですが、時間は過ごさなければ流れません。
その時間を過ごす間をどうすればいいのか、まだわかりませんでした。

考えているうちに眠りへと落ちます。
その困難な時間を過ごす明日を迎えるためにそして、元の世界へと帰るため。





最終章へ
295 名前: タカハシ ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 22:05:08 ID:s21p2SaR0
合作のヨウイチ編は以上です。
迷う表現もありましたが、思い切って。
最終章でまた。

あ、まとめはとっても停滞してます…
296 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 22:05:38 ID:CY6aEvyb0
投下乙でございました。
いよいよ最終章、wktk
297 名前: タカハシ ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 22:50:34 ID:s21p2SaR0
大事なことを忘れていた。

>>支援
ありがとうごいざいました!
298 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/10(土) 23:56:38 ID:wSm2A5uf0
では、そろそろ時間ですので第十話前半を投下します。

LOAD DATA 第九話>>242-249
299 名前: 背水の刃【1】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/11(日) 00:03:35 ID:wSm2A5uf0
進軍を告げる太鼓が打ち鳴らされる。
勇ましい太鼓の音に合わせ、足音が通り過ぎる。
人々の歓声は聞こえない。
枠だけの窓にボロのカーテンを閉め、静まり返った町並みを足音が通り過ぎる。
鬨の声は挙がらない。
聞こえるのは一人の兵士の足音と、金属同士が擦れ合う不快な音。
静まり返った町並みを、一人と一個が通り過ぎる。
誰にも祝福されない二つの影が、城下町を通り過ぎる。

城下を一望するラインハット城のバルコニーから、その光景を眺める三つの人影。
血のように赤い酒の注がれたグラスを優雅に傾ける金髪の王。
一歩下がった場所で、ラベルの擦り切れた瓶を抱える初老の大臣。
王の座る椅子の真横に控えるのは、紫のドレスにその身を包んだ女。

「首尾は?」
「上々で御座います。仰せの通り、討伐隊は南の修道院に向かいました。」
「討伐隊…ね…」

若い王が、大臣の言葉にイタズラな少年のような笑みを返す。
「生きた兵士が一人。それで一隊を編成できるとはね…」
「デール王もお人が悪い。アレの戦力を一番よくご存知なのはデール王でしょうに。」
「さてね…結局アレも、人の力がなければ何も出来ない木偶(デク)に過ぎないさ。」
皮肉に笑う王の持つ空のグラスに酒の追加を注ぎながら、大臣も笑ってみせる。

「人々を束ねるのが王。そして、世の愚鈍な王を束ねるのはラインハット王国。
ならば、世の愚鈍な王どもを束ねるラインハット王国の国王である僕…
デリシア=ドラード=コロナ=ド=ラインハットは…神か?」
注がれた酒を一息にあおり、椅子から立ち上がった王が笑う。
その姿を見て、目だけで笑う女。

王の高笑いも届かない静かな城下町を、一人きりの討伐隊が進軍する。
300 名前: 背水の刃【2】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/11(日) 00:05:33 ID:wSm2A5uf0
ラーの鏡を入手した俺達は、修道院の一室で休息を取っている。

下着のままベッドに腰掛け、少し硬めの黒パンを齧りながら明日の作戦を練る俺達。
清楚なシスター達に見られたら”行儀が悪い”と怒られそうな、だらしない姿だが、
その表情も話の内容も真剣そのものだ。

ラインハットの異変…デール王の豹変…明日はそれらにカタをつける。
修道院を守る…人々を守る…失敗は許されない。チャンスは一度限り。

「明日はラインハットにとんぼ返りか…侵入経路は前と同じでOK?」
「いや、前回の一件で警備も厳しくなってるだろうし、同じ経路は使えないよ。」
「そっか…じゃあ、別の隠し通路とかはねえの?…ヘンリー?」
「…すぴー…ぴるるるる…」
―……☆…―

さっきまでブラウンと一緒に騒いでたわりに、やけに大人しいと思ったら
二人して爆睡してやがる…

ラインハット〜神の塔での連戦で疲れが相当溜まっていたんだろうな。
ヘンリーは作戦会議もそこそこに、ベッドに潜って寝息を立てている。
「ふわぁ…見てたら俺まで眠くなってきちまったよ。」
「バタバタした一日だったからね。僕達もたまには早く休もうか。」

真っ白でふかふかの布団に顔を埋めると太陽の香りがする。

不思議だよな。
ベッドのふかふかした感触も、布団に残るお日様の匂いも同じなのに、
こいつらは全部、俺の知らない違う世界のモノ。
理論とか生態系は全然違うけど、心地良いものを求める人間の嗜好ってのは、
世界が変わっても同じなんだな…Zzz…
布団から見えていた茶色い髪の動きが止まり、規則正しい寝息が聞こえてきた。
301 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/11(日) 00:07:00 ID:FTG7NxH00
しえん
302 名前: 背水の刃【3】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/11(日) 00:07:27 ID:b7cVpqUV0
「まったく…毛布を蹴飛ばすと風邪ひくよ。」

小さく震えるランプの炎に照らされ、静まり返った部屋。
寝相の悪い二人と一匹に毛布を掛け直していたサトチーが、何かに気付いたように
一点を見つめ、立ち上がる。

その目線の先には鞘に収められ、壁に立てかけられた剣。
別世界からやって来たという少し年上の若者が軽々と操って見せた伝説の剣。
サトチーの手が、ゆっくりと天空の剣に伸びる。

自分の内から響く鼓動さえもうるさく聞こえるような夜の静寂…

「…まじしましま…」
「―!!―」

伸ばしかけたその手が思わず引っ込み、壁から倒れようとする剣を寸前で支えた。
喉から飛び出そうになる大声を必死で飲み込み、そぉっと声の方向を振り向く。

「…むにゃ…Zzz…」

声の主である若者は、深く眠ったままだ。
その額にじっとりと浮かんだ冷や汗を拭い、荒くなった息を整えるサトチー。
「…寝言……ふぅ…僕もどうかしてるね…」

ふわ…と溢れる小さなあくびを口元で押さえ、ベッドに戻るサトチー。
「そんなはずないよね…」

枕元に置かれたランプの炎を吹き消し、部屋に本当の宵闇と静寂が訪れる。

―そういえば、ビアンカは元気かな…
   この件が落ち着いたら一度アルカパに行ってみようかな…―
303 名前: 背水の刃【4】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/11(日) 00:08:49 ID:b7cVpqUV0
修道院の朝は早い。
シスター達は皆、夜明け前に起床し、朝の祈りと朝一番の水を神に捧げる。
厳かな祈りが終えた後に宿泊客を起こし、顔を出す朝日の中で朝食の準備が始まる。
時計もないのに実に正確な毎日。

…の筈だが、今日の目覚めはいつもとは明らかに違った。

寝室のドアが勢いよく開け放たれ、血相を変えたシスターが飛び込んでくる。
ドアが壁にぶつかる派手な音で、俺達は叩き起こされた。

「…た…助けてくださいまし。修道長が…」
「落ち着いて。一体何があったんです?」
飛び込んできたシスターが、おろおろと震えながら話を続ける。
「い…今しがたラインハットの兵がやってきまして、ヘンリー様を出せと…
修道長が院の前で足止めされていますが、このままでは…」

ラインハット兵にシスター・シエロが?

鎖帷子を着込み、ひったくるように天空の剣を手に取る。
「サトチー!」
「わかってる。急ぐよ!」

ざわざわした多数の声。荒々しい男の声。子供の泣き声。
静かな修道院には相応しくない喧騒の先にシスター・シエロはいた。

「女を傷付けたくはない!さっさとヘンリー様を出すのだ!」
「お静かに。神の御前で無礼ですよ。迷いがおありなら私がお話を伺います。」
「黙れ黙れ!私に迷いなどあるものか!修道女に用はない!」

大声で威圧する男を前に、シスター・シエロは一歩も下がらない。

「シスター・シエロ!大丈夫か!?」
304 名前: 背水の刃【5】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/11(日) 00:10:27 ID:b7cVpqUV0
シスター・シエロの前に踊り出て、横一列の壁を作る。
相手は一人…周囲を探ってみても、仲間が隠れている気配はない。
「追っ手は君一人かい?」
サトチーが怪訝そうに甲冑の男に問い掛ける。

俺達の前に対峙する兵士は一人。どこかに仲間が隠れている様子もない。
甲冑で身を包んだ男はそれなりに強そうな風体だが、1対5のこの状況で
…今の時間だとスミスは戦えないから1対4か…ともかく負ける気はしない。
…男の背後に置いてある、布をかぶった物体は気になるが…

サトチーの質問を無視して、甲冑の男がこもった声をヘンリーに投げ掛ける。
「ヘンリー様…大人しくデール様の前に出頭して頂けませんか?」
「はぁ?」
剣の柄に手を掛けるヘンリーの口から間抜けな声が漏れる。

「非礼を詫び、王家に忠誠を誓えば、兄であるヘンリー様の命をとるような事は
 なさらないでしょう…どうか考えては…」
「却下だ。」
兵士の懇願に親指をピッと下に向けて答えるヘンリー。
「ふん。曲がっちまった子分の性根を叩き直してやるのも親分の役目だ。
 迎えなんざよこさなくても城に戻ってテメエの尻っペた引っぱたいてやる。
 城に帰ってデールの奴にそう伝えな。」
「ですがヘンリー様…」

まだ何か言いたそうな兵士の前に、サトチーと俺が進み出る。
「だ が 断 る…ってヤツだ。あんたも男なら引き際が肝心だろ?」
「この場は退いてくれません?あなたも勝ち目のない争いは望まないでしょう?」
サトチーの言葉が半ば脅しのように聞こえるがキニシナイ。

「私は…退くわけにはいかない……勝ち目のない争いをするつもりも毛頭ない…
 嘗て仕えたヘンリー様を討つのは心苦しい…ですが、今の私は軍人…」
背後の物体にかけられた布に、男の手がかけられる。
305 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/11(日) 00:11:46 ID:FTG7NxH00
支援
306 名前: 背水の刃【6】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/11(日) 00:12:00 ID:b7cVpqUV0
「ヘンリー様…いや、国賊ヘンリー。主君より賜った任務により討伐する!」
物体を覆い隠していた布が、男の手によって一気に引き剥がされる。

中から現れたソレ…
つるんとした曲線を描くシルバーのボディーから伸びた昆虫のような手足。
左手に大剣、右手にボウガンを搭載したソレの頭部から覗く無機質な目(?)が
俺達一人一人を順に見渡すようにサーチする。

コレは……機械?

「サラボナ地方を徘徊する古代のカラクリ…メタルハンターはご存知ですか?
 それを捕え、ラインハットの技術で改良した究極の殺人用カラクリ…
 …名付けて『プロトキラー』…まだ試作段階なので手加減は出来ませんよ。」

金属音と機械音を体中から響かせ、プロトキラーと呼ばれたソレが戦闘体勢に入る。

「こいつ…城の中庭で見たアレじゃねえか。」
「なんで…こっちの世界にこんな技術が…」
「シスター達を巻き込むわけにはいかない。修道院から離れるぞ!」
―!!!!―

サトチーの指示で四人一斉に駆け出し、修道院からの距離をとる。

考えるのは後だ。どうせ考えたって答えなんかわかりゃしねえ。
人殺しの為だけに作られた機械の兵士…
今はとにかく、この忌々しい機械をぶっ壊す。

「メタルハンターの装甲すら粉砕するプロトキラーの力…とくと思い知れ!」
兵士の合図に、プロトキラーの単眼のような光が一層赤く輝き大剣を振りかざす。

無機質な威圧感に自然と震え出す膝を一発引っぱたく。
307 名前: 背水の刃【7】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/11(日) 00:13:14 ID:b7cVpqUV0
「ヘンリーはガンガン魔法を!僕達は周囲を囲んで一斉攻撃だ!」
「マリアさんには指一本触れさせねえ!――イオ!!」

ヘンリーが放つ魔法がプロトキラーの表層で爆発を起こす。
周囲に広がる土煙を狼煙代わりに、サトチー・ブラウン・俺が同時に斬りかかる。

――ガギン!ガガン!!

耳に残る金属音と、手から体に伝わる痺れ。
機械は、その頭上に掲げた大剣一本で俺達三人の攻撃全てを無造作に受け止め、
続けざまに振るわれたその大剣で、サトチーと俺を同時に横薙ぎに斬り払う。

「…っが…」
咄嗟に背後に跳んで両断は免れたが、鎖帷子を貫通して内臓に衝撃が伝わる。
口内に溜まった血を吐き出しながら、天空の剣を支えになんとか立ち上がると、
既に機械は次の動作に移っていた。

ヤベエ…動作が速すぎる…

上段から振り下ろされる死の斬撃を横っ飛びに転がりながら避ける。
その隙をついて攻撃を試みるブラウンを返す刀で迎撃する。
回復の為に仲間の元へ走るサトチーを鋼鉄の拳で殴り飛ばし、
イオで足止めしようとするヘンリーをボウガンの矢が襲う。

「おいおい。その動きは反則だろ…っと危ねえ!」
「俺は大丈夫だ!イサミに回復魔法を!!」
「わかってる!なんとかあいつの足止めをしてくれ!このままじゃあ近付けない!」

片手で大剣を振るいながら、片手でボウガンを乱射する殺人兵器。
全ての行動が予備動作なしの最短距離で、且つ同時に飛んでくる。
さらに、全ての攻撃が致命打ときたら攻撃どころじゃねえ。
ジリ貧…避けるので精一杯だ。
308 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/11(日) 00:14:10 ID:ZUdjEYat0
支援
309 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/11(日) 00:16:32 ID:b7cVpqUV0
支援ありがとうございました。第十話前半部分投下終了です。

プロトキラーは7仕様ではなく、あくまでもメタルハンターの改良型。
強さ的には メタルハンター<プロトキラー<キラーマシン てな感じです。

投下直後にミス発見…
【1】のデールのセリフの文頭を一字空けてませんでした。
読み難くなってしまって申し訳ないです。
310 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/11(日) 08:54:24 ID:xVP7tfl70
乙。
異常が少しずつあらわになっていくのは先が楽しみで堪らんな。
311 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/11(日) 16:31:36 ID:d5yI1GEC0
投下乙です。
プロトキラー強そうですね。
これでもキラーマシンよりは<なんですか。
とても勝てそうな気がしないorz

天空の剣、神性がなくなってしまったから、サトチーでも扱えるようになっているのでしょうか・・・。
312 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/12(月) 16:58:30 ID:0igRa8l8O
ドラオ……(´・ω・`)ショボーン
313 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/13(火) 17:35:22 ID:Soc9GWIDO
保守
314 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/14(水) 01:45:24 ID:gw8h2NUyO
合作もうすぐ終わり?
315 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/15(木) 00:36:57 ID:yHpc547oO
保守
316 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/15(木) 10:47:26 ID:yXuZpFbi0
合作まだまだ終らせないで〜保守
317 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/15(木) 23:49:54 ID:UCA9Suft0
―転職の転―(>>273-277)

ドラクエ4は何度もプレイした。そのときの俺は勇者の気持ちになっていた。
だからこの世界で俺がシンシアに惚れたのは当然のことなのかもしれない。

ドラクエ4は何度もプレイした。
だからこの世界でシンシアが自分の命を賭けて何をするのか俺は知っている。

俺はこの世界で何もしないと決めた。でも本当は何もできないだけではないのだろうか。
だけど、結局何もできなかったとしても、俺はやらなきゃいけないんだと思う。

俺がシンシアに出会ったことはゲーム上の出来事には何の意味もないのかもしれない。
でも、俺にとってシンシアとの出会いは人生を変えるほどの出来事だった。

ほんの束の間の出来事であっても人生は大きく変わってしまうものなのだ。
だからこそたったひと時の夢のため、俺は全力を賭けようとしているのだろう。

ドラクエ4は何度もプレイした。どんなエンディングが待っているのかも知っている。
エンディングの最後のワンシーン。そのラストのため、俺は……
318 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/15(木) 23:50:57 ID:UCA9Suft0
シンシアと別れたあと俺はエンドール行きの船に乗ることができた。
金なんて持っていなかったが船で雑用をすることで乗せてもらえた。

エンドールでは武術大会の準備をしている真っ最中だった。
そこで会場設置の仕事を任されている親方を紹介してもらえた。
人手が足りないらしく身元がはっきりしない俺でも仕事にありつけた。
俺は生活費を切り詰めて少しずつお金を貯めていった。

武術大会が始ると同時にカジノが開かれた。
カジノでは武術大会で出場者の勝敗を対象にした賭けが行われていた。
大会中にカジノを開くからにはこの手の賭けをやっているとは思ったのだ。
ゲームの中ではなかったことだが、このくらいの違いはあっても不思議ではない。
ちょうど今、アリーナ姫とミスターハンの試合を対象に賭けが行われていた。

「アリーナ姫が勝つほうに全財産賭ける。」
結果は当然アリーナ姫の勝ち。そこで得たコインを全て次の試合に賭ける。
アリーナ姫はラゴス、ビビアン、サイモンと次々に対戦相手を破っていく。
俺にとっては博打でもなんでもない。結果は分かっているのだ。

結果がわかるといえば、ミネアも占いで未来が分かるのだ。
敵討ちの旅に出るとき彼女にはどんな未来が見えたのだろうか。
絶望的な未来が見えたとしたら、それでも旅をやめようと思わなかったのだろうか。
319 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/15(木) 23:51:35 ID:WKJtaFen0
支援
320 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/15(木) 23:51:59 ID:UCA9Suft0
俺はここで賭けをやめアリーナ対ベロリンマンの試合を見に行くことにする。
ピサロの試合は奴が強すぎたせいで賭けの対象にはならなかった。
カジノを後にしてコロシアム向かう。俺にとっての大博打はここから始まるのだ。

目の前ではアリーナ姫がベロリンマンと戦っている。
会場の隅、セコンドがいるための場所だろうか。クリフトとブライらしき2人もいる。
本当なら導かれし者たちを見て感激のひとつでもしたいところだ。
しかし俺にはそんな余裕はなかった。
俺は息を呑みながらその試合を見ていた。
ベロリンマンの分身はアリーナ姫でも見破ることができない。

試合終了後、俺はベロリンマンに接触することに成功した。
ベロリンマンは人間と友達になりたくてエンドールにやってきたらしい。
そしていつの間にか武術大会に参加していたということだ。
俺はベロリンマンと意気投合し彼を仲間にした。

……今頃アリーナ姫一行はサントハイムの住人が消えたことを知ったころだろうか。
321 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/15(木) 23:53:01 ID:UCA9Suft0
その後、俺はベロリンマンをつれてボンモールへ渡った。
今度は多少なりとも金があったので渡航にはさほど苦労はしなかった。
ボンモール王はドン=ガアデがいないため橋が作れずやきもきしていた。
俺はドン=ガアデをつれてくることで褒美をもらう約束を取り付けた。

しかし俺はすぐにドン=ガアデを探しに行くことはしなかった。
彼がどこにいるのかは知っている。しかし俺は何もする必要はないのだ。
ボンモール城内で脱獄騒ぎが起こったところで俺は動き出した。
俺はベロリンマンを連れてきつねの村に向かった。きつねヶ原というのだっけ。

そこには村があった。いや、まるで本当にそこに村があるかのようであった。
これは1匹のキツネが神通力によって造っているものなのだ。
村の近くで様子を伺っているとトルネコと思われる男が犬を連れてやってくる。
「ベロリンマン。ひとつ俺の頼みを聞いてくれないかい。」
俺はここでいったんベロリンマンと別れ次の仕事に取り掛かった。

村は姿を消し、ドン=ガアデらしき男が村だった場所から出てきた。
「ドン=ガアデさんですね。ボンモールへご案内します。」
俺はドン=ガアデにそう話しかけ、彼をボンモールに連れて行く。
武器防具を揃えたので俺もこのあたりのモンスターとは渡り合えるようになっていた。
俺もずいぶん逞しくなったもんだ。
そして約束のとおりボンモール王から金を受け取った。

工事は順調に進み、ついには立派な橋が完成した。
落成式の後、俺はドン=ガアデに質問をしてみた。
「橋以外のもの、たとえば家なんて造るんですか?」
最近はモンスターに壊された住宅の修復もやっていると答えた。
そのあと彼の今後の予定も聞いてみた。
彼はしばらく休みを取ってそれから仕事を探すと言った。
「そのときは俺の仕事を請けてくれませんか?」
俺はドン=ガアデにそんな約束を取り付けた。
322 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/15(木) 23:54:09 ID:UCA9Suft0
完成したばかりの橋を渡り再びエンドールに戻る。
そこで武術開会上設置のときにお世話になった親方に挨拶に行く。
俺は親方に大きな工事があるから人を集めて欲しいと頼んでおいた。

そしてエンドールの東にある洞窟に向かう。
のちにトルネコによってブランカ地方と結ばれる洞窟だ。
俺はその洞窟の奥ににいた老人に話をつける。
そしてトンネル堀を再開するときの人員の確保を任せてもらえることになった。

トルネコはエンドールで店を持ちエンドール王から仕事をもらっていた。
彼がトンネルを掘るのに必要な金を集めるのにそれほど時間はかからなかった。
親方が人を集めておいてくれていたので工事はすぐに始めることができた。

トンネル工事が進む間、俺はベロリンマンと合流した。
彼にはあの村の跡地からキツネをつれてきてもらってきた。
俺はキツネに俺の仕事に協力してくれるように頼んだ。
「ほんの少しだけでいい。君の力で幻を見せて欲しいんだ。」

俺は仲間を連れて再びブランカへ戻ってきた。
シンシアや勇者の住む村はこの地のどこにあるのだろう。
その村の場所は誰も知らない。知らないままでいて欲しい。

誰だってハッピーエンドがいいに決まってる。
けれどこれから迎える結末はハッピーエンドといえるのか分からない。
だけどほんの一瞬でもいい。夢を見る時間があってもいいじゃないか。

肝心なのはこれからだ。最後の大勝負が残っている。
でも、シンシアは、シンシアは俺のこと許してくれるかな……。

―「結晶の結」へ続く―
323 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/16(金) 03:20:35 ID:7vCHnK/kO
(*゚ー゚)。oO(どきどき…)
324 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/16(金) 03:38:21 ID:sekX5aQr0
その勝負、勝つ方に俺の魂を賭けるぜ!
325 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/16(金) 12:48:13 ID:pORu0PX00
もの凄く名作の予感
326 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/16(金) 14:06:34 ID:1IAIfOoH0
わくわくする展開
327 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/16(金) 18:23:40 ID:uDIbRFkB0
予想を書き込みたいけど我慢。
すっごい楽しみだ。
328 名前: タカハシ ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/11/17(土) 17:09:52 ID:S/kIWObf0
お疲れ様です。
10泊目までまとめました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

もし不備を見つけた場合、避難所掲示板まで連絡していただけると助かります。
11泊目以降のまとめは年末〜来年を予定しています。
329 名前: タカハシ ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/11/17(土) 17:41:05 ID:S/kIWObf0
書き忘れました。
今回合作はまとめていません。
合作については進行度合いでまとめていきますのでご了承ください。
330 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/17(土) 20:46:19 ID:IilNZOK40
>>タカハシ殿、乙。
331 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/18(日) 03:45:52 ID:XEykQl5d0
タカハシ殿!いつも乙であります!
332 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/19(月) 20:04:31 ID:Coz8MsIU0
予告時間になりましたので、第十話後半を投下します。

LOAD DATA 第十話前半>>299-307
333 名前: 背水の刃【8】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/19(月) 20:06:56 ID:Coz8MsIU0
刃が躍る。
弧を描く冷たい軌跡をなぞる様に、俺の頬に赤い筋が描かれる。
鉄腕が廻る。
ブラウンを掴んだまま上半身全体を回転させ、遠心力を持って地面に叩きつける。
矢の雨が降り注ぐ。
無数の風切音の一直線上、ヘンリーの肩に穴が開く。

「ヘンリー!…っ!」

無骨な鉄塊がサトチーの動きを敏感に察知し、回復を妨害する。
既に俺達は傷だらけ。対するプロトキラーのメタリックシルバーのボディーには、
さしたる損傷は見られない。

ぶっ叩かれた腹の中身がグルグルして吐き気がする。
…が、俺なんかよりもヘンリーとブラウンがヤバい。
地面に叩きつけられたブラウンは気絶しているのか、全く動かない。
肩に矢を受けたヘンリーは片手でメラを放っているものの、出血が酷い。

早く治療をしないと…

サトチーも気付いているのだろう。なんとか二人の元へ駆けつけようとするが、
無情な殺人機械が繰り出す無慈悲な猛攻がそれを許さない。

…一瞬だけ、俺があいつを足止めできれば…

背中のカバンから薬草を取り出し、ろくに噛まずに飲み込む
…苦ぇ…けど、体は少し治った。迷っている暇はない。

プロトキラーが振り回す大剣の射程内。危険地帯にあえて飛び込む。
赤く光る単眼が俺をサーチし、俺の体を両断せしめんと大剣を振り払う。

ビンゴ!こいつは俺を第一の標的に定めてくれた。
334 名前: 背水の刃【9】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/19(月) 20:10:03 ID:Coz8MsIU0
「イサミ!…っ済まない!」
サトチーは俺の行動の意味を理解してくれたらしく、ヘンリーの回復に向かう。

OK サトチーなら絶対にわかってくれると信じてた。

横薙ぎに振り払われる大剣を身を屈めて避け、そのまま水面蹴り。
四本の足で支えられた頑強なボディーが地面に倒れる事はなかったが、
それでも一瞬、鋼鉄の体がぐらりと揺らぎ安定を失う。

その隙に、近くで転がってるブラウンを抱えてダッシュ。
全力で走りながら、薬草をブラウンの口に放り込む…ブラウンはコレで大丈夫。

さて、思った通り、あいつはまだ俺を第一の攻撃目標に捉えている。
後方から飛んでくる矢の的を散らすように、ジグザグに緩急をつけて逃げ回る。

機械の扱いなら、こっちの世界の人間よりも慣れている。
機転や応用力を持ち合わせない、最速の結果だけを求める回路…それが機械の弱点。
今、こいつのセンサーには、派手に逃げ回る俺しか映っていねえ。

真正面から叩いてもこいつの鉄壁のガードに弾かれる。
ならば、サトチーとヘンリーの二人に機械の背後を叩いてもらう。
ホント格好悪りい戦法だな。

とは言え、俺の体も限界っぽい…
意思とは裏腹に、全力疾走していた俺の両足が重くなる。
疲れを知らない機械の攻撃が徐々に生身の俺を捉え始める。

情けねえ…こんな事ならタバコに手を出すんじゃなかったなあ…

脇腹を矢が掠め、大きく体勢を崩す俺の目に映ったのは、
きらきらと星屑の様に飛び散る鎖帷子の破片。
太陽の下で煌く真昼の流星群の中に、小さな影が飛び込んだ。
335 名前: 背水の刃【10】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/19(月) 20:11:59 ID:Coz8MsIU0
…ブラウン?

抱かれていた俺の腕の中から飛び出し、幽鬼の様に立ちはだかるブラウンは、
俺など意にも介さない様子で機械に向かい合う。
空虚な黒一色の中に、禍々しいまでの闇色の炎を浮かべた瞳。
普段のブラウンとは違う、怒れる鬼神の瞳。

バグン!…と、爆発音にも似た破壊音が響く。
プロトキラーが矢を放つよりも早く、ボウガンの備えられた腕が弾け飛ぶ。

続けざまに叩きつけられる、魔神の如きブラウンのハンマー。
いつにも増して大振りな動きを察知し、機械が初めて回避動作をとる。
轟音を伴わせ、地面にハンマーを食い込ませた小さな戦士に無慈悲な刃が落とされる。
振り上げたハンマーで大剣を打ち払い、再び最上段から力任せの一撃を振るう。

「おいおい…ブラウンの奴、混乱しちまったんじゃねえか?」
肩の傷を治療し終えたヘンリーが、不思議そうな表情でその光景を眺める。
俺もヘンリーも援護する事すら忘れ、ただその異様な事態を眺める事しか出来ない。

混乱?キレた?…違う…アレはもっと…

「魔物の瞳…」
サトチーが震える声で語る。
「人間とは相成れないモンスターの瞳だ。なんでブラウンが…」

―!!!!!―

プロトキラーが、その千切れた腕でブラウンを殴り飛ばす。

機械に感情があるとは思えないが、それは焦りを感じさせる行動。
プロトキラーの演算回路が、今のブラウンと片手で渡り合う事は、
大きなリスクを背負うと計算したのだろう。
336 名前: 背水の刃【11】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/19(月) 20:14:27 ID:Coz8MsIU0
「ぼんやりしてる場合じゃない。二人とも、ブラウンの援護だ!バギマ!!」
サトチーが呪文を紡ぎ、プロトキラーの足元から巨大な旋風が立ち昇る。

視野狭窄に陥っていたプロトキラーは突然の竜巻になす術もなく巻き込まれ、
その手足をあらぬ方向に捻り上げられる。
大気が轟々と渦巻く内部から、機械の発するノイズ音が聞こえる。

「ルカナンッ!!」
青白い光がヘンリーの両手から迸り、鋼鉄の体を包み込む。
「イサミ!ブラウン!強烈なのをぶちかましてやれぇ!!」

ブラウンが高く飛び上がり、上空からハンマーを振り下ろす。
その大振りに対し回避行動をとるプロトキラーだが、俺の行動の方が早い。
低い位置からプロトキラーに駆け寄り、不安定になった足元に水面蹴り。
地を低く這う俺の足が弧を描いて機械の足を刈り取り、鋼鉄のボディーが倒れる。

「無粋な機械はこっちの世界には似合わねえ。大人しく退場しやがれ!」

倒れたプロトキラーの頭上に、ブラウンの放つ魔神の如き一撃が叩き込まれた。

理性による抑制を失ったブラウンの豪腕で振るわれるハンマーと、
ヘンリーのルカナンで強度を失ったプロトキラーの装甲。

力の均衡は容易く崩れ、空気が弾ける様な音を立てて鋼鉄の装甲が砕け散る。
なおも勢いを失わず深くに喰い込むハンマーは、機械の頭部を完全に押し潰した。


―ビュッ!!


一瞬、大きく鳴り響いたノイズ音を最後に殺人機械はその機能を停止した。
337 名前: 背水の刃【12】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/19(月) 20:16:03 ID:Coz8MsIU0
試作品…って言ってたな。多分、実戦投入は初めてだったんだろう。
今回は、こいつ自身の実戦データ不足につけ込めたからなんとか勝てたけど、
綿密な実戦データをプログラミングされてたら、俺達に勝ち目はなかったろうな。

さて、残るはあの兵士…え?

―!!!!!―
「うわああぁぁぁぁ!!!」

ブラウンがハンマーを振りかざして、兵士に襲い掛かっている。
その凶声から感じられる明らかな殺意。兵士の頭蓋を砕こうとハンマーを振りかざす。

間一髪でサトチーに取り押さえられたブラウンは、狂犬のような荒んだ目をしている。
ネコの威嚇のように、フー フー と荒い呼吸をする姿は、やはり正気とは思えない。
サトチーの胸に抱きかかえられながら、自分を捕縛する腕を振り解こうと暴れまくり、
既にサトチーの両腕は傷だらけになり、血が滲んでいる。

「ブラウン…ブラウン…一体どうしたんだ?」

今のブラウンの瞳には無邪気さや優しさは感じられない。
本能のままに人間を襲い、その命を奪おうとする狂気が染み出している。

変貌したブラウンを抱くサトチーの両目に困惑の色が広がった。


イサミ  LV 15
職業:異邦人
HP:18/74
MP:12/12
装備:E天空の剣 E鎖帷子
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌 足払い
338 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/19(月) 20:22:37 ID:Coz8MsIU0
第十話投下終了です。
暴走ブラウンの様子は、マジバトル状態のネコを想像してください。
339 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/19(月) 20:47:11 ID:OpTrkWbw0
ブラウンはどうしちゃったのかwktk
340 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/19(月) 21:12:18 ID:1l8HjDpa0
乙。マジギレ猫の暴れっぷりは異常。wktkしながら待ってますね。
341 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/19(月) 23:23:54 ID:J/aNqQyc0
ブラウンのレベルのところに赤文字で「らん」って出てるんだろうな
342 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/20(火) 13:44:10 ID:CTSuICZ80
ブラウン気になるよブラウン・・・
それから足払い習得おめ!
343 名前: Stage.11 hjmn ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/20(火) 23:34:26 ID:i1b28PFw0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。僕もいよいよ勇者試験です。うう、なんか緊張してきたなー」
アルス「俺は知らないことになってるが、うちの国王とヤベエ約束してんだろ。大丈夫か?」
タツミ「おや心配? 常に首席のこの僕が! 『試験』で不合格、なんてあるわけないネ♪」
アルス「あーさいすか。(どこが屍の目だよ。やっぱユリコパパの勘違いだと思うがなぁ……;)」
タツミ「それでは恒例サンクスコール、今日も張り切って行ってみましょー!」

アルス「>>222様、文字通りの真剣勝負! お互いに大ケガしなくて良かったよ。しかし……
   (ヒソヒソ)こいつが人殺しとか、俺も思えないんだよな。なるべく早く真実を確認してみるな」
タツミ「なにそこヒソヒソやってんの。>>223様、ゲームサイドですみません(-人-)
   物語の進行上こちらの投下になりました」

アルス「続きまして、まとめにいただいたレスへのサンクスコール」
タツミ「>>239様……とは初顔合わせ(?)になるみたいですね。ここはきちんとご挨拶を」
 R『作者の◆IFDQ/Rです。宿スレ九泊目から常駐させてもらっています。かなりDQ離れしてる上、
   やたら込み入った話を書いておりますが、楽しんでいただけたら幸いです』
アルス「>>240様、遠慮してたっつーか……実は俺もタツミに重要なことをわざと言ってなくて、
   そこを突っ込まれたくないってのもあったんだよな。じれったくさせて申し訳ない」
タツミ「またそこ読者様とコソコソやってるし。そう言えば誕生日で思い出したけど、
   僕、ドラクエ3ってクリスマスプレゼントでもらったんだよねー」
アルス「だから俺の誕生日12月24日なのかよ! ホントこだわり無えっつーか思い入れ無えっつーか!」
タツミ「ええ〜、4周もしてるんだからやり込んでる方だろ?」


アルス・タツミ『それでは本編スタートです!』


【Stage.11 勇者試験 [前編] 】
 ゲームサイド [1]〜[6]
344 名前: Stage.11 [1] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/20(火) 23:40:00 ID:i1b28PFw0
Prev >>225-237 (Game-Side Prev >>108-119)
 ----------------- Game-Side -----------------

「我々魔術師は、世界は膨大な一個のプログラムで構築されている、と考えています。そ
の根源的な構成文書の一部に、直接働きかけて実行させるのが魔法である、と」
 小難しい魔術理論の本を挟んで、テーブルの向かいに座っているエリスが説明する。僕
がうなずくと、彼女は本を閉じて横にどけ、目の前にピッと指を立てた。
「世界に起こりうるすべての事象と結果には式が存在します。たとえばメラ」
 立てた指の先に「ボッ」と火が灯もる。
「この座標に同規模の発火を生じさせる手段はいくらでもあります。ロウソクを使っても
いいし、丸めた紙の先を燃やしてもいい。実際に火が着いたのですから、結果そのものは
すでに構成文書の中に存在しています。その結果式に術者の意志をアクセスさせ、結果の
みを先回りして実行させるわけです」
「だけどロウソクや紙というのは、燃焼する物があっての結果だよね?」
「はい、物事が実働するためには対価が必要です。その実働エネルギーに代替えとして充
当されるのが術者自身の理力、つまりMPなんですね」
 なるほど。MP消費量が多ければ、より広範囲に大きく結果を出せることにもなる。
「結果式の検索にもっとも大切なのが、あらゆる『過程』を瞬時に『仮定』するイメージ
力なんです。専門用語では『検索アルゴリズムの設定』と言いますが」
 勇者様の得意分野ですよ、とエリスが微笑む。
 構成文書、つまりこの世界を構築するプログラム群の中から、必要な『結果式』を探し
出すための、もっとも効率的な手順を素早く設定する能力。
「私の場合は『精霊による力の発現』というイメージを手がかりにアクセスしています。
イメージがブレないための詠唱なので、今のメラのように慣れた呪文は省略してますね」
 逆に慣れ過ぎると意識が不用意に結果式にアクセスしてしまうことがある。そこで誤作
動を防ぐため、術の行使には実行を確定するキーワードが存在し、「メラ」や「ギラ」な
どの言葉が当てられている。パソコンで言えばEnterキーってところか。

 ここはランシールの宿屋の一室。僕はアリアハンから引き続き、エリスに呪文の講義を
受けていた。
345 名前: Stage.11 [2] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/20(火) 23:41:29 ID:i1b28PFw0

 一級討伐士の試験はランシールの単独洞窟攻略、さすがに簡単な回復呪文くらい使えな
いとマズイってんで、アリアハンを出発してからずっと詰め込み授業をしている。

 それにしても、この世界に住むエリスの口から「世界はプログラムだ」という言葉を聞
くのは不思議な気がする。
 確かにその通りで、僕が現実側から「呪文」というコマンドを選択した時に、対応プロ
グラムが実行されて画面上に結果が表示される。その成り立ちを内側から見た場合の認識
が、彼女の講義内容になるんだね。
「時間がなかったので昨日はまず実践から入りましたが、これが魔術の基本概念です。よ
ろしいですか?」
「はーい先生。僕はメラ・プログラムを実行してるわけなんだね。…… “メラ”」
 エリスのマネをして、指先に火を灯してみる。この時の感覚はなかなか口では説明しづ
らいんだけど、発火までの過程をイメージしてるうちに「これかな?」という形の無いな
にかが意識の中にフッと浮かぶ。それを捕まえて、タイミング良く呪文(実行キー)を打
ち込む。そんな感じ。

「ここまではほとんど完璧ですね。正直、かなり悔しいですよ。私、本格的に練習を始め
てメラが成功するまでに、2週間かかったんですよ?」
 苦笑するエリス。
「いやまあ……具体的にイメージする、なんてのは僕の十八番だからね」
 いきなりメラが成功した時は、エリスは目をまん丸にして「す、少し席を外しますね」
とか言いながらフラフラと部屋を出て行って、しばらく戻って来なかったっけ。
 これまで読み漁っていた本の中にも魔術書や呪文書があって、「なんとか理解はできそ
うだな」とは思っていたけど。まさか僕自身も、昨日の夜ちょっと実践的な指導を受けた
だけで呪文が発動するとは思わなかったよ。

「概念も理解できて実際に発動できたなら、あとはすべて応用させるだけです。こればか
りは実戦の中で覚えていくしかありませんから……」
 エリスは窓の方を見た。つられて目をやると、外はもう日が沈んで真っ暗だ。
 いよいよ試験は明日に迫っていた。
346 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/20(火) 23:44:12 ID:Gs62DHGS0
支援
347 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/20(火) 23:45:04 ID:Q1Smc+0bO
支援!
348 名前: Stage.11 [3] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/20(火) 23:46:29 ID:i1b28PFw0

「ここ二日間はほとんど寝てないんですから、今晩はゆっくり眠ってください」
「そうするよ。君もゆっくり休んでね」
「はい。じゃあ、私はこれで――」
 エリスは本を抱えて席を立った。

 そしてドアに向かいかけたところで、ふと彼女は振り返った。
「あの、勇者様。本当はこんなことを言うのは良くないのでしょうけど……無理しなくて
いいんですからね? 危ないと思ったらすぐ戻ってきてください」
 いつもの優しい笑みを浮かべる。たとえ勇者の肩書きなんかなくたって、私たちは今ま
でと変わりないですから、と……。
 きっとその通りだろう。もしもアリアハン国王との約束を彼女たちが知ったら、今すぐ
ルーラでとって返して猛抗議するに違いない。
「わかってるよ。ありがとう」
 僕も笑顔を作った。おやすみを言って彼女を送り出し、ドアを閉める。

 それから小さく「ごめん」と付け足した。
 こんなにいいメンバーなのに、僕は隠し事が多すぎるよね。


 ベッドに寝転がる。古びた木目の天井をじっと見つめていると、なんとなく、このずーっ
と向こうでアルスが見ているような気がした。
 ポケットから携帯を取り出すした。電源はオフのままになっているから、現実側の時間
はわからないけど、もうそろそろ帰ってきた頃だろうか。
349 名前: Stage.11 [4] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/20(火) 23:48:39 ID:i1b28PFw0


 ――たぶん僕は、意地になっている。
 王様との確執だって、アルスが起きるのを待って、携帯をつないで本人から王様に真実
を説明してもらえばそれで済んだ話だ。アルスも根はいいヤツっぽいし、僕の腕が切られ
るなんて聞いたら、そこでシラを切るようなことは絶対にしないだろう。
 でも僕は嫌だった。自分が現実に戻ることを前提に旅をしている以上、彼が最終的にこ
ちらに戻ってきたときのことを考えれば、真実は最後まで伏せておいた方がいい。
 父親が魔王討伐に失敗して、息子まで使命を投げ出して異世界に逃げたなんてレッテル
が張られたら……エリスたちや、サヤさんやデニーおじいちゃんも、アルスを好きな人た
ちみんなが嫌な思いをすることになる。それがアルス自身も傷つける。

 どんな嘘も偽りも、最後まできれいに繋がれば本当のことになるから。
 僕がうまくやればいい。最後に僕がすべて抱え込んで消えれば、それで済む話なんだ。

   ◇

 翌日、いよいよ試験という段階になって、ひとつハプニングが起きた。

「か、重なったですとぉ!?」
 ランシールの神殿の入り口で、僕の代わりに手続きを取ってくれていたロダムが、彼に
は珍しく大声を出した。なんだと思って行ってみると、そこにはもう一人、真っ黒な甲冑
に身を包んだ背の高い剣士がいた。
 美しいというか、凛々しいというか……思わず見とれてしまうほど端正な顔立ちをして
いる。その人は艶やかな黒髪を掻き上げると、僕を見て顔をほころばせた。
「やぁ青少年、久しぶりだね。ダーマの試験会場で以来だったかな。あの時は騒ぎになっ
てしまって、すまなかった」
「は、はぁ……」
 手を差し出され、つられて握手を返す。まるで厭味のない笑顔。透き通るようなアルト
の声。カッコイイとかって次元じゃない。さすがゲーム世界。
350 名前: Stage.11 [5] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/20(火) 23:50:28 ID:i1b28PFw0

「しかし、まさか君と重なるとは思わなかったよ。私の方は更新試験を受けに来たんだが、
私も君と同じく期日ギリギリなものでね。今日を逃すとまずいんだ」
 黒い剣士さんは腕を組んで難しい顔をした。
 ランシールの洞窟って、誰かが挑戦したあとは清掃やらトラップ再設置などの準備のた
めに、次の試験まで2、3日の間を置くことになるんだって。なんてこった。
「まあこれが一般職なら、どっちかが諦めろと言われておしまいだろうが。お互い一級討
伐士ともなると、神殿側も慌ててるよ。世界退魔機構の本部に指示を仰ぐそうだ」
 苦笑する剣士さんの言葉には、しかし少しだけ誇らしげな響きがある。一級討伐士とい
うことは、つまりこの人も「勇者」なのか。
 僕がまじまじ見ていると、剣士さんは不思議そうな顔をした。
「どうした青少年。もしかして忘れられてしまったかな。私だよ、レイ――」
「さー勇者様! 早くエリスたちにも知らせねば! ではレイ殿、のちほど!」
 ハッと気づいたロダムが、慌てて僕を引っ張っていく。
 そうか、アルスの知り合いらしいから、僕もそれっぽい態度を取らなきゃいけないトコ
なんだよね。……そろそろ面倒になってきたけど。
 あーあ、また絶対ややこしいことになるな。


「アレがかの有名な『東の二代目』ッスか」
 遠巻きにチラチラ見つつサミエルが感心している。レイ=サイモン。『東の勇者』とし
て名高いサマンオサの一級討伐士サイモンの、その跡取りとのこと。
 サイモンって、あの無人島の牢獄に流されて骨になってたガイアの剣の人だっけか。確
かにその子供だっていうNPCもいたね。
 でもまた原作と設定がズレてるな。
「あの人、セリフと違うんだけど……」
「セリフ?」
 おっと、ゲーム中のセリフがどうだなんて話はできないか。
351 名前: Stage.11 [6] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/20(火) 23:52:47 ID:i1b28PFw0

「いや、ルビス様に少し聞いてたんだ。サマンオサで行方不明のお父さんを探してるって」
「お父上を……そうだったんですね。ですが、あまり触れ回ってはなりませんぞ」
 ロダムが口に指を立てて「内緒」のポーズをとった。
「そういう目的があっても誰も責められるものではありませんが、やはり世間体を考える
と、『私情で勇者になった』などと誤解されそうな話は避けるべきかと」
 エリスも相づちをうつ。
「一級討伐士の一次試験を受けにアルス様がダーマに行かれたときに、たまたま用事で近
くに来ていたあの方が訪ねて来られたんです。ご本人は軽い気持ちだったと思うのですが、
『世紀の対談だ!』と神殿の前にもの凄い人だかりができてしまったとか」
「そうそう。結局5分も話してられなかったって、しばらく話題になってたッスよ」
「レイという名前も、本名ではないという噂がありますしなぁ」
 まるでハリウッドスターだなw ならプライベートを守るために、いろいろと隠す必要
も出てくるのかな。有名人も大変だ。
「まあ少し会っただけなら顔を忘れていたとしても不自然ではありませんし、レイ殿から
おっしゃらない限りは、なにも知らないフリをしていた方が得策でしょうな」
 ロダムがレイ=サイモンに対する方針をまとめる。了解したよ、司祭殿。


 なんて僕らがヒソヒソやっているところに、当の本人がやってきた。
「参ったね。競争になってしまったよ」
 世界退魔機構より指示。今回の試験は二人が競争し勝った方が合格とする、とのこと。
 はぁー? なんじゃそりゃ!!??

「完全におもしろがってるわ! なにを考えてるのかしら」
「私もそう抗議したんだが、本部の指示だ、の一点張りなんだ。よっぽど『西の二代目』
と『東の二代目』の対決を見たいらしい」
 おいおい。一級討伐士とかの特別職は、一度試験に落ちたら再試験は受けられないんだ
ろ? 落ちた方は二度と勇者に復帰できないってことじゃないのか。
352 名前: Stage.11 [7] ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/20(火) 23:55:32 ID:i1b28PFw0

 僕がそう言うと、レイさんは首を振った。
「いや、それは1次試験の話で、本試験や更新試験は1年間の猶予がある。ここで不合格
になっても9ヶ月後の最終期日までに条件を満たせばいいんだ。その間は例の『特典』が
つかないんだが、まあそれは大したことじゃないがね」
 こうなったら今回は譲るよ、とレイさんは言う。どっちが勝つかはわからないが、更新
試験ならまだしも、本試験を落としたとなると今後の旅にも支障をきたすだろう、と気を
遣ってくれるんだけど――。
 それも変な話だろ。
「レイさんだって、勇者やってる一番の理由は、人々を苦しめてる魔王を倒して世の中を
平和にしたいからだろ? そういう人を支援するための制度じゃないのかよ、これ」
 僕の白けきった言葉に、レイさんもため息をついた。
「まったくだ。こんなくだらないことで貴重な人材を潰し合わせてどうする気なんだか」
「よし、私がもう一度かけ合ってみますっ」
 ロダムが憤然と立ち上がる。

 ……あーでも、ちょっと待てよ。

「ストップ、ロダム」
 いきなり止められ、つんのめりかけてレイさんに支えられるロダム。
「待って。競争はいいけど、なにを競争するの?」
「地下神殿の奥に奉られている宝物を、どちらが先に持ってくるか、だそうだよ」
「誰がそれを判定するの。同行する審判でもいるの?」
 そこで、僕が言わんとしていることを全員が理解したようだ。
「……協定を組む、ってことでいいのかな?」
 レイさんがニヤリと笑う。
 僕は、今度は自分の意志で手を差し出し、握手を交わした。

353 名前: Stage.11 atgk ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/11/20(火) 23:56:40 ID:i1b28PFw0
本日はここまでです。
いきなり規制を食らってびっくり。文字数制限をオーバーしてました。
ギリギリ大丈夫かなーと思っていたのですが、慌てて再編成。
一度きちんと最大文字数を確認しないとダメですね。
ご支援ありがとうございました。
354 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/21(水) 00:31:18 ID:nbOOIxBh0
投下乙です
相変わらずすごい頭の回転の速さ・・・
355 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/21(水) 12:38:45 ID:dsy4PikC0
タツミさんと誕生日が同じなことが発覚(wwwww

投下乙でございます。
無事、二人とも合格できるといいですね。
356 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/21(水) 21:45:57 ID:dw0jLWY1O
誰か俺にこの世界の魔法原理を
もっと簡単に説明してくれ・・・
357 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/22(木) 06:24:44 ID:bpgE70UD0
―結晶の結―(>>317-322

山奥の村を襲い勇者をしとめたつもりでいるピサロ。
生まれてから1度も出たことがない村を離れ1人で旅立つ勇者。
そこから運命的に集められ導かれし者達の物語が始まる。

やがて世界は平和になり、勇者は自分が旅立った場所に戻ってくる。
勇者の前にはシンシアの姿が現れる。
夢だろうか。幻だろうか。
いや彼女は確かにそこにいるのだ。

でも俺にはシンシアが見えない……

……昔、こんなことを言った人がいた。
「嘘をつくには覚悟が必要だ。たとえそれが相手のことを思う嘘であってもだ。」
誰が言ったことかは忘れたが何故だか印象に残っている。
この言葉のとおり、俺は嘘をつくために覚悟を決めた。
358 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/22(木) 06:26:58 ID:bpgE70UD0
ブランカへ戻ってきた俺はシンシアを探し出した。
俺と買い物をした店を張っておけば見つかると踏んでいた。
シンシアと再会するのに思ったほどの時間はかからなかった。

俺はシンシアにこう切り出した。
「驚かないで聞いて欲しい。俺は君がやろうとしていることを知っている。」
シンシアは戸惑っていたようだが俺はかまわず続けた。
「いざというとき君が勇者の身代わりになろうとしていることだ……」
俺の言葉にシンシアはショックを受けたようだった。
当然だろう。これは絶対外に漏らしてはならないことなのだから。

これを打ち明けることで俺は彼女に殺されるかも知れないと思った。
秘密はなんとしても守る。彼女にその覚悟があることは良く知っていた。
俺が住んでいる場所を聞いたとき激しく拒絶したのも村の場所を隠すためだ。

しかし、俺は生きていた。彼女はただただ呆然としているだけだった。
自分の計画を俺が知っているという衝撃がよほど大きかったのだろう。
俺はここぞとばかりに彼女に語りかけた。
安心してくれ。勇者を守る方法がある。と。

彼女は俺の誘いに乗った。乗らざるを得なかった。
計画が外に漏れた以上、新しい計画を練る必要がある。
しかし彼女にそんなものを用意する余裕はないのだ。

それから最後の大仕事だった。
モンバーバラの姉妹が敵討ちの旅に出て、失意のうちに国を去る間。
この期間のうちに仕上げなければならない。
359 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/22(木) 06:29:01 ID:bpgE70UD0
俺がやったことは偽りの村の作成。
偽りの村、張りぼての家、幻の住人……

俺は仲間たちとともにその作業に取り掛かる。
仲間というのはベロリンマンとキツネ。そしてシンシアだ。

親方から人を借りて山を開き土地を整備する。
シンシアの協力を得てドン=ガアデに村の外観を作ってもらう。
俺は稼いだ金で木材や石材を買いできる限り本物の村に見えるようにした。

その見てくれだけの村にキツネとベロリンマンが住人を配置する。
ベロリンマンのつくる幻の分身をキツネが人間そっくりに姿を変える。
この幻はアリーナですら見破れない。魔物でも見破れないだろう。
建物と住人が揃い、これで偽りの村の完成だ。
偽りの村という俺の嘘。この嘘がやがて大きな結晶になるのだ。

そしてこの偽りの村に魔物たちが襲い掛かってくる。ゲームのとおりに。
ただし村の住人は幻。シンシアの化けた勇者も含め全て幻。
木を隠すなら森の中。村人全てが偽者ならばかえって気づかれにくいはずだ。

ばれる危険がないわけではなかった。
だが、魔物たちはシンシアのモシャスだって見破れなかったではないか。
それにピサロは直接手を下していない。
ゲームの中では別の魔物が勇者をしとめたとピサロに報告していた。
勇者をしとめたつもりのその魔物は知能が低かったのだろう。
俺たちは安全な場所から幻の村が滅ぼされるのを待った。

山奥の村を襲い勇者をしとめたつもりでいるピサロは偽りの村を去った。
シンシアを殺そうとした罰だ。
ピサロはキツネに化かされた魔王として後世まで語り継がれてもらおう。
360 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/22(木) 06:31:06 ID:bpgE70UD0
ここから本物の勇者が住む村に舞台は移る。
村人の住人はシンシアに説得してもらい協力してもらった。
今度は村に魔物の群れが襲い掛かってくるような幻を作り出す。
村人たちが地下の倉庫に勇者をつれて来る。
シンシアが勇者の元に行きモシャスで勇者の姿に変身する。
ただゲームと違いここでそっとラリホーを使い勇者を眠らせるのだ。
そして眠った勇者を偽りの村の跡地に連れて行く。
偽りの村にも元の村と同じつくりの地下倉庫は作っておいた。

勇者が眠りから覚めたころ魔物が襲う音をつくり勇者に聞かせる。
そして魔物とピサロのやり取りを再現して聞かせるのだ。
これは重要なことだ。勇者がピサロの名前を知るのはこのときなのだから。
勇者はまさか自分が元の村から離れた別の場所にいるとは気づかないだろう。
この極限状態だ。勇者は自分が眠ってしまったことさえ気づかなかったかもしれない。

やがて勇者は地下から出て村の惨劇を知る。偽物の村とは知らずに。
生まれてから1度も出たことがない村を離れ1人で旅立つ勇者。
勇者は村から出たことがない。だから本当の村がある場所を知らない。
このあとはゲームと同じだ。勇者は世界を回り、仲間を集め、世界を守る。

シンシアは俺のことを許してくれた。
勇者をだますことになるこの作戦に協力してくれたのだ。
村人たちの中には勇者の旅立ちに反対する者もいた。
全て嘘だったと明かし、勇者を鍛え育てようというのだ。
しかし、シンシアが彼らを説得し勇者は冒険を始めた。
「私たちは死んだの。死んでいる人間にできることは見守ることだけよ」
シンシア、君はやっぱり素敵だよ。
361 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/22(木) 06:39:07 ID:bpgE70UD0
そして世界を平和にした勇者は自分の生まれ育った村に戻ってくる。
生まれ育った村だと信じている廃墟に。
ここで勇者の前にシンシアが現れる。エンディングのあのシーンのとおりに。
勇者は夢か幻だと思うかもしれない。でも、幻なのは襲われた村のほうだったのだ。

絶望的な未来を知ってしまったら、なんとしても回避しようとするだろう。
それができたのは俺だけだ。だけど俺はこの物語に干渉することはできない。
だからこの物語の中で俺がしたことは何もない。俺がプレイしたゲームと何も違いはない。
ゲームの出来事を変えないように俺は勇者と顔を合わせることすらしなかった。
俺は勝負に勝ったのだ。ゲーム上の表現に干渉せずシンシアを守るという大勝負に。

この嘘はピサロや勇者だけではなく画面の向こうの人間も騙したことだろう。
つまり、このドラクエ4をプレイする人間にも嘘をついたというわけだ。

ゲームのシンシアは身を挺し勇者を守って死んでしまうから美しいのかもしれない。
だけど俺はこうして出会ってしまった。そして惚れてしまったんだ。
たとえ年老いてしわくちゃになっても生き抜いて欲しいと思うのは当然じゃないか。

好きだと思う気持ちだけで人はここまでできるものなのだ。
人は好きなもののために全力を尽くす。とても凄いことじゃないか。
好きなことを素直に好きだと認めるのは勇気がいることだと思う。
人は自分が好きなものを他人に否定されることがいつの間にか怖くなるのだろう。
俺はドラクエが好きだ。姉ちゃんがドラクエから離れていっても関係ない。
姉ちゃんは自分の家族というもっと大切なものができただけなんだから。

小学生のとき俺は可愛い子を素直に可愛いと言える勇気があった。
でもだんだん臆病になって言ったんだと思う。
だから研究が好きだけどそれを素直に認めようとしなかったのかもしれない。
362 名前: 冒険の書4 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/11/22(木) 06:41:33 ID:bpgE70UD0
勇者が冒険をする間、キツネとベロリンマンは移民の町に渡った。
俺はシンシアと一緒にすごすことができた。夢のようなひと時だった。
でも、それは束の間の夢。ゲームが終了したことで俺は元の世界に帰るのだ。

不思議な声が俺に語りかけて選択を迫る。この地に残るか元の世界に戻るか。
これはマスタードラゴンの声だろうか。俺は元の世界に戻ることを選んだ。
俺の選択を受け入れて、その声は俺に気をつけて帰れよと言う。
あんたも自分の城に帰る時はトロッコに気をつけろと言いたかったがやめた。
世の中知らないほうがいいこともあるものだ。

俺はここに残らないほうがいい。これは考え抜いた末の行動なんだ。
シンシアには勇者がいる。きっと彼がシンシアを幸せにしてくれるのだろう。
ネズミの嫁入りではないが、一番近くにいた人と結ばれるのが幸せなのだ。
この結末は俺にとってハッピーエンドだといえるのか分からない。
でも、これでいいのだ。
俺は勇者の気持ちになっていた。だから勇者が本当に守りたかったものを守ったまでだ。

俺は大切なものを守るため大きな嘘をついた。偽りの村を作り出すという大きな嘘を。
だけど、それだけじゃなく俺は自分の気持ちにも嘘をついていたのではないだろうか。
……もしかしたら俺は自分に嘘をつき無理やり自分を納得させていただけかもしれない。

この世界から俺の姿が消えていく。
せめて最後に一目だけ、シンシアの、君の姿を見せてくれ。
でも俺にはシンシアが見えない。
シンシアは勇者と抱き合って、俺には勇者の後姿しか見えない。
もじゃもじゃした髪の毛しか……

え。もじゃもじゃ?
ちょっと待て! ひょっとしてこの世界の勇者って女?!

―完―
363 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/22(木) 08:48:51 ID:SOFYQ0x/0
完結おめ!

ちょwwwwwラストwwwwwwwwww
364 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/22(木) 10:01:46 ID:gjwwUmahO
乙!!
短編らしく綺麗にまとめられてて読みやすかった!
365 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/22(木) 10:05:13 ID:9Aaxugk50
すごい話だと感動して読んでいたらラストにふいたwwww
これは予想外wwww
366 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/22(木) 10:41:21 ID:0OeLdVDH0
女w勇w者wwwww
367 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/22(木) 11:45:48 ID:VZNdZ1LP0
いい話ぢゃのう・・。
結局、村ひとつを救ったことになるのだし、世界も平和になったものね。
まあ、勇者のために身を引いたら女勇者だったというのはorzだけど、元の世界に戻って、これでよかったのかもしれないね。
368 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/22(木) 12:49:29 ID:tn2+xU2J0
>>362

これは凄い
ゲーム内ネタで綺麗にまとまってるしオチも利いてる
DS版4の発売日に完結させたのもグッド
巧いね
369 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/22(木) 16:48:51 ID:iwK910l10
>>362
ナイスファイト!
いい話だったが、俺の30秒前の感動を返せwww
370 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/22(木) 19:51:38 ID:P5RRv+OkO
主人公GJ!
DS版の4は女勇者でやってみようかなw
371 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/22(木) 21:57:11 ID:P6XE4tfF0
最後のどんでん返しに吹いたがGJ!
372 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/23(金) 01:23:02 ID:t3eJ9yDfO
GJ! こんなシンシア復活説は初めて見た。
村人も皆生きてるわけだし、シナリオの隙間をうまく繋げててすごいな。
373 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/23(金) 03:03:13 ID:9iUBAyDg0
面白かったよ乙

>シナリオの隙間
まるで針の穴を通すようだったな。
374 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/23(金) 19:53:12 ID:OduXaUN10
おお、奇麗にまとめたなあ。おつかれ。
始まったときはもう少し壮大なストーリーになるかと思ってたのが残念だけど、
これはこれで驚かされた。
375 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/25(日) 19:51:04 ID:K9OdgXDEO
376 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/11/25(日) 20:03:22 ID:q0tmYPQm0
1.宿の中の三人組

その宿屋の部屋には三人の人間がいた。
静かな部屋だった。部屋の中にあるのは窓の外から聞こえる町の雑踏の音だけだった。
その部屋に小さなうめき声がかすかにした。

「目が覚めたみたいだね。ええと、名前は何ていうの?」
緑色の頭巾をかぶった少年が尋ねた。
「私の名前ですか? そうですね、サクヤとでも呼んでください」
ベッドの上でサクヤが答える。
「ではサクヤ。君は自分に何が起きたのか分かるかい?」
今度は赤いバンダナで頭を覆った少年が聞いた。
サクヤは目をつぶり首を横に振った。
「じゃあ、君はどこに住んでいて何をしているの?」
頭巾の少年が優しく問いかける。しかしサクヤは申し訳なさそうにこう言った。
「わかりません。覚えていないのです」

緑色の頭巾をかぶった少年の名はセブン。
赤いバンダナで頭を覆った少年の名はエイト。
どちらも優しそうな目つきをしていた。
377 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/11/25(日) 20:04:55 ID:q0tmYPQm0
「記憶を失っている割にはあまり焦っているようには見えないな」
エイトが冗談でも言う様な口調で話しかける。
「そうですね。弱みは見せるものではなく付け込むものですから」
サクヤも同じような口調で答える。
「なんてね。正直分からないことだらけで慌てる余裕すらないのですよ」

サクヤはどうして自分がこんなところにいるかも理解していなかった。
ただ自分はこの世界にとっていわば招かざる客であると感じていた。
そのため、安直であるとは思ったが記憶喪失を装うことにしたのだった。

「それで、なぜ私はこんなところにいるのでしょうか」
「君はこの付近の海岸で倒れていたのさ」
「だから僕たちでここに、グランエスタードの宿屋に運び込んだんだよ」
サクヤの問いかけにエイトとセブンが答える。

「君は三日間も眠っていたのさ」
この二人は見ず知らずの自分を三日間ずっと看病していてくれたのだろうか。
エイトの言葉を聞きサクヤはそんなことを思った。そして素直に礼を言うことにした。
「そうでしたか。助けていただきありがとうございました」
「サクヤはどうしてそんなとことにいたのか思い出せない?」
サクヤは再び静かに首を横に振った。
378 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/11/25(日) 20:06:27 ID:q0tmYPQm0
部屋の中には音はなく、ただガヤガヤと外の音が漏れ入ってくる。

「何か身元が分かるものがあればよかったのだがな」
エイトはサクヤの持ち物を調べていた。
しかし、持ち物といえば石でできた板のようなものだけだった。
「もしかしてこれって石版のかけらじゃないかな」
セブンがその石に興味を持った。彼の世界では石版は重要な意味を持っていた。
「でも、ボクの知っているものとは少し違うみたいだね」

「よろしければあなたの知っている石版について教えていただけませんか?」
サクヤの頼みにセブンが答える。
セブンの世界では石版は世界の一部を封印するほどの力を持ったものであること。
ばらばらになった石版をひとつにあわせることで封印された世界にいけること。
その世界が封印された原因を取り除くことで封印が解かれること。
「世界を封印か。すごいアイテムがあったものだ」
エイトがため息をつく。
「世界を封印した奴は僕が倒したんだけどね」
セブンの言葉にエイトが応じる。
「それほどの魔物を倒すとは見かけによらず腕に覚えがあるんだな」
「エイトだって多くのモンスターを倒してきたんでしょ?」
セブンとエイトのやり取りを聞いてサクヤは頭を抑えた。
379 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/11/25(日) 20:08:00 ID:q0tmYPQm0
「大丈夫? 頭が痛いの?」
「いえ、この異世界での身の振り方を考えていたところです」
心配するセブンに対し伏目がちにサクヤは答えた。
「身の振り方?」
「ええ、もしかしたら自分は物凄いところにいるのではないかと思いまして」
サクヤの顔色が悪くなる。
「サクヤのいた世界では魔物というのは馴染みのないことなのか」
エイトが驚いたように言った。
「僕の住んでいるところだって元々はモンスターはいなかったんだよ」
セブンの慰めの言葉はサクヤにとって何の意味もなかった。

「でも最近またモンスターが出るようになったよね」
「ああ。もしかすると新たな魔王が現れたのかもな」
セブンにエイトが答える。
「この石版もその魔王が何かを封印したものかもしれないね」

「封印されているのはサクヤ自身かもしれないわよ!」
突然部屋の隅においてある樽の陰から少女が飛び出した。
サクヤとエイトは突然の出来事に戸惑った。
「何をしてるのマリベル……」
セブンは1人困ったようにつぶやいていた。

静かだった部屋は瞬く間ににぎやかになった。
380 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/11/25(日) 20:09:31 ID:q0tmYPQm0
セブンはマリベルを幼馴染だと紹介した。
マリベルはセブンがこの三日宿屋に来ているのを知り忍び込んでいた。
「つまり、マリベルはセブンのことが気になって調べようとしたのだな」
「違うわよ! 私はセブンが私に内緒で面白いことをしていると思っただけ!」
「気になるってのはそういう意味で言ったつもりだ」
にやりと笑ってそう指摘するエイトの台詞にマリベルはより慌てふためいた。

「面白いことを言っていましたね。私が封印されているとか」
エイトとマリベルのやり取りをさえぎってサクヤが話を戻す。
「そう! 私の推理では封印されているのは異世界の人間であるあなたなのよ!」
「ねえ、マリベル異世界ってどういうことなの」
「マリベル様の耳は誤魔化せないわ! サクヤは確かに異世界と言ったのよ!」
「…確かに言っていますね」
サクヤは異世界での身の振り方を考えると言っていた。
「あんたは無意識にここが異世界だと思った。つまりあんたは異世界の人間だったのよ!」
381 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/11/25(日) 20:11:03 ID:q0tmYPQm0
「サクヤが異世界の人間だとして、どうして封印されているこのになるんだ?」
エイトの疑問にマリベルが答える。
「島が封印されていたとき、その島ごとこの世界から消え去ったわ!」
「そうだったね」
「逆に異世界のものが封印されればこの世界に来てもおかしくないじゃない!」
「それは無理があるんじゃ――」
セブンの言葉をさえぎってサクヤが疑問を口にする。
「封印されているとすればどうすれば封印は解かれるのでしょうか?」
「どこかに石版を納める台座があるはずよ。私たちの知っている石版と同じならね」

「でもまだサクヤが封印されているって決まったわけじゃないよ」
「私はこの話に非常に興味があります。ほかに手がかりもありませんし」
セブンの心配をよそにサクヤがマリベルの考えに関心を持った。
「ひとつこれからのことを占ってみると言うのはどうだい?」
それまで黙って話を聞いていたエイトが提案する。
「闇雲に行動するよりはこれからすべきことが見えてくるかもしれないぞ」

窓の外にはきれいな青空が広がっていた。
382 名前: ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/11/25(日) 20:12:12 ID:q0tmYPQm0
本日はここまでです。
383 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/26(月) 02:23:38 ID:0HzmuWDZ0
合作キテター
さらに主人公追加?
いつもの「→冒険をする」がないのは意味ありげな
384 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/27(火) 02:04:10 ID:MvAkJ9vU0
第十一話前半投下します。

LOAD DATA 第十話後半 >>333-337
385 名前: 紫焔一閃【1】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/27(火) 02:07:37 ID:MvAkJ9vU0
太陽は高い位置から俺達を見下ろしている。
清々しい日差しがステンドグラスから差し込み、十字架を七色に照らす。
麗かな昼下がり…なのに、俺達の心はどんよりと淀んでいる。

サトチーの腕の中で一通り暴れ、突然電池が切れたように気を失ったブラウン。
ぐったりと動かなくなったブラウンは、シスター達によって治療を受けている。

「ブラウンちゃんは大丈夫。眠っているだけみたいですよ。」
寝室から出てきたマリアの言葉を聞いたサトチーの表情に安堵の色が浮かぶ。
恐らく、俺も同じ表情をしているだろう。

だが、マリアはその青い視線を床に向ける。
「ただ、目が覚めた時に正気に戻っているかどうかは…」
「…その心配はない…だろう…」

気落ちしたようなマリアの言葉を遮るのはスミス。
ブラウンが気になったのか、無理をして日光の中に歩み出たのだろう。
その濁った瞳を眩しそうにこすっている。

「…あの時…ブラウンはプロトキラーの一撃で気を失っていたな…
 …幼いモンスターにはよくある事だが…意識がない状態で強い魔性に触れた時…
 一時的にその意識が魔に支配される事がある…ブラウンの異変はそれだろう…
 意識が戻れば…魔性の呪縛からも開放されている…筈だ…」

…なるほどねぇ…って、俺にはさっぱり理解できない…

「ちょっと待って。あの場にいたのは僕達三人と、あの機械と兵士だけだよ。
 どこに強い魔性の発生源があったって言うんだい?」
サトチーの横槍に、スミスがちらりと俺の方を見る…え?俺?

「知らぬ…」
386 名前: 紫焔一閃【2】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/27(火) 02:11:28 ID:MvAkJ9vU0
「……ていっ!」 びしっ!
「……なんのつもりだ?」

ヘンリーのチョップがスミスの頭部に打ち込まれる。
痛みを感じないスミスには全然効いてねえみたいだけど…

「なんのつもり?それはこっちのセリフだろうがよ。スミスの旦那ぁ。
 大層な講釈を並べておいて知らねえはなしだろうが。」
「…ふむ…ならば表現を変えよう…確信はしているが…肝心の確証がない…
 半端な考察を論じた所で…混乱を招くだけだろう…」

チンピラのように絡むヘンリーを冷静に受け流す。
スミスの言う事はもっともだが、どうにも釈然としない。

「…教会の空気は私には合わぬ…サトチー卿…私は馬車で待たせてもらう…」

うやうやしくサトチーに礼をし、修道院から出て行こうとするスミス。
開け放たれた修道院の門から差し込む太陽の光に、眩しそうに手をかざす。
貴族のような振る舞い…従者のような気配り…学者のような知性…
生前のスミスはどんな人間だったんだろう。

「…そうだ!スミス!」

俺の呼びかけに振り向いたスミスに駆け寄り、カバンから出した物を手渡す。

「サングラス…っていうんだけどさ、これを使えば眩しくないだろ?」
「…異世界の色眼鏡か…なかなか良いものだ…ありがとう…」

サングラスを装着したスミスに礼を言われ、思わず後ずさりする。

血色の悪い顔色…バサバサの髪の毛…ボロボロの衣服…そしてサングラス…
似合ってる…似合ってるんだけど…似合い過ぎてなんかヤダ。
387 名前: 紫焔一閃【3】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/27(火) 02:15:28 ID:MvAkJ9vU0
        ◇           ◇
「しっかし、あれは説得って言うのかねえ。」
小さな鍵をチャラチャラと振り回しながらヘンリーに問い掛ける。

修道院を襲撃した兵士は、ヘンリーの説得で小さな鍵を俺達に手渡した。
『私は先代のラインハット国王に忠誠を誓った身。
 先代の王亡き今、私の主君はデール様ではなくラインハット王国そのもの。
 裏切りではなく、私は王国の未来の為にヘンリー様にこれを託します。
 …あ…だから…カエルはもう…ひいぃぃ…』

どう見ても拷問です。本当に(ry

「トムの奴もずっと苦しんでたんだろうな…」
真正面を見据えながら、ヘンリーが短く答える。

あの兵士もラインハットの異変には気付いていたに違いない。
異変に気付きながら、一介の兵士の身では何も出来ず…
愛国心と忠誠心の間で苦しんでいた。
―王国の未来の為― あれが彼の本音なのだろう。

「終わらそう。あいつの苦しみも…ラインハット王国の悲しみも全部。」
普段とは違う、静かなヘンリーの言葉で一気に気合が入る。

「俺も微力ながらお手伝いさせてもらいますぜ。お・や・ぶ・ん。」
「頼りにしてるぞ。なんてったって、ヘンリー様自慢の子分だもんな。」

緊張して然るべき状況を笑い合いながら歩く二人。
気が緩んでるわけではない。むしろ、千切れ飛びそうに張り詰めている。
それを隠すかのように、互いに笑ってみせる。

ウシッ!行くぞ。今度はこっちから仕掛ける番だ。
388 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ 投稿日: 2007/11/27(火) 02:16:09 ID:PuBO+dTSO
初リアル遭遇紫煙
389 名前: 紫焔一閃【4】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/27(火) 02:19:04 ID:MvAkJ9vU0
「なあ…念のためもう一度聞くけど…本当に飛び込んで平気なんだな?」
「平気だって。イサミは肝っ玉の小せえ奴だなあ。」

正直ビビってます。何にって…目の前で煌々と輝きながら渦を巻く水色の光。
これがトムから教えられた第二の抜け道。
修道院の南に広がる森からラインハット城の一室に繋がる旅の扉。
例えるなら転送装置みたいなものか…俺の世界には存在しないけど…

「…他に抜け道はないんだな?…マジでコレしかないんだな?」

自分でもヘタレだと思うが、デカイ洗濯機のような光景はマジで怖い。
そのデカイ洗濯機に飛び込もうと言うのだから、嫌でも慎重になる。

何度も念を押す俺に痺れを切らしたのか、ヘンリーが後ろから背中を押す。
「ほれ、チャッチャと行った行った。」
「…ちょ…ば…押すな!まだ心の準備がああぁぁぁ…」

濃淡のある水色が縞模様となって景色を覆い、次第に視界が水色の帯に侵食される。
どっちが上でどっちが下だかもわからない奇妙な浮遊感。
息は出来るので溺れる心配はないみたいだ…が……気持ち悪りぃ…

グニャグニャと捻じ曲がる視界にじっと耐えていると、靴の裏に固い質感を感じた。
水色の帯が霧散し、数秒前とは違った景色が視界に入る。

「な?大丈夫だっただろ?」
「…あぁ…大丈夫だ…けど…二度と使いたくねえ…」
「気分が落ち着いたら行くぞ。そろそろ予定の時間だ。」

本が散らばっている部屋…城の書庫だろうか?その部屋の扉をそぉっと開ける…
その動作は扉の向こうから聞こえる声によって止められた。

「やはりトムは裏切りましたか…まあ、予想通りですがね…」
390 名前: 紫焔一閃【5】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/27(火) 02:20:54 ID:MvAkJ9vU0
「はぁ…この国は凄腕の軍師でも雇ってるのかよ?」

ヘンリーが観念したように扉を開ける。
扉の向こう側。中庭にずらりと並ぶラインハット兵。その後方に控える金髪の王。
いい加減、気が滅入る。こっちの手はお見通しってわけですかい。

「そんなに誉められる事でもないでしょう?僕は万が一を見逃せないだけです。」

壁のように立ち塞がる兵士達が俺達に槍を向ける。
冷たい笑みをうかべ、悦に入ったような表情で続けられる王の演説。

「万が一、プロトキラーが敗れたら…次はそちらが反撃に出てくるでしょう。
 聡明な兄なら、同じ失敗は避ける筈。前回と同じ道を使うとは考えられない。
 ならば、どこから浸入してくるか…不毛な読み合いは時間と労力の無駄です。
 経路を一つ残しておけば、相手は勝手にそこから侵入してくるのですからね。」
「君は敢えてトムさんに鍵を渡しておいた…って事かい?」
「兄を可愛がっていたトムの事です。彼が本気で兄に剣を向けるとは期待しません。
 あなた達は僕の期待通りにプロトキラーを撃退し、僕の期待通りに策を巡らせ、
 期待通りの方法で侵入してくれた。感謝しますよ。期待通りの働きをありがとう。」

「そりゃどうも。俺としても、お前が頭の切れる奴で良かったよ。」
ニヤリと笑うヘンリーに、怪訝そうな顔を向けるデール。

本当、期待通り…だとしたら悪い事したなあ。

死角で起こった異変…知っていた者はいても、気付く者はいなかった。
王の背後…中庭の一角の地面が跳ね上がり、地面の下から二つの影が飛び出した。

「鏡よ!力を示せ!!」

作戦成功。見事に釣り針に食いついた。
鏡を持った本隊はサトチー・ブラウンの二人だ。
391 名前: 紫焔一閃【6】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/27(火) 02:26:21 ID:MvAkJ9vU0
兵達は突然の事態に反応できない。自分の世界に入っていた王は尚更だ。
中庭に構える隊列の背後を取ったサトチーが、ラーの鏡をデールに向ける。

太陽がもう一つ現れたかのような眩い光の奔流。
鏡から発せられた光の帯がデールを飲み込む。

旅の扉から侵入する俺達とは別に、地下から浸入していたサトチーとブラウン。
聡明で狡猾なデールの事、俺達が前回と同じ道を使うとは考えないだろう。
恐らく、兵を率いて扉の出口で待ち構えている筈だというヘンリーの読み。
なら、俺達が囮となってデール達の視線を集中させ、油断した隙を狙う作戦。

兄より優れた弟など存在しねえ!!…ちょっと違うか。

「う…ああああぁぁぁぁぁぁぁぁアアアァァァァ!!!」

王を包み込んでいた光が収縮し、次第に細くなる。
細く、それでもなお一点に集中する光の帯がデールの胸を突き刺す。

完全にもらった。不毛な読み合いは俺達の勝ちだな。

とさり…と、静かに王が倒れると同時に光は消えた。

「デール!!」
「大丈夫…呼吸はしっかりしているし外傷もない。命に別状はないよ。」

倒れたデールに駆け寄り、その身を助け起こすヘンリーと回復を施すサトチー。
兵士達は事態が飲み込めないのか、放心状態で動けない。
俺とブラウンは周囲を取り囲む兵士の動きに集中する。
烏合の衆と化した兵達をかき分け、無言のまま俺達の輪に入る女。
サトチーの手によって地下牢から助け出された大后。

母親だもんな。息子が心配にもなるだろうさ。
392 名前: 紫焔一閃【7】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/27(火) 02:27:44 ID:MvAkJ9vU0
「…デール…」

顔に付着した埃を払うでもなく、薄汚いドレスのままゆっくりと近付く大后。
感動の対面ってヤツか…大后の手に握られたナイフの輝きが目にしみるねえ。

…ん?

…何でナイフ??

「デエェルウゥ!!」
大后が夜叉の形相でデールにナイフを振りかざす。
兵士達だけではなく、突然の事態に反応できないのは俺達も同じ。

…ただ一人を除いて。

何十年も前の無声映画のように流れる光景。
鈍い輝きを放つナイフが、デールの体に吸い込まれるように突き出される。
刹那、緑色の髪が鈍い輝きの前に立ち塞がり、狂乱する鬼女を突き飛ばす。
もんどりうって倒れる鬼女をに飛びかかり、組み伏せる緑色の髪の男。
鬼女を押さえつける腕から滲み出す真紅が緑色の髪に映える。

我に返る。
何が起こったのか理解できない俺の耳に狂騒が飛び込む。

「放せ!このガキだけは…」
「何を考えてるんだ!あんたはデールの母親だろ!!」
「黙れ!黙れ黙れ黙れぇ!このガキゃあ散々俺さまに歯向かいやがって。
 挙句の果てには俺様を牢になんぞぶち込みやがった。絶対に許せねえ!!
 こいつのお陰でラインハットを乗っ取る計画は全部ぶち壊しだ!!」

は?…何を言ってるんだ?ラインハットを乗っ取る?
393 名前: 紫焔一閃【8】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/27(火) 02:30:38 ID:MvAkJ9vU0
「…見るに耐えませんね…」

澄んだ声…濁った声…どちらとも形容できる声。
いつからそこにいたのか、紫のドレスを身に纏った女がデールの傍らに佇む。
一般的な尺度でいえば綺麗の部類に属するであろう造形は作り物の様に冷たい。
その女は俺達に向き直り、目だけで笑う。それは心が焼かれるような残酷な目。

「少しだけお待ち頂けますか?今すぐにゴミを処分しますので。」

サトチーがビクリと大袈裟とも思える反応を示す。
俺もヘンリーも言葉が出て来ない…蛇に睨まれた蛙の心境ってやつか…

「俺様をゴミだと?このアマ…消し炭になって非礼を償えやぁ!」

大后の顔が、体型が、姿が変形し、その裂けた口から紅蓮の業火が迸る。
女は避けようとも防ごうともせず、そのまま燃え盛る炎に飲み込まれ…
炎が花火のように八方に散った。そこには先程の妖艶な女の姿はない。
四散した炎の中央から表れたのは…紫色の闇…

「ほっほっほ…道理はわきまえているようですね。正解ですよ。」

闇色の魔女がかざした手の先に現れたのは、紅い闇色の太陽。

「お前の言う通り、ゴミは焼却処分するのが正解ですからね。」
「な…何で大将がここに…話が違うじゃねえk…」

魔女が放つ紅い闇色の太陽は、悲鳴をあげる執行猶予すらも与えない。
肉の焼ける匂いと蒸発音だけを発し、大后であったモノは消し炭すら残さず消えた。

「ゲマァッ!!」

吼えるサトチーの瞳に、魔女が放った物と同じ色の炎が浮かぶ…そう見えた。
394 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/27(火) 02:32:58 ID:MvAkJ9vU0
真打登場した所で、今日の投下はここまでです。
偽大后とのバトル?…ほっほっほ、知りませんよ。
395 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/27(火) 02:37:46 ID:MtPhmK3O0
まさかのゲマ登場に身震いした
396 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/27(火) 08:32:04 ID:r+YCHqKE0
なんか凄い展開になってる件。とりあえず乙。
真面目にwktkが止まらない。先が楽しみすぎる。
397 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/27(火) 10:06:55 ID:gFAChP0f0
お前等なんかせいぜいただの村人でよくてドラキーまでしか倒せないだろうからあんま考えなくていいよ
398 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/27(火) 10:16:11 ID:dcvAL4Cm0
まさかゲマが出てくるとは思わなかった
まだ鳥肌がおさまらん乙!
399 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/27(火) 11:31:24 ID:loMnsTzR0
むむむ?
ラーの鏡で、姿が戻らなかったということは、やはり悪行をつくしていたのはデール本人なのだろうか。
しかも、ゲマまで出てきてびっくり。
400 名前: ドラクエ3 ロマリア編5 ◆Tz30R5o5VI [sage] 投稿日: 2007/11/28(水) 14:06:48 ID:8sctG+82O
ロマリアの国王「わっはっは。よく来てくれたな、勇者の息子ゆきひろよ! 立ち話もなんだからどこかくつろげる所に行こうではないか。ん? うわっはははは! しかしオルテガの息子は聡明な顔立ちをしておる! わしの若いころにそっくりじゃい!!」
なるほど・・・これは確かに色々な意味でめんどくさい事になりそうではあるような・・・。
まあ拒否権などないのだから、さっさと、話を聞いてしまうしかないだろう・・・。
女武闘家エリー「で、用件はなんなのよ?」
案の定、エリーが国王に先に聞いてしまった。
女僧侶ナナ「エリー・・・」
ロマリアの国王「カンダタという小悪党がおってな・・・。我が国の国宝『金の王冠』が盗まれてしまったのじゃ! なんとかしてくれんかのう。取り戻してくれたら、なにかそのぶんの礼をさせてもらうぞ・・・うむ」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「手がかりはありますか」
ロマリアの国王「まあ、あれじゃ。北のカザー・・・・・・??の村でカンダタを見た、・・・という情報くらいしかないんじゃ・・・すまんの」
男戦士サイモン「礼ってのは、期待していいのかい? 慈善事業とはいえ、もらえるものはもらっときたくてなあ、王サマ?」
女僧侶ナナ「サイモン! あなたは・・・」
ロマリアの国王「モチのロンじゃ、我が国の姫でも、わしの地位でも、金でも何でもやろう!! ・・・という勢いはあるほどじゃ(小声)」
とにかく北に行くか。
401 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/28(水) 14:31:59 ID:iLEB4Isx0
支援だよもん。
ていうか投下中なのかな?今回の投下終了なのかな。

ロマリアの王様、お調子者だのう。
402 名前: 紫焔一閃【9】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/28(水) 17:29:24 ID:c1qvqYwC0
怒り…悲しみ…嘆き…恨み…一言では到底表現しきれない感情の色。
この世界に存在する全ての負の感情が入り混じった様な色。

怖い…

サトチーを初めて怖いと思った。

「ゲマ!お前だけはっ…!!」

感情をあらわに飛び掛るサトチーの一撃に対し、魔女は一息をついただけ。
そう、小さく息を吐くだけの動作にしか見えなかった。

ふうっ と、青白い吐息を一瞬吹きかけただけで、辺りの温度が急激に低下する。
チェーンクロスはガラスのように砕け散り、一瞬固まったサトチーが崩れ落ちる。

「ほっほっほ…10年振りの再会だというのに穏やかではありませんね。
意識だけは残しておきますから、少し頭を冷やしなさい。」

零下の余波は周囲一体を飲み込み、冷たく輝く風の牙となって中庭を吹き抜ける。
まぶたが、鼻が凍りつく。一瞬で意識から引っこ抜かれそうな寒風。
ブラウンと俺は身を寄せ合って寒さを凌ぐ事しか出来ない。

ヘンリーは倒れたデールに覆い被さり、冷気の直撃から弟を守っている。
その向こう側では、体を半分凍りつかせた兵士達が次々に倒れる。

シャレにならねえ…マジで殺られる…

痛いまでに全身を突き刺していた冷気が止み、再び顔を出す太陽。

格の違い…無防備な目の前の魔女が放つ強烈な重圧に足が震え出す。
居るだけ、そこに存在するだけで周囲を圧倒する絶対的な威圧感。
横に立つヘンリーとブラウンも同じく、その両膝がガクガクと震えている。
403 名前: 紫焔一閃【10】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/28(水) 17:31:06 ID:c1qvqYwC0
「お…お前がラインハットを狂わせてた元凶だってのかよ…俺達に何の恨みが…」

寒さのせいではなく、心の底から震える声で魔女に問い掛けるヘンリー。
対して、ゲマは俺達を見下したような高笑いを発しながら語る。

「ほっほっほ…勘違いなさらないで下さい。私はただの観客ですよ。
 私は王の傍で成り行きを見ていただけ、私自身は何も手を下していませんよ。
 先程のゴミも演技力だけはあったようですが、何も出来なかったようですしね。」
「だったら…デールは…そうだ!本物の大后はどうしたって言うんだよ!」
「言ったでしょう?私は居ただけですよ。大事な兄を失った子供の傍にね。
 ほぉっほっほっほ…やはり観劇は特等席で見なければ臨場感を味わえませんね。
 消えた兄を思う弟の気持ち、遠い地で弟を思う兄の気持ち、堪能させて頂きました。
 せめてものお礼です。受け取りなさい。」

魔女が指をかざす先、何もない空間から人の姿が現れる。
刺々しい鎖で空中に縛り付けられているのは、豪華な衣装を身に纏った初老の女。

「おやおや…大后を魔界に幽閉したのは失敗でしたか?呪縛が解けませんね。」
「て…てめえ…ふざけてねえでさっさと…」

ようやく搾り出した俺の声は魔女の一睨みで止められる。
情けねえ…

「それは、天空の剣…ですか?」

俺を睨みつける表情を緩め、笑みを浮かべる魔女。
魔女が指差すのは俺の背に納められた剣。

「天空の剣の剣閃は一切の魔を祓うと伝わりますが…果たしてどうですかね?
 その剣の力をもってすれば、大后を縛り付ける呪縛を解く事も可能でしょうが、
 ほっほっほ…貴方にその剣の力が引き出せますかね?」
404 名前: 紫焔一閃【11】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/28(水) 17:32:11 ID:c1qvqYwC0
俺の背に背負われた剣。
一切の魔を祓う天空の剣
嘗て、天より舞い降りた伝説の勇者が用いた剣。
この世界と魔界との境界を切り開く伝説の剣。

でも…今、この剣を振るう俺は…

するり と、鞘から剣を引き出し構える。
…が、この後どうすれば良い?

「イサミさん!母上を助けて!」
目を覚ましたデールの懇願が俺の目を覚ます。

「イサミ…お前は俺の子分だ…俺が見込んだお前なら出来る。」
肩を叩くヘンリーの言葉が俺の背を押す。

―!!!―
ブラウンの声援が俺の両腕を持ち上げる。

「…イサミ…君なら…大丈夫だ…」
凍てついた体のまま発せられたサトチーの激励が俺の中に火を点ける。

俺は天空の勇者なんかじゃない…普通の大学生で…今はただの住所不定無職異邦人。
でも、今の状況を何とかしたいと思うのは…親友の声に応えたいと思うのは…
親友を守りたいと思うのは…勇者なんかじゃない俺でも一緒だ。

やってやる!

―オオオォォォ!!―

咆哮と共に振り上げた俺の両腕に力が発現するを感じた。
力が腕から手を伝い、剣に流れ込むのを感じた。
405 名前: 紫焔一閃【12】 ◆Y0.K8lGEMA [sage お仕事サボり中] 投稿日: 2007/11/28(水) 17:33:59 ID:c1qvqYwC0
「…ッリャアアアァァァァァ!!!」

真白い光景だけが目の前を支配する…何も見えない…けど、
一心で振り下ろされた剣の先から、全ての力が流れ出すのを感じた。
俺の中の色んな物が流れ出すのを感じた。

立っていられない疲労感…思わず膝をつく。
脱力感…俺の手から力が抜け、剣が音をたてて地に落ちる。
同時に、霧が晴れるように視界が元の色を取り戻す。

支えを失ったかのように落下する大后を、デールがギリギリで受け止めた。

ウシッ!…とか、やってらんねえ…マジしんどい。
いやいや、まだへばってられねえ。あの紫の鬼ババアを…

「ほっほっほ…見事に魔界の呪縛を解きましたか。しかと見届けましたよ。」

高笑いを浮かべる魔女に剣を向ける…ハッタリだけどな。
戦う力なんか少しも残ってやいねえ。

「無理はなさらない方が良いでしょう。ここで貴方達を殺す気はありません。
 残念ながら、そこまでの自由は許されていないようですからね。」
「待て!お前だけは絶対に…」

紫色の霧に包まれる魔女にサトチーが追いすがる。
その足はふらふらとしておぼつかず、再び地面に倒れ伏す。

「ほっほっほ…それではごきげんよう。サトチーと…ホコロビ…
 いずれまたお会いしましょう。それまでその命を大事になさい。」

紫色の霧の中、高笑いを残して魔女は消えた。
406 名前: 紫焔一閃【13】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/28(水) 17:35:08 ID:c1qvqYwC0
「ゲマ!…次こそは…必ず…」
サトチーが虚空に向かって吼える。

…あの鬼ババア、何がしたかったんだ?
全然、聞き足りないのに言いたい事だけ言って帰りやがった。

いや…ここでバトらなかったのは助かったけどさ…
次こそは、か…会いたくないな、出来る事なら二度と…

「後味悪りいけど、デールのやつも正気に戻ったみたいだし…これで一段落か。」

力が抜けたように座り込むヘンリー。
デールは子供の様な表情で大后に泣きすがっている。

「まあ…一件落着なのかな?」
「本当にありがとうな。これできっとラインハットも立ち直る。
 サトチーと、イサミと…この剣のお陰だな。」

地に落ちた剣を拾い上げ、俺に手渡すヘンリー。
その手から剣を受け取り、背中の鞘に戻す。

少しずつ傾きつつある太陽の光を受け、竜のレリーフがきらりと光った。



イサミ  LV 16
職業:異邦人
HP:4/77
MP:0/15
装備:E天空の剣 E鎖帷子
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌 足払い ―――
407 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/11/28(水) 17:38:34 ID:c1qvqYwC0
第十一話投下完了です。
長かったラインハット編も次で終了です。

…そう言えば、まだラインハットだったんだ…
408 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/28(水) 18:10:17 ID:V+J9AxuG0
投下乙でございました。
みんなの応援で天空の剣の力の発現、かっこよかったです。

ほ、ホコロビ。
うーん、気になる。小さなホコロビでもそこから大きな穴があくことがありますからね。
409 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/28(水) 19:56:10 ID:8FEhk7J50
乙。ひと段落は着いたのかね。イサミくん頑張ってていい感じ。
まだ青年編の序盤、小説版なら二巻の初めってところだね。
先は長いけど楽しみにしてます。
410 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/28(水) 20:30:37 ID:D5ifU8230
Vは、ヘンリーと一緒の時までが面白かった・・・・
411 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/28(水) 20:59:02 ID:g28dQQ7E0
>>407
ちょ…仕事しろよ!サボるとムチで打たれるぞw
だが投下乙!
ゲマが天空の剣の力を引き出させる為に嗾けたような言い方も気になる
何を企んでるんだろう
412 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/29(木) 01:21:29 ID:1r1bMF1oO
投下乙。
最後の最後にそう持ってきたか
GEMAさんニヤニヤしてるだろうな
413 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/29(木) 10:22:45 ID:L5SSIzGS0
乙です。
イサミの頑張りいいな

ずっとゲマをホホホな男だと思っていた自分は、
魔女の表記に違和感を感じた
・・・んだが、この話だと不思議としっくり来るな
414 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/11/29(木) 12:33:55 ID:11wLY2i+O
呪文・特技欄の―――が気になる
415 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/01(土) 01:52:42 ID:jXMvelc8O
保守
416 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/01(土) 14:35:06 ID:Pb366fGcO
目が覚めた。天井になんか違和感がある。周りを見渡したらどうも俺んちではない。
俺はちゃんとうちに帰ったよな?昨日は大学が終わってバイトをしてからいつものようにバイクに股がりうちへ直行したはずなんだが。
ここはベッドとカンテラとタンスぐらいしかない部屋。さながらホテルのようだ。ここ、何処だ?そして何で俺はこんなところにいる?
俺は悩んでいても仕様がないのでこの部屋から出ることにした。
あ、人がいる。何処にもいそうなおばちゃんだ。あのー、すみません…と俺は話しかけようとしたその時。
「キャー!魔物よ!」
おばちゃんが血相を変えて逃げていった。えっ?ちょっ、何?魔物ってなんだ?
「出ていきなさいよ!」
血相を変えたおばちゃんは箒を持って戻ってきた。俺に向け、俺を攻撃しようと何度も叩こうとする。
何をするんだ!俺はゴキブリじゃないぞ?俺はほうほうのていでおばちゃんから難を逃れた。
俺はあれから逃げ出し近くの湖へと辿り着いた。はぁ疲れた。喉渇いたな。
湖の水は澄んでいるし飲むかと手を差しのべようとしたら手がない。いや手が出なかったんだ。そして水鏡に写った俺の姿は紛れもない、ドラクエのスライムだった。
417 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/01(土) 14:35:57 ID:Pb366fGcO
湖をそろそろとゆっくりと早く覗いて見ても俺の姿はどうみてもスライムです。本当に略。
何でどうしてこうして俺はスライムなんだぷるぷる!
うわー動きまでスライムっぽい。俺涙目。
…人の声がする。数人の大人と、子供の声。俺は身体を弾ませ近くの草の中に身を隠した。
姿を隠したはずだが、ちょっ、俺の目の前にスライムが現れた!
「ピキー?」
スライムが俺に話しかけてくる。あんたなんでこんなところにいるの?って言っているようだ。スライム語まで理解してしまう。切ない。
「ピキー」
逃げてきたんだ、と伝える。本当だ。
「駄目じゃないかスラリン。先に行っちゃあ。おや、そのスライムは?」
スラリンと呼ばれたスライムは紫ターバンを巻いた青年に俺の事情を話す。
「逃げてきたんだ。ここらへんはスライムはいない。モンスターが強いからスライムは生息出来ないからね。…どうやら野生ではないようだね。どこからきたんだろう?」
ここらへんは強いモンスターが出るのか…。ターバンの話を聞いて逡巡する。もし出会ったら瞬殺されるな。
なんせ今の俺の姿はドラクエ世界で最弱モンスターと銘打つスライムだもんな。
「ピキー、ぷるぷる」スラリンは身体を震わせターバ
418 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/01(土) 14:43:33 ID:Pb366fGcO
「ピキー、ぷるぷる」スラリンは身体を震わせターバンに請う。
「一緒に連れてってもいいか、か。どうだいビアンカ?テンとソラは?」
俺は仲間にして欲しそうに見つめている。
「いいんじゃないかしら」
とビアンカと言われた金髪の三つ編みの女性が言う。
テンとソラと言われた子供たちからも了承を得た。
良かった、俺は救われた。殺そうとする人間もあれば救う人間もいるもんだな。ターバンが俺の名前を聞いている。俺の名前はアキラだよ。
「アキラはレベル1なんだね。まだ戦闘要員にならないから馬車へ行こう」
テンと呼ばれた男の子が俺を馬車へと誘う。「君の仲間がいっぱいいるから仲良くしてね!」
女の子のソラが言う。
誘導された俺が見たものはグッドスメルのくさった死体と八本の腕が馬車内を狭くしているアームライオンと俺を鋭い目で狙うキラーパンサーだった。
アキラですが馬車内が最悪です。
そんななか、嬉しそうに寄り添って頬ずり?してきたスライム、スラリン。何とメスなんだそうだ。スラリンは何かと俺に教えてくれる。
この人間たちは家族であり、あの子供は双子とか、ターバンは魔物使いで魔物と仲良くなれることが出来ること、これから暫くレベルを上げて
419 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/01(土) 14:44:43 ID:Pb366fGcO
皆との旅は楽しかった。
子供たちやターバン夫婦は俺を愛してくれるし、アームライオンやキラーパンサーも見た目は怖いが所詮は猫科動物。なつけばゴロゴロと喉を鳴らす。
スラリンは当初から俺に好意を示してきた。一目惚れだったと彼女は言っていた。俺のどこがいいかは分からないが惚れられて悪い気はしなかった、スライムだが。
だから連れて行きたいと言っていたのかな?
人間の目にはスライムの顔なんてどれも一緒に見えるが、スライムの視点からみるととても表情豊かだ。
俺は幼い頃両親を早く亡くして母方の祖父母に預けられ、育てられた。とても良くしてくれ、今通っている大学だってお金を出してくれ、応援してくれている。
だが、どんなに良くてもやはり母や父から愛情を受けたいとずっと渇望していたんだ。
祖父母と俺。ターバン夫婦と子供たちと俺。俺が付け加えられ出来た家族。これだけでもとても幸せだ。
俺は今度は家族を創りたいんだ。子を成し、親になり、愛情を子供に注ぐんだ。自分が両親から受けられなかった愛情をさ。
スラリンならいいお母さんスライムになれる。スラリンも俺のことを深く愛してくれている。…俺も…。
420 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/01(土) 14:46:10 ID:nAUHIHyv0
緊急支援
421 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/01(土) 14:48:54 ID:Pb366fGcO
ターバン夫婦と子供たち、それと俺たちモンスターは死力を尽くして最終ボスを倒した。
やった!俺たち間に喜びが駆け抜ける。皆笑顔だった。ハッピーエンドだ。
と。
俺やスラリン、アームライオン、キラーパンサーが少しずつ身体が透明になってゆく。
ああそうか。俺たちモンスターはきっと最終ボスより作りだされた存在。ボスが消滅してしまえば具現する力を失う。
ドラクエは、ボスがいなくなると他のモンスターもいなくなるもんな。
スラリンが飛び付いてきた。目からぽろぽろ涙が零れている。
アームライオンも、キラーパンサーも。
「行かないで!」
仲良くなったテンとソラ、涙でぐしゃぐしゃな子供たちが俺たちの身体を抱き締めようとしたが、既に触れられなかった。
さよならだ。
ありがとう。ありがとう。俺が消えても、どうか忘れないで下さい。
俺は、ドラクエの世界から消滅した。
俺の身体はベッドに横になり顔に白い布を被されている。俺の横には祖父母が俺の手を握りしめ涙していた。俺はその光景を…天井から見てた。
そうか俺…バイト帰りでバイクに乗って…跳ねられたんだ。
それから意識がなくなっていつの間にかドラクエ5の世界のスライムになっていたんだ。
422 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/01(土) 15:01:28 ID:nAUHIHyv0
完結・・なのかな?
うおー、なんてこったい、ラスボスを倒すと、味方モンスターまで消滅しちゃうのか。
アキラくんにスラリンちゃん・・・(泣

最後に、死の間際にスラリンちゃんと勇者一家と幸せな思い出ができてよかったの・・・・かな。

モンスターになって勇者一家と旅をする視点は新しいとおもうし、衝撃の結末っ。
投下乙でした。
423 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/01(土) 15:30:38 ID:Pb366fGcO
俺がドラクエ5をプレイした時3代続く家族物語に感動した。全部のナンバリングをプレイしてきたけど俺の中で一番ずっと心に残る物語。
俺の夢見た夢をドラクエ5の世界は叶えてくれた。現実では俺の夢はもう叶わないから。
俺の身体が消えてゆく。ターバン夫婦やテンやソラ、スラリンやキラーパンサーやアームライオンとお別れした時のように。
今度は祖父母にお別れだ。さようなら。ありがとう。
消えゆく俺の視界にスラリンと両親がいた。迎えに来てくれたんだね。俺は手を差しのべた。

―了―

保守代わりの短編でした。文章が途中で切れてしまって同じ文章を投下したり最後の文章を投下するのに時間がかかったりとハチャメチャでしたが支援と感想ありがとうございました。
424 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/01(土) 15:45:30 ID:nAUHIHyv0
あー、終とか、了ってないから、おかしいなーとおもってたら、エピローグがあったのねん。これまた失礼しました(汗
主人公くん、迎えに来てくれたスラリンさんとあの世?かどこかの世界で、幸せに暮らせるといいですね。

良作、乙です。
425 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/01(土) 20:13:47 ID:+1W+BsIS0
>>423
通りすがりだがとても感動した。
死んだ祖父母を想い出してちょっと泣けた。
426 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/01(土) 21:41:55 ID:6IfUCI2X0
>>423
良作短編乙
話に入り込んで涙ぐんでしまった
427 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/02(日) 01:56:07 ID:17b69Kq8O
これは良かった
428 名前: ウンコ大魔王 ◆/AbS5YUejk [sage] 投稿日: 2007/12/02(日) 22:18:01 ID:77UN1qTT0
退屈な毎日から逃れ出るための逃避行の旅…


ある日俺は夢を見ていた。

耳の形が奇怪な、黒いマントをはおった集団が一人の少女を取り囲み、
何やら言葉を取り交わしている。

「…して……我…闇の主が……」
「……瑠璃……急…」
「エサ………剣さえ…」

少女は青みがかった白いローブに身を包ませながら、
脅えきった眼で周りの連中を見ている。

俺は全く身動きができない。

黒づくめの連中から一人、まがまがしい剣をもった奴が
一歩前に出、少女ののど元にその切っ先を突き立てた。
ゴウンゴウンという耳鳴り、くぐもった呪術の詠唱、重く垂れこめた空気。

俺は必死でもがこうと(少女を助けようとしたのか自分が動けないことが苦しかったのか、
今となっては定かではないが)、身をよじらせたが、吹き出るのは冷たい汗ばかり、
咽はからからで眼の前もだんだん暗くなってくる。

それでも必死に体中の全神経を使って失った器官の能力を再生しようともがき、

「や…め……ろ…」
と声にならない声を振りしぼった。

その瞬間、生贄に歓喜していた全ての悪魔達の眼がこちらに向けられ、
俺は目が覚めた。
429 名前: ウンコ大魔王 ◆/AbS5YUejk [sage] 投稿日: 2007/12/02(日) 22:25:15 ID:77UN1qTT0
「はは…は……夢か…」

全身汗びっしょりになりながら、不意の夢オチに虚をつかれながら俺は身体を起こした。

「だりい…風邪ひいたかな……」

などと独り言を言いながらゆっくりとベッドから足をおろす。
風邪などではないことは、はっきりとしていた。

なんだ?あの夢?

あのようなシーンは映画やゲームなどで見たような気もするが、
あんな生々しい感じではなかった。
あの夢の登場人物は現実に存在するものとしての体温や息遣い、そして
他者に対する嫌悪感を持っていた。

あんな…夢。

「まあ…仕事で疲れてんだろうな……」

ふらふらする頭をシャッキリさせるために、俺は冷蔵庫の雪印へと
向かおうと廊下へ出ようと扉をあけたその瞬間、
見たことも無い風景が俺の眼前に広がっていた。
430 名前: ウンコ大魔王 ◆/AbS5YUejk [sage] 投稿日: 2007/12/02(日) 22:36:00 ID:77UN1qTT0
「なんじゃ…こら!?」

どこまでも澄み切った青い空、その下に地平線まで広がる草原。
そこに一本、大きな樹がポーンと立っている。

「アホ…か?」

俺はとっさに振り返った。
確かに俺は、さっき自分の部屋から廊下に出たのだ。
しかし廊下に行くためのドアは無情にも俺を廊下へとはいざなわなかった。
開きっぱなしのドアが手持ちぶさたにキイキイ言いながら
さわやかな草原の風に揺られている。

待てよ待てよ。

俺は昨日どうやって家に帰った?
酒につぶれて帰宅したのか?
それとも知らないうちに死んでて、ここは天国だったりするのか?

「シュールすぎる。」

いつもあり得ないことが起こったときに使う言葉を吐いてみたものの、
世界に存在するのは俺一人じゃないかと思われるように
言葉は空気に散って、目の前にある風景だけが残った。

「会社……行か…なきゃ……」

そう言いながら俺は夢遊病者、はたまたアル中患者みたいに
白昼夢の中をパジャマのままふらふらと歩きだした。


「コンビニ…行かなきゃ……」
431 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/02(日) 22:38:50 ID:17b69Kq8O
名前気になるw的支援
432 名前: ウンコ大魔王 ◆/AbS5YUejk [sage] 投稿日: 2007/12/02(日) 22:58:03 ID:77UN1qTT0
「ストップ!」

突然脳内に高い声がキインと響いた。

「そこから離れちゃ、いけないよ坊や。」

声から察するに小人、いやもっと小さい虫が、
精一杯羽音をばたつかせているようなか細く高い声。
しかしよく通るだけに、混乱した頭をいらつかせる声。

「自分の場所をそう簡単に捨てるもんじゃない。」

自分の場所?

「そうさ。あんたは言わば新参者。そう簡単にこの世界に飛び出すんじゃないよ」

こいつ、知ってる。
俺がこんな馬鹿げた状況になってる理由を知ってるぞ。

俺は少々ムカついてきた。
早くこんな馬鹿げた状況から抜け出て会社へ行かなきゃ。
遅刻などしたら、日頃の俺の業績に付け込んで上司が面倒なことになる。

「誰だよ!姿を現わせ!」

俺は宙に向かって叫んだ。
433 名前: ウンコ大魔王 ◆/AbS5YUejk [sage] 投稿日: 2007/12/02(日) 22:59:25 ID:77UN1qTT0
「ハハハハ。鬼さんこちら、手の鳴る方へ。」

なんだこいつ。完全にバカにしてやがる。

「何がしたいのか知らねえがとっとと元の世界へ戻せ!」

「元の世界?今いる世界が元の世界だとしても?」

「ハア!?俺は会社行かなきゃなんねえんだよ、
いちいちお前のお遊びに付き合ってられるかこのバカ!」

「バカはあんたさ、ぼ・う・や☆」

今度はどこから声がしたのかハッキリわかった。

俺は怒りで一杯の表情で、元いた自分の部屋(今は隔絶された空間にポーンと存在している)
を振り返り、ベッドの上にそいつ、つまり「妖精」を見つけた。

「ようこそ、初めまして。
そして、久し振り」
434 名前: ウンコ大魔王 ◆/AbS5YUejk [sage] 投稿日: 2007/12/02(日) 23:02:35 ID:77UN1qTT0
疲れた。これからドラクエになる予定。
ヒマなとき頑張ります
435 名前: ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 02:04:02 ID:8NHbfLAI0
第十二話投下します。

LOAD DATA 第十一話前半 >>385-393  後半 >>402-406
436 名前: 比翼連理の双星【1】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 02:06:17 ID:8NHbfLAI0
あのゴタゴタの後、城の中はそれ以上にゴタゴタになっちまった。
当然だよな。国の在り方を変えちまう様な大事件だったんだもんな。

一堂に集められたラインハットの王族や貴族達で緊急対策会議中。
今回の事件を、どのような形で国民に発表するか、誰が発表するか、
どこまでの内容を発表するか…会議は揉めに揉めているらしい。

まず人選。強いカリスマを持つ大后は、長い幽閉の影響で床に伏せっている。
大后が無理のきかない体である以上、発表はおのずとデールからになるだろう。
次に内容。『散々国民の皆さんを苦しめていた王は正気じゃありませんでした。』
…なぁんて発表したって誰も納得しないのは火を見るより明らか。

長い会議の結果、
『王と大后は偽物だった。長旅から凱旋したヘンリー様とその一行が偽者を成敗し、
本物の王と大后を無事に助け出した。めでたしめでたし。』
…って内容の声明を国民に発表する事になったんだ。
大后が偽者だったのは事実だけど、王まで偽物だったいう内容にしたのは、
国民の反発心を最小限に抑える為…らしい。偉い人ってのは大変だな。

その夜、城の中庭には多数の国民が集められた。
不審そうな…不安そうな表情の国民達は皆ざわざわと落ち着かない様子。

バルコニーから国民の前に姿を現すデール。水を打ったように静まり返る中庭。

「この国を狂わせ、大事な国民を苦しめたのはこのデール。弁解の余地はない。」

皆の顔が凍りついた。勿論、俺達の顔も。

「国の混乱は全てこのデールの弱さが招いた事。謝って許される事ではないが…
 償いはさせて欲しい…兄さん、こちらへ…」

バルコニーのデールに手招かれ、ヘンリーがデールの横に立つ。
437 名前: 比翼連理の双星【2】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 02:08:28 ID:8NHbfLAI0
「兄さん…この場で僕を斬り捨てて下さい。」

デールが悲しい笑みを浮かべながらヘンリーに剣を手渡す。

「僕の命で許されるとは思っていませんが…せめてもの償いです。
 兄さんなら国を立て直せる…どうか…国をお願いします。」

償いって…命を捨ててどうするんだよ!ヘンリーと一緒に国を立て直せば…
間に入ろうとした俺達を制したのはヘンリー。

「そうか…俺も覚悟を決めていた事だ。そこになおれ。」

冠を外したデールは、ヘンリーの前に進み出て目を瞑る。
駄目だ…そんなの絶対に…やめろ…

「……でえぇぇぇい!!」 ばちぃぃっ!
「痛あぁっ!!!」

ヘンリーの渾身の平手がデールの尻を引っぱたく。
うわぁ…痛そう……って、アレ?

「覚悟決めてたんだ。国が乱れた原因がデールの弱さによるものだったら、
 城に戻ってその尻っペた引っぱたいてやる…ってな。」

ヘンリーが民衆に向かい合い、大声で叫ぶ。

「国の皆!こいつのしでかした事がこれっぽっちで許されるとは思っちゃいねえ!
 だから…今日は皆の気が晴れるまでこいつに灸をすえてやる!!」
ばちぃぃっ!
「痛あぁっ!!!」
438 名前: 比翼連理の双星【3】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 02:10:25 ID:8NHbfLAI0
「まだまだぁ!!」 ばちぃぃっ!
「痛あぁっ!!!」

延々と繰り広げられる公開お仕置き尻叩き。
最初は唖然としていた民衆だが、次第にその中から笑い声が漏れ始める。

「おらあっ!反省しやがれえっ!!」 ばちぃぃっ!
「痛あぁっ!!!」

笑い声は次第に大きくなり、やがて歓声となって中庭を埋め尽くす。

「子分のクセにでしゃばりやがってぇっ!!」 ばちぃぃっ!
「痛あぁっ!!!」
「俺が帰ったからには二度と好き勝手はやらせねえぞ!!」 ばちぃぃっ!
「痛あぁっ!!!」
『いいぞ!もっとやれー!!』 『ヘンリー様が戻られれば国は安泰だー!!』
『デール様ー!応援しておりますー!!』 『思いっきり引っぱたいてやれー!!』

「これからは…ずっとずっと俺と二人で国を守るぞおっ!!」 ばちいぃぃっ!!!
「痛あぁぁぁっ!!!」

涙で顔中をグシャグシャにするデールを引き起こすヘンリー。
ヘンリー自身も涙目で荒い息をしているが、息も正さずに民衆に向かって叫ぶ。

「俺は王家に戻って国を建て直す!!この泣き虫な馬鹿王と一緒にだ!!
 親分が直々に後見人になるからには、二度と国民に苦しい思いはさせねえ!!
 今宵、俺達兄弟の姿を目に焼き付けろ!!俺達の働きを見届けろーーーっ!!!」

わあっ と、一際大きな歓声が中庭に挙がる。
ヘンリーを讃える声…デールの名を呼ぶ声…二人を応援する声。
さながら大物ミュージシャンのライブ会場の如く盛り上がる民衆。
俺も素直に感心した。やっぱり、ヘンリーのカリスマは天才的だ。
439 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 02:10:42 ID:BbAuWo3YO
し…えん……?
440 名前: 比翼連理の双星【4】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 02:13:02 ID:8NHbfLAI0
        ◇           ◇
そして よがあけた …ってやつ?
ラインハット城下町を一望できる国賓用の寝室で朝を迎えた。
うん、なんて清々しい朝だ。

…この二日酔いの気分以外は…

昨日の演説の後、悪ノリしたヘンリーが国をあげての大宴会を宣言。
王族も兵士も国民も死体も一緒になって朝け方まで飲み明かした…ってわけ。

「昨夜はお疲れ様でした。僕も王という身分を忘れて楽しませて頂きました。」

旅立ちの前に謁見の間に立ち寄り、デールに別れの挨拶をする。
サトチーもデールも昨日の宴ではだいぶ酔っていた筈なのに清々しい顔をしている。
下戸のフリして実はザルなんじゃねえの?

「国を救って頂いた事、国民を代表してお礼を申しあげます。本当にありがとう。」

デールは玉座から降り、俺達の前に片膝をついて頭を下げるデール。
その肩に手を置きながら、サトチーが優しく語りかける。

「頭を上げて下さい。デール王。あなたが頭を下げる相手は僕達ではありません。
 あなたを…国を信じて進み続けたヘンリーこそラインハットの救世主です。」
「ヘンリーの活躍がなかったら、俺達もとっくの昔に全滅してましたからねえ。」

…あれ?いつもならここで入る筈のヘンリーの茶々がない。

「えぇ、兄には一番にお礼を言おうと思っていたのですが…」

途端に難しいものになるデールの表情に思わず俺も身構える。

まさか…ヘンリーの身に何か…
441 名前: 比翼連理の双星【5】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 02:15:14 ID:8NHbfLAI0
「朝から兄の姿がないのです。城中どこを探しても…」
「いない?こんな時に一体どこに…」

デールの顔が横に振られ、嘆息した様な深い溜息をつく。
家出した子を案じる親の様なデールの表情を見ていると、どっちが兄だかわからない。

「ご存知の通り、兄は堅苦しい王家のしきたりを好まない性格の人ですから…
 勝手に城を抜け出してハメを外してなければ良いのですが…」
「これから苦労しそうですね。」

サトチーとデールの乾いた笑い声が謁見の間に響く。
二人とも声では笑っているが、顔は笑っていない。

「ところで…連絡ではビスタ港に船が入港するのは明日だったはずです。
 もしよろしかったら、今夜も城に泊まられてはいかがでしょう?」
「ありがとうございます。ですが、船出の前に立ち寄りたい所がありますので…」
「そうですか…何の力にもなれませんが、お二人の旅の無事をお祈りしております。
 どうか道中お気をつけて。」

開かれた城門をくぐり抜け、メインストリートから城を振り返る。
固く重く閉ざされていた城門は、全てを受け入れるかのように大きく開かれ、
その城の景観は、道行く人々の幸せそうな顔を見渡すように雄々しくそびえる。
町で無法を働いていた傭兵達は国外に追放され、代わりに子供達が走り回る。
常に耳にしていた怒声の代わりに聞こえるのは、王家を讃える詩人の歌声。
忌まわしい兵器の生産工場は、建築木材の加工場に改造するらしい。
町が元の姿を取り戻すのには、たいして長い時間はかからないだろう。

「そろそろ行こうか。スミス達が町外れで待ってる。」

町外れで俺達を待つ一台の馬車と二頭の白馬。

お待たせパトリシア…と……誰?
442 名前: 比翼連理の双星【6】 ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 02:18:41 ID:8NHbfLAI0
「遅せえ!子分の分際で親分をいつまで待たせやがる!」

パトリシアの隣。もう一頭の白馬の上から声が投げかけられる。
王族らしい豪華な衣服を身に纏い白馬にまたがるヘンリー。その手には花束。

「何やってんの?そんな似合わな…じゃなくって、珍しい格好して。」
「ん…世話になった修道院のシスター達に今回の件のお礼を言いに行くついでに、
 旅立つ子分達を見送ってやろうと思ってな。」

見送り…それはつまり、俺達との別れの証。
わかりきっていた事だけど、実際にその言葉を耳にすると…どうもね…

「そんな情けない顔すんな。最初からわかってたことだろう?それに…
 それにさ…場所が離れてたって俺達はずっと…その…」
「大事な仲間だからね。」

サトチーが発した言葉に、ヘンリーの顔が真っ赤になる。
…本当、素直じゃねえの。

「…っまぁ、辛い奴隷の生活も旅の間もさ…お前達と一緒で…その…楽しかったよ。
 本当に………ありがとうな。」

ぷいっ と、目線を逸らしながらヘンリーが言う。

「ヘンリー…君は本当に大事な仲間だ。体に気をつけて…」
「女の尻ばっか追いかけて、デールさんを困らせるんじゃねえぞ。」
「ふん。お前達が次に来るまでには、この国を今以上に立派な国にしてみせるさ。」

三人、拳を合わせて互いを讃え合う。そのエールに言葉はない。
それでも、そのエールはどんな言葉よりも俺の体の真ん中らへんを揺さぶる。
 ―負けるなヘンリー…負けるなサトチー。 何があっても負けるな…俺―
二頭の白馬が行く道は途中で二つに別れる。 それでも…俺達はずっと仲間だ。
443 名前: 比翼連理の双星【7】&後書き ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 02:22:26 ID:8NHbfLAI0
イサミ  LV 16
職業:異邦人
HP:77/77
MP:15/15
装備:E天空の剣 E鎖帷子
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌 足払い ―――



―――
第十二話 ラインハット編エピローグを投下しました。
次回からは新章突入です。

その前に小ネタを挟む予定ですが…
444 名前: レッドマン ◆U3ytEr12Kg [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 09:35:48 ID:Ish8Z3lR0
○微かな癒し○

ムーン達と別れた後、もょもとに上薬草を煎じて貰ったがあまり回復していない。
やはりゼシカの言う通りいきなり上位呪文を唱えると体の負担が大きい。
死なずに済んだのが不思議なくらいだ。

もょ「だいじょうぶか?タケ?」
タケ「すまんのう…少しはマシになったんやけどまだ本調子やないわ。」
もょ「じょうやくそうでもだめなのか!?」
タケ「そうやな。まだ5、6分力が戻ったっていう所やで……全力で動くのはちょっとしんどいかも。」
もょ「そうか…しばらくはおれががんばるよ。」
タケ「最悪の結果を招いてしまったな。サマルやムーン達の関係が修復は不可能レベルまでなったやろ。
   ああ〜 やり過ぎてもうた…」
もょ「もうすんだはなしだ。きにするな。ぎゃくにおれはうれしかったぞ。」
タケ「な、なんでやねん?」
もょ「おれのことがほんとうにだいじだとおもってくれたのがすごくかんじたよ。これほどうれしいものはない。
   それにおれがタケのたちばならおなじことしていた。おれ、バカだからうまくいえないけど。」
タケ「ホンマに悪かったな……」
もょ「もうきりかえていこうぜ!!」
タケ「そうやな………話は変わるが現実問題どうするよ?」
もょ「まずはククールたちとごうりゅうしよう。そのほうがまちがいなくさいぜんさくだろう。」

タケ「そうやな。パワーのヤンガス、スピードと回復のククール、魔法のゼシカ、結構バランスも取れているで。」

もょ「じゃあきまりだな!」

俺達が行動を起こそうとした時誰かがやってきた。

もょ「タケ…ここはおれにまかせろ!」
タケ「ヤバくなったらとんずらするのもありやで。気をつけろ!」   

戦闘体制に入って構えているとやってきたのがリアだった。
445 名前: レッドマン ◆U3ytEr12Kg [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 09:36:52 ID:Ish8Z3lR0
もょ「リ、リアちゃん!?どうしたんだ?」
リア「ま、間に合って良かった〜 どうしてもお礼が言いたくて。――――――――タケさんに。」
もょ「しかし…」
リア「お願い!タケさんにお礼が言いたいの!」

真剣な眼差しにもょもとも承諾するしかなかった。

もょ「タケ…リアちゃんがはなしたがっているぞ。」
タケ「わかったで………………………はじめましてやな、リアちゃん。一体どないしたん?」

リア「は、初めましてタケさん………そ、その……助けてくれてありがとう……」

タケ「ええんよ。俺は当然の事しただけやで。それにもょとの約束もあったしな。」
リア「そ、それとごめんなさい!お兄ちゃんやムーンさんがあんな事言うなんて…」
タケ「もう済んだ話やから別に構へんよ。しかしよく抜け出せてここに来れたなぁ。」


リア「お兄ちゃん達とケンカしちゃって居辛くなったの…」
タケ「マジかいな……やっぱやりすぎたんやで!/(^o^)\ナンテコッタイ」
リア「だって………タケさんは……グスッ…助けてくれたんだもん……2回も……」
タケ「お、おいおい!泣く事もあらへんやんか!今回がともかく、以前いつ助けたっけ?」
リア「ラーの鏡を……取りに行ったとき。」
タケ「ああ……あ、あれはもょがやってくれたんやで。俺やないよ。」
リア「ううん…トーマスさんやカタリナさんが私に話してくれたの。その時の状況を――――――――」



――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――
――――――――
――――
446 名前: レッドマン ◆U3ytEr12Kg [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 09:38:17 ID:Ish8Z3lR0
〜 ムーンペタ出発前夜 〜

カタリナ「リア様。報告があります。」
  リア「どうしたの?カタリナさん。」
カタリナ「実はもょもと様の事でお話が。」
  リア「もょもとさんの事?」
トーマス「その先からは私から話そう。カタリナ。リア様、結論から言います。もょもと様には別の人格がいます。」
  リア「ええっ!?どう言う事なの?」
トーマス「つまり二重人格です。もょもと様の体内にもう一人分の人間がいるのです。」
  リア「そ、そんな…」
トーマス「確かに信じられない話ですがその御方に私やサマル様、リア様も助けられたのですよ。勿論もょもと様も含まれます。
     その御方の名前はタケと仰っておられました。レオン様と同様、異世界からきた人間らしいのです。」

  リア「そのタケって言う人がもょもとさんの体内にいるわけ?」

トーマス「仰る通りでございます。しかしタケ殿は私達にとって命の恩人なのです。
     もょもと様達が敵の呪文で眠らされた時、タケ殿が代わりに戦ってくださったのです。そこでリア様にお願いがあるのです。」

  リア「お願いって………………私に?」

トーマス「はい。この事実は知っているのは、私達三人のみ。
     もし、王女様やサマル様にこの事実が発覚した場合、もょもと様達と対立するという事がありえるかと思われます。
     仮にその情況が訪れた場合、もょもと様やタケ殿を助けていただきたいのです。」

  リア「で、でも……………」

トーマス「カタリナの報告ではタケ殿は自分を犠牲にしてでも、もょもと様を守る様な御方だと聞いております。
     私もタケ殿が悪人とは思えません。どうかお願いを受け入れて頂けないでしょうか?」

カタリナ「私からもお願いします!リア様!」
  リア「うん………私はもょもとさん達に協力するわ。」
トーマス「ありがとうございます!くれぐれも口外無用でお願い致します!」
447 名前: レッドマン ◆U3ytEr12Kg [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 09:40:41 ID:Ish8Z3lR0
リア「って言う事なの。」

タケ「ちっ、あいつら…余計な事言いやがって……ホンマに………」

リア「それにダースドラゴンの時でも私を守ってくれた……」
タケ「あ、あれはたまたまや。気にすることはないで。」
リア「グスッ……グスッ……ごめんなさい…………」

タケ「よしよし、もう泣いたらアカン。可愛い顔が台無しやで。」

リア「うん……」

もょ「くっくっく…………よかったな、タケ。」
タケ「な、何やねんお前……不気味な笑いをしやがって。」
もょ「リアちゃんみたいなりかいしゃがあらわれたのいいことだろ?」
タケ「うっ…………ま、まぁ結果的にはそうなるわな。俺にとっては嬉しい話やで。」


もょ「それならいいじゃないか。それにタケはいじょうにリアちゃんにはやさしいしなw」


タケ「お、おい!ゴルァ!これ以上アホな発言していたらブン殴るで!!」
もょ「ふだんのおかえしだ。それにじぶんじしんをなぐるつもりなのか?すこしおちつけ。」

タケ「…………クソったれ!!俺からおちょくりのスキルをパクりやがって!」

リア「くすくす………もょもとさんとタケさんて凄く仲良しなんだね。」
もょ「そうなのか?タケ、おまえはどうおもう?」
タケ「うーん、何かこの関係が当たり前って感じやからなぁ……仲が良いとか悪いとかあんまり意識はしてへんで。」
もょ「おれもそんなかんじだな。」
リア「へぇー…自然な感じなんだね。話は変わるけどタケさんはどうして私達に力を貸してくれるの?」
448 名前: レッドマン ◆U3ytEr12Kg [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 09:42:10 ID:Ish8Z3lR0
タケ「そやなー もょの前やから恥ずかしいけど黙秘権は無さそうやし…………
    俺自身がこの男について行こうと決心したからやな。」

リア「タケさん自身が?」

タケ「うん。最初のもょは頼りねー奴だと思っていたけど、処がドッコイ今はすげえ頼れる奴になったんよ。
   それに赤の他人がイキナリ自分の体内に入ったら気持ち悪いにも拘らず受け入れてくれたのもあるわ。
   話は変わるけど、もょの人生でアカンかった所は良き指導者と仲間に出会えてなかった事やと思う。
   そこで俺が少し教えただけで、有り得ないほど成長しやがったからな。ある意味怖いで。
   今後の成長を見たみたいっていう個人的な事情もあるんやけどね。
   それに命の恩人やしな。俺も2回助けてもらっているんよ。」

リア「どういう時に助けてもらったの?」

タケ「ドルマゲス戦と今のサマル&ムーン戦やな。その時どれほど嬉しかった事やら。
   唯一の友達がかなり協力的にやってくれた御蔭で今が自分があるって感じやね。」

完全にリアのペースに乗せられて話してしまった。『この娘の前では素直に本音で話そうか。』って感じになったのだ。ククールもこれにやられた訳か。
タケ「しかし、まぁ…なんや…そういうこっちゃ。」
これ以上あんまり追求されたくなかったので話を打ち切る事にした。

もょ「し、しかしてれるなぁ…そこまでタケがおもっていたとは…」
タケ「しゃーないやろ!かなり本音トークやで!もうこれ以上ネタはないで!!お客さん!!」
もょ「タケ、おまえがこんなにじぶんのことをはなすのは、はじめてじゃないのか?」
タケ「そうやで。もーこの話題は無しや。はい、しゅ〜〜〜〜〜〜〜りょ〜〜〜〜〜〜〜〜
   で、話は変わるが今後はどうするん?」
リア「タケさんを助けるためには紋章を集めないといけないんでしょ?」
もょ「そうだな。リアちゃんもいるし3人でさがそうか。ククールたちにたよるひつようがなくなったしな。」
タケ「それならこれで決まりか。二人共ホンマにありがとう…今後もよろしゅうな!」

3人で談笑していると1人の女がやってきた。どー見てもオロオロしている………
一体何が起きたのか理解していないみたいだ。そいつは俺達に話しかけてきた。
449 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 09:44:56 ID:akkEbyxiO
支援
450 名前: レッドマン ◆U3ytEr12Kg [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 09:47:02 ID:Ish8Z3lR0
 *「あんた達。ここがどこ何かわかるかい?」
リア「えっと、竜王の城の近くだよ。どうしたのお姉さん?」
 *「竜王の城!?何だいそれは?」
もょ「もしかして……いせかいからきたのか?」
 *「えっ!?」
もょ「このあたりはたいがいこのせかいにいるにんげんはしっているぞ。まったくしらないひとはいないんだ。」
 *「そうなのかい…弱ったね。まずはどこか街にでも行きたいね。」
リア「それなら近くにラダトームまたはリムルダールっていう街があるよ。」
 *「ありがとう……その前に金も貰おうか!」
リア「えっ!?」
女はいきなりナイフで脅してきた。

 *「金が無ければ何も出来ないからねぇ……あんた達には恨みが無いが――――――拒んだら刺すよ。」

もょもともリアも戦闘態勢に入ったが咄嗟に止める事にした。
 タケ「待てぇ!!」
もょ・リア「えっ!?」
 タケ「金が要るんだろ?100Gくれてやる。」
俺は金を女に渡した。
 *「キップがいい男だね。一体どうしちまったんだい?」
タケ「フン。俺の気まぐれだ。その代わりにアンタがこの世界で見た事や聞いた事、全ての情報を話して貰おうか。」
 *「取引かい?いいよ。金も貰ったし。あんた達位の細身の男とほっかむりをかぶった女がこの先モンスター達に襲われているよ。」
リア「ええっ!」

間違いなくサマルとムーンだ。

 *「助けるのであればさっさと行ってやりな。じゃないとあの二人は死んでしまうからねぇ。」
タケ「サンキュー!恩にきるぜ!でも俺は……」
リア「急ごう!お兄ちゃんとムーンさんが危ない!!」
もょ「そうだな。いまはたすけにいくぞ!」

さすがにこの情況では拒否は出来ず、俺達はサマル達の元に向かった。
451 名前: レッドマン ◆U3ytEr12Kg [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 09:47:46 ID:Ish8Z3lR0
サマルとムーンがマンイーターや泥人形達と戦っているのだがどうも様子がおかしい。  
ムーンの得意な呪文が唱えられないみたいだしサマルも相変わらず腰が引けてまともな攻撃が出来ていない。

ムーン「くっ…こんな奴らごときに手こずるなんて…サマル!!しっかりしなさいよ!」
サマル「で、でも泥人形達の不思議な踊りの影響で魔法力が無くなっているよ!」
ムーン「うるさいわね!言い訳は無用なのだわ!!」
サマル「こんな時に……もょ達がいれば……」
ムーン「あ、あいつらがいなくても私達だけで乗り切らないといけないのだわ!!」

ムーンは相変わらず強情を張っている。

 タケ「…………あいつ(ムーン)はアホか!変に意地を張りやがってホンマに……
    しゃーないのう!もょ!俺の呪文で火炎斬りを出来る様にするから戦闘は任せていいか?」
 もょ「ああ!ここはおれにまかせてくれ。きっちりふたりをたすけるよ。いくぞ!リアちゃん!」
 リア「うん!」

もょもととリアがモンスター達に立ち向かっていった。

サマル「も、もょ…それにリアまで…」
ムーン「い、一体何しに来たのよ!」
 もょ「はなしはあとだ!いまはこいつらをやっつけるぞ!」

 リア「もょもとさん!まずは私に任せて!!え〜〜いっ!!ベギラマ!!」

リアから大きな火炎が繰り出して大半のモンスター達をやっつけたのだが血を吐いている。
まだ不慣れな証拠だ。

 もょ「だ、だいじょうぶか!?」
 リア「う、うん…」
 もょ「あとはおれがやるからまかせろ。いくぞ!かえんぎり!」

もょもとがモンスター達を勢い良く斬り込んで行った。火炎の影響がある御蔭かすんなりとモンスターを倒すことが出来た。
452 名前: レッドマン ◆U3ytEr12Kg [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 09:49:14 ID:Ish8Z3lR0
もょ「ふー。それにしてもまほうけんってすごいな。かなりらくにたおせたぞ。ちょっとやけどしてしまったけどな。」
タケ「しかし俺の場合と比べたら火炎の持続時間が短いな。」
もょ「おれがじゅもんをつかえないからじかんがみじかいとおもう。」
タケ「かもな。それより二人を手当てしてやれ。無事でよかった。」
もょ「よし、わかった。」

もょもと達はサマル、ムーンの手当てを始めた。

ムーン「ど、どうして助けに来たのよ!誰も助けろとは頼んでいないのだわ!!」
 タケ「大概にせえ!もょやリアちゃんに感謝するんやな。そうじゃないと誰がお前等など助けるか!ボケェ!!」
 もょ「ふたりともいいかげんにしろ!!けんかしているばあいじゃないだろう!!」
 タケ「す、すまねぇ……」
ムーン「ご、ごめんなさい……」
流石にマジギレしたもょもとには俺もムーンも少し竦み上がった。

 もょ「はなしをかわるがおれとタケ、リアちゃんはもんしょうをさがすことにするがふたりはどうする?」
サマル「ええっ!?どういう事だい?」
 もょ「おれたちとわかれてハーゴンをたおしにいくのはかまわない。しかしいまのままでは
    ハーゴンどころかドルマゲスすらおれたちはたおすことができない。いまはちからをあわせるときなんだ。」
ムーン「………………確かに現実問題はそれが最善策なのだわ。」
サマル「そ、それじゃあ………」
ムーン「仕方がないのだわ。サマル。確かに今の私達だけじゃ無駄死にするだけだわ。
    タケがいるのは気に食わないだけど。」

こいつは………もう、あきれて何も言えへん…しかし回復呪文が使えない俺達にとっても
欠点が塞がる訳だからここは我慢して妥協するか。

 もょ「それならきまりだ!タケもリアちゃんもそれでいいだろ。」
 リア「…………………………うん。」
 タケ「成り行きやし、しゃーないわ…………お前に従うよ。もょ。」

ムーン「何か文句あるのならハッキリいいなさいよ!!」
453 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 09:51:15 ID:akkEbyxiO
支援
454 名前: レッドマン ◆U3ytEr12Kg [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 10:44:34 ID:Ish8Z3lR0
 タケ「はいはい。こんなに見苦しい馬鹿女は俺の世界でもめったにおらへんわ。これだけ言っといてやるわ!
   『思い込む』という事は何よりも『恐ろしい』事や。
    しかも自分の能力や才能を優れたものと過信している時はさらに始末が悪いしな。
    その場合、我が身だけではなく回りの仲間にも迷惑をかける事になるんや!
    後、お前がアホ過ぎて反論する気にもならへん。」

ムーン「フ、フン!!何よ!!え、偉そうな事ばっかり言って……」

ムーンが反論したが流石に欠点を突かれたらしく無理に反論した感じだった。

 タケ「あっそ。もう終了な。キリが無いから。もょ。話は変わるが今から紋章探しか?」
 もょ「ああ。もんしょうをそろえることができたらせいれいルビスにあえるからな。それにタケもじったいかするかもしれない。」
サマル「そ、そうするのが今後の計画なんだね………?」

サマルがビビリながら発言するのは無理もない。
 タケ「今は仲良くしようや。言っておくがこっちから仕掛けることは無いから安心せえ。」
サマル「し、信用してもいいのかい?」
 タケ「勿論や。ただし、そっちから仕掛けてきたら………………確実に殺すで。ええな?」

サマルは震えながら頷いた。

もょ「よし。じょあもんしょうさがしにいくとするか。」

もょもと&タケ
Lv.18
HP: 56/130 
MP: 0/  9
E鋼の剣 E鋼の鎧 E鉄兜 錆びた剣
特技 共通技:チェンジ
もょもと専用:隼斬り・魔人斬り・ドラゴン斬り
  タケ専用:かすみ二段・強撃・ゾンビ斬り・大防御・メラ
       火炎斬り
455 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 20:39:08 ID:akkEbyxiO
二人とも乙!なかなかの力作だった。

>>GEMAさん
良い感じな兄弟愛だな。
呼んでいるだけでも和んだ。
>>レッドマンさん
物語より人間賛歌が重視しているみたいだな。
色々と考えさせる。

しかしヘンリーもタケもちょっとツンデレかw
456 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/03(月) 21:12:49 ID:1u+Pe9e70
お二方とも乙。
それにしても嫁を差し置いて比翼連理とは、マリアが嫉妬するぞw
457 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/04(火) 19:32:00 ID:HHfoHnmT0
2.人形劇の舞台裏 (>>376-381)

サクヤはエイトとセブンとの二人とともに占い師ルイネロの元に行った。
マリベルもついていこうとしたが親のアミットに止められてかなわなかった。
ルイネロの占いでは次のような結果が出た。


まず、この世界が、いくつもの世界が合わさって出来上がっている世界だということ。

例えばセブンとエイト、本当ならばこの二人が出会うはずはなかった。
この二人はそれぞれ長い旅しており、それぞれの世界をよく知っていた。
しかし二人の知っている世界はまったく違うものだった。
それは二人は違う世界の住人なのだから当然なのだが。
しかし、こうして出会っている。
二人の住む世界がつながってしまっていたのだ。
さらにつながっているのは二つの世界だけではなかった。
二つ以上の世界が合わさろうとしているようだった。
458 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/04(火) 19:34:11 ID:HHfoHnmT0
次に、異世界の人間が複数この世界に迷い込んでいるらしいこと。

異世界とは、合わさっているこの世界のさらに外にある世界の事である。
その世界の人間がある一枚の石版に封印されたのだ。
セブンやエイトとはまた異なる世界で生きてきたサクヤが、
この世界にとって招かざる客だと感じたのは、自分が彼らとは違う存在だからだ。
マリベルの勘はある意味正しかったのだ。


最後にこの異変は、先の石版がバラバラに砕けてしまったのが原因だということ。

サクヤの持っている石版の欠片は、その石版のパーツで間違いないだろうということ。
そしてそれらの石版をあわせることで世界が元に戻るということ。
合わせる場所はどこかの神殿であること。
この神殿に異世界の人間が集まり石版を合わせる姿が見えること。
ただし、その場所には人間でないものもいるようであること……
459 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/04(火) 19:36:45 ID:HHfoHnmT0
「世界が元に戻ると言うことは異世界の人間である君も元の世界に戻れると言うことだろう」
ルイネロの占いの結果を受けエイトが言う。
「石版をあわせるときに人間でないものの姿も見えると言っていたのが気になるね」
「モンスターが待ち構えているのかもしれないな」
「在り得るね」
エイトとセブンがうなずきあう。
「封印されたものの中に犬か何かが混ざっているなんてことかもしれませんよ」
二人の心配をよそにサクヤは楽観的な意見を述べた。
「そんな都合のいい話があると思うのか?」
「この世界ではそういうところにボスが待ち構えていると考えるのが定石だよ」
一番奥にボスがいる。どこの世界もそういうものなのかとサクヤは思った。

「そうだ。ボスと戦うとなるとサクヤを鍛えないといけないな。お前何か得意な武器は?」
サクヤはないと答えた。
サクヤは自分がモンスターと戦う姿を想像できなかった。
だがここではそれをしなければならないのだろう。
「それなら効果つきアイテムをいくつか渡しておくから使うといい」


「とにかく占いにしたがって石版を集めることにしましょう」
サクヤは石版集めの話を進めることにした。
「占いのとおりにするためには石版のほかに異世界の人間を神殿に集めなきゃいけないね」
「異世界の人間を探すとなると結構骨が折れるな」
「…その異世界の人たちはサクヤと同じように石版を持っているのかな」
セブンがふとそんな疑問を抱く。
「どうでしょうね。私がたまたま石版を握りしめていただけかもしれません」
「人も石版も別々の場所に現れたとしたら全部見つけるのは一苦労だな」
「これで占いが外れていたら目も当てられないよね」
「それは…そうだ。――サクヤは占いの結果を信じるのか?」
エイトの質問にサクヤは静かに答える。
「私にはこれに頼るしか道はないですから」
460 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/04(火) 19:39:09 ID:HHfoHnmT0
そんな話をしているうちに日が暮れてきていつの間にか空には星が瞬いていた。
夜はモンスターが活発になる。一向は寝泊りできる場所を探すことにした。
屋敷があったので一晩の宿をお願いしようということになった。
しかしその屋敷には人の気配はない。中は暗い。人はいないのかもしれない。
サクヤたちは大きな扉を開けて屋敷の中に入る。不気味なほど静かな闇の中に。


――ばたん。

扉が閉まる。

静かな屋敷は一変する。屋敷の中には人ならざるものの気配で満ち溢れていた。
サクヤたちの前に泥人形やミステリードールが現れ、襲い掛かってくる。

「サクヤは下がってて!」
セブンとエイトは剣を構える。
二人は襲ってくる人形たちを次々に打ち倒していく。
ザクザクと斬っていく。
しかし人形は何度倒されても起き上がってくる。
サクヤは部屋の隅でその戦いを見守るしかなかった。
461 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/04(火) 19:41:14 ID:HHfoHnmT0
――わけではなかった。
サクヤは自分の横のタンスにナイフを突き立てた。
「うがッ!」
悲鳴とともにモンスターが飛び出す。
「あれはパペット小僧!」
エイトが叫ぶ。

「ど、どうして分かった?」
パペット小僧が叫ぶように言った。
「人形がいるからには近くに人形遣いがいると考えるのが自然ではありませんか」
「しかし、隠れている場所まで見破ったのはどういうわけだ」
「人形たちは私に襲い掛かってきませんでした。何故か」
それは私があなたの死角にいたからでしょう。
私が見えない地にあって誰かが隠れられそうなのはこのタンスだけですからね」
サクヤは淡々と説明していった。

「見つけたのは褒めてやろう。だが貴様一人で何ができる?」
気がつけばサクヤの周りを人形が取り囲んでいた。
「ははっ! お前が得意げに解説している間に呼び寄せた!」
「しまった! 奴の特技は巧みな話術で人を引き付けることなんだ!」
エイトが叫ぶ。エイトとセブンの位置はサクヤを助けるには離れすぎていた。
「俺がちょいと合図を送れば人形どもがお前を地獄に送るのだ」
462 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/04(火) 19:43:25 ID:HHfoHnmT0
「うーん。奇遇ですね」
緊迫した空気に場違いな軽い口調でサクヤがしゃべる。
「会話によって時間を稼いでいたのは私も同じなんですよ」
「何だと?」
「そろそろ毒が回ってくるころじゃないですか?」
サクヤがタンスに刺したナイフを引き抜きながら言う。
「これ毒牙のナイフって言うらしいですね。かすっただけでも相手の動きを封じるとか」
「そんな! ひぃ!」
パペット小僧は小さく悲鳴を上げた。サクヤはマグマの杖を構えているのだ。
「何か言いたいことがあれば聞いてあげますよ?」
「俺が悪かった! 助けてくれ!」
パペット小僧の台詞を聞くとサクヤはにっと笑いこう言った。
「確かに聞くことはしましたよ。じゃあ、バイバイ……」

サクヤはマグマの杖を振りかざした。
463 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/04(火) 19:45:31 ID:HHfoHnmT0
「こんな状況だと言うのに恐ろしく冷静だったな」
エイトは驚きを隠せない。
「そう見えますか? 背中は冷や汗でびっしょりですよ」
「サクヤ、君って何者なの?」
セブンの質問にサクヤは答える。
「実のところですね、まだ思い出せないのです」
サクヤは続けて言った。
「きっと人に言えるようなことはしていなかったでしょうね」

「石版を集めるいい方法を思いつきました。彼に協力してもらいましょう」
サクヤの指差す先には虫の息のパペット小僧がいた。
マグマの杖でおきた炎は氷の刃によって消されていた。
「石版で元の世界に戻れると言う噂を流せばいんです。彼の話術は使えますよ」
「どういうことだ?」
サクヤの思いつきの解説をするようにエイトが促す。
「異世界から来た人が自分で石版を探し集まるようにする。
そうすることで異世界の人間と石版を探す手間がはぶけます」
サクヤはパペット小僧に近づくとこう聞いた。
「協力していただけませんか。そうすれば止めを刺さずに済みますし」
「は、はいよろこんでぇやらせていただきますぅ」
「それは良かった。名前はあるんですか?」
サクヤの問いにパペット小僧が答える。
「あやつりヨシキィと申します」
涼しげな顔で脅迫してくるサクヤによってパペット小僧が仲間になった。
「…サクヤってこの世界でもたくましく生きていけそうだよね」
少し呆れたようにセブンが言ったのだった。
464 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/04(火) 19:47:40 ID:HHfoHnmT0
今日はここまでです。
465 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/05(水) 13:47:59 ID:15rtfcBn0
激しく乙
いよいよ完結編か
466 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/06(木) 15:52:01 ID:oB9qruab0
サクヤ冷静だな。
467 名前: 目覚めた武闘家、エリー編1 ◆Tz30R5o5VI [sage] 投稿日: 2007/12/06(木) 19:43:17 ID:JivhPQorO
前回までの話>>400

巨大国、ロマリアを離れて北へ向かうことになった我ら勇者一向…。
装備をそろえたものの、あいかわらずこの地域は強いモンスターがよく現れる。
エリーはほぼ素手だったので、敵の防御力についていけないようだったのだが…。
エリーはすこし何かに、悩んでいるようだった。
なんなのだろうか。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「エ…」
男戦士サイモン「ふう…。なんか嫌な予感がするんだよな」
エリーと話そうと思ったがタイミングが悪かったようだ。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「嫌な予感って」
男戦士サイモン「あのロマリアの国王さ。あの王サマが、俺にひどい災いをもたらす気がするんだ」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「国宝を見つけて渡すだけだし、変な事にならないと思うけど……」
男戦士サイモン「まっ、そうであることを祈るだけだ…俺、嫌な予感は七割の確立で当たるんだ」
不幸な特技だな…。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「もう、日が暮れるね…。今夜はあそこでキャンプにしよう」
パチパチと薪の火の音がする。静かな夜…。
その静寂さのなか、夜行性の怪物達のうめき声が時折聞こえる。
街や村のベッドが恋しい。
サイモンとナナは先に眠った。
ぼくとエリーはその間、二時間の番をするわけだ。キャンプは危険だから、交替で寝るのである。
母は元気だろうか……。
長い夜は始まったばかり。
468 名前: 目覚めた武闘家、エリー編2 ◆Tz30R5o5VI [sage] 投稿日: 2007/12/06(木) 19:47:08 ID:JivhPQorO
美しい月だった。
どの世界でも夜空はキレイなんだ。
女武闘家エリー「ねえ」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「あ、うん」
女武闘家エリー「あたしのコトどう思ってるの」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「どうしたの」
女武闘家エリー「あたしは、力じゃサイモンに勝てないし…。ちゃんと、役に立ててるかな?」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「ぼくも、そんなこと言われたらさ、魔法使いにも僧侶にも戦士にも、武闘家にも勝ててないと思う…。あと、申し訳ないけど」
女武闘家エリー「…うん」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「エリーはサイモンよりも、力とスピード、あるって。きっとどこかで、その力をセーブしているんだ」
女武闘家エリー「……あたしは、自信がないんだ。偉大な人のために役立ちたくて、でも、その人は、遠くて、身近すぎて、考えるほど、自分が分からなくなってくるの」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「その人ってオルテガのこと?」
女武闘家エリー「って、偉大なのはあんた!…あなたの事よ」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「ぼくが…偉大…?」
女武闘家エリー「…違うわ、これからあなたは偉大になるの…、きっと。血と使命が、将来あなたを偉大にするわ、誰もがあなたを讃える。その時に平和が……訪れてるの」
買いかぶりすぎだ。
オルテガの名は重すぎる、ぼくには…。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「じゃあ、平和が訪れたら、エリーも偉大な仲間として語られていくよ。ぼくと一緒に」
エリーの瞳にぼくがおおきくうつっている。
女武闘家エリー「一緒ね!」
エリーはその時笑顔で笑った―。
469 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/06(木) 19:52:13 ID:RbQLZ9W00
リアルタイム遭遇支援
470 名前: 目覚めた武闘家、エリー編3 ◆Tz30R5o5VI [sage] 投稿日: 2007/12/06(木) 19:56:07 ID:JivhPQorO
ガサ…と音がした。
剣は…!
女武闘家エリー「誰!!?」
薪の火がいつのまにか消えていた。姿はよく見えないが、この体重を感じられる足音や、鼻からなくような声には覚えがあった。
イノシシによく似ていて、ドラキーなどの飛行系の仲間とよく出現するモンスターの気配である。
こいつらを相手にするのには、ぼくらが四人揃っていなければ勝ち目がない。
しかし、テントには二人が眠っている。逃げることはできない。
大声で叫べば二人は気づくかもしれない、しかし、周囲のモンスターを呼び寄せることにもなってしまう。
つまるところエリーとぼくが倒すしかない!!
ぼく(男勇者ゆきひろ)「エリー!離れるな!エリーならこいつらの気配が分かるだろ、ぼくはとどめをさす、だからっ!!」
女武闘家エリー「わかったわ!!!」
そう! その最速のスピードですべての攻撃をかわし、先制攻撃できる!それがエリーの力だ。
エリーはきっと今、目を瞑り、五感を研ぎ澄ましているだろう。
女武闘家エリー「はああっ!!」
ドッ!!と殴った音! 拳がモンスターをとらえる!!!
至近距離でようやく見えた倒れたモンスターをぼくがとどめをさす。あと何匹だ?!
ぼく(男勇者ゆきひろ)「大丈夫か?エリー、あと…」
女武闘家エリー「もう一匹は、あんたの後ろよ!!!!」
後ろ! 振り向き、剣を振り下ろした………手応えはあった!!!!
あと…。
ようやく目が暗やみになれてきた…。
エリーに襲いかかるモンスターの影!! あのモンスターは一人じゃだめだ。
そのモンスターに斬りかかろうとしたら。
女武闘家エリー「大丈夫! あたしにまかせて!」
ぼくは見た。その数百キロの巨体をエリーは一撃できめたのだ。
倒した瞬間、その巨体が地面にめりこみ、森がゆれた…。
女武闘家エリー「はあ、はぁ…」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「エリー…」
テントからサイモンの声。
男戦士サイモン「うるせえよバカ、なにやってんだよ…」
471 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/06(木) 20:02:31 ID:W077HCBN0
支援!!
472 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/06(木) 20:05:52 ID:RbQLZ9W00
> じゃあ、平和が訪れたら、エリーも偉大な仲間として語られていくよ。ぼくと一緒に
か・・・かっこいい。

倒し終わった頃に出てくるサイモン、テラワロス。
473 名前: 目覚めた武闘家、エリー編4 ◆Tz30R5o5VI [sage] 投稿日: 2007/12/06(木) 20:06:37 ID:JivhPQorO
その次の朝に出発し、カザーブの村についたのは二時間後。
看板が汚れていてよく読めなかったが、村の人に聞いて村名が分かったのだ。
秘境という言葉がぴったりくる村…。ここがロマリアの国王が言っていた村に間違いなさそうだ。
村人「ああカンダタね、その盗賊なら子分らと一緒に村にたまに来るよ。ていうか西のシャンパーニの塔は奴らのアジトだから今はそこにいるだろうな」
有力な情報である。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「ありがとうございました。たすかりました」
村人「いやいや、いいさ」
この後、村をまわってみた。宿屋は高く、武具屋などはなし…。やはり物静かな雰囲気の村であることがあらためてわかった。楽しみといえば温泉があることだった。夜に入ろうかな。
女武闘家エリー「ねえ、ゆきひろ、あれ…」
ん…墓だ。
『素手で熊を殺した、偉大なる武闘家、ここに眠る』
ぼく(男勇者ゆきひろ)「名前は誰なんだろう…」
汚れていて読めなかった。
女武闘家エリー「すごい人だったのね」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「うん……」
男戦士サイモン「お、さっきのおっさんが来たぞ?」
村人「見たところ、冒険者だね、昔やってた店の武器やらがあるから、うちの家にこないか? 格安にしとく」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「へえ…。じゃ伺います」
そんなわけで、行くことになった。普通の民家、そのうらの物置に。
女武闘家エリー「えっ!!」
村人「どうだい、何か欲しいのはあるか?」
女武闘家エリー「これ、鉄の爪じゃない! きゃあ、やった!!!!」
ロマリアにもなかった武闘家専用の武器だった。なぜか武闘家の武器はレアのようで、これまで見たことはなかった。
女武闘家エリー「すごいね、ゆきひろ! あたしの武器、見つかったわ!」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「うん、すごいな!」
思わず、いきおいで抱擁しあってしまった…。
男戦士サイモン「おまえら、そんなに仲よかったっけ」
女僧侶ナナ「よかったですねエリー!」
村人「武闘家さんなら武闘着もあるから、武器と一緒で1000Gでいいよ」
高い攻撃力の鉄の爪と、高い防御力の武闘着がやすく買えてしまった。
偉大なる武闘家が眠る村には、すばらしい武闘家の装備品が売っている。
バラモス、着実におまえに近づいているんだ。
474 名前: 目覚めた武闘家、エリー編5 ◆Tz30R5o5VI [sage] 投稿日: 2007/12/06(木) 20:11:49 ID:JivhPQorO
次の日、村を出発し西へと向かった。
ぼくらの旅に休日はない…。
『さまようヨロイが現れた。』
ロマリアのあたりでエリーが苦戦したモンスターだった。
女武闘家エリー「来たわね!!!!!はあっ!!!」
エリーが跳んだ!
頭部へと強烈な一撃を繰り出したのだった。
男戦士サイモン「おいおい! 強いな…。どうしたんだよ?!」
おそろしく強くなっていた。
サイモンも、負けていられないとシャンパーニの塔までの道中、めずらしく戦闘に気合いが入っている。
そういうぼくも負けてはいられない。
男戦士サイモン「ははは、なかなか張りがあっていいよな、なあ、ゆきひろ」
ぼく(男勇者ゆきひろ)「うん」
女僧侶ナナ「ふふ」
エリーが誇らしげに鉄の爪を見ている。
その表情は、不安などどこにもみられなかった。
これならどんな敵にも勝てると、その時はそう思っていた。
そして…。
目的地である塔が見えたのだ。
ぼく(男勇者ゆきひろ)「いくぞ、シャンパーニへ!!」
サイモン&エリー&ナナ「おお!」
そこはカンダタ達のアジトだ!
475 名前: ◆Tz30R5o5VI [sage] 投稿日: 2007/12/06(木) 20:16:18 ID:JivhPQorO
>>469
>>471

支援されてよかった
行数ではじかれて焦った
どうもありがとう。投下は終わりです
476 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/06(木) 20:29:04 ID:RbQLZ9W00
新作&投下乙でございました。
装備も整えて、パーティーのみんなもコンディション最高で、エリーさんといい雰囲気ですね。

> その時はそう思っていた。
波乱の予感・・・。
477 名前: Stage.? 雑談 ◆IFDQ/RcGKI [sage] 投稿日: 2007/12/07(金) 22:24:21 ID:MXoTTvC/0
※本日の雑談はタツミ君とエリスさんにお願いします。

エリス「みみ皆様こんにちは! エ、エリス=ダートリーと、も、申します!」
タツミ「そんなに緊張しなくても大丈夫だよw
   えーと今回は、>>356様のご質問にお答えしよう、というのが主旨らしいね」
エリス「やはりわかりにい部分ですよね」
タツミ「でもぶっちゃけさぁ……作者が設定厨なだけで、わからなくても問題ないよね?
   どうせこの話だけのオリジナル設定だし、今後もほとんどストーリーに絡まないだろうし」
エリス「それを言ってしまうと、雑談ここで終わっちゃうんですが」

タツミ「タネ明かしをすると、実は僕のように『現実』から来た人間には、
   この世界の魔法の習得はものすご〜く簡単なんだ」
エリス「そうなんですか?」
タツミ「以前、アルスに外側から僕のステータスを画面で確認してもらったことがあったけど、
   あの時、僕は頭の中でコマンド指定の流れを想像しただけで、それが実現したでしょ」
エリス「あっ、ゲームの中から直接コマンド指定ができるなら……」
タツミ「呪文の発動も同じ要領でできちゃうわけ」
エリス「では私たちのように『着火までの過程をできるだけ具体的に想像してー……』
   なんてプロセスを踏まなくてもいいんですね」
タツミ「もっとも実際やってみると、イメージウィンドウでのコマンド入力の方が難しいけど」
エリス「なぜですか」
タツミ「目の前にモンスターがぐわーっと迫ってるところで、
  『のほほんとテレビにゲーム画面が映ってる状態』を想像しろって方がムリだよ。
  『大爆発が起きてモンスターをぶっ飛ばす!』ってイメージの方が咄嗟に浮かぶし、爽快だしね」
エリス「その場合、勇者様はどのような過程をイメージされるんですか?」
タツミ「簡単だよ、モンスター周囲の大気成分が位相反転して反物質になったと仮定して……」
エリス「それ、たぶん現実の方々でもそう簡単にイメージできるとは思えないんですが」


タツミ「結局、全然答えになってないような」
エリス「そうですね」
478 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/07(金) 22:43:22 ID:7POy2A/A0
おお、コマンド入力をイメージするですか。
確かに反物質と物質が接触すると対消滅してエネルギーになりますね。
物質を構成する電子を陽電子に、陽子を反陽子に変換する過程のイメージは慣れるまではちょっとだけ難しそうですね。
479 名前: 幕間 街角にて… ◆Y0.K8lGEMA [sage] 投稿日: 2007/12/08(土) 00:56:50 ID:IEWvA9510
※時間軸はサンタローズ攻略直後くらいでしょうか。
『寄ってらっしゃい見てらっしゃい!旅に欠かせない道具の実演販売だ!』
「へぇ、あんなチビッコを引き連れて路上販売?珍しいな。」
「オラクルベリーらしい商売だね。少し見ていこうか?」
『お、兄さんノリが良いねえ。セル君、準備はOK?』
『OKOK準備万端だよ。兄ちゃん。それじゃあ今日の商品は…コレだあ。』
『一見何の変哲もない袋。 この中に…そうだ、兄さんの剣でも入れてみようか?』
「はぁ?こんな小さい袋に剣が入るわけが…」

―すぽっ!―

「!?」
「…いや…袋ってのはこういうもn…「SUGEEEEEEE!中国雑技団みてえ!!」
『驚くのはまだ早いよ。それじゃあセル君、兄さんの剣を返してあげようか?』
『OKOK勿論勿論。借りたものは返さなきゃね。ハイヨッ!!』

ポイッ! ⊃鋼の剣  ポイッ! ⊃マジックシールド  ポイッ! ⊃亀の甲羅
ポイッ! ⊃破邪の剣  ポイッ! ⊃うまのふん …(ry

「SUGEEEE!!なんかいっぱい出て来たあっ!!」
「…だから…袋ってのはこうi…「ブラボー!おぉブラボー!!」
『兄さんノリが良くて気持ち良いねえ。それじゃあそろそろ剣を返そうか。』

ポイッ! ⊃天空の剣

『はい、兄さんありがとうね。』
『さぁ!この袋に今なら福引券をつけて、たったの¥5000ゴールドだ!』
「かっけえぇぇぇ!!あの袋欲しい!ちょっと天空の剣売って金作ってくるわ。」

「「駄目!!」」

(´・ω・`)
480 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/08(土) 11:43:18 ID:2IQBwLulO
ふくろって不思議だなぁ…
481 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/08(土) 20:45:45 ID:eAdcY7Kg0

 〜作り合わされし世界〜

    → 冒険をする
      →0:サクヤ
        1:しなの  
        2:ヨウイチ 
        3:タロウ 
482 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/08(土) 20:50:10 ID:eAdcY7Kg0
3.風の噂と道化師(>>457-463)

異世界の人間が石版を集めることで元の世界に戻れると言う物語。
話はヨシキィによって人形劇として演じられる。
これを本当の話であることを匂わせて人々に噂を広めることにした。

「匂わせるんじゃなくて本当のことをきちんと言ったほうがいいんじゃないか?」
「噂なんていうのはどこか秘密めいていたほうが広まるものですよ」
エイトの質問にサクヤはにやりと笑いながら答える。
「噂を広めるなら人の出入りが多い場所がいいよね」
「そうですね。どこかよさそうな町を見つけ次第取り掛かりましょう」

一向は人々でにぎわう町を見つけた。噂を広めるにはよさそうな町である。
活気にあふれた町は人々が集まりザワザワと大いににぎわっていた。
「僕たちは町の人たちから情報を集めてくるよ」
新しい町にきたら隅々まで調べる。それは旅をする者の習慣のようなものだった。
「町の中とはいえ悪魔のつぼやミミックがいるかもしれないからサクヤは待っててくれ」
セブンはつぼや宝箱に化けたモンスターが襲ってくることがあると説明した。
「そういう擬態を見破るインパスという呪文がある。赤く光ったらモンスターだ」
「自分たちの仲間が多いときは戦うのも手だけど人数が少ないと脅威なんだよ。
危ない橋は渡るなってね」
そんなことを言った後セブンとエイトはサクヤを残して情報収集に向かった。
483 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/08(土) 20:52:12 ID:eAdcY7Kg0
サクヤはヨシキィとともに人形劇を準備を始める。
「おうおう、お前ら誰の許可をもらって仕事をしようって言うんだ?」
そこへ見るからに柄の悪い男が因縁をつけてきた。
「おや、許可が必要だったのですね。それは知りませんでした」
「分かったんなら場所代を払ってもらおうじゃないか」
「すみませんね。あいにく今手持ちがないのですよ」
「なめた口利くんじゃねぇ! この町のルールってのを教えてやるよ!」
男はこぶしを振り上げた。
「この人は知らなかったと言っているんだ。そのくらいにしておくんだな」
誰かが男の手を掴んでいた。見るからに屈強そうな男だった。
その男を見て柄の悪い男は舌打ちをしてその場を去った。

「助かりました。お礼を言わせていただきます。ありがとうございました」
「礼はいい。金があれば飯でもおごってもらうところだがな」
サクヤの礼に男は少しおどけた調子で答えた。
「ええ、それくらいはさせてもらいます」
「おいおい手持ちがないんじゃなかったのか?」
「あの男に払うようなお金は持っていないと言う意味ですよ」
サクヤはおかしそうにそう言ったのだった。
484 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/08(土) 20:54:15 ID:eAdcY7Kg0
町で知り合った男はダンと名乗った。サクヤはダンとともに町の食堂で食事を取る。
この町に来る途中モンスターと戦い少しばかりのお金は持っていたのだ。
「以前この町に来たときはあんな連中はいなかった。裏に誰かいるかもしれないな」
「困りましたね。この町での公演はあきらめたほうがいいかもしれません」
「そのモンスターに人形劇をやらせようってのかい。大丈夫か?」
ヨシキィも食堂についてきていた。
「手なずけてありますから。でも裏切ったときは遠慮なくどうぞ」
ダンが腰に挿しているナイフを指差してサクヤは言った。
ちょっと趣味の悪い冗談だとダンは思った。
「どうもただの人形劇じゃなさそうだな」
「石版を集めたいのですよ。それを神殿にもって行けば私の願いが叶うのです」
サクヤの言葉にダンは少し眉をひそめた。
「願いというのは私のような異世界の人間が元の世界に戻ることです」
サクヤはそういうと防具袋の中から石版のかけらを取り出した。
「こんな石版なのですがどこかで見かけませんでしたか?」
「いや、知らないな。なんなんだイセカイというのは」
「遠いところです。もし異世界の人間がいたら石版の話をしてあげてください」
そんな会話を交わした後サクヤたちは食堂を出た。
485 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/08(土) 20:56:18 ID:eAdcY7Kg0
「見つけたぞお前たち!」
食堂を出てすぐ先ほどサクヤに絡んできた男が再び現れた。
「先生お願いします!」
男は自分では敵わないと思い用心棒を連れてきていた。
その先生と呼ばれたのはモンスターだった。
「あれは地獄のピエロだ。強力な攻撃のほか魔法まで使ってくるぞ」
モンスターを見てダンがサクヤに忠告する。
「戦いは避けられそうにないですね。先手必勝です」
そういうとサクヤは一本の槍を振りかざした。
「砂塵の槍。道具として使うと目くらましになるそうです」
地獄のピエロは幻に包まれた。
「あれあれー、自慢の攻撃も当たらなきゃ意味がないですねー」
サクヤが地獄のピエロを挑発する。
「おい、こいつには魔法攻撃があることを忘れるな!」
ダンが忠告したまさにそのとき地獄のピエロがメラミを放つ。

「楽でいいですね。こんな煽りに簡単に乗るなんて」
メラミの炎はサクヤの手前で進行を止め、術者に戻っていく。
「さざなみの剣。道具として使うと魔法を跳ね返す効果があるそうです」
サクヤは燃え上がる地獄のピエロに向かって解説した。
「まだやりますか?」
サクヤは柄の悪い男に向かってにっこり微笑む。

その後ダンはクレージュという町に行くといってサクヤと別れた。
邪魔が入らなくなったことでサクヤは人形劇を始める。

「ねえ、見てよ。変なのがいる」
情報収集から戻ってきたセブンがエイトに話しかける。
セブンが見たものはサクヤの人形劇の呼び込みをしている焦げたピエロだった。
486 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/08(土) 20:57:02 ID:OacaC8DMO
シエンナ
487 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/08(土) 20:58:20 ID:eAdcY7Kg0
「サクヤってさ何者なの?」
何が起きたのかを知ったセブンがサクヤに尋ねる。
「何度も言いますけど覚えてないです」
セブンの質問にサクヤはしれっと答える。
「さすがに何も覚えてないってことはないだろ」
エイトの言葉にサクヤは少し間を空けたあと口を開いた。
「たとえばの話ですよ。
私が目を覚ましたら見知らぬ宿屋にいました。私は異世界の人間です。
――なんていう人間がいたとして信じられますか?」

「僕は信じてもいいと思う」
「…もう少し人を疑うことを覚えたほうがいいですよ」
セブンの言葉に少し呆れたようにサクヤが言う。
「何も教えてくれない人間よりは信じてみようって気になるさ」
エイトがサクヤを非難するように言う。
「それにさ。誰だって自分のことを信じて欲しいものだろ」

「信じてくれなくてもかまいません。私はずっと独りで生きてきたんですから」
そう言うとサクヤはその場から去ろうとする。
「どこ行くんだよ」
「少し一人になりたいんです」
「待ってよ」
「ほうっておけ」
あとを追おうとするセブンをエイトが引き止める。
488 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/08(土) 21:00:24 ID:eAdcY7Kg0
サクヤは町の外に出ていた。
そしてあの二人、セブンとエイトとのやり取りを思い出していた。
自分はずっと独りで生きてきた。それは間違いないことだ。
だから自分はこんなところにいても物怖じせずにいることができるのだ。
しかしそれ故に自分は他人に信じてもらうということが苦手なのかもしれない。
人に弱みを見せることができない。それこそが自分の弱点なのかもしれない。
…自分はこれからどうすべきなんだろう。

サクヤは外の空気を吸って深呼吸をしていた。
あたりはすっかり暗くなっている。
頭を冷やしたことでとてもすっきりした気分になった。
なんだかあの二人ともうまくやっていける気がする。

ドシン。

静かな夜を打ち破る大きな音がした。サクヤの前にはゴーレムがいた。

サクヤは目の前にいるモンスターを見る。
力が強そうな魔物だ。
この魔物と戦うならば直接やりあうのは得策ではないだろう。
サクヤはすかさず眠りの杖を振りかざした。

しかしゴーレムには効かなかった。

「そんな!」
ゴーレムのこぶしがサクヤに振り下ろされる。
こんなものを普通の人間が一撃でも食らったらひとたまりもない。これで終わりだ。
サクヤは静かに目を閉じた。
489 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/08(土) 21:02:26 ID:eAdcY7Kg0
「こんなことで諦めちゃ駄目だ!」
「お前は元の世界に帰るんだろ!」
セブンとエイトがゴーレムの攻撃を受け止めていた。
この二人が力を合わせればゴーレムといえどもひとたまりもない。
ゴーレムはその場に崩れ落ちた。

「大丈夫、サクヤ?」
「夜はモンスターの動きが活発になる。気をつけろよ」
サクヤはしばらく黙っていた。そしておもむろに口を開いた。
「私は…ずっと一人で生きてきました。誰の力も頼らず…
だからこの見知らぬ土地に来て…ここでも独りで生きていこうと…」
その声はほどんど聞き取れないほど小さなものだった。

「もっと僕たちを信じてよ」
「自分を信じて欲しかったら他人を信じることも必要だぞ」
「私のこと…私のこと、信じてくれますか?」
490 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/08(土) 21:03:07 ID:OacaC8DMO
シエンナギロリー
491 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/08(土) 21:03:28 ID:eAdcY7Kg0
今日はここまでです。
492 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/08(土) 21:42:16 ID:JaRqtPRr0
焦げたピエロの呼び込み和良た(wwww

エイトも、セブンもいい奴ですね。
493 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/10(月) 13:59:32 ID:yXLN9vqH0
>477-478
すごく…光子魚雷です
494 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/11(火) 19:56:20 ID:uS1qVh+KO
ベビーデーモンは保守を唱えた!

しかしMPが足りなかった!
495 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/12(水) 20:01:44 ID:VEX62hOd0

〜作り合わされし世界〜

    → 冒険をする
      →0:サクヤ
        1:しなの
        2:ヨウイチ
        3:タロウ
496 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/12(水) 20:04:17 ID:VEX62hOd0
4.裂けいく異世界

「私ってよっぽど怪しい人間だと思われていたみたいですね」
「ああ。こいつ絶対裏があるって思ってた」
「そんなこと言っちゃ悪いよ」
「いえ、今にして思えば私も警戒するあまり不審な態度をとっていました」
「確かに見知らぬ世界にすんなり馴染む人間がいたらそっちのほうがよっぽど怪しいよな」
「それ言いすぎだよ」
町で戻る途中サクヤとエイトとセブンはそんな会話を繰り広げていた。

帰り着いたあとセブンとエイトがサクヤに集めた情報を伝える。
「面白い話が聞けたよ。魔王が現れたけど急にいなくなったんだって」
「その原因は不明だけどな。そして同じころ世界がおかしくなり始めたようだ」
魔王という言葉にまたもやサクヤの表情が険しくなる。

「消えた魔王っていうのが世界の崩壊と関係あるのかもね」
ふとセブンがそんなことを言い出した。
「どういうことでしょう?」
サクヤが少し不安そうに尋ねる。
「魔王がこの世界の外側に行ってそこから世界を壊しているのかもしれない」
「面白いですね。いえ、面白いなんて言っちゃいけないですね」
「もしかしたらその世界を崩壊させる方法ってのがサクヤたちなのかもね」
「私にそんな力はありませんよ」
セブンの言葉をサクヤは否定する。しかしセブンはこう続けた。
「石版にはそんな力があるかもしれないよ。
異世界の人間を封印することで世界が変になったんじゃないかって思ったんだ」
497 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/12(水) 20:05:55 ID:0cCMlwTHO
キング支援が あらわれた!
498 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/12(水) 20:06:21 ID:VEX62hOd0
「封印されているのはこの世界そのものなのかもな」
それまで黙っていたエイトが口を挟む。
「つまり、この世界がおかしくなっているのは封印されている状態だってこと?」
「私が封印されているわけではないというわけですね」
エイトの意見にセブンとサクヤが興味を示す。
「この世界は封印されて壊れ始めた。
その影響でできた次元の裂け目みたいなものにサクヤたちは飲み込まれてきたのかもな」

「封印されて壊れだした世界。裂けいく異世界というわけですね」
「裂けいくってよりも合わされし世界って感じじゃない?」
サクヤの言葉にセブンが反論する。
「裂けいく異世界。なんとも暗示的な言葉ではありませんか」
しかしサクヤはその言葉が気に入ったらしく何度かつぶやいていた。
「そうかなあ。そもそも世界が封印されているって決まったわけじゃないんだよね」
「とにかく石版を集めれば分かることだ」

町から町へ渡り歩きヨシキィの人形劇が演じられる。
モンスターが客をひき演じるその話は人々の心をつかんでいく。
劇に魅せられた人は石版の話をまた別の誰かに話し噂を広める。
噂話は町から町、国から国、そして夢の世界にまで広まっていった。

夢の世界のある町での出来事。
二人の子供、イリヤとジーナが宝探しごっこをしている。
探す宝は不思議な石版。
その様子を一人の少女――バーバラが見つめていた。
こうして石版の噂は異世界からきた者の元へ届いていくのであった。
499 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/12(水) 20:08:26 ID:VEX62hOd0
「今回はこの教会で劇をやらせてもらうことにしましょう。
近くには勇者の泉と言うものがあってこの教会には旅人が集まるそうですよ」
教会は荘厳な雰囲気の中にありパイプオルガンの音が似合いそうだった。
ステンドグラスの窓がキラキラと輝いていた。
「俺はどうにも教会って言うのが苦手なんで――いえ、やりますやります」
ヨシキィはセブンとエイトを見てすぐさま抵抗を諦めた。
二人はサクヤを元の世界に返そうと一生懸命になっている。
サクヤを仲間だと思うようになっていたのだ。
「私も教会なんて落ち着かないですよ。でもこれも石版を集めるためです」
サクヤの言葉に促され、地獄のピエロが人を集める。

「近頃石版の噂をよく聞くと思ったが、君たちの人形劇のせいだったのか」
人形劇を見た神父がこんな感想を述べた。人のよさそうな神父である。
「ここはすでに噂は広まっていたのですね」
「ふむ、噂を信じて4人連れが石版を見つけると言っていたがどうなったのだろうか」
神父はその旅人のことが気にかかっているようだった。それはサクヤも同じだった。
その言葉を聴いてサクヤは自分の狙い通りになっていると確信した。

「どうやら私たちの旅も終わりのようですね」
石版の噂は十分広まった。これ以上旅を続ける理由はないのだ。
「神殿に向かうんだね。祭壇がある場所まで送るよ」
「やめておこう。異世界の人間が元の世界へ戻るのに巻き込まれる可能性がある」
セブンの提案にエイトが反対する。
「そうですね。最後くらいは自分一人の力だけでいきましょう」
「ああそうだ。ヨシキィはスカモンとして俺が預かろう」
「地獄のピエロはモンスターパークに入れるよ」
500 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/12(水) 20:10:31 ID:VEX62hOd0
「サクヤともお別れだ。寂しくなるな」
一人神殿へと向かうサクヤの背中を見てエイトが漏らした。
「別れた者のその後の幸福を願うなら決してその別れを嘆いてはいけない」
セブンのいつもとは違う力強い言葉を放つ。
「僕の言葉じゃないよ。でも、僕にとってとても意味のある言葉なんだ」
すぐにいつもの調子に戻ってそう続けた。
「そうだな。サクヤのことは笑顔で送り出そう」
こうしてサクヤの人形劇を利用した石版を集めるための旅は終わった。

サクヤは神殿へ向かう。
靴の音だけがカツカツと聞こえる。
もうすぐこの世界ともお別れだ。
裂けいく異世界。
このばらばらになった石版のような世界から。


――最終章へ
501 名前: ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/12(水) 20:12:34 ID:VEX62hOd0
これで終了です。支援ありがとうございました。


そして、最終章について合作掲示板からお知らせがあります。

『合作の最終章は前半を15日21時から、後半を16日21時からそれぞれ投下される予定です。
 連投規制に引っかかる可能性があり規制が解除されるためには時間の経過が必要です。
 途中で長い時間書き込みができないことがあるかもしれませんが必ず投下します。
 そのため投下に時間がかかる可能性がありますが、ご理解とご協力をお願いします。』
502 名前: 癒しの魔法 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/12/13(木) 23:15:38 ID:POSLSzJc0
恋をする男が一人居た。
男はドラクエ世界の宿屋で目覚め、そのまま暮らしていた。
相手の女は僧侶で、一生懸命にべホイミを練習している。

男は彼女の気を引きたかった。
素直な彼女はいつも人に囲まれていた。
やっと、一人になったのを見計らい話しかけ、約束をする。

男は約束に備え彼女が練習していた魔法を習得した。
時間が足りず、それしか習得できなかった。
それでも、実際の魔法を見せて喜んでもらえると思い、努力した結果だった。

彼女の気持ちは、わからなかった。
毎日、少しでもわかってもらおうと合間を見てほんの少しだけれど会話した。
時々は一緒に話しながら帰った。

男は怖かった。
約束の日に自分の気持ちを伝えようと思っていた。
不安だった。
今の関係が無くなってしまう事が、とにかく恐ろしかった。
約束したことを後悔したこともあった。
けれども、決めたことだからと毎日を精一杯過ごした。
503 名前: 癒しの魔法 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/12/13(木) 23:17:15 ID:POSLSzJc0
とうとう約束の日の朝。
目を覚ますと現実世界の部屋に居た。

男は、複雑な気持ちだった。
彼女に振られ、その関係が壊れる事はなくなった。
けれど、その彼女に気持ちを知ってもらうことも、彼女の気持ちを知ることもなくなった。

男はつぶやく、べホイミと。
体中が暖かくなり、心が少し癒される。

男はもう二度と、彼女と会うことも魔法を唱えることもなかった。
これからずっと、焦がれた笑顔を取り戻すことは出来なかった。
504 名前: 癒しの魔法 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/12/13(木) 23:17:50 ID:POSLSzJc0
おしまい。
505 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/13(木) 23:41:36 ID:n/ANQ/5+0
約束の日に、元の世界に戻ってしまうとは、なんという運命のいたずら。
でも、その男の人が、彼女のために頑張った日々は、無駄ではないと信じたいですね。
ちょっとほろりと切ないお話ありがとうございました。
506 名前: タカハシ ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/12/14(金) 07:46:53 ID:Omo+nHq70
>>505
切なくなってくれてありがとうございます。
少し雑ですが、電車に乗っている人たちをみて思いつき、書きました。

そして、朝から修正します。
>>503
の最後の行は
「これからずっと、焦がれた笑顔を取り戻すことも見つけることも、しなかった。」
へ変更です。

では。
507 名前: 作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:03:35 ID:OGexf1c80
●作り合わされし世界〜最終章〜

人が通るには十分な高さと広さを持つ通路が真っ直ぐ続いている。
壁の上部には訪れし者を案内するかのように松明が焚かれていた。
等間隔に並べられているため、幸いにも視界の確保には困らなかった。

  「……」

それでも一人で歩くには心もとないくらいに薄暗いのは否めない。
さらに出口が見えないという事も不安の種になる。
恐ろしく長い距離を歩かねばならない洞窟なのかもしれないのだ。
だがそれでも彼女は進まなくてはいけない。
この先に神殿があるのは間違いが無いのだから。

  「お……」

手で壁を伝いながら足を運んでいると、少し俯きがちに歩いている人影に出くわした。
その後ろ姿は注意深くと言うよりは意気消沈といった感じに見えた。

  「やぁ、久し振りだな」
  「おぉ! モンスターかと思った……いきなり声かけるなよ」

知り合いに出会えた嬉しさからか、つい大きな声が出てしまう。
その声に振り返った男は、彼女にまったく気付かなかったようで少し後ずさる。

  「ん、すまなかった。しかしまた会えるとは思ってなかったもんだからな」
  「……? どこかで会ったか?」

その男、ヨウイチは彼女と一度だけ会話を交わした事があるのだが、
思考の対象が他に向かっていたためにすぐには思い出せなかった。
そんな様子を見て彼女の方からヒントを出す。
508 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:06:40 ID:NtcNNcCf0
最終章投下開始wktk
いよいよ神殿ですね。
保守〜
しなのさんと再会どきどき。
509 名前: 作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:07:11 ID:OGexf1c80
  「ドラオとやらは一緒じゃないのか?」
  「あ、あぁ、今は一人なんだ……そうか、シエーナで会った?」

あぁと頷いて嬉しそうな表情をした後、彼女は残念そうに笑った。

  「何だ、今ならドラオとも仲良くできる自信があるのだが」
  「そう言えばドラオには嫌われてたっけ。あれから修行でもしたのか?」
  「まぁな!」

彼女はニヤリと自信たっぷりに笑う。
そこでヨウイチは彼女に尋ねなければならない事項があったのを思い出した。
が、まだ互いの名前も知らなかった事にも気付く。

  「そうだ、名前! 名前を教えてくれよ」
  「あぁ、失礼をしたな。しなのという。っと、敬語を使うべきかな?」
  「いや、気にしないでいいよ。俺はヨウイチ。ここに来たって事は石版を?」
  「あぁ、この先に神殿があると聞いてな。……これだな」

石版のかけらを互いに取り出して示し合わせてみる。
その二つだけではとても石版の元の姿を取り戻せそうになかった。

  「これで本当に元の世界に帰れるのか?」
  「いや、帰れるって!
   向こうと違ってここでは何が起こっても少しも不思議じゃないんだから」
  「そうか、それもそうだったな」

この世界で起こる出来事を特別に不思議なものだと感じるのは当人が異世界の人間だからだ。
そんな特有の反応を示すしなのの様子からヨウイチの推理はほぼ確信へと変わる。
つまり以前にしなのが何気なく言った「私の世界」という言葉が
自分の世界と同じなのではないかという疑問がようやく解けたという事だ。
しかし一安心したところでヨウイチはその疑問を持った時の事を思い出してしまった。
510 名前: 作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:11:00 ID:OGexf1c80
  「あの時ちゃんと聞いておけば……どうなったろう……」
  「ん? どうした?」
  (……ドラオの命は、もしそうしてたら変わったのかもしれない)

過ぎ去った過去とすぎようとする現実を対比し、ヨウイチはうつむいた。
そんな様子を見て、しなのは両手を軽く広げて何かを待つような仕草をした。

  「……ヨウイチ」
  「な、なんだ?」
  「いや、何だか元気がない様子だから抱きしめてやろうかと思ってな」
  「えぇ?! いい、いいよ!」
  「そうか? 寂しさが紛れるかもしれんぞ?」
  「寂しいっていうか……なんか、こっちがどうしていいのか困るよ」
  「そうか……それはすまなかった。
   ふぅん、素直になっても全てが上手くいく訳ではないんだな。難しいものだ」

それが何の事を言っているのか分からないが、
ちっともすまなさそうではないしなのにヨウイチは少し呆れる。

  (ここにいま、ドラオがいたらきっと楽しかったろうな……)

ついつい、ドラオと一緒だったらと考えてしまうヨウイチ。
あれからそれなりの時間を過ごしたはずなのに、再びその感情は甦る。
誰かの前でこんな調子ではいけない、とヨウイチは自分を鼓舞した。

  「しかしまた会えるだなんて思ってなかったな」
  「ヨウイチが私に会いたいと思ったからじゃないか?」

そんな事を話しながら洞窟を進んでいく。
すると幅の狭かった一本道が突然開け、小さな部屋へとたどり着いた。
その先へ続く道もそのまま正面に伸びているので、
ヨウイチはその部屋をそのままスルーして進もうとする。
511 名前: 作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:15:28 ID:OGexf1c80
  「ん……ヨウイチ」

呼びかけに振り向くと部屋の左手に赤を基調にデザインされた宝箱が置かれている。

  「おぉ、まだ誰も触ってないのかな」
  「私は宝箱というものを初めて見たよ」
  「開けてみてもいいか?」
  「あぁ、どうぞ。しかし赤いな」
  「なら近づかない方が賢明ですよ」
  「「……?」」

聞きなれない声がいきなり会話に割り込んでくる。
初めて聞く声に振り向くと、見知らぬ顔がこちらに向かって来るところだった。

  「それは赤いからなのか?」

何者なのかよく分からないが、ヨウイチはとりあえず思った事を口にしてみる。
宝箱が赤いから近づいてはいけない、という話がよく分からないし、
コイツが何者なのか知る為にもまずは相手の出方を見なくてはいけない。

  「神殿はこの先にあるのでしょう。
   ここまで来てわざわざ危険を冒す事はないと思いまして。
   モンスターが宝箱や壷に潜んでいる事も多いと聞きますから」

そんな事を言いつつ、自己紹介の為に手を差し出してきた。
その笑顔に害はなかった。

  「サクヤです。よろしく」
  「しなのだ」
  「ヨウイチです」
512 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:16:28 ID:tIR5JtxU0
しえーん!かむばーっく
513 名前: 作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:19:03 ID:OGexf1c80
  「まぁすぐにお別れとなるかもしれませんがね」

と言ってサクヤは石版の欠片を取り出し、二人に見せた。
それを持っている者同士は仲間だと言いたいのだろう。

  「そうか、君も私達と同じだったんだな」
  「えぇ、色々大変だったでしょう?」
  「大変だなんてもんじゃなかったな……全く違う世界なんだから」

そうして二人はサクヤを加えて再び歩き出す。
三人はそれぞれにこの世界の事を語りながら互いを労ったのだった。
中でも、この世界が複数の世界が折り重なるようにして形成されている事や、
このままではこの世界が裂けてしまうかもしれないというサクヤの話は、
しなのとヨウイチを多少なりとも驚かせたようだった。

やがて洞窟を抜けて光に目が慣れるのを待つと、目の先に荘厳な神殿が現れた。
道が洞窟から神殿まで続いているのに目を走らせると、
湖や森が神殿を守るようにしてあり、さらに山々がそれを囲っているのが分かる。
鳥が頭上を羽ばたき、蝶々や虫たちが花畑を飛びまわっているのを横目に見れば、
ここが人の手の及んでいる場所ではない事は容易に理解できた。

緩やかなカーブが幾つか描かれている道を歩いていくと、
神殿の大きさが次第にはっきりとしてくる。
白一色で左右対称に造られていて、精密過ぎる程に精巧だった。
誰を招くためにあるのか分からない入り口は人の丈の五倍の高さを持っている。
もしかしたら神様は物凄く身長が高いからこのような造りになっているのかとも考えた。

  「ようやく着いたな……」
  「神様の宮殿、ってか。そんな感じするな」
  「さぁ入りましょう」
514 名前: 作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:21:58 ID:OGexf1c80
  「わんわんっ!」

神殿に入ろうとしたところに鳴き声が聞こえてくる。
振り返ると一匹の犬が元気良く駆けて来るのが見えた。

  「わんわん! わんわん!」
  「ワンコ!」
  「ゲレゲレ!」

しなのとヨウイチは同時に声を上げ、顔を綻ばせた。

  「おいヨウイチ! 私のワンコに変な名前をつけるな!」
  「いや、こいつはゲレゲレって言うんだ。自分でそう言ったんだから」
  「自分で? 喋ったのか?」
  「いや、夢の中でだけどさ」
  「ヨウイチ……いくらモンスターと仲良く出来るとは言え、
   私は君という人間が信用できなくなってきたぞ」

二人が会話してる中、犬のタロウは思った。

  (喧嘩はやめてよー!
   どうやったら仲直りしてくれるかな。
   そうだ。こういうときのための格言があるんだよね。
   夫婦喧嘩は犬も食わないって。
   ううー、なんだか犬を馬鹿にした言葉の気がする。
   それに食べてみたらおいしいかもしれないじゃないか!
   ああ、そうじゃなくって喧嘩を止めなきゃ!)

ワンワンと必死になりながらタロウはわんわんと二人に訴えかける。
しかしそんな行為も僕と遊んでくれという意味で二人には取られてしまう。
結果として二人の言い合いは止んだので、タロウの目論見は成功した事になった。
515 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:23:31 ID:tIR5JtxU0
しぇーん
516 名前: 作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:24:52 ID:OGexf1c80
  「この犬の首輪に何か書いてありますね。これ、名前じゃないですか?」

サクヤの言葉にしなのがタロウの首輪に書いてある文字を見る。

  「タロウ、か。お前の名前はタロウなのか? ん?」
  「わん!」

その犬、タロウはしなのの言葉を肯定するように元気よく吠えた。

  「ゲレゲレ、じゃなくてタロウは嫁探しをしていたんじゃなかったのか……」

ヨウイチは一人つぶやく。
以前タロウとクリアベールで話した時は確かそのように言っていたと思ったのだが。

  (それとも嫁探しをしてからここに来たんだろうか……)

不思議な事が好きなヨウイチの興味は色々な意味で尽きなかった。
一方尻尾をフリフリしながら皆のやりとりを見上げていたタロウは、
会話が一段落したのに気付いたのか元気良くジャンプし、
しなのの細い脚に飛び込んだ。
以前レイクナバで会った時はしなのの付けている香水の匂いにつられたのだが、
今回はしなのの匂いをちゃんと覚えていたのだ。
香水の匂いとしなのの匂い。
その二つが良く混ざり合い、しなのという人に似合った香りになっている。

  「ペロペロペロペロ!」
  「ははっ、やめてくれ!」
  「何だ、今度は嫌われなかったな」
  「私は動物好きなんだがな。向こうが好いてくれないんだ。
   しかしこいつには良くしてくれて嬉しく思ってる」
  「わんわんっ!」
517 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:26:34 ID:EBpZQ6nb0
  「しかしここまで犬が来れた事が私には不思議に思えてなりません」
  「まぁ俺は再会出来たから嬉しいけどな」
  「この子はやらんぞ、ヨウイチ」
  「はっはっはっはっ」

タロウは自分と仲良くしてくれるしなのが好きだった。
そしてパタパタと飛ぶあの生き物がいなくなった今、ヨウイチともじゃれてみたかった。
だからせわしなく二人の間をピョンピョンと跳ねるのだった。
そんな姿が人に可愛く思われるのは、タロウが純心だからだろう。

  「私の勘が当たったようですね。異世界から招かれたものに犬が混ざっていた」

二人と一匹がじゃれつく間、サクヤは一人別の事を考えていた。

  「……何だそれは?」
  「いえ、占いでは石版を納める場所に人間以外の姿が見えたそうです。
   モンスターが現れるのかと心配していたのですが、どうやらこの子の事だったようです。
   そんな事より早く行きましょう。ゴールはすぐそこですよ」

いつまでも遊んでいそうな雰囲気に業を煮やしたのか、サクヤが皆を促す。
二人と一匹からしてみれば、ゴールだからこそ、という意識の方が強い。
今遊んでおかないともう会えないかもしれないのだ。
しかしそれは明確な言葉にはならなかった。
まだ旅が終わりだという実感はなかった。

神殿の中は長方形をした大きなホールになっていて、
綺麗に切り取られた白い石が隙間なく敷き詰められている。
壁には神々を模した彫刻や何かを表した壁画が描かれており、
それらが夕焼けによりオレンジ色に染まり、思わず立ち尽くしてしまうくらいに美しかった。

  「綺麗だな……」
  「あぁ……」
518 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:29:59 ID:EBpZQ6nb0
  「くしゅっ!」
  「ははw」

感激しているところにタロウのくしゃみが入り、思わず笑みがこぼれる。
神殿に入るのは躊躇われたが、そうも言っていられない。
厳かな雰囲気を壊してしまわないように音を立てないようにして歩いた。
段差を上がるようにして作られたホールの中央に何かのレリーフがある。
レリーフの形は直方体の台に額縁のようなものが乗せられていると言えばいいだろうか。
額縁の中に石版がはめられそうになっているところを見ると、あれが台座なのだろう。
しなの、ヨウイチ、タロウ、サクヤが台座を取り囲む。

  「やっと……やっとこの時が来たんだな……」
  「この額縁に石版をはめて完成させれば願いが叶うって訳か」
  「さぁはめていきましょう。それでこの裂けいく異世界も元通りですよ」
  「って事は俺らにとっても世界にとっても一石二鳥だな。
   まぁそれはいいんだけど、もう終わりかと思うとなんだかな……」
  「私ももう少し冒険しても良いと思ったがな」
  「くぅ〜ん……」
  「……じゃあ俺からはめてくよ」

ヨウイチが石版を少し緊張した面持ちで石版をはめ込む。
するとつなぎ目の部分が光を発し、二つの欠片が一つに繋がった。

  「すげぇ……」
  「さっきからヨウイチは驚いてばっかりだな」
  「凄いものは凄いんだから仕方ないだろ?
   しかし凄いな……この石版欲しいんだけど、貰えないかな?」
  「何を馬鹿な事を言ってるんですか。元の世界に帰りたくないのですか?」
  「う〜ん、悩ましいな」

本気で悩んでいるヨウイチにタロウとしなのは笑う。
しかしサクヤは一刻も早く帰りたいのだろうか、皆をしきりに急かした。
519 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:31:06 ID:tuJeDFtQO
シエンタ!
520 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:33:10 ID:EBpZQ6nb0
  「どうしました? しなのさんも早くはめてください」
  「ん……あぁ、そうだったな。すまない」

コトリという音とともに石版がまた少しずつ形を取り戻していく。
終わりが近づいてくる。

  「めでたしめでたし、ってやつか」
  「ついにやりましたね。皆さんの冒険もこれでおしまいです」
  「ホントに短い間だったけど、これでお別れだな……」
  「ったく……今生の別れって訳じゃあるまいし」
  「また会えるさ。向こうの世界でな」
  「そうだな。 それまでのバイバイだ」

次にタロウの石版をはめ込めばちょうど完成するようだった。

  「さぁ次はタロウの番だな」
  「タロウの石版は私がやりましょう。さあ、こっちに渡して下さい」

タロウでは石版をはめる事が出来ないので、サクヤが気を使う。

  「うー! グルルル!」

しかしタロウはサクヤを威嚇するようにして唸りを上げた。

  「何だ? 今度はしなのじゃなくてサクヤが嫌われたのか」
  「タロウはあらゆる動物から嫌われ続けた私に懐くような犬だぞ……」

面白がるヨウイチとは対照的にしなのの顔が険しくなる。
途端にサクヤの様子が気になってきたからだ。
521 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:36:41 ID:PU87BjKL0
しえん
522 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:37:10 ID:EBpZQ6nb0
  「サクヤ、赤は危険な色だな?」
  「えぇ、そうですね」
  「じゃあ皆で渡れば怖くないものは何だ?」
  「……橋、ですね。
   先にモンスターがいると分かっているような危険な橋を渡るのも、
   皆で渡れば怖くないという意味でしょう」

サクヤの答えと自分の思っている事が違ったのでヨウイチは頭をかしげた。

  「え? 赤信号だろ?」
  「シンゴウ……?」

逆にサクヤはヨウイチが発した聞きなれない単語に顔をしかめる事になる。

  「なあサクヤ。さっき君は『皆さんの冒険はこれでおしまい』と言ったよな」

信号という言葉を知らない、という事が意味するところのものは一つしかない。
そう考えたしなのは、静かにサクヤに詰め寄った。

  「なぜ『私たちの冒険』と言わなかったのだ?」

痛いところをつかれたサクヤはうつむき、肩を震わせた。

  「……ふっ……っく……」
  「サクヤ……?」
  「ハハハハハハハハハ!!
   ……やれやれ。ばれちゃったみたいですね」

少しも困った様子を見せず、むしろそれを楽しむかのように呆れて見せる。
サクヤの声はまだ冷静なものだった。
523 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:39:55 ID:tIR5JtxU0
wktkしえん
524 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:40:30 ID:m7yCgfe5O
シエンナギロリー
525 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:41:03 ID:EBpZQ6nb0
  「宿屋で私が目覚めた部屋には三人の人間がいました。
   事を荒立てたくなかったので彼らの前では正体がばれないように振舞いました。
   話を聞く限り腕が立つようでしたからね。
   とんでもないところで目覚めたものです。
   でもまぁ、結局彼らに協力してもらうことでその力を逆に利用してやりましたよ。

   今はついつい油断してしまったようです。
   匂いが漂ってしまったのでしょう。
   ところでその部屋にはその彼ら三人以外の人間はいませんでした。
   どういう意味だか分かりますか?」

サクヤは舞台で役を演じるがの如く振る舞い、そしてクイズを出すかのように言った。

  「……つまり、お前は人間ですらないということか?」
  「くくく……正解です」

そう、サクヤはヨウイチ達と同じ世界の人間ではなかったのだ。

  「お前の目的は何だ!」
  「目的? 皆さんと同じですよ。石版を完成させる事です」

サクヤがおかしそうに言う。

  「実はこの石版には魔王が封印されているんですよ」
  「ま、魔王……?」

魔王という言葉にヨウイチは戦慄を覚える。
この世界に居る今の状況であってもそれは現実離れしている話だ。
526 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:44:16 ID:EBpZQ6nb0
  「昔々、全世界を我が物にしようと考えた一人の魔王がいました。
   彼の圧倒的な力に多くのモンスターが賛同し、世界制覇は目前でした。
   しかしある時、この世界を作った神様が魔王の非道を阻止するため、
   その存在を石版に封印してしまったのです。
   呆気なく封印されてしまった魔王にモンスター達は失望の色を隠せませんでしたが、
   中にはそれでも魔王を慕おうとする者もいたのです。
   その者は魔王の封印を解く事を決意しました。

   石版の封印をとくためには一度石版をばらさなければなりませんでした。
   それには強大な力が必要でした。
   異世界から誰かを召喚するときに発生するような力が……
   崩壊していくこの世界の、さらに外にある世界から召喚する時に生じるような、ね。
   私自身もその力によってずいぶん遠くまで飛ばされてしまいましたよ。
   まさか石版を壊す事で世界がこのようになるとは思いもしませんでしたし」

サクヤの口から次々に真実が語られていく。
その言葉をすぐには受け入れる事はできなかった。

  「だから私達をこの世界に……」
  「ちょっと待てよ!! 石版は帰る為にあるんじゃないのか?!」
  「ふふふ……
   石版を集めることで元の世界に戻れるという噂を流したのも私ですよ。
   嘘に夢を見る気分はいかがでしたか?」

サクヤは種明かしをする事が心底愉快だといった感じで楽しそうにしゃべる。

  「俺達はお前の操り人形だったというわけか……」
  「人形を操るなど造作もない事ですよ。
   しかしこうして石版を見事に揃えてまで頂けるとはね。
   くっくっくっ……
   私は本当にあなた達に感謝しています。
   まんまと噂に乗せられ我が主の復活への手助けをしてくれたのですから」
527 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:44:25 ID:tIR5JtxU0
♪ドーはドラクエーのド(中略)シーはしえんのシー
528 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:46:19 ID:tuJeDFtQO
サクヤ…
529 名前: 作り合わされし世界 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:47:10 ID:EBpZQ6nb0
つまり石版で願いが叶うというのはサクヤが作り出した嘘だったのだ。

  「ところであなた達はどうやって帰るつもりなのです?」
  「どうって……」

石版が魔王を復活させる為のアイテムと判明した今、
確かにしなの達が元の世界へ帰る術はなくなってしまった。
いや、騙されていたのだから元から帰る方法など無かったと言っていいだろう。

  「ですがまだ希望はあります。私があなた達の召喚者であるという事ですよ」
  「どう、いう……」
  「私なら元の世界へ送り返す事が出来る」

分からない話ではなかった。
一方的に呼ぶ事しか出来ないのであれば中途半端だと言わざるを得ない。
封印された魔王を復活させる事が出来るなら、サクヤの言う通りの事も出来るはず。
しかし、

  「ただし素直に石版を渡してくれればの話ですがね」

こうなる。
敵であるサクヤが無償のボランティアをする訳がない。

  「せめて選択させてあげましょう。
   石版を渡して帰るか、ここで死ぬか」

ククク、と笑い声をあげるサクヤ。

  「ふざけるな! お前の片棒を担ぐなんて私は嫌だ……!」
  「わんわん!!」
530 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:49:13 ID:m7yCgfe5O
晴れた空シエンタ♪
531 名前: 作り合わされし世界 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:49:52 ID:rXAxpJvy0
ヨウイチとしなのがうなだれている間、タロウは警戒し続けていた。
石版をはめるにしたがってサクヤの邪悪な心が増大していくのをタロウは感じていたのだ。
怖いものから人を守るのが犬の役目。

  (たっぷりと甘えさせてくれたしなのとヨウイチは僕が守らなきゃいけないんだ!)

だからタロウは一生懸命にサクヤを睨みつける。
その小さな体を精一杯に強張らせて、二人の盾になるようにしてサクヤを威嚇した。
しかしサクヤはタロウのそんな様子にも構わずに言う。
端から気に留める対象に数えていないのだ。

  「ほぅ、戦うのですか?
   たった二人の人間と畜生一匹で私を倒せるなどと本気で思ってるのですか?」
  「やるしかないだろう? 仕方なくても、な」
  「うぅ〜!!」
  「いや、アイツの言う通りだ。 俺達が敵うとは思えない……」

ヨウイチはタロウとしなのの意気込みを打ち消すかのように言う。

  「ヨウイチ? じゃあどうするんだ!」
  「……ここはタロウにかける」
  「タロウに……?」
  「要は石版が揃わなければいいんだろ。
   俺達で時間稼ぎをしてる間にタロウには石版を持ってここから逃げてもらう」
  「しかし……」
  「タロウ、やってくれるよな?」

しかしタロウはウゥーと拒否の意を示す。
逃げてしまったら二人を守る事が出来ないからだ。
ましてやこの場に置いて行く事なんて出来るはずがない。
532 名前: 作り合わされし世界 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:52:56 ID:rXAxpJvy0
  「そう言うなよタロウ。
   ついでに助けを呼びに行ってくれればいいんだ。
   そしたら俺達はお前に守ってもらえた事になる。
   それにこうして再会出来たのも何かの縁だろうしな。
   絶対に皆で帰れるさ」

タロウの頭をクシュッと撫でてやると気持ち良さそうに目をつぶった。
それでタロウは行く決心をする事が出来た。

  「わん!」
  「よしタロウ、これを」

しなのは荷物の中から素早さの種を取り出し、タロウに与えた。

  「行け! 走れタロウ!!」

ヨウイチがサクヤに向かってダッシュすると同時にタロウは神殿の入り口へと駆けて行く。
サクヤはすかさず爆弾岩の欠片を投げ付け、神殿に入り口を壊して逃げ道を封鎖しようとした。
しかしヨウイチの振りかざした破邪の剣に一瞬気を取られて投げ遅れる。
タロウの姿は堅い造りの壁が瓦礫となって崩れ落ちる中に消えて行った。

  「タロウ……無事で……」
  「ぐわっ!! いてて……しなのも手を貸してくれよ……」

しなのはタロウの安否を心配し、ヨウイチのサポートを怠ってしまったのだ。
サクヤに吹き飛ばされたヨウイチの鎧の肩の部分は防具として意味を成さなくなった。

  「おっと、すまない。しかしヨウイチはタロウの言葉が分かったのか?」
  「いや……タロウにも言葉が通じれば良かったんだけどな」

ドラオと同じように、という思いは口には出せなかった。
533 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:54:17 ID:m7yCgfe5O
試演
534 名前: 作り合わされし世界 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:55:57 ID:rXAxpJvy0
  「よしヨウイチ、お詫びにこれをやろう」
  「これをやろうって、薬草じゃないか」

薬草で詫びるというのがヨウイチにはよく分からなかったが、
サクヤに吹っ飛ばされて痛かったのでとりあえず食べておく。
するとボリボリと何か堅い感触が口に広がった。
これは何だ、とヨウイチはしなのに目で問いかける。

  「しなのちゃん特製薬草だ。
   命の木の実とスタミナの種と不思議な木の実と――」
  「分かった分かった……あぁまずい……
   しかしなぁ、
   本当にサクヤが俺達とは違う世界に帰りたいだけだったらどうするつもりだったんだ?」
  「……鎌をかけるっていうのは得てしてそんなもんだ」

それにタロウが無意味に吠えるとは思えない、としなのは考える。
動物の方が危機を察知する能力に優れている場合もあるのだから。
しかしヨウイチにはそんなしなのの言い草に頷く事しかできない。
誰かを試したりする事には慣れていないのだ。

  「ふぅん……なぁ、聞いていいかな」
  「なんだ?」
  「元の世界へ戻ったら最初に何をしたい?」
  「ヨウイチ。 今はそんな事を――」
  「俺はもう決めてあるんだ」

ヨウイチはしっかりと前を見据えながら、はっきりと言った。
その目には明確な意思が宿っているように見えた。

  「そうか……参考までに聞かせてもらえないか」
  「暖かい布団に包まりたい」
  「……すぐ叶うと思うぞ」
535 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:57:32 ID:HgWY4szx0
しまった来てたか支援
536 名前: 作り合わされし世界 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 21:58:05 ID:rXAxpJvy0
そう言った後にクスリと笑って、それは良い案だとしなのも思い直す。
ヨウイチとしなのはサクヤを神殿から出させないようにするため、武器を構える。
破邪の剣と炎のブーメラン。
使いこなすにはまだまだ慣れない二つの新しい武器だ。

  「そうですか、それがあなた達の選択なら仕方ありません」

サクヤは爆弾岩の欠片を手で軽くもてあそび、懐にしまい直す。
この二人が死を望むなら殺してやろうと決めた。
武器を一つ取り出し、その重さを確かめるようにした。
身長の1.5倍はありそうな槍だ。

  「さぁ、どこからでもどうぞ?」

友人を招くかのような仕草で両手を広げる。
しかししなのたちには迂闊に切り込む事が出来ない。

  「あの武器、分かるか?」
  「いや……」

見た目だけで判断出来ないという言葉が身に染みて分かるこの世界。
その武器が本来の槍の役割しか果たせないのかどうかが分からない。
何らかの呪文効果を発揮する力を持っているかもしれない。

  「なぁサクヤ、君はどうして魔王を復活させようと思ったんだ?」
  「おいおい、それこそ今はそんな事を聞いてる場合じゃ――」

ヨウイチの制止に、時間稼ぎだとしなのはつぶやく。

  「魔王を復活させる理由、ですか。変な事を知りたがるんですね」
537 名前: 作り合わされし世界 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 22:00:07 ID:rXAxpJvy0
サクヤはその質問の答えを面白そうに考えながら、槍を器用に回し始めた。
右手を中心にしてバトンの様にクルクルと綺麗な円を描く。
変な質問に答える余裕がサクヤにはあるのだ。

  「逆に魔王がいない世界こそが異常だとは思いませんか?
   そう考えれば私の行動に疑問を挟む余地などないはずです」
  「そんな訳ないだろう。この世界は明らかにおかしい、皆そう言っている!」
  「それに俺達の世界には初めから魔王なんていないしな」
  「しかし先ほどあなた達は私の言う事に参加してくれたではありませんか」
  「……え?」

何の事を言っているのか思い当たらないしなの達は思わず疑問の声をあげる。

  「"裂けいく異世界"
   この暗示的な言葉に真相は隠されていたのです。
   この文字を石版のように一度ばらばらにして集めなおす……
   するとどうですか。『再生計画』という言葉が出てくるでしょう?
   元通りにするとはそういう事ですよ」
  「それは、どういう――」

サクヤの言っている事を理解する前に、クラッと頭が揺らぐ。
慌てて頭を抑えれば、サクヤが何人もそこに立っているのが見えた。

  「マヌーサ。幻惑の中に死に行くのもロマンチックかもしれませんね」

揺らめく視界の中で、何人ものサクヤが一斉に襲い掛かってくる。
サクヤの手の中で回されていた砂塵の槍が見せた幻だ。

  「く……くそーっ!!」

ヨウイチは破邪の剣を使い、ギラの炎を辺りに撒き散らす。
538 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 22:01:32 ID:m7yCgfe5O
支援
539 名前: 作り合わされし世界 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 22:02:12 ID:rXAxpJvy0
しなのも炎のブーメランを投げ、火の弧を自身の周囲に描き、身を守った。
それでマヌーサの効果を打ち消す事に成功する。

  「クク……」

しかしそれでサクヤの攻撃が止む訳ではない。
サクヤは既に砂塵の槍から氷の刃へと武器を持ち替えており、
その炎を全て氷付けにしてしまった。
ヨウイチ達の持つ武器が炎系の効果を持つ事を見越していたのだ。
触れれば肌を切り裂いてしまうであろう氷塊をすり抜けてサクヤがヨウイチに迫る。
その動作は素早いと言うよりは、的確な攻撃だった。

金属のぶつかり合いと共に熱気と冷気が互いを侵食しようと激しく絡まりあった。
飛び散る火と氷の粉がサクヤとヨウイチの顔に傷を作った。
鍔迫り合いをしているところへ、しなのが背後から足払いをかけてサクヤの体勢を崩す。
足元をすくわれたサクヤは棒のように後ろへと倒れていく。
その隙を逃すまいとヨウイチは破邪の炎で氷の刃の刀身を溶かし尽くしてしまった。
そのままの勢いで剣をサクヤの顔に振り下ろす。

  「さて」

サクヤはそれでも慌てずにもう一本の剣を目の前に広がる炎にかざした。
さざなみの剣。
その剣身から光が漏れてギラを跳ね返す。
反転、直撃。
ヨウイチの皮の鎧はよく燃えた。

  「ぐわああああ!!」
  「ヨウイチ!!」

駆け寄ろうとしたしなのの背中にサクヤは切り付け、大きな傷を付けた。
血が倒れたしなのの皮膚を濡らしていく。
540 名前: 作り合わされし世界 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 22:04:17 ID:rXAxpJvy0
どんな状況でも慌てずに冷静に対処していく強さがサクヤにはあった。
自分は決して戦闘が得意ではないが、
それにも劣るこの人間達の弱さにサクヤの頭脳は疑問を浮かべざるをえない。

  「そんな力量でよくこの神殿までたどり着きましたね。
   やはり運命というものがそうさせたのでしょうか」

サクヤの言う運命とは、魔王が復活するという事象に他ならない。
その事象を実現しなくてはならないという必然性があったからこそ、
自分の計画は上手くいったのだし、この人間達はここまで来れたのだと思う。

  「……」

それは違うとしなのは思う。
確かに一人ひとりの力は弱いかもしれない。
だけどサクヤの言っている事は絶対に違うんだ、と拳を握りしめた。
それを証明する術が欲しいと思った。

  「まぁ今となっては意味のない事です。 ではさようなら」

サクヤは床に突き刺しておいた砂塵の槍を引き抜き、懐からは毒牙のナイフを取り出し、
両手に構えたその武器をヨウイチとしなのの頭部目掛けて投擲した。
ヨウイチとしなのは、まだ動けない――!!



――続く――
541 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 22:04:19 ID:tIR5JtxU0
しーえん支援
542 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 22:05:32 ID:tIR5JtxU0
ってひとまず終わりなのかOTL
543 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 22:08:02 ID:m7yCgfe5O
俺達の闘いはこれからだ



544 名前: ◆ODmtHj3GLQ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 22:09:07 ID:OGexf1c80
支援してくださった方々ありがとうございました!!

最終章少しばかり長くなってしまったので二日に分けての投下となっています。
また明日の21時から投下再開という形ですので、その時はまた協力をお願いします。

ではまた明日お会いしましょう!
545 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/15(土) 22:35:40 ID:Cd05YfklO
乙!もう終わってしまうんだなぁ…。色んな作者による合作とても楽しめました。また明日もお願いします。
546 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ 投稿日: 2007/12/16(日) 14:22:49 ID:8/icVwQ+0
とりあえずたんすあさる!
あれ?KY?
547 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:08:04 ID:tiDo3Rhn0
石は古代から不思議な力を持っていると言われている。
いや、人が信仰対象の象徴としての偶像を石で形作る事でその力を具現化しようと
してきた事を考えれば、不思議な力が石を通じて表出されていると言った方がいいだろう。

ギザの大ピラミッド・ロードス島の巨像・エフェソスのアルテミス神殿などが
石基盤の構築物として世界の七不思議として有名だが、
日本でも神社に石が祀られて崇められている。
生活の身近なところでは宝石や墓石を選んだりするし、
海岸や川で綺麗な石を探すという行為は誰もがやった事があるだろう。
人は石を求める生き物なのかもしれない。

石の加工品は多数あれど、その中で石板という物がある。
石板とは黒板のように書くか、もしくは削って刻む仕方で文字を残すものだが、
加工・使用感・保存の全ての点において紙媒体に劣る故に、
現在では目にする事も極めてまれだと言わなくてはならない。

しかしこの世界において石板はとても重要な意味を持つ。
特に彼らにとって石版は自分達の世界へ帰る為の希望の道具だった。
もし石版を通して不思議な力が現れるなら、彼らを帰す為の希望となっても良かったのだ。
が、既にその光は失われてしまった。

愛と友情と絆と嘘と、たった一つの石版を巡る物語。
その結末は運命に委ねられているのか。
それとも運命を導く力が彼らに味方をするのか。
石版はただ静かにその時を待っていた。
548 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:10:10 ID:tiDo3Rhn0
作り合わされし世界〜最終章・後編〜

魔王を復活させようとする狂気のサクヤが放った砂塵の槍と毒牙のナイフは、
二人の命を確実に奪うよう寸分の狂いもなく飛んでいく凶器。
しかしそれがサクヤを狂喜させる事はなかった。
一陣の風が吹き込み、その二つの武器を破壊してしまったからだ。

  「な――」

ヨウイチ達の命を救ったその風は止むことなくサクヤにも襲い掛かり、
剣を構える腕に鋭い三本の傷を負わせた。

  「う〜わんわん!!」
  「タ、タロウ……?」

外へ逃がしたはずのタロウがそこにいた。
鉄の爪や前掛けを装備しているタロウは先ほどよりもいくらか凛々しく見えた。
しかし、助けを呼んでくるにしてもこの帰還は早すぎる。

  「タロウ……どうして戻って来たんだ……」

石版を守るという命を受け、タロウは走った。
神殿を抜け洞窟を走った。
石版をあいつに渡してはならない。
タロウは自分の使命を本能的に理解していた。
あの時どうして自分が吠えたのかタロウ自身にもわからなかった。
ただ、サクヤから嫌な匂いがした。
本当にそれだけだったのかもしれない。
549 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:12:14 ID:tiDo3Rhn0
タロウは思った。
この世界に来たばかりの僕はただの迷い犬だった。
でも、いろんな犬や人の協力を得て帰る方法を見つけようとした。
だからきっと今度は僕がみんなを助ける番なんだ。

今の僕にできることは走ることだけ。
でも、僕ならどんな人間より早く走ることができる。
石版を渡さないように逃げること。
それは僕にしかできないことだ。

  (光が見えてきたよ。もうすぐ洞窟の出口だ!)

タロウは大きく遠吠えをして、再び神殿に戻る事に決めた。

  「その犬がどうして戻ってきたか。それは逃げることができなかったからですよ」

サクヤがタロウの行動などお見通しといった感じでそんなことを言い出す。

  「こんなこともあろうかと洞窟の入り口に配下のゴーレムをおいておきました。
   とても犬一匹では太刀打ちできる相手ではありません」

しなのたちに絶望が広がる。
サクヤの計画は完璧だった。

  「この状況で石版を守る方法。
   それは二人と一匹で協力して私を倒すことでしょうね。
   その犬はそう判断したのでしょうか。
   愚かですね。 素直に石版を渡せばいいものを」

タロウは低い声を出してうなる。
サクヤが暗に無理だと言っている事をまだ諦めてないのだ。
550 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:14:16 ID:tiDo3Rhn0
  「そうそう、ゴーレムといえば前にも役に立ってくれましたよ。
   私の協力者さん達に私の正体を怪しまれたと思ってね。
   ゴーレムに私を襲わせたんです。
   そのとき弱みを見せることで私が弱い人間であると印象付けたんですよ。
   ちょっとした道化師でしたね。 笑いをこらえるのに苦労しました。
   一度私を疑ったことへの後ろめたさか、彼らはそれまで以上に協力してくれました」

サクヤの非情がヨウイチ達の心を奮わせる。
誰かを騙す事に苦労した、などという話を聞いて穏やかでいられるはずがない。
それにタロウが戻ってきてくれたのだ。
そして一緒に戦おうとしてくれている。
タロウも仲間なんだと再確認した今、サクヤに負ける訳にはいかない。

  「ベホマラー!」

回復の光が二人を包み、火傷と裂傷を癒していく。
しかししなののベホマラーはあまり効果が高くないのだが、
それでも何とか痛みによる気持ち悪さを我慢しながら立ち上がった。

  「ふぅん、まだやるというのですか。
   仲間と一緒なら何でも出来るというところですか。
   仲間を思う気持ちで何ができるのです?
   どこまでも愚か者は愚か者なんですね」
  「本当に愚かなのはどっちか教えてやるよ!!」

ダンに鍛えられた心がヨウイチにそんな事を言わせた。

  「とは言ったものの、どうしたもんかなぁ……」
  「……なぁヨウイチ、サクヤは呪文が使えないんじゃないか?」

傷口に布をあてがいながら止血をするサクヤを見て、しなのがそんな事を言う。
そう言えばサクヤは戦闘中も一切呪文を使っていない。
551 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:16:41 ID:tiDo3Rhn0
神殿の入り口を破壊した時も、今だって腕の傷を呪文で治そうともしない。

  「なるほど。 そう言えば特殊武器ばかり使ってるな。
   とりあえずあの武器さえどうにかしてしまえばいいのか」
  「まぁ痛手を与え続けるのも手だとは思う。
   が、呪文が跳ね返されてしまうのはいささかやっかいだからな」
  「具体的にはどうするんだ?」
  「ん……」

しなのは改めて神殿内を見渡す。
辺りは大分暗くなってきており、もう少しで日が落ちるだろう。
その時灯りのないこの神殿内は真っ暗になるはずだ。

  「……タロウは夜目が利くはずだ」
  「嫁?」
  「わんわん!」

タロウはその言葉でリリアンの事を思い出した。
そういえば「あの子が僕のお嫁さんになったんだよ」と二人に報告するのを忘れていた!!

  「違う違う。夜の目だよ」
  「あぁ……」
  「くぅん……」
  「タロウ、光が消えた瞬間を狙ってサクヤの動きを封じて欲しい」
  「わんっ!!」
  「俺はどうする?」
  「サクヤの気を逸らしてくれればいい。後は私が何とかしよう」
  「何とか?」

それには答えずしなのは行くぞ、と一声かけた。
552 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:18:43 ID:tiDo3Rhn0
暗くなるまでもう時間がない。
気付かれてはどうにもならない。
上手くいくかも分からない。
けれどこれが決まれば、きっと自分達の勝ちだと信じた。
そう信じなければ失敗してしまいそうで、無理矢理信じるしかなかったのかもしれない。
それでも二人と一匹は互いを見やって頷き合った。

太陽の光がまた一筋、この地から消えた瞬間にどちらからとも無く動き出す。
ヨウイチ達はサクヤを取り囲むようにして攻撃を開始した。
これで必ず誰かがサクヤの死角にいる事が出来る。
しかし決定的なチャンスは得られなかった。
死角から狙ってくる事に早々に気付いたサクヤは見事に対処してのけた。
サクヤとのレベルが違い過ぎたのだ。
もうほんの少しでもタロウ達のレベルが高ければサクヤに勝る事は出来ただろう。
現状ではさざなみの剣一本でしなの達とやり合うのに十分なのだ。
しかしその剣も残りものだった。
氷の刃と砂塵の槍と毒牙のナイフは既に破壊している。
もうこれ以上武器を持っているとは考えにくい。
故にこの策を成功させられれば優位に立てる。

  (沈む……!!)

しなのが頷いたのを見て、ヨウイチはわざと隙を見せる。
サクヤは正確にそこを狙って剣を突き出してきた。
その切っ先がヨウイチの胸が刺されるかという時、
闇に光が吸い込まれるようにして全員の視界を黒に染め上げる。
何事なのかと一瞬躊躇したサクヤに飛びつくタロウ。
そしてタロウはその体勢のまま装備している風の帽子を使った。
ルーラの効果を持つ風の帽子によってタロウとサクヤの体は飛び上がる。

  「がっ……」
553 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:18:51 ID:vNN5WzhwO
wktk
554 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:20:44 ID:tiDo3Rhn0
タロウによって下から持ち上げられる形となったサクヤは、
天井に穴が開く程の勢いで頭をぶつけた。
当然タロウにかかる負担もゼロではないが、サクヤの方が影響は大きい。
天井から落ちて背中を強かに打ち、衝撃でサクヤの脳はさらに揺れる。

  「よし!!」

しなのは、炎のブーメランを大きな弧を描かせるようにして投げ、灯りを作り出す。
それで暗闇の中からサクヤの居場所を特定し、懐から爆弾岩の欠片を取り出した。
そのアイテムをサクヤが持っているのをしっかりと覚えていたのだ。

  (これで!!)

しかしその時サクヤはしなのを突き飛ばそうともがいた。
しなのはあわよくばサクヤへの止めの一撃にしようと思っていたが、
何とか武器を持つサクヤの右手に爆弾岩の欠片を押し付ける。
互いの力が交差する中で、炎のブーメランが使用者であるしなのの手元に戻ってくる。
その炎が爆弾岩の欠片の着火剤となる。
ドンッ、と花火が爆発した時のような音がそこにあるものを吹き飛ばした。
さざなみの剣と、サクヤの右手と、しなのの体を。

  「やったか?!」

しなのが成功したであろう事を信じて今度はヨウイチが松明に火をつける。
松明を掲げて最初に視界に入ったのは、サクヤの不気味な笑顔だった。
ヨウイチは驚きのあまり体を動かす事が出来ない。

  「な――」
  「いい加減しつこいですね」

サクヤがマグマの杖を振りかざす。
まだ武器があったのか、という思いは焼かれる痛みの中に消えていった。
555 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:22:04 ID:vNN5WzhwO
支援
556 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:22:51 ID:tiDo3Rhn0
  「わんっ!!」

ガブリとタロウがサクヤの肩口に噛み付き、鉄の爪でひっかく。
が、サクヤは少しも痛がらずにタロウを体から引っぺがして地面へと強く叩きつけた。

  「キャンッ……!!」

痛みに吠えるタロウを面白くなさそうにサクヤは杖で殴り飛ばした。
鉄の胸当てにヒビが入り、使い物にならなくなった。
タロウの体は神殿の壁に当たって止まる。

  「……夜が来たんですね」

マグマの杖を支えにするようにしてサクヤは息を整えようとした。
先ほどの爆発で右手を失い、余波で体中に火傷を負っていた。
しかし痛みに焼かれる体から血が抜けていく感覚でさえ、サクヤには快感だった。

  「もう終わりしましょう」

そう、終わりなのだ。
もうタロウ達は戦えないだろう。
後は犬から欠片を奪い返して石版を完成させるだけなのだ。
それでこの計画は完遂する。
長く遠回りしてしまった気もするが、かけた時間が長い程感慨も一塩なのだ。
そんな感覚が痛みを興奮に変えていた。

  (その前に始末しておきますか)

石版が並みの衝撃では壊れない事を知っているサクヤは、
しなのが取った手段と同じようにマグマの杖を爆弾岩の欠片で破壊する。
杖に込められた呪文の力と爆弾岩の爆発が混ざり合い、相乗効果で威力を高める。
そしてそれはヨウイチ達を確実に死に至らしめる巨大な爆発力を生み出すのだ。
557 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:24:18 ID:vNN5WzhwO
shien
558 名前: 作り合わされし世界 ◆YB893TRAPM [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:24:55 ID:tiDo3Rhn0
いや、生み出すはずだった。
しかしそれが留めの一撃とはならない。
呪文による横槍が入った為に被害が及ばない所で効果が霧散してしまった。

  「……まだ何か奥の手があったのでしょうか」

煙が晴れ、サクヤの視界が確保されるとそこには八人の勇者がずらりと勢ぞろいしていた。

  「おーいしなの〜助けに来てやったぞ〜!」
  「ふぅ……どうやら間に合ったみたいですね」
  「酷い怪我だ……早く手当てを」
  「ゲレゲレ! やっぱりあの遠吠えはゲレゲレだったのか!!」
  「人も魔物も動物もみんな分かり合えるはずなのに、どうしてできないんだろう」
  「すべての元凶はこいつだったわけだ。こういう悪夢は消し去らなきゃな」
  「せっかく友達になれたと思ったのに、君には始めからその気はなかったんだね」
  「サクヤ、君が元凶だったとはね。すっかり騙されたよ」

口々にものを言うものだから、正確に全員が何を言っているのかは分からない。
しかしサクヤはこれで形勢が悪くなったのをひしひしと感じていた。

  「……どうして神殿での異変に気付いたのです?」
  「タロウが教えてくれたんだ」
  「この子はみんなとは別の小さな穴から洞窟に入ったんだ。そこから出て教えてくれた」
  「俺たちは正面から入ってくる必要があったからちょっと時間がかかっちまったけどな」
  「言葉は通じなくても思いは通じるものさ」

サクヤの頭がガクリとうなだれる。
完璧だと思われたサクヤの計画は実は既に崩れていたのだ。
ゴーレムによるタロウの足止めは成功していなかった。
そして勇者達がこの神殿に来る事までは予想出来なかった。
559 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:26:15 ID:vNN5WzhwO
ドキドキムネムネ
560 名前: 作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:28:00 ID:Ml8tKtBe0
  「な……何故……」
  「あなたたちは洞窟の外にいたのですか、かな?」
  「世界の異変を調べてたらみんなここにたどり着いたって訳さ」
  「僕はサクヤ君が無事に元の世界へ帰れるか心配で、
   やっぱり近くで見守ろうと思っただけなんだけどね」
  「まぁ他人を利用することしか考えていないお前には分からないことだろうな」
  「な……何故……何故邪魔をするんですか!! あなた達はいつも、いつも……!!」

ブルブルと体を震わせ嘆くサクヤ。
そんなサクヤにしなのが声をかけた。

  「サクヤ、君に足りなかったのは仲間だよ。
   心を通じ合わせられる仲間が、ね」

運命は決まっているものではない。
仲間がいたからこそ、ここまで成し遂げる事が出来たのだ。
それが結果として運命を位置づけたに過ぎない。
運命とは人が命をかけて運んでいくものなのだから。

  「そんな……そんな事で……」

サクヤはその一言で力が抜けてしまったかのように、地に膝をついた。

  「私は負けない……あともう一歩……たった一歩……!!」

そんな言葉を繰り返しながらサクヤは自分の敵達を睨みつけた。
その目に暗い光が再び宿る。
波に削られて今にも崩れてしまいそうな砂の城を建て直そうとするかのように、
サクヤは再生計画が破れるのを諦めきれずにもがこうとする。
561 名前: 作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:29:52 ID:Ml8tKtBe0
  「さて、そろそろ帰りたいと思うのは僕だけかな」
  「いーや、もうこんな世界はうんざりだね」
  「よし、決めるぞ!!」
  「君達のマジックパワーも借りる! 協力してくれ!」

エイトがヨウイチ達に声をかける。

  「今こそ心を一つに……」

その声を頼りにして心を束ねていく。
他人に心を許す感覚が力に変わっていくのが分かった。

  「「「「ミナデイィィィィィーン!!」」」」

呼び起こすは圧倒的な光の束。
その光が神殿の天井の穴からサクヤの頭上に落ちてくる。
ライトのように白く照らされたサクヤは何故か不気味に笑っていた。

  「ククク……」
  「……?」
  「あえて動揺してみせるのも時には有効な手段ですね」

絶望的な状況であるはずなのに、
そこに先ほどまでのうろたえた様子は一切見受けられなかった。
これが役者なら最高の演技だと言われる程に、嘘をやってのけたのだ。

  「私は呪文を使えないのではありません。切り札は最後までとっておく主義なのです」
  「しまった!!」

サクヤの意図を察した勇者達は素早く反応する。
562 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:30:48 ID:vNN5WzhwO
支援
563 名前: 作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:32:26 ID:Ml8tKtBe0
しかしサクヤは笑いながら天に手を掲げ、呪文反射の文句を唱えた。

  「マホカンt――」
  (キィキィーー!!)

――聞き覚えのある声がヨウイチの頭の中にだけ響く。
  その声に押された腹の底からの叫び――

  「ドラオォォォォーーーー!!」

ミナデインの発生させた落雷が叫びをかき消す。
ヨウイチには出会った時と同じ、青い体でふわふわ浮かぶドラオが見えていた。
時間が止まったかのように、その表情は詳しく感じ取れる。

  「ドラオ!」
  「キィ!」

心で交わしたたった一つずつの言葉は、多くの気持ちを含んでいた。
ドラオの笑顔がだんだんと薄れ消えてゆく。
と同時に、ヨウイチの心に置かれた大きな固まりも少し、小さくなっていた。

ミナデインのもたらした音響はバリバリと余韻を神殿に響かせている。
サクヤの呪文は発動する事はなかった。
怖がりなドラオが口を塞いでまた呪文を封じ込めてくれたのだ。

  「……クン……」

光が止み、稲妻に焼かれたサクヤの体は地に伏し塵と化した。
その魂は雷と共に天へと昇っていったのだろう。
564 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:35:20 ID:vNN5WzhwO
あんなに一緒だったのに
565 名前: 作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:35:28 ID:Ml8tKtBe0
  「ありがとうドラオ」
  「やったな!」
  「ん。アレンは?」
  「外に出ていった。恥ずかしいんだろう」
  「お手柄だったぞ〜タロウ!」
  「わんわんっ!」
  「おい、見てみろよ」
  「あ……」

指差す方を見上げると、
月夜の光が天井に開いた穴から差し込み台座を暗闇の中に浮かび上がらせる。
夕暮れに見た光景とはまた違った神秘的な雰囲気を作り出していた。
穴を見上げると戦闘の勝利を祝福しているかのような綺麗な満月が望める。
絶妙な光加減に見とれていると、その中から何かが舞い降りてきた。

  「……人?」
  「あ、あなたは……?」
  「ふぁぁ……よく寝たわい……わしは神様だよー」
  「は……?」

一同は思わず目を丸くしてしまう。
今この人は何と言ったのだろうか。

  「大きな音がしたから起きて来てみれば……
   ふぅむ、こりゃ他の世界の神に本格的に怒られるかもしれんなぁ。
   ま、そういうシナリオもありじゃと思うがの」

いきなり現れては何か意味深な事を言うこの方が神様だとは到底思えなかった。
566 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:36:50 ID:vNN5WzhwO
夕暮れはもう違う色
567 名前: 作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:38:47 ID:Ml8tKtBe0
  「わんわんっ!!」

しかしタロウがすぐに自称神様へと飛びつく。
それでこの自称神様が少なくとも悪い奴ではないと分かる。

  「神様……あなたはこの状況を分かっておいでで?」

神様の名にたじろぐ事のないセブンが問う。
タロウの頭をナデナデしながら神様はつまらなさそうに答えた。

  「……
   今この作り合わされし世界は元に戻ろうという動きをし始めておる。
   その動きは結果として互いを排除する行為に等しくなっとるがな。
   その力が臨界点を超えると、全ての世界が崩壊してしまうかもしれんのじゃ!
   ふん、これで良いか? ワシを誰じゃと思っとる」
  「くぅん……」
  「おーよしよし。
   あのサクヤとかいう奴は石版を壊したからこうなったと思ってるみたいじゃが、
   異変は魔王を封印した時から始まとるんじゃ」
  「どういう事ですか?」

確かにサクヤは多くの嘘をついていたが、この世界に関する事だけは間違っていなかった。
その事は今の自称神様の話で分かる。

  「世界を作る時のルールがある。そのルールをワシは破ってしまった。
   どうにも我慢できなくての……」
  「世界の、ルール?」
  「魔王は勇者によって倒されなければならない。 それが絶対条件」
  「じゃあ何で破ったんだよ」
  「名前じゃよ、名前」
  「名前……?」
568 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:39:52 ID:7H9yAvKC0
sien
569 名前: 作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:41:24 ID:Ml8tKtBe0
  「ポックンブリードという名前が気に入らなかったんじゃ。
   魔王なのに全然強そうじゃないじゃん?
   それで新しい魔王を生み出そうと思ったんじゃが、勇者が現れるのを待ちきれんかった。
   つまり悪いのはぜーんぶワシって事!」

ハハハと陽気に笑う神様。
対して一同は呆れるばかりだった。

  「ならどうすればいいのです?
   もしあなたが本当に神様なら、全てをきちんと元通りに出来るのでは?」
  「……疑いに勝る偽り事はない。故に信じる者は救われると言うじゃろ」
  「……?」
  「石版を」

急に真剣な顔になった神様が腕を伸ばし、その手に乗せるように促す。
石版を調べるようにしばらく眺めた後、その唇が静かに言葉を紡ぐ。

  「引き裂かれし大地――
   世界の裏側へと落ちた星々――
   闇の中へと消える心の光――
   全ては在るべき姿へと――
   全ては輝ける力へと――
   全ては帰る場所へと――」

残っていた割れ目が光り、石版は完全に元の姿を取り戻した。

  「さぁこの石版をその台座にはめるんじゃ。
   それで間違いなくお前達は元の世界へと帰れる」

再度、台座へと石版をはめこむ。
570 名前: 作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:44:29 ID:Ml8tKtBe0
しなのはタロウを片手に抱え上げ、ヨウイチの腕を取った。
そして互いを見やって、微笑み合う。
光がみんなを包み込んでいく。

  「これで世は全て事もなし、じゃ。
   重なっていた幾つもの世界――
   複雑に作り合わされし世界――」

その言葉にようやく安堵の表情を浮かべる勇者達。
神様はその表情を順に見回して優しく微笑んだ。

  「――そして石版に封印されし魔王も」
  「え?! 魔王も?!」

みんなの体が少しずつ世界から消えていく。

  「世界に秩序を取り戻す為にはそれしか方法がない。
   そしてお前達を安全に帰す為にも、な」

幾つもの不安そうな顔を前に神様は笑った。

  「じゃが心配するでない。
   ワシには見える。
   再び世界を覆いつくすであろう闇に勝る大きな大きな光が。
   そしてその様が語り尽くされぬ物語となって語り続けられる事が。
   お前達はその物語の一部となった。
   だから、礼を言うぞ」

神様の言葉を全て聞き終わる前に彼らはそれぞれの場所へと帰りついた。

そしてこの世界に魔王が復活した。
571 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:45:18 ID:vNN5WzhwO
支援
572 名前: 作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:45:56 ID:Ml8tKtBe0
【合作イメージ画像作成】
【フラッシュ作成】
【ヨウイチ編】
【最終章】

               ――タカハシ◆2yD2HI9qc.

【タロウ編】
【サクヤ編】
【最終章】
                    ――◆8fpmfOs/7w
               (=◆YB893TRAPM 二役)

【企画立案】
【しなの編】
【最終章】

               ――暇潰し◆ODmtHj3GLQ

【スペシャルサンクス】

                    ――◆IFDQ/RcGKI
                    ――◆u9VgpDS6fg



           FF・ドラクエ板
 『もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら』
         10スレ記念合同作品

         〜作り合わされし世界〜
             〜END〜
573 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:47:22 ID:vNN5WzhwO
感動のエンディングだ
574 名前: 作り合わされし世界 ◆ODmtHj3GLQ [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 21:53:01 ID:Ml8tKtBe0
終わったー!!!!

さて、作り合わされし世界、いかがでしたでしょうかか。
合作自体がはじめての試みという事もあって色々と至らないところがあったと思いますが、
少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです。

当初考えていたよりも遥かに長くかかった合作作成もようやく終わりを見る事が出来ました。
実はエピローグがまだ残っているのですが、
それはEDフラッシュの公開と同時に発表という形を取りたいと思いますので、
どうか楽しみにしていて下さい。

実は一つだけ、本当に残念で、失敗したなぁと思っている事があるんです。
それがもしや合作としての一体感を損なってしまったのではないかとさえ思います。
つまり僕のキャラだけカタカナではないという事。
本当に残念でなりません。

そういった反省点を次の課題として、僕はまた真理奈編の執筆に戻りたいと思います。
また合作等の企画があれば参加してみたいと思います。
それまでにまたレベルアップしたいです。

さぁ個人的な事ばかりを書いてしまいましたが、
合作を作ろうなどと提案した張本人がまだまだ技術的に未熟であるにも関わらず、
作り終える事が出来たのは参加者の皆さんのおかげであると、感謝感謝であります。
僕のワガママに付き合ってくれたタカハシ◆2yD2HI9qc.さん・◆8fpmfOs/7wさん、
そして話し合いに参加していただいた◆IFDQ/RcGKIさん、◆u9VgpDS6fgさん、
本当にありがとうございました。

最後に合作投下にご協力いただいた他の書き手さん達、
投下の際に支援をしていただいた方々、
そして何より読んで下さった皆さんに御礼を言って去りたいと思います。
ありがとうございました!!
575 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 22:05:55 ID:5esvMC610
おお、1〜8の勇者勢ぞろい。
8人分+ヨウイチ、しなのさん(もしかしたらタロウも?)のミナデイン、萌えた。

ポックンブリード噴いた( http://www5.atwiki.jp/dq_dictionary_2han/pages/3483.html

投下乙でございます&エピローグたのしみです。
576 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/16(日) 23:54:43 ID:QSrX1TTQ0
合作終了 超々々々々乙っした!!!111
けっこう長くかかったよなあ。楽しませてもらったよ。
しっかしポックンwww

エピローグwktkして待ってます!
577 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/17(月) 15:17:40 ID:y0nbb6wZO
合作乙
良い感じにコラボレーションできていたと思います
578 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/20(木) 00:53:51 ID:x5SbEfecO
合作乙(゚д゚)
579 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ 投稿日: 2007/12/22(土) 00:15:20 ID:8ag1nOKVO
上げてみる。
職人さん何処へ行っちゃったの(´;ω;`)合作で疲れちゃいましたか。戻ってきてまだ容量あるよ
580 名前: ◆qLjap6DEzk [sage] 投稿日: 2007/12/22(土) 00:50:32 ID:ojXLm7mQ0
彼女なんて希少生物に出会ったことのない俺は
今日も健やかにエロゲーで一日二回オナニーの日課を順調にこなしていた。

繰り返されるニートの毎日。
漠然とした不安を抱えながらも、某有名なメーカーを自主退社してから
かれこれ五年は経つ。31歳童貞ニート。

朝方になってから、やっとPCの電源を落とす。
最近夜に寝られなくなったなぁと思いつつ消灯。
・・・したはずなのに、モニター画面は明るいままだ。

「???」
電源不良かなぁ、と思い、モニターの電源ボタンを押してみる。
すると「パヂ!!」という電撃音と共に俺の思考回路はショート寸前。
「あばばばばっばばばっばばばばば」
友達をまた一人無くしそうな奇声を発しながら、俺の視界は暗転した。

なにか身体が宙に浮いている。
手足の感覚がまるでなく、堂と頭だけを頼りにぷかぷか浮いてる感じ。
宇宙(そら)ってこんな感じなのかなぁと思いつつ、さきほどの出来事を思い出す。

あれ?これってやべーんじゃね?臨死体験?

そう思うと、おぼろげながらも手足の感触も求めてもがく。
そうやって必死になっていると段々手足の感覚が蘇ってくる。
まるで身体から血管を伸ばし、その伸びた先から順に血肉が現れてるかのような錯覚を覚える。
徐々に、腕や太腿が形成されていくような気がする。

うおおおおお死にたくねぇぇぇぇぇっぇぇ!!!

気張る、とにかく気張る。これが夢だったら絶対寝ながらウンコ漏らしてる。
581 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/22(土) 00:52:22 ID:0c3etcWg0
年末でリアルワーキングがビジーなのですゴメンヨ.....
582 名前: タカハシ ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/12/22(土) 00:55:06 ID:8/Y6oWwz0
みなさん、お疲れ様です。

合作、無事に終わらせることが出来て、協力してくださった住人の方々や一緒に作った方々には感謝です。
個人的に良い勉強になりました。
途中、現実逃避を兼ねて書いた「癒しの魔法」もヨウイチ編のおかげで出来た感じです。
「癒しの魔法」は、内容はともかく少し早いスレへのクリスマスプレゼントですw
反省点としては、後半時間を取れなくなり最終章に関しては本当に少ししか協力できなかったこと。
それから書き手同士の意思の疎通がうまくいかなかった事もありました。
次回、どなたかがやられるとするなら、少しでもIRCなり会話しておいたほうがいいかなと感じました。

合作本編は終わりましたが、エピローグフラッシュを制作するので、完成したらまた告知させていただきます。
たぶん、来年のいつごろか… もうちょっと先になると思います。
まとめ作業は、出来れば年内に11スレと合作をまとめる予定でいます。

>>579
合作で少しだけ、燃え尽きた感はありますw
が、今度はタカハシ編の旅を続けていきます。
583 名前: ◆qLjap6DEzk [sage] 投稿日: 2007/12/22(土) 01:10:07 ID:ojXLm7mQ0
やっとの思いで、身体の感覚が大体蘇ってきた。なんとなく、指先をピクピク動かすこともできる。
おし、後は起きるだけだな、起きろ俺!起きろ!!
そう願ったやいなや、突然視界が回復する。

「フー、蘇生成功?くわばらくわばら」

心地の良い朝日を浴びながら、臨死体験だか金縛りだかから、抜け出せた俺。
貴重な体験したなぁと思いつつ、今ある確実な現実感に感謝。
なんてスバラシイ朝日!空気!緑!生きてるってサイコウ!!

「ん?緑?」

辺りをよく見回してみる。
そこには見慣れたエロゲーのポスターはない。フィギュア(魔改造)もない。
積んでるエロゲーもない。チン○にやさしい、愛用のカシミヤのボックスティッシュもない。
カシミヤはチン○にへばりつくのが難点なのだけれど・・・

いやいやいや、それはどうでもいいが、緑っぽかったのは木々だと認識。周りは野原。壁なんてどこにもない。

「へ?外?なんで?」
「ええええええ!俺生き返ってなかったんか!ここ天国か?」

夢にしては存在感のありまくる景色に戸惑いを隠せない。
しかもなんてキレイな景色。とうとう俺は天に召されたのか。
ヤダヤダヤダ。せめて童貞卒業してから死にてーよぉぉぉぉぉ!
懐かしいAAを回想しながら、ジタバタする俺。すると異様な臭いに気が付く。

なんだ、これは・・・。もしかして・・・ここは見た目はキレイだけど、実は地獄の一丁目?!
うそぉ!俺地獄行きだったのかよ!確かに!納得!合点承知!!
でも、それにしてはお尻の辺りに違和感が・・・

あ、ウンコ漏らしてただけだった。
584 名前: ◆qLjap6DEzk [sage] 投稿日: 2007/12/22(土) 01:35:11 ID:ojXLm7mQ0
「ん?地獄にウンコ?いやまだ天国かもわからんか。天国にウンコ?」

血の池地獄なんて物もあるくらいだし、排泄物くらいできるのかなぁ。
そう思いつつ、このままでは如何ともしがたいので近くに洗面所と洗濯機がないか探す。

ない。つーか大自然の中だから、あるわけない。チクショウ。
近くに水の流れる音がしていたので近寄ってみると小川発見。
とりあえず、ここで洗うしかないのかなぁ・・・。

シャアアアァァァァァァッ

やっと乾いたパンツを履いていると、後ろから奇声が。
振り返ってみると、なんか口が鋏っぽくなっているバカデカイ蟲を発見。
うぇっ!!蟲がガキの頃から苦手は俺は驚きすくみあがってしまう。
眼が真っ青でキモイ・・・。向こうも警戒しているのか、それ以上は寄ってこない。
逃げたら追いかけてくるんだろうなぁ・・・
そう思いつつ、半ば諦めながら脱兎のごとく戦線離脱!
もれなくついてくる青眼鋏蟲!

「やっぱりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!ぃいいいやああぁぁぁぁっぁぁぁぁ!!!」

逃げる逃げる逃げる。どこまでも逃げる。
全力疾走してるはずなのに、中々体力は尽きない。
人間やればできるもんだ。

しかしそうこう言っている内に、崖に突き当たってしまった。後ろには今だにデカ蟲。
何気にヤバくね?スネークだったら崖から飛び降りても助かるんだろうか・・・
そう思いつつも、やっぱこれは夢なんじゃ。という淡い期待と逃避。
こんな時こそあれだ。お決まりの懐かしいアレを言うときだ!

「もうダメぷぉ!!」
ダメだ、力んでしまって叫んでしまった。悲壮感がない・・・。
585 名前: ◆qLjap6DEzk [sage] 投稿日: 2007/12/22(土) 01:49:32 ID:ojXLm7mQ0
あぁ、俺の人生やっぱりこれまでなのかな。
お母さんごめんなさい。お父さんごめんなさい。
姉ちゃん借りた金返さないで死んでごめんなさい。

一通り懺悔は済んだ。よし後は無謀だが特攻おぉぉぉぉぉ!!
倒せるかもしれんもんね!!こっち素手だけど!!
勝てたらラッキー!死んで元々!カナたん俺を守って!!

「きいえぇぇぇぇぇぇえぇ!!」

生まれて初めてこんなに叫ぶ。これが最後の言葉かと思うとカッコわるい。
くらえ!とか、いくぞ!最速風神拳!とかの方がかっこよかったかな。
後悔先にたたず。とはよく言ったもの。

眼前にデカ鋏蟲が迫る。いや、青眼デカ鋏蟲だったか?
そんなのどうでもいい!しかしキメェェェェェ!

飛び掛ろうとした時、横から物凄い速さで何かが蟲に突き刺さる!
よく見ると剣だ。剣が蟲の頭を貫通してる。
青かった眼が光を失い、横にドウっと倒れる。
うはぁぁぁぁ、なんじゃこりゃ。
展開についていけないでいる俺。

「大丈夫ですか〜!」

横から声がかかり、茂みから緑の何かが這い出てくる。
女の子だった。ちょっと露出気味ながらもボ−イッシュな服をまとった女の子。
珍しい。というか初めて見た。緑色の巻き毛(クセ毛?)をしている。
586 名前: ◆qLjap6DEzk [sage] 投稿日: 2007/12/22(土) 01:58:51 ID:ojXLm7mQ0
「ケガとかないですか?」

あっけにとられている俺に、緑の髪の女の子が続ける。

「なんか変な叫び声とかして騒がしかったので探ってみたら・・・」
「素手ではさみくわがたに突撃してる人がいるじゃないですか」
「どう見ても武術に長けてるようには見えなかったので、援護させていただきました。」

顔を見るとかなりカワエエ・・・。

「大丈夫?」

顔を覗き込まれる。
こんなカワイイ子にこんなに近くに寄られたのは何年ぶりだろうか。
不慣れなのも手伝って、真っ赤になってしまう。

「へ?いや!全然ダイジョーブ!」
「き、君が助けてくれたのか!あ、あ、ありがとう!!」

「いえ、いいんですよ・・・。あなたは助けられてよかった」
フッと緑髪の彼女が寂しそうな笑顔をする。

「え?」
「え?」
「いや、どうしたのかなって。」
「え、いや、なんでも、ないです、よ?」

どう見ても何でもなくはなさそうだ。
でもこれ以上聞くのは、彼女に悪い。
何か話題を変えようか・・・。
587 名前: ◆qLjap6DEzk [sage] 投稿日: 2007/12/22(土) 02:11:53 ID:ojXLm7mQ0
「君って天使?」
「え?」
「ここってあの世かなぁ?」

リアルで発したら、大昔のドラマでもやらないような口説き文句とも取れないことを言う俺。
しかし、今は状況確認が先決だ。

「あの、どういうことですか?」
「いや、俺って死んでるんじゃないかと思ってさ」
「・・・。」
「だって俺s」
「生きてるに決まってるじゃないですか!さっき私が助けたでしょう?!」
「いや、そういう意味じゃなk」
「もう!何言ってるんですかアナタは!せっかく・・・助けることができたのに・・・ひっく」

おおおおお、何だか泣きはじめてしまった!
ぐはぁ!なんじゃこれ!なんで泣くんじゃ!

「ごめんごめん!そういうんじゃないんだ!うん、助けてもらってありがとう!」
「グス・・・ひっく・・・」
「俺死んでない死んでない!死ぬなんてことも言わない!ごめん!ごめん!だから泣かないで!」
「・・・・・・はい・・・」

なんだ、この痛少女は。
カワイイから甘やかされてるのか。今時の小学生でもここまで酷くないぞ。小学生ハァハァ。
いや、小学生に萌えるのはどうでもいい。

「とりあえずさ、俺はケイイチって言うんだけど、ここはどこなの?」
聞き方を変えることにした。

「ここですか?私の村の近くです。地域でいうとブランカという国の近くですよ」
ブランカ?それなんてストU?
588 名前: ◆qLjap6DEzk [sage] 投稿日: 2007/12/22(土) 03:45:06 ID:ojXLm7mQ0
「ブ、ブランカ?なにそれ、国なの?」
「? はい。」
ブランカなんて国あったっけ・・・?

「んー、つーか日本って知らない?」
「ニホン?」
「もしくはジャパンとかジパングとか」

「ジャパン???聞いたことないです・・・」
「私も村から出たことないので、地理に疎いんですけど・・・旅人さんですか?」
「いや、旅とかじゃないんだけど・・・気付いたからここにいたってだけで」

なんだか怪しまれてしまったかな?
居心地が悪くなってくると、彼女がハっとしたように見上げてくる

「も・・・もしかして、魔物に攫われていたんですか?」
「魔物?」
「あなたももしかしたら、私と同じように村を襲われて・・・?」
「村を襲う?」
「あぁ!そこから逃げ出してきたんですね!」
「???」
「デスピサロとかいう魔族は知りませんか?!」
「デピスロト?」

なんだか変な話になってきた。
589 名前: ◆qLjap6DEzk [sage] 投稿日: 2007/12/22(土) 04:01:42 ID:ojXLm7mQ0
「あの・・・何がなんだか・・・というか魔物とか全然わからないんだけど」
さっきの蟲とかのことだろうか。

要領を得ない俺を見て彼女がまたハっとした顔をする。
しかし、この子カワイイな〜。頭がヤバそうなのが玉に傷だけど。

「あまりの恐怖に記憶喪失になってしまったんですね・・・」

マテ。

「大丈夫!私がついてます!とりあえず私と一緒にブランカのお城まで向かいましょう!」
「え?城?」
「そうです!お城に行けば何とかなるかもしれない・・・少なくともずっとここに居るわけにもいきません」
「私はソニアっていいます!アナタはケイイチさんって言うんでしたっけ?よろしくお願いします!」
「道中は私が命に代えても守って見せます!命に代えても・・・もう二度と・・・」

自分の知らない間に話がドンドン進む。喋る隙が全然ない。
元気で勢いのある娘だなぁ。てーかテンパってる気がするのは気のせいか?
でも、今は従うしかないのかなぁ・・・。少なくともあの世ではなさそうだし。
外国なのかな。
ハァ、なんだか疲れた。

「ブランカだっけ?そこって近いの?」
「ええ、ここからだと恐らく半日ほどで着きます」
「半日?!それ凄い遠いじゃん!車は?バイクは?・・・まさか徒歩?」
「クルマ?というのはよくわからないですけど、徒歩で半日くらいですよ」

マジか。
近くに、他に村はないのかとか、途中で休憩所とかないのか聞いてみるも
一切ないとのこと。夜になる前にブランカに着いた方が良いとのこと。
出発したときは、まだ昼にもなってないようだったが、俺の歩行ペースが遅いらしく
ブランカとやらに着いた時には、もう日がとっぷりと暮れていた。
590 名前: ◆qLjap6DEzk [sage] 投稿日: 2007/12/22(土) 04:26:05 ID:ojXLm7mQ0
話は戻り、ブランカへの道中、暇だったので
せっかくだから記憶喪失のフリをして、この国(世界?)の常識とやらについて聞いてみた。
どうやらマヂで魔物とかそういうのがいるらしい。
まぁ、考えたらあの青眼鋏蟲(なんかクワガタの仲間らしいが)も魔物とのこと。
凶暴な動物=魔物ってわけでもなく、人語を解する奴らもいるとのこと。

なんか面倒な世界だなぁ・・・。これってファンタジーじゃね?
リアルにファンタジーな所に来ると結構厄介なんだなと、認識。
普通にのんべんだらりと暮らせるところはないものか。
日本って良いところだったんだなぁと、しみじみ思う。

フと、日本に戻れるんだよな?と不安になった。残してきた物が大きすぎる。
11年待った、やりかけのゲームが先日出たばかりなのだ。
二番目に来週発売されるフィギュアが届くことが気になった。
両親や友達のことを思ったのは6番目だった。

道中、何度かカワイイ魔物に出くわした。
ソニアはえらい強かった。
剣を振り回して必死に自分に敵をひきつけ、俺を守ってくれる。
結構グロいシーンもあったが、虹黒・三次黒の住人でもあるので、むしろ大好物だった。
蟲は嫌だけど・・・

驚いたのがトイレで、設備とか何もないためにその辺ですることに。
当然ソニアも二度ほど用を足しに行っていた。
魔物が出たら困るので、つかず離れずの距離にいてくださいといわれたので
無類の尻フェチ、尻マイスターでもある俺は当然覗いた。ごちそうさまでした。
若い子の生尻をリアルで見れる日が来るとは・・・!感涙モノですな。

足が棒になるのと魔物に襲われるのを除けば、こんな旅なら何度でもしたいと思った。
591 名前: ◆qLjap6DEzk [sage] 投稿日: 2007/12/22(土) 04:27:20 ID:ojXLm7mQ0
スレ汚し失礼しました。

新たにこちらで書かせてもらおうと思いました。
拙い文ですが、これからどうぞお付き合いいただければと思います。
こういうの書くの初めてなんで、キリは悪いですが、今日はこれにて。
592 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/22(土) 08:28:21 ID:HGX/PaTk0
>579
ヒント1:職人の都合もあり毎日書けるものではない
ヒント2:書き上げたとしても誤字脱字チェックがある

>591
乙!
カオスな予感にwktkw
593 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/22(土) 09:25:45 ID:8ag1nOKVO
職人さんいたんだね(´;ω;`)
すぐじゃなくてもいい、待ってます。
594 名前: 約束 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/12/22(土) 11:58:55 ID:8/Y6oWwz0
待ち合わせをしていた。
先日、仕事の帰りに見つけた目立たないこの喫茶店で、コーヒーを飲みながら。

もう結構たつのに来る気配を感じない。
なんだか眠たくなってきた。
店に張り巡らされた地味な電飾が、ぱちぱち眠気を誘ってくる。
だいぶ待ってるんだ。
少し、居眠りするくらいは構わないよな… ……
595 名前: 約束 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/12/22(土) 11:59:43 ID:8/Y6oWwz0
「そろそろ起きて。 今日は約束してた日じゃない」

目を開くと場所が、喫茶店ではない部屋の中になっている。

「きたか……」

俺はこのドラクエ世界へ来た事があった。
そんなに離れていない過去に、だ。

「なんのこと?」
「…夢の、話だ」

宿屋を出て町を歩く。
町は以前と何も変わっていなかった。

「私との約束、覚えてる?」

前、この夢みたいな世界へ始めて訪れたとき彼女と出会った。
約束を交わし、約束の朝にはこの夢から覚めてしまったんだ。

「もちろん、覚えてるよ」
「よかった。 さっそく行こう」

見渡す限り緑に包まれる平地を並んで歩く。
やがて町と建物と人の波が押し寄せ、二人で混ざる。
596 名前: 約束 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/12/22(土) 12:01:31 ID:8/Y6oWwz0
「今日はやっぱり人が多いね。 またにする? どうしよう」
「…いや、このまま行こう。 次の約束は、しないほうがいい」
「どうして?」
「約束をしてしまうと… いいんだ、なんでもない」

人をなんとかかきわけ、その場所へようやく着いた。

「わぁ…!」

彼女が喜ぶ。
その姿を見る事ができて、もちろん俺はうれしい。

「今日は連れてきてくれてありがとう」
「いいんだ。 けど、もう約束は無いから、会えなくなるな…」

少し、寂しくなりうつむく。
597 名前: 約束 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/12/22(土) 12:03:37 ID:8/Y6oWwz0
「何を言ってるの? それより遅れてごめん!」

顔を上げると彼女が居る。
場所は、もとの喫茶店だ。

「電車が遅れちゃって。 携帯の電池もなくなっちゃったんだ。
 公衆電話から電話したのに出ないから…」

ポケットに収まるマナーモードの携帯にはたくさんの着信が入っている。

「…大丈夫だよ、俺も寝てたから。 じゃあ行こうか」

ゆっくりとした時間が流れる店を出た。
外は暗く、ツンとした寒さがコートを通して伝わってくる。

「なぁ。 前に約束してた場所に行ってみないか?」
「いいの? だって人が多いから…」
「構わないよ。 ここからならそう遠くないんだし」

人が行き交う大通りへ出て人の波と二人で混ざる。
姿は完全に波の一部となり、やがて消えていった。
598 名前: 約束 ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/12/22(土) 12:06:03 ID:8/Y6oWwz0
おしまい。

ドラクエと全く関係ない内容で申し訳ない。
書いた後に気付いたんです orz
599 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/22(土) 13:25:22 ID:Q8Tt2V++0
>>591
ケイイチのダメっぷりが他人の気がしない。次回にも期待っ!
> 日本に戻れるんだよな?と不安になった。残してきた物が大きすぎる。
黒歴史モナー。処分を友人に頼んでおかないから・・・。

> 11年待った、やりかけのゲームが先日出たばかりなのだ。
11年待ち、テラわろす。
女勇者(?)の生尻、和露た。

>>598
わわ、癒しの魔法の続ききたー。
現実でも彼女さん(?)できたんですね。よかった。
でも、僧侶ちゃん・・・・゚・(つД`)・゚・
600 名前: タカハシ ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/12/22(土) 14:34:57 ID:8/Y6oWwz0
>>599
感想ありがとうございます。
まぎらわしくてごめんなさい。 実は「癒しの魔法」の続きじゃないんです。
設定はおんなじのを使ってるんですが、テーマというかそういうのを共有した「短編」でした。
次からは名前欄に短編て入れておきます。
もちろん、タカハシやまとめ作業の合間に創る話なので、今後いつ書くのかはわかりません。
一ついえるのは、年内にまた書くかもしれないってことだけですw
601 名前: タカハシ ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/12/23(日) 11:01:05 ID:FexaC70o0
おはようございます。
朝から修正を。

>>597
「顔を上げると彼女が居る。」
    ↓
「顔を上げると、夢のままの彼女が居る。」
へ修正します。
602 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/23(日) 23:39:20 ID:dDBxb/Ck0
いつからネタスレに、キモイ厨房の恋愛小話書くようになったんだ
603 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 01:33:17 ID:HL5wo8i70
完全に出遅れたが合作超乙!
面白かった〜!

エピローグ期待してます!(・∀・)ノ
604 名前: ネガティブ君とおバカ君:プロローグ1/2 [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 02:46:03 ID:zchPHpDM0
―――うおー、頭が痛い。昨日は飲みすぎたか?

ってか、やべぇ。昨日、居酒屋出てからの記憶が全くねーんですけど。
こんなんでよく帰宅できたな、俺。犬並みの帰巣本能だ。

ああ、朝日が眩しい。溶けちまう。俺は夜が好きなんだ。どっかいってくれ、太陽。

* 「ううん…」

俺 「おわっ!?…って加藤じゃねえか。驚かすんじゃねぇよ」
俺の隣のベッドにいたのは、親友の正志だった。茶髪のベリーショート。見間違える筈もない。

正志「おはよー、竜司。ってかなんでお前、俺の部屋にいんの?」
と、とぼけた顔でとぼけた事をいいやがる。ちなみに、竜司ってのは俺の名前だ。

俺 「ふざけんな、ここは俺の…」
言いかけて、違和感を覚える。
あれ?ここ、俺の部屋じゃなくね?そもそも、俺の部屋にはベッド1つしかないもんな。
じゃあやっぱ、ここは正志の部屋なのか?

俺 「わり、たぶん俺、間違えて…」
正志「あれー、ここ俺の部屋じゃないやー。ここどこー?」

605 名前: ネガティブ君とおバカ君:プロローグ2/2 [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 02:48:07 ID:zchPHpDM0
あれ?正志の部屋でもねぇのか?
じゃあ、ここはいったい何処なんだ?
…考えてても埒があかねぇな。正志に昨日のことでも聞いてみるか。
こいつに期待はしてねぇけど、手がかりにはなんだろ。外に出てみるのが一番早いんだろうけど、心の準備ってやつがな。
俺 「なぁ、正志。昨日のこととか覚えてる?」
正志「えー、ごめん。居酒屋出てからのことは覚えてないやー。竜司は?」
俺 「俺もお前と同じだわ。起きたらここにいた」
正志「マジかぁー。うわー、ありえねー」

こいつも記憶にないのか。やべぇ、怖くなってきた。
ここは一体どこなんだよ。ってか、そもそも日本なのか?
家具とか家の造りが、普段目にしてるのと全然違うぞ。
―――もしかして、拉致られた?

正志「ねーねー」
俺 「…なんだよ。今、考え事してんだけど」
正志「ちょっと外出てみよーよー」

うーん……。まぁ、ここにいてもしょうがねぇな。不安になるだけだ。うし、心の準備完了!
俺 「だなー。その前に、とりあえず着替えよ―か。俺ら、いつの間にかパジャマだし」
正志「うわ、ホントだー。誰かが着せてくれたんかなー」

そんなことを話しながら支度を済まし、ドアの前に立つ。
歯磨きくらいはしたかったけど、洗面所がねぇからしょうがねぇ。
そして俺は、ドアノブに手を掛ける。だが、そこで固まる。
目の前のドアを開け放つ勇気が、どうにも湧いてこねぇ。
もしも、そこが言葉も通じねぇ異郷の地だったら。もしも、ワケのわからん事件に巻き込まれてしまっていたら。もしも―――
正志「さっさと開けちゃいなよー」ドンッ
俺 「わッバカッ!!」
正志の糞バカに背中を押され、俺はドアを開け放った。
そこで目にした風景は俺の想像を遙かに上回るものだった。
【すいません、続きは後日で】
606 名前: タカハシ ◆2yD2HI9qc. [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 17:23:35 ID:VYR8vZVE0
お疲れ様です。
ここまでまとめました。
恐らく、今年のまとめは今回で最後になるかと思います。
来年もよろしくお願いします。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

>>602
そういうつもりはなかったのだけれど、不快にさせて申し訳ない。
自重します。
607 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/24(月) 18:26:33 ID:jgq26otQO
>>606
乙リークリスマス!!
確かに>>602の言いたいことも分かるのでアレだけど、自重し過ぎないように頼むぜw
608 名前: ネガティブ君とおバカ君 [sage] 投稿日: 2007/12/25(火) 09:43:45 ID:cIQ0wfwc0
投下します。
609 名前: ネガティブ君とおバカ君:ボッツ登場 [sage] 投稿日: 2007/12/25(火) 09:46:01 ID:cIQ0wfwc0
―――何だこりゃ?
目に入ったのは、見渡す限りの草原。遠くにはでっかい城(?)みたいなもんが見える。さらに遠くには…何だありゃ?塔か?
まぁ、それだけでもここが日本じゃねぇことは解るんだが、問題はそこじゃねぇ。
青くてプルプルした気持ちわりぃ物体やら、やたらでかいなめくじやらが、
嬉しそうにそこら中を跳ねまわってやがることだ。

…ああ、これ夢だわ。最近疲れてるもんなぁ…。だからこんな幼稚な夢を見るんだ。
よし、決めた。冬休みには、久々に実家に帰ろう。たまにはゆっくりして、親孝行でもしてやらなきゃな。母さん、元気かなぁ…。

正志「ねーねー」

うるせぇぞ、夢の住民。俺は今、てめぇの相手をしてる暇はねぇんだ。

正志「あの青いの、スライムだよな?で、その横にいるのがファーラット。かわいーな
ー」

ああ、スライム。ドラクエの。そういやそうだな、似てるわ。
ホントに幼稚な夢見てるなぁ、俺…。

正志「なんかこっちに向かってきてるよー。逃げよーよー」

ほっとけ、どうせ夢だ。痛みなんざ感じねぇし、運がよけりゃ目も覚めるかもな。
ん?頭の中に数字が…?HP 30 MP 0?
さすがは夢。ここまでゲーム通りとは。

正志「わ、来たー!!竜司、そっちにスライム行ったよー!」

だから、大丈夫だっての。夢の中でまでうざったい奴―――
ド ン ッ !
次の瞬間、俺はあばらに強い衝撃を受け、2,3m吹っ飛ばされていた。
610 名前: ネガティブ君とおバカ君:ボッツ登場 [sage] 投稿日: 2007/12/25(火) 09:47:58 ID:cIQ0wfwc0
クソが、なんだよこれ…!!めちゃくちゃ…痛ぇじゃねぇか…!
呼吸が……できね…ぇ!夢じゃ…ねぇのかよ…!!

正志「りゅ、竜司!誰か!たっけてー!!」

* 「おーい!大丈夫か!?」

ん…この声…誰か…きてくれ…たの…か?
これが…大丈夫な様に…見え…るのかよ…クソが…。
ぜってーアバラいってるぞ…これ…。痛恨の…一撃ってやつか…。

* 「大丈夫じゃないみたいだな…ホイミ!」
ん…?あ、あれ…!?痛くねぇ!!
すげぇ!これは…呪文か!?

* 「これでだいぶ良くなったはずだけど…」

顔を上げ、俺を助けてくれた男を見る。やたら毒々しい色遣いだな…特に髪。
真っ青はねぇだろ…。まぁ、助けてくれたわけだし、礼は言っとくか。

俺 「ありがとな。助かったわ」
* 「礼は後でいい!今は敵を倒すことだけ考えて!」

倒すっつったってなぁ…元剣道部員とはいえ、素手じゃ到底無理だろう。

* 「何してんだ!その腰の剣は飾りか!?」

何言ってんだ、剣なんてどこに…。あ、あれ?
刀がある…。そんなバカな、ついさっきまでは無かっただろうが!

正志「戦おう、竜司!元剣道部員、なめんな!」
俺 「あぁ!?」
611 名前: ネガティブ君とおバカ君:ボッツ登場 [sage] 投稿日: 2007/12/25(火) 09:48:49 ID:cIQ0wfwc0
見れば、正志は既に刀を抜き、正眼に構えている。
なんて適応力のある奴だ…バカの癖に。
しょうがねぇ。俺もぼちぼち行くか。死にたくはねぇしな。
しかし、いきなり武器が現れるとは。しかも、「刀」なんて俺らにお誂えの物が。
都合が良すぎねぇか?やっぱ…夢なのか?

* 「早く!」

分かったよクソが。そう急かすな。
考えてても仕方ねぇ。やっぱりここは、戦うしかねぇか。得物もある事だしな。
腹を括った俺は、腰に差した刀を抜き、右上段に構えた。息を整え、心を落ち着ける。
そして…

「りゃあ!!」

気合を発する!心なしか目の前の青い化け物が、怯んだように感じる。
その機を逃さず、抱えた刀を振り下ろす!

「っ面ーーーん!!」

ビチャア!と水を叩いたような音がした。
命中。当然だ。こちとら、高校時代は掌が豆だらけになるまで、何万回、何憶回と練習
してたんだ。化け物如きに、避けられてたまるか。

口の辺りまで真っ二つになったスライムは、一度、二度と点滅したかと思うと、幻か何かのように消え去っちまった。

…ん?頭の中に文字が流れ込んできやがった。なんだこれ?…
「スライムAをたおした!」 だぁ?…ゲーム通りってことか。ご親切にどうも。もう何が起きても驚かねえよ。
正志の方を振り返ると、あいつもちょうど化け物を始末し終わった様だ。荒い息をついている。
612 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/25(火) 09:48:53 ID:5/BH2zZNO
クリスマスは仕事支援
613 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/25(火) 09:51:06 ID:lzIAHH870
リアルタイムktkr!支援
614 名前: ネガティブ君とおバカ君:ボッツ登場 [sage] 投稿日: 2007/12/25(火) 09:51:15 ID:cIQ0wfwc0
普段はとぼけてるが、やる時はやる奴だからな。
「スライムBをたおした!」アナウンス(?)が聞こえた。
正志「竜司!今、変なのが頭ん中にきた!すっげー!」
俺 「俺もだよ。何なんだろうな?」

で、あのツンツン青髪野郎は、と。
今まさに、モコモコした緑色の化け物(ファーラットだっけ?)に止めを刺そうとしている所だった。
手にした剣で、化け物を袈裟掛けに斬りつける。化け物は、俺の時と同じように、明滅して消えた。
「ファーラットをたおした!」

どうやら、これで全部片付け終わったようだ。…ああ、疲れた。
ひと息ついていると、そこでまた、アナウンスが流れる。
「まもののむれを やっつけた!
 それぞれ 10ポイントの けいけんちを かくとく!
 りゅうじは レベル2に あがった!
 りゅうじは メラを おぼえた!」

ああ?俺か?…そういや、なんか強くなった気がするぞ。
メラってあれか?火の呪文か?
そんなことを考えていると、頭の中に、また何かが流れ込んでくる。
…どうやら今度は、呪文の使い方を教えてくれるらしい。
…えーと、何?「メラを使いたいと念じ、相手に手をかざす」…か。
随分と簡単だな、オイ。まぁ、今はMPが無いから、使えないんだろうな。
…なんだかんだ言って、適応しつつあるな、俺も。

「まさしは レベル2に あがった!
 まさしは ホイミを おぼえた!
 8ゴールドを てにいれた!」

今度は正志か。あいつはホイミ、か。イメージ合わねぇな、オイ。
615 名前: ネガティブ君とおバカ君:ボッツ登場 [sage] 投稿日: 2007/12/25(火) 09:53:07 ID:cIQ0wfwc0
どうやら、あの青髪はレベルアップしねぇらしいな。
元のレベルが高いからか。

正志「竜司ぃ!俺、レベル2だってさー!ホイミ覚えちゃったー!!ホイミ!ホイミ!
   あれ?MP足りないや!あはは!!」
俺 「うるせぇよバカ」
正志とそんなやりとりをしていると、先ほど助けてくれた青髪が、話しかけてきた。

* 「いやー、強いな、あんたら!レベル1とは思えないよ!こりゃ、助けなくても
   よかったかな?」
などと笑っている。親しみやすそうな奴だ。
俺 「いや、危なかったよ。ホントにありがとな。えっと―――」
そういや、こいつの名前、聞いてねえな。
俺が困っていると、青髪はそれに気付いたのか、自分から名乗ってくれた。
* 「ごめん、まだ名前を言ってなかったな!俺はボッツ!ライフコッドのボッツだ!
   よろしくな!」

【ここまで。支援ありがとうございます。最早ネガティブでもなんでもない件。
 本来ライフコッド周辺にはスライムは出現しないんですが、
 最初の敵はやはりスライムがいいと思ったのでこうなりました。】
616 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/25(火) 11:50:08 ID:08NlY5mR0
おお、続きが投下されている〜〜〜。
剣道部員強ぇぇぇ〜。
しかも早速レベルあがって呪文も覚えているし。
wktk
617 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/25(火) 12:01:41 ID:3LMeX1tqO
まさしきゅんハァハァ
618 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 01:32:49 ID:MTVm6yA+O
埋め用短編投下します。
619 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 01:35:00 ID:MTVm6yA+O
腰まで届く桔梗色の髪をブラシでとかして艶をだす。軽く化粧を施し頭からシルクのローブを身に纏う。セットしたあと手に気品ある緋色の天鵞絨に包んだ水晶玉を携える。
ドレッサーの鏡に写る自分の姿はまるで占い師の様な風貌。否、今の私は占い師だ。
目が覚めた時、知らぬ場所にいた。ココハドコワタシハダレと軽く混乱していると丁度よくドアから現れたのが…。
ちらり、とベッドでだらしない格好で寝ている踊り子マーニャを見た。
踊り子マーニャとくれば私はマーニャの妹、占い師ミネア。そう、何故か私はミネアになっていたのである。もうかれこれ一ヶ月たつと思う。
私には年子の姉がいる。背丈も顔もそっくりだが姉は運動好きで明るくムードメーカー。対する私は占いが好きな大人しいタイプ。
丁度小学生高学年に流行っていたドラクエ4のキャラクター、モンバーバラの姉妹の設定が似ていると良く言われた。
ドラクエ4。そう言われたからプレイした。姉ちゃんは見ているだけだった。確かに似てるねって二人で話していたことがある。
顔は似ていても性格は真逆だから喧嘩やぶつかり合いも多かったし、姉ちゃんなんていなければいいなんて何度も考えた。
そんな私たちも歳をとるにつれて生活スタイルも変わっていった。
私は地元の専門学校を卒業してから地元で就職。姉ちゃんは都会の大学へ行き卒業してそのまま就職した。
仕事は忙しい、だけどやり甲斐はあると以前電話で話してた。
大型連休がとれても遊ぶことがメインになってるようで、地元には一年に数回程度にしか帰郷することしかなくなった。海外旅行に行った時はお土産だけは荷物で送ってくれてた。
仕事も遊びも楽しんでやる姉ちゃん。最後にうちに帰ってきたのは結婚すると将来の旦那さんを連れてきた時かな。もう随分前だ。
小さい頃から一緒に過ごしていた姉ちゃんがいつの間にか私の知らない他人の妻になり、やがてそのうち母になるなんて身内としては複雑だけれど…。
…姉ちゃん最近連絡を寄越さないな。きっとまた忙しくしているんだろう。
あ、もう仕事の時間だ。行かなければ。私は寝ているマーニャを起こさないようにこの宿屋兼踊り子の寝所から離れた。

620 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 01:44:22 ID:MTVm6yA+O
私は小さいながらも街の隅に店を構えていた。お店っていってもテントだけど。
野外でやってもいいけど天候に左右されるのが難点だったので。
テント内の光源は数本の蝋燭だけにしている。お香も焚いて雰囲気作り。
お客さんとは基本的には一対一。カップルを相手することもある。
テントの外には既にお客さんは何名か待機中。準備が整い次第お客さんを招き入れた。
私は小さい頃から占いが好きで占星術、風水、血液と様々な占いを勉強してきたけどタロットは一番得意だ。姉ちゃんは占いは見向きもしなかったけど。
幸いドラクエ世界のタロットは現実世界と一緒だから占い方法も一緒だ。
私はお客さんに悩みを聞いてからタロットをシャッフル、その悩みに似合った展開をし、ガードから意味を読み取る。それを悪い内容ならやんわりと、良いようならそのまま伝える。
もう一つの占い、水晶占いも人気。これは「ミネア」になってから見えるようになったんだよね。水晶から未来が見えるなんて嘘臭かったけど実際見えるんだからびっくりだ。
透視ではないから部分的なものを伝えるだけどね。
今が変われば未来が変わる。自分が変われば未来が変わる。これは私の持論。
占いはあくまでもより良い
621 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 01:46:48 ID:MTVm6yA+O
翌朝私とマーニャはモンバーバラの街を離れた。
殺された父親の仇討ちの旅に…。
私はミネアではないが外見はミネアなのでマーニャは普段変わりなく話しかけてくる。どうやらバレていないようだ。まさか外見がミネアで中身は別人だなんて理解していないとは思うが。
私はゲーム内のミネアの言葉使いを思い出しながら言葉を選ぶ。姉ちゃんと呼んできた私に姉さんと呼ぶのは照れがあるがそれは慣れだ。
性格もちゃらけた姉をみるしっかりものの妹のように。
私たちはモンバーバラを離れ、モンスターと戦いながら北へ向かう。途中生まれ故郷コーミズに寄り、飼い犬のペスタと戯れたり洞窟に潜り父さんの弟子のオーリンを仲間にして…とゲームでいう第四章をリアルに体験してゆく。
私はこの物語の結末を知っている。私にとってこの旅はドラクエとしてプレイした『ゲーム』だからだ。
これから何処へ行き、誰と対面して敗れ、逃げるようにして何処へ行くのか…。
だからこそ岬の御告げ所の占い師にあなたはこれから先を視ていると指摘されたとき頷いた。マーニャはそのことに驚いていたが私は冷静であった。
「そう、分かっていた。今の私たちではバルザックに勝ち目のないこと…ううん何でもな
622 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 01:50:49 ID:MTVm6yA+O
私たちはエンドールで暮らすことになった。世界の中心地。大都会エンドール。
ここで私たちは劇的な出逢いを果たすことになる。それがいつになるか分からない。だが待たなければならない。それまでに生活もしなければ食べていけないので仕事をしていた。
占いが好きで自分で占いをするようになってから実は恥ずかしながら占い師になりたいとは思っていた。
だが現実は厳しいもので得られる金額が微々たるものと知ると副業にするには良いがそれだけではご飯は食べれないと。
副業といっても現実世界では本業が忙しく副業にまで手が出せないのでせめて趣味でと占いをしていたのだが。
都会で人が多いからなのか、占いの腕がいいからなのか。連日お客さんは途切れなかった。
外見は違うけど中身は私。占い一本でごはんが食べれるようになり夢が叶った。仕事は大変でも好きなことをしていく苦労は辛くなかった。
エンドールで生活をして数ヶ月たったある日。その日はやって来た。絶望に打ちひしがれた顔でこの都会をさ迷う緑髪の青年。勇者と定められた者の姿を。
勇者を加え、エンドールを離れ、私たち姉妹の旅はまた始まる。旅の途中同じ光を持つ仲間たちを導く。
最後の戦士を迎える為に私た
623 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 01:54:41 ID:MTVm6yA+O
マーニャは火炎呪文メラゾーマを唱え、巨大な火炎球を進化の秘法を使い進化した巨大な敵にぶつける。
敵は開口し冷たく輝く息を吐いた。
「フバーハ!」
私はすかさず光の粒子の衣で仲間を守る。
「ありがとミネア」
マーニャがウインクした。
「進化の秘法は父さんのものよ。あんなものに悪用されてたまりますか!」
マーニャは再度メラゾーマを唱えた。
私は回復呪文ベホマを唱え、仲間の傷を全快する。回復呪文で傷を癒すのが私ならば精神的なフォローをしていたのはいつもマーニャだった。そして今日も。
以前から思っていた。この戦いが終わったらもしかしたら私、元の世界に帰還するんじゃないかって。だってこれで『ゲーム』は終わりだもの。
隣で攻撃呪文を舞うように放つマーニャ。そこにいるのはマーニャなのに、何故だろう。自分の姉ちゃんに見えてしまっていた。
「姉さん…」
「こら、これは戦いよ。ぼっとしている間もないわ!」
「姉ちゃん!」
マーニャは驚愕した顔だった。
「姉ちゃん、わたし、姉ちゃんが結婚してもずっとずっと好きだから。喧嘩しても、離れてしまっても。だって、二人っきりの姉妹だもの!」
私は何を口走っているんだろう。だけど言わずにはい
624 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 01:56:39 ID:MTVm6yA+O
『昔ドラクエに出てきたモンバーバラの姉妹っていたじゃん?あたしが姉のマーニャであんたがミネアになっているの。それで最後の敵いるじゃん。その時ミネアが姉ちゃんってあたしに話しかけるの。姉ちゃん好きだって。なんだかすんごくリアルだったんだ』
え…もしかして…。
姉ちゃんの告白に私は驚きを隠せない。
『離れてしまっても、ずっと思っている。だって、二人っきりの姉妹だもの』
姉ちゃんには、私も同じ夢を見たよとメールを打ち返した。

―――了―――
625 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 02:05:56 ID:GmSZKpP+0
GJだが途切れてるぞ。
626 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 02:08:44 ID:MTVm6yA+O
そうなんです!ごめんなさい。文字数も確認したんですけど。もう一回最初から投下させてください!
627 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 02:11:36 ID:MTVm6yA+O
腰まで届く桔梗色の髪をブラシでとかして艶をだす。軽く化粧を施し頭からシルクのローブを身に纏う。セットしたあと手に気品ある緋色の天鵞絨に包んだ水晶玉を携える。
ドレッサーの鏡に写る自分の姿はまるで占い師の様な風貌。否、今の私は占い師だ。
目が覚めた時、知らぬ場所にいた。ココハドコワタシハダレと軽く混乱していると丁度よくドアから現れたのが…。
ちらり、とベッドでだらしない格好で寝ている踊り子マーニャを見た。
踊り子マーニャとくれば私はマーニャの妹、占い師ミネア。そう、何故か私はミネアになっていたのである。もうかれこれ一ヶ月たつと思う。
私には年子の姉がいる。背丈も顔もそっくりだが姉は運動好きで明るくムードメーカー。対する私は占いが好きな大人しいタイプ。
丁度小学生高学年に流行っていたドラクエ4のキャラクター、モンバーバラの姉妹の設定が似ていると良く言われた。
ドラクエ4。そう言われたからプレイした。姉ちゃんは見ているだけだった。確かに似てるねって二人で話していたことがある。
顔は似ていても性格は真逆だから喧嘩やぶつかり合いも多かったし、姉ちゃんなんていなければいいなんて何度も考えた。
そんな私たちも歳をとるにつ
628 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 02:12:11 ID:MTVm6yA+O
腰まで届く桔梗色の髪をブラシでとかして艶をだす。軽く化粧を施し頭からシルクのローブを身に纏う。セットしたあと手に気品ある緋色の天鵞絨に包んだ水晶玉を携える。
ドレッサーの鏡に写る自分の姿はまるで占い師の様な風貌。否、今の私は占い師だ。
目が覚めた時、知らぬ場所にいた。ココハドコワタシハダレと軽く混乱していると丁度よくドアから現れたのが…。
ちらり、とベッドでだらしない格好で寝ている踊り子マーニャを見た。
踊り子マーニャとくれば私はマーニャの妹、占い師ミネア。そう、何故か私はミネアになっていたのである。もうかれこれ一ヶ月たつと思う。
私には年子の姉がいる。背丈も顔もそっくりだが姉は運動好きで明るくムードメーカー。対する私は占いが好きな大人しいタイプ。
丁度小学生高学年に流行っていたドラクエ4のキャラクター、モンバーバラの姉妹の設定が似ていると良く言われた。
ドラクエ4。そう言われたからプレイした。姉ちゃんは見ているだけだった。確かに似てるねって二人で話していたことがある。
顔は似ていても性格は真逆だから喧嘩やぶつかり合いも多かったし、姉ちゃんなんていなければいいなんて何度も考えた。

629 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 02:14:30 ID:MTVm6yA+O
私は地元の専門学校を卒業してから地元で就職。姉ちゃんは都会の大学へ行き卒業してそのまま就職した。
仕事は忙しい、だけどやり甲斐はあると以前電話で話してた。
大型連休がとれても遊ぶことがメインになってるようで、地元には一年に数回程度にしか帰郷することしかなくなった。海外旅行に行った時はお土産だけは荷物で送ってくれてた。
仕事も遊びも楽しんでやる姉ちゃん。最後にうちに帰ってきたのは結婚すると将来の旦那さんを連れてきた時かな。もう随分前だ。
小さい頃から一緒に過ごしていた姉ちゃんがいつの間にか私の知らない他人の妻になり、やがてそのうち母になるなんて身内としては複雑だけれど…。…姉ちゃん最近連絡を寄越さないな。きっとまた忙しくしているんだろう。
あ、もう仕事の時間だ。行かなければ。私は寝ているマーニャを起こさないようにこの宿屋兼踊り子の寝所から離れた。
630 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 02:17:59 ID:MTVm6yA+O
私は小さいながらも街の隅に店を構えていた。お店っていってもテントだけど。
野外でやってもいいけど天候に左右されるのが難点だったので。
テント内の光源は数本の蝋燭だけにしている。お香も焚いて雰囲気作り。
お客さんとは基本的には一対一。カップルを相手することもある。
テントの外には既にお客さんは何名か待機中。準備が整い次第お客さんを招き入れた。
私は小さい頃から占いが好きで占星術、風水、血液と様々な占いを勉強してきたけどタロットは一番得意だ。姉ちゃんは占いは見向きもしなかったけど。
幸いドラクエ世界のタロットは現実世界と一緒だから占い方法も一緒だ。
私はお客さんに悩みを聞いてからタロットをシャッフル、その悩みに似合った展開をし、ガードから意味を読み取る。それを悪い内容ならやんわりと、良いようならそのまま伝える。
もう一つの占い、水晶占いも人気。これは「ミネア」になってから見えるようになったんだよね。水晶から未来が見えるなんて嘘臭かったけど実際見えるんだからびっくりだ。
透視ではないから部分的なものを伝えるだけどね。
今が変われば未来が変わる。自分が変われば未来が変わる。これは私の持論。
631 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 02:19:58 ID:MTVm6yA+O
占いはあくまでもより良い未来への手助けに過ぎない。それに頼り過ぎたり占い内容を丸のにしてしまったりしてしまうのは違うと思っている。
占いの捉え方は人それぞれだからそれはその人に任せる。
そうこう考えているうちにお客さんはひっきりなしに入る。いつもの倍かな?それは今日でお店を終うからだと思うんだ。別れを惜しむ人も多い。だけど明日から父さんの仇討ちにマーニャと旅立つんだ…。
翌朝私とマーニャはモンバーバラの街を離れた。
父親の仇討ちの旅に…。
私はミネアではないが外見はミネアなのでマーニャは普段変わりなく話しかけてくる。どうやらバレていないようだ。まさか外見がミネアで中身は別人だなんて理解していないとは思うが。
私はゲーム内のミネアの言葉使いを思い出しながら言葉を選ぶ。姉ちゃんと呼んできた私に姉さんと呼ぶのは照れがあるがそれは慣れだ。
性格もちゃらけた姉をみるしっかりものの妹のように。
私たちはモンバーバラを離れ、モンスターと戦いながら北へ向かう。途中生まれ故郷コーミズに寄り、飼い犬のペスタと戯れたり洞窟に潜り父さんの弟子のオーリンを仲間にして…とゲームでいう第四章をリアルに体験してゆく。
632 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 02:21:18 ID:MTVm6yA+O
私はこの物語の結末を知っている。私にとってこの旅はドラクエとしてプレイした『ゲーム』だからだ。
これから何処へ行き、誰と対面して敗れ、逃げるようにして何処へ行くのか…。
だからこそ岬の御告げ所の占い師にあなたはこれから先を視ていると指摘されたとき頷いた。マーニャはそのことに驚いていたが私は冷静であった。
「そう、分かっていた。今の私たちではバルザックに勝ち目のないこと…ううん何でもないの。姉さん」

そして、本懐を遂げられないまま私たちは大陸を離れる―――。

633 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 02:23:51 ID:MTVm6yA+O
私たちはエンドールで暮らすことになった。世界の中心地。大都会エンドール。
ここで私たちは劇的な出逢いを果たすことになる。それがいつになるか分からない。だが待たなければならない。それまでに生活もしなければ食べていけないので仕事をしていた。
占いが好きで自分で占いをするようになってから実は恥ずかしながら占い師になりたいとは思っていた。
だが現実は厳しいもので得られる金額が微々たるものと知ると副業にするには良いがそれだけではご飯は食べれないと。
副業といっても現実世界では本業が忙しく副業にまで手が出せないのでせめて趣味でと占いをしていたのだが。
都会で人が多いからなのか、占いの腕がいいからなのか。連日お客は途切れなかった。
外見は違うけど中身は私。占い一本でごはんが食べれるようになり夢が叶った。仕事は大変でも好きなことをしていく苦労は辛くなかった。
エンドールで生活をして数ヶ月たったある日。その日はやって来た。絶望に打ちひしがれた顔でこの都会をさ迷う緑髪の青年。勇者と定められた者の姿を。
634 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 02:25:12 ID:MTVm6yA+O
勇者を加え、エンドールを離れ、私たち姉妹の旅はまた始まる。旅の途中同じ光を持つ仲間たちを導く。
最後の戦士を迎える為に私たちは大陸を渡る。故郷の地。再度踏むことが出来た。
二人では不可能だったことが仲間を得てようやく叶った。本壊を遂げられた。仲間たちは我が身のように喜んでくれた。今度は私たちが皆にお返しをしてゆく。
旅の仲間は面白い人たちばかりだった。時には深い話しもした。深い話しが出来るほど仲間たちの絆は深まっていた。
だがやはりマーニャ以上にはなれない。
それは血の繋がった二人っきりの姉妹だからなのか。旅の仲間たち以上に長い時間を過ごしてきたからなのか。
ミネア一人では仇討ちを決意しなかった。性格上泣き寝入りしていただろう。姉が、マーニャがいたから、行動に移すことが出来た。
それはきっと―――マーニャも同じだっただろう。
苦労した。だけどそれ以上に笑顔で旅が出来た。あんな散々に姉のことを愚痴っていたけどそれは愛嬌。他者がマーニャのことを悪く言ったらミネアは怒り狂っているかもしれない。
私は…ミネアは…悔しいけれど…マーニャが大好きだった。
それは…真逆の性格をした私の姉に対する感情と同じだった。
635 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 02:28:58 ID:MTVm6yA+O
旅を続け、大いなる運命に導かれ、私たちは最後の戦いに挑む。

マーニャは火炎呪文メラゾーマを唱え、巨大な火炎球を進化の秘法を使い進化した巨大な敵にぶつける。
敵は開口し冷たく輝く息を吐いた。
「フバーハ!」
私はすかさず光の粒子の衣で仲間を守る。
「ありがとミネア」
マーニャがウインクした。
「進化の秘法は父さんのものよ。あんなものに悪用されてたまりますか!」
マーニャは再度メラゾーマを唱えた。
私は回復呪文ベホマを唱え、仲間の傷を全快する。回復呪文で傷を癒すのが私ならば精神的なフォローをしていたのはいつもマーニャだった。そして今日も。
以前から思っていた。この戦いが終わったらもしかしたら私、元の世界に帰還するんじゃないかって。だってこれで『ゲーム』は終わりだもの。
隣で攻撃呪文を舞うように放つマーニャ。そこにいるのはマーニャなのに、何故だろう。自分の姉ちゃんに見えてしまっていた。
「姉さん…」
「こら、これは戦いよ。ぼっとしている間もないわ!」
「姉ちゃん!」
マーニャは驚愕した顔だった。
「姉ちゃん、わたし、姉ちゃんが結婚してもずっとずっと好きだから。喧嘩しても、離れてしまっても。だって、二人っきりの姉妹だもの!」
636 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 02:30:18 ID:MTVm6yA+O
私は何を口走っているんだろう。だけど言わずにはいられなかった。
マーニャは私を見つめ…そしていつものように笑った。
「あたしもミネアがいて良かったよ。ありがとう。結婚して離れてもあたしたちはずっと一緒よ」

まだ感傷に浸るのは早いわ。さぁ、片付けちゃいましょとマーニャは再度メラゾーマの呪文を紡ぎ出した。

私たちは敵を倒した。魔族と人間の戦いに人間が勝った。
父エドガンが発見した進化の秘法は私たち姉妹が奪回し封印した。
マーニャはまたモンバーバラのステージを踏んだ。私はまた占いを始めようとしていた。そこで…記憶は途切れた。
…私はどうやら夢を見ていたようである。現実と間違えてしまいそうな長い長い夢を。
部屋の中は真っ暗。今日が休みだとはいえ一日潰して夜まで寝込んでいたようである。身体を伸ばすと間接がパキポキ乾いた音を立てた。
携帯をチェックする。メールが届いていた。姉ちゃんからだ。久々だ。
637 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 02:33:24 ID:MTVm6yA+O
『おひさー。元気でいる?あたしは元気だよっ。別に用事はないんだけどさ、夢にあんたが出てきたんだ。だからどうしているかなって』
更に続く。
『昔ドラクエに出てきたモンバーバラの姉妹っていたじゃん?あたしが姉のマーニャであんたがミネアになっているの。それで最後の敵いるじゃん。その時ミネアが姉ちゃんってあたしに話しかけるの。姉ちゃん好きだって。なんだかすんごくリアルだったんだ』
え…もしかして…。
姉ちゃんの告白に私は驚きを隠せない。
『離れてしまっても、ずっと思っている。だって、二人っきりの姉妹だもの』
姉ちゃんには、私も同じ夢を見たよとメールを打ち返した。

―――了―――

投下しました。連投や文章が途切れてしまい散々でした。ごめんなさい。今度は気を付けます。読んでくれた人ありがとう。
638 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 06:44:30 ID:kjslZuu70
乙です。

次スレ立ててきます。
639 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 06:52:59 ID:kjslZuu70
立てました。

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら12泊目
ttp://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1198792331/l50
640 名前: 作り合わされし世界・外伝 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 06:57:11 ID:kjslZuu70
・タロウの犬活躍

「ジロウ聞いて。僕の大冒険した物語を!」
「冒険なんてどこでしたのタロウお兄ちゃん。」
「不思議な世界だよ。僕はそこでお嫁さんまで貰ったんだ!」
「わー! お兄ちゃん現地妻ゲットだね!」
「ジロウ、どこでそんな言葉覚えたの?」
「それでそれで、その世界でどうしたの?」
「いろんな人や犬に助けられていろんなところを冒険したよ。」

「知らない人ばっかりで寂しかった?」
「はじめはね。でもみんな親切だったよ。それにね。」
「それに?」
「しなのさんとヨウイチさんっていうこっちの世界の人もいたんだ。」
「お兄ちゃんと同じようにその世界に行っちゃったんだね。」
「そうみたい。それでね、僕はその世界で石版を手に入れたんだ。」
「石版?」
「うん。それでおうちに帰れるっていう話だったからね。」
「ふーん。不思議だねー。」

「でもね。石版で帰れるっていうのはサクヤって人の嘘だったんだ。」
「えー、悪い奴だね。」
「しかもね、石版は魔王を復活させるためのものだったんだ!」
「怖いよぉ! でも、魔王って何?」
「凄く悪い奴だよ。僕が吠えたおかげで復活を阻止したんだぞ。えっへん!」
「お兄ちゃんすごいねー。」
641 名前: 作り合わされし世界・外伝 ◆8fpmfOs/7w [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 06:58:13 ID:kjslZuu70
「それからみんなでサクヤと戦ったんだ。酷いんだよ。嘘ばっかりつくんだ。」
「サクヤというよりヤクザだね。」
「最初は仲間の振りをしていて最後に正体を現したんだ。」
「飼い主に手をかまれるとはこのことだね。」
「そうだね。……あれ、ちょっと違わない?」
「そいつはお兄ちゃんがやっつけたの?」
「やっつけたのは勇者さんたちだよ。でも僕も活躍したんだぞ。」
「魔王は復活しなかったんだね。」
「ううん。最後は魔王が復活して僕はこっちに帰ってきたんだ。」
「なにそれー。」
「あのね。魔王は勇者に倒されなきゃいけないんだって。」
「うーん、不思議な世界は複雑だね。」
「魔王が復活して全てが元通りになって僕も帰ってこれたんだ。」

「ところでさお兄ちゃん。」
「なんだいジロウ。」
「お兄ちゃんが吠えなきゃもっと簡単に帰ってこれたんじゃないの?」
「駄目ー! それは言っちゃ駄目なの!」
642 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/28(金) 14:02:05 ID:oCswVue70
>>639
スレ立て乙!

なんというほんわか後日談(*´Д`)
しなのさんやヨウイチさんもアレンやドラオの事思い返しているのかな…
643 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ 投稿日: 2007/12/28(金) 22:41:22 ID:YhkjIkomO
埋め
644 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/29(土) 22:44:28 ID:RijOQ0BPO
アリスちゃん出ておいで〜
645 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/29(土) 23:21:52 ID:SW0lqWxmO
残り少ないから厳しいかもな
今年もこのスレにはお世話になったな〜
646 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/31(月) 12:31:04 ID:y7GL1IO30
「今年ももう終わりだね」
「何勘違いしてるんだ! 俺の2007年はまだ終了してないぜ!」
647 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/31(月) 18:06:56 ID:y7GL1IO30

  ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ( ´・ω・) < 目が覚めたらドラクエ世界の宿屋だったよ
 ( つと )   \___________________
 と_)_)



  ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ( ´・ω・) < 仕方ないから魔王を倒しに行くよ
 ( つと )   \_______________
 と_)_)
648 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/31(月) 18:07:58 ID:y7GL1IO30
∧_∧ コソーリ
( ´・ω・)
( つ  つ◇
._    ∵パラパラ
|毒|    旦
. ̄


∧_∧
( ´・ω・) 魔王様、お茶が入りましたよー……。
( つ つ ∫
と_)_) 旦
649 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/31(月) 18:08:59 ID:y7GL1IO30
  _, ._
  ( ゚ Д゚)   イタダキマス
  ( つ旦O
  と_)_)

    _, ._
  ( ゚ ◎゚)   ズズ…
  ( ゙ノ ヾ
  と_)_)

    _, ._
  ( ゚ Д゚)   …………
  ( つ旦O
  と_)_)

    _, ._
  ( ゚ Д゚)   ガシャ
  ( つ O. __
  と_)_) (__()、;.o:。
          ゚*・:.。

      _ _  ξ
    (´   `ヽ、     __
  ⊂,_と(    )⊃  (__()、;.o:。
                  ゚*・:.。
650 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/31(月) 18:10:26 ID:y7GL1IO30

 ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 (´ ・ω・) < 世界が平和になったよ
 ( つと )   \_______________
 と_)_)
651 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/31(月) 18:39:38 ID:BcpUj+sSO
埋め乙
652 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/31(月) 20:06:08 ID:fbAEu9tn0
 └(´・ω・`)┘
ミ\丿('A`)\ノミ
   ┌V┐
   彡  ミ
653 名前: 名前が無い@ただの名無しのようだ [sage] 投稿日: 2007/12/31(月) 21:57:38 ID:y7GL1IO30
        , -‐―― 、
      /O      ヽ、 ,-、
     /r‐,         V l
    // /         L_ `ー-、     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   ///, '⌒ヽ /⌒ヽ   \\ ヽ   / 11泊目は終わりだよ
  / し' ( ○ l l ○ )    ヽ l  l  <   12泊目もよろしくね
 l     `ー‐'  `ー '     l .|  |   \_________
 ヽ、    (`ー―'⌒)     ノ /  l
   `ー-、_ニ二二ニ-―=ニ二/ /
     _ノ _/ ∧ l ヽ` 、___ノ
    (  (/ /l .l ∧  iヽ、`、
     ) l l 〉' 人ヽ l   ) ヽ
     し'l  V 入 V  l  / /
      L_/ / )l  / (__/
        し'  L|  l
           ヽ、_)

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