もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら16泊目
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1 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/10/02(土) 19:44:10 ID:bsFpoczP0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

前スレ「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら15泊目」
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PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dqinn.roiex.net/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/


2 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/10/02(土) 20:15:07 ID:YNWB/Go5O
寝直す

3 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/10/02(土) 21:32:51 ID:bgX1YGICO
ローラ姫助け出した後に子供も引き連れて、3人で宿屋に泊まる。

異論は認める。

4 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/10/02(土) 23:53:59 ID:a3BrfL4B0
>>1
スレ立て乙です!

5 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/10/03(日) 00:19:37 ID:qpLCHEJWO
>>1

6 名前:修士 ◆B1E4/CxiTw :2010/10/03(日) 00:37:34 ID:EarnCSsl0
前回
前スレ>>426->>433

【導かれし者】

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

二百余年前。
かけがえのない仲間たちとの旅にて。


ピサロ「・・・・・・・・――――、――――よ。
    私は仮にも、魔族を束ねる者だ。天空の城に入ることはできない」

雲上に座す天空城の入り口。
私たちは、一番後ろを歩いていた彼の台詞に振り返る。
風になびく銀の長髪。美麗な顔立ちを持つ彼が発したその台詞は、
あるいは、私たちが心の奥底で予想していたものかもしれない。

ピサロ「我々は互いの目的を果たした。
    短い間だったが、まぁ悪くはあるまい。
    だが忘れるな。今、我々だけが繋ぐ二つの世界のことを」

彼は、その細く逞しい右手を前にかざし、人智を超えた言葉を唱える。
その動作に私たちが身構えなかったのは、互いに信頼を得た証。

私たちの前に、赤く半透明の小さな光球が浮かび上がる。
見とれる間もなく、直後に球から細長い光の塊が飛び出し・・・・
全員の右腕の上腕部にぶつかり、染み込み消えてゆく。
慌てて私が袖を捲ると、そこには、何らかの幾何学的な黒い紋様。

皆も己の紋様に見入る中、ピサロは、彼の腕にも刻まれたその紋様を示す。
その頃にはもう、あの光球は消えていた。

ピサロ「これは、互いの世界を守ることを誓う盟約だ。
    いつか肉体と共にこの紋章が朽ちるとき、
    我らの遺志は果たして、世界に根付いているのか。
    人間どもよ、暫(しば)し黙って進め。己が命果てるまで」

ある者はただ眺め、ある者はそっと己の紋様に触れる。
しかしそんな中で我が姫は、紋様を腕の肉ごとぷにぷにと指でつまみ遊んでいる。
その姿を垣間見て、私は少し心が和らいだ。

7 名前:(2/3)修士 ◆B1E4/CxiTw :2010/10/03(日) 00:39:35 ID:EarnCSsl0
・・・・・ふと私は、傍に立つ勇者ソフィア見る。
ピサロを見据えたその顔には、張り詰めた決意が宿っているようだった。

ソフィ「・・・・・・わかったわ、ピサロ」

その言葉を受け、皆が改めてピサロに目を向ける。
・・・・・・やがて彼らの顔に、各々の決意が宿っていくのを私は見た。

次代の平和の勇士を育てるとの戦士の誓いを立てる、焔色の鎧の戦士ライアン。
互いの魔術を引き合いに、素直ではないひねた賞賛を贈る、魔導師ブライ先生。
いい男が居なくなると茶化しつつ、旅の感謝の言葉を伝える、踊り子マーニャ。
ピサロとその恋人ロザリーの幸せを優しく願う、神秘の眼差しの占い師ミネア。
魔界をも傘下に収めようというのか。己の店と腕を喧伝する、大商人トルネコ。

元気に体を動かしつつ彼との冒険を回想する、後の我が愛しき妻、アリーナ姫。
そして私は・・・・・実直な神官らしく、己の気持ちを精いっぱいに語る。

・・・・・全てを聞き届けた後、ピサロは我々に背を向ける。

ピサロ「さよならだ。私はここで行く。
    ・・・・・・・勇者よ」

ソフィアは、ただ彼を見る。

ピサロ「お前とは、いずれまた会うだろう。
    そのときは、敵か味方かわからぬがな」

彼の体はふわりと浮いた。
彼の背中の先に、私たちは微かな笑みを見た気がした。
彼は彼方へと飛び去った。
彼の贈り物はまだ、そこに刻まれていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

いよいよ私が、最後の導かれし者となってしまった。
ピサロも予想だにしなかったであろう、私の長命。

アッテムトの閉ざされた地の底深くに、古の怪物エスタークは封印されている。
ああどうか、このまま永劫の彼方に忘れ去られてくれれば・・・・・・。
それこそ、魔界の者と共に目指せる唯一の・・・・。

この世界を見届けること。
やがて終わる私の、いや、我々の生・・・・・。
誉れ高き遺志を前へ、前へ・・・・。

8 名前:(3/3)修士 ◆B1E4/CxiTw :2010/10/03(日) 00:41:50 ID:EarnCSsl0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

フェリ「・・・・・・・・・それで?」

その絢爛豪華の部屋にいる二人の男は、赤マントを羽織るフェリコ国王と、
サスペンダー付きの灰色の制服を着た、一人の臣下。
王は、壁を彩る若き日の種々の戦利品から一品を手に取り、臣下はそれを見守る。
窓の外には、夕日の映える中で網の目に走る、スタンシアラの街の運河。

臣下「しかし、恐ろしき彼の知識はまだ、いくつかのモノが構想段階にあるのみ。
   機密的な利用は、その気配すらありません。
   今こそ、動く機ではないかと。 陛下!」

・・・・・王は、そのギラリとした眼を戦利品から離し、振り返る。

フィリ「・・・・・ならばその情報とやら。何としてでも持ってこい。話はそれからだ。
お前に任せる。我が国の繁栄に、余は手段を選ばぬ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

僕「・・・・・・・・・はぁー・・・・終っっったあああ」

全部手書きはホントに辛い・・・・あー、汗が。タオルタオル。

レオ王国に送る文献の清書を終え、僕の筋肉は一気に弛緩する。
全体量が多いため、締切の日はいつも暑い部屋に一日籠るのだ。
ここは魔法学校の居住区。クリフトさんのお弟子さんが住む建物。
空き部屋が一つあったので、ギルドの仕事もこなしつつ、ここに寝泊りしている。

この学校にも図書館はある。レオ王国の図書館と比べると、
規模の大きさや網羅する分野の範囲ではあちらに敵わないが、
魔法関連の資料は質も量も同等か、それ以上だとか。
科学書も、レオ王国の人たちの著書を何冊も見た。サランの町にも
図書館や本屋があり、今の僕には優れた環境といえるだろう。


『微(かす)かに精神の波動が生まれてきましたね』

クリフトさんの言葉だ。・・・・何週間もかけ、僕にも新たな芽が現れたらしい。
きっかけはある日、いつものように頭に描いた炎の絵を描いていたとき、
その炎が一瞬、何重にもぶれ、ドクンと鼓動を打ったように感じたこと。
・・・・後でバル君に聞かされたが、普通は一週間程度で到達する段階だとか。


・・・・・・・友よ、師よ、家族よ。
望郷の念が失せつつあること。それは、僕の絶望の裏返しなのだろうか。
いや・・・・未知に挑む楽しさ・・・・心が満たされているのだろうか。


アーシュ
HP 14/14
MP  1/1
<どうぐ>携帯(F900i) E:絹の服 トルナの靴 はね帽子

9 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/10/06(水) 02:03:53 ID:EjQW9sVU0
絵板がスッカスカなので誰か描いてくださいな
修士さんの物語なんてけっこう絵になりそうだし
タツミ君のほうも面白そうだし。

ttp://atpaint.jp/ifdqstory/ 

10 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/10/06(水) 11:03:35 ID:c+pV7IyVO
>>9
いろいろアイディアとかはあるんですけどね…
有志の誰かが描いてくれたらうれしくて仕方ない

11 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/10/16(土) 16:25:27 ID:VaLF1Rwe0
とりあえず
風呂覗いても「イヤーン、エッチ」しか言わない
あまり抵抗しなさそうな女をこの腕に抱く

12 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/10/16(土) 18:46:06 ID:s2yGQvxa0
とりあえず町中をまわって道具などを拾えるだけ拾って
金髪おかっぱ幼女を探す旅に出る
見つけたらその頃にはめっさ強くなってるだろうから
親父と兄貴と仲間のモンスターどもを蹴散らして
王女だけおもち帰りする

13 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/10/17(日) 00:51:04 ID:8iVHRTSG0
キャラメイクしてハーレムを作る

14 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/10/17(日) 02:44:29 ID:u3d9pojz0
ゲームの中だと、主人公は とうぞくのかぎで隣室に侵入、タンスやふくろを物色してるよねw
実際にやる勇気ないわw でもやらなきゃ生き残れないのがドラクエの世界w

15 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/10/17(日) 07:48:04 ID:mz/RTWkN0
いやいやそんなことしなくても
勇者たちの強さならやってけるぐらいの金は魔物から稼げるよ

16 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/10/18(月) 02:02:41 ID:52NMR6c4O
賊や魔物から村や町を守る戦士なんてのも、
俺達が思っている以上に感謝感激すべき方々なんだなきっと
その彼らから全世界的に頼りにされている勇者の存在って……

17 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/10/24(日) 03:18:29 ID:UMAqllI+0
グリズリー怖すぎ 実際に目の前に対峙したら
俺ちびって逃げて食われちゃうよ><
宿屋から出たくねぇぇw

18 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/10/24(日) 03:20:47 ID:UMAqllI+0
ギガデイン覚えて魔法攻撃だぁ

19 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/10/26(火) 00:52:43 ID:cyVrpSb60
前スレdat落ちです.
続きはこちらで

20 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/10/30(土) 20:05:55 ID:dpmQhiyMO
なんか書いて見ようかなあ。妄想はするけど文才無いのが死ねる

21 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/10/31(日) 05:32:06 ID:3jRttEXAO
こいつが誰で、ここはどうなって、とか断片的なストーリーがある感じですか?
見てみたいものです!

込み入った話になるようなら避難所かな?
利用頻度低いみたいだけどw

22 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/10/31(日) 10:58:41 ID:6SmnZoQ3O
ある程度のストーリー、キャラは出来てる。
序盤を文にした時点で文才がまるで無いことに気付いてさ。小学生の作文だわ。
もう少し勉強してくる。

23 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/11/07(日) 00:24:58 ID:gwZRBHpIO
保守

24 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/11/08(月) 07:26:44 ID:z0bWCay+O
>>22
高尚な作品を作らなければ発表できないという訳でもないので、
そんなに尻込みしなくていいと思うよ
読みやすい文章にするのは大事だけどさ
応援してます。

25 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/11/14(日) 09:24:04 ID:sZyyAOha0
保守

26 名前:[1/5] 修士 ◆B1E4/CxiTw :2010/11/14(日) 11:21:30 ID:jjpRn/gv0
【青海幻夢】

教授「申請が通ったよ。今月からお前が正式に実験と機械実習のTAだ」
?「あ、はい」
教授「お前も忙しいし、実験中は傍で自分ことしてていいよ。下級生にはいい刺激さ。
   えー・・・・・ってことでよろしく! お前からは何か報告あるか?」
?「えーっと・・・実習で発注した品物の納品日なんですけど・・・――――」

・・・・・・その他二三の連絡事項を取り交わし、僕は教授の部屋を後にする。

あいつが消えて3週間。僕らの環境は、
彼はいないというその外堀から、確実に埋まってゆく。
シンポジウムの発表は卒研生が担当し、その原稿は先生が作成中。
担当していた講義の助手は僕が引き継いだ。

・・・・・・あいつの背中を、みんなが見ていた。

そういえば、あいつと親しかった河口研の三森から、妙な話を聞いた。
事件後にあいつの部屋――最後の痕跡が残る場所――を訪れた三森によれば、
部屋の床に、由来の知れない楕円状の線痕が焼き付いていたという。
無論警察も承知のこととか。

それにしても・・・・渡辺はいつになったら来るんだ!
中谷研の高木が言うには、うちの研究室に来なくなった癖に
学部の講義には出てるそうじゃないか!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

クリフトさんがガーデンブルグという国から帰還して四日。
ルーラという移動魔法を使い小人数で赴いたため、予定はすぐ消化できたらしい。

この世界に来てから、4か月目に差し掛かろうとしている。
今は日本の残暑に当る時期らしいが、日本とは異なる乾いた暑さだ。

町の大通りや路地を、水を湛(たた)えた桶を肩に背負う水売りがねり歩く。
街の水路から水を引いている石組みの水浴び場は、顔に水を浴びせかける若者や、
はしゃぎ回る子供、石段に腰掛け談笑する婦人たちなどで賑わう姿が見受けられ、
中には、そこに流れ込む冷水を水桶でくみ上げ去っていく人もいる。
植樹の下は動物の集会所となり、虫々の声が、そこが生命の宿木であることを語る。

しかしこの日常の中でも、街と学校を結ぶ禿げ道には人の列が長く連なり、
学校の校舎や、町の高台の上から見えるその様は、見飽きることはない。


バル「僕はまだここに来て日が浅いからね・・・・」

・・・・・・・そう。最近僕らの周りが、心なしか慌しくなったように思える。
バル君の兄姉弟子3人とクリフトさんは、よく夜に会合を開いているようだ。

互いの短い黒髪が窓からの日の光に照らされる中、
彼の部屋で魔術の手ほどきを受けている僕。
あっという間の一日が、今日も過ぎてゆくだろう。

27 名前:[2/5] 修士 ◆B1E4/CxiTw :2010/11/14(日) 11:25:53 ID:jjpRn/gv0
アンカ忘れ 前回>>6-8

――――――レオ王国 キングレオ城 王の部屋――――――

兵士「はっ!間違いございません。パッチとディークは実の兄弟。
   若き日に同じ船で働き、後に名を変えたとのこと。
   罪に覆われた世界の者には、よくある過去です。
   二人は袂を分かち、パッチは南へ。ディークは北のスタンシアラに渡ったのです。

シルバ「・・・・・故郷の町と海を離れ、そして再びという訳か」

ダシュ「近年、この海の貿易を狙う海賊らを考え、ハバリア等の拠点の強化が進んでいます。
    ディークは、この近海を根城にしてからも多数の海賊を落とし、勢力は増す一方。
    彼らの合流は世相を反映したものでは?」
ダーラ「彼らの世界では特に、心置ける者が一人増えるだけで、数を超えた力が生まれます。
    新たな仲間はさらに増えましょう。悪の芽は、か弱いうちに潰しておきませんと」

シルバ「テララテパ・・・・・我が国の『ハバリア港』、エンンドールの『グルノ港』、
    砂漠の南のオアシス『デザートアウト』に『海辺の村』。
    その他の多くの拠点を結ぶこの海の貿易は、まだ発展するのだ・・・・・」


―――――――レオ王国北方の海 テララテパ海――――――

雲間の光を受け船体の朱色が映える、海賊ディークの船。
今その主甲板に、先刻落とした船から得た戦果――宝箱をこじ開け得た金貨の山、
乗客の身を彩っていた貴金属の類――が、取り分ごとにきっちり山分けされている。

パッチ「今回の首尾も上々だったなぁ兄貴。こっちの海も相変わらずだ」
ディー「なァに、人の言葉もわからねェバカがいねぇ分、俺の性に合うってもんよ。
    あの海軍のじじいと戦えねぇのはちぃと物足りねぇが・・・・。
    “不沈”の二つ名を一度へし折ってやりたかった。

パッチ「こっちの海だって化け物がうようよいやがる。特に南のレオ王国の辺りはな。
    “青大将”サイップ、“首長竜”のロロノスに、“悪魔将軍”ベリアルン」
ディー「なァに。人の世に縮こまった奴らの怖さなんざ、たかが知れてる。
    それでも俺たちの進路を塞ぐようなら、容赦はしねェ」

海賊1「お頭ぁ! 西北西の方角に軍艦が見えます!」
ディー「なんだぁ?忙しい日だなぁおい。
    まぁいい。今日はもう面倒だ。適当にあしらうとするか」

28 名前:[3/5] 修士 ◆B1E4/CxiTw :2010/11/14(日) 11:27:52 ID:jjpRn/gv0
――――――――エンドール王国 王宮――――――――

エ兵1「今日はピリピリしてるらしいよ」
エ兵2「うぅ。そういうときの王子は触らないに限る」

王宮で一際華美な装飾の施されたその扉の警備の任は、
当番が回ってくる衛兵たちに、青色吐息をつかせるという。

女中1「何のお話ですのー」

その扉の前を、少女の面影を色濃く残す女中が一人、通りかかる。

エ兵2「ん?ああ・・・・そろそろお前が来るんじゃないかって話してたのさ」
女中1「あー、ウソだー。冷たいじゃないー」
エ兵2「ふふん。いつものことさ。お前、今暇なのか?
    確かお前のところに今日、遠くから客人が来てるって聞いたぞ」
女中1「ええ、今お給仕してきたところよ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

扉の向こうに広がる私室では今、野心多き愛国者、国王の長子アレクスと、
彼と懇意にしている臣下が一人、ソファで向かい合い座っている。

アレク「親父もたまには何か言わんのか!」
臣下「まぁまぁ、そういきり立ちませぬよう王子。気持ちはわかります。
    こちらではなく、サントハイムの式典の方に主だった要人が軒並み赴くとは。
    日程が一部重なるとはいえ、今回のは少々ご再考いただきたかった」

アレク「わが国の伝統はどこよりも勝る。娯楽とギャンブルが本質ではない。
    それを親父は、素知らぬ顔で・・・・・。酒だ、酒に限る!お前も飲んで行くか?」
臣下「はは。私でよければ・・・・・」

―――――エンドール王国 コロシアム―――――

審判「それまで! 勝者、ゴークなり!!」

「「「 ウオォォォォォ!! 」」」

白石の四角い舞台をすり鉢状に囲う、白石の観覧席。熱戦ともなれば、
立ちあがり声を張る者、口笛を吹く者、金貨銀貨を投げ込む者が続出する。
その行為に対する運営側の注意は形式的なもので、
投下された様々なモノは、勝者の受け取る懸賞の一部となっているのが実情である。

そんな雰囲気にあっても、南向きの特等席のさらに上段、
悠久からの知的さをまとう意匠に彩られた貴賓席に座す、貴族の面々は、
その身に相応しい立居振る舞いをこなす。
たとえその胸中に、眼下の群衆と同じ心が宿ろうとも。

笑顔と拍手と、気に入った選手に後に褒美を与えることが、彼らの最大の心遣い。
もっとも彼らの中には、つい気持ちが身の外に溢れてしまう者もいる。
その様が客たちに、親しみを覚えさせることもあるだろう。

29 名前:[3/5] 修士 ◆B1E4/CxiTw :2010/11/14(日) 11:29:23 ID:jjpRn/gv0
今日の試合も熱かった。
渦巻く聴衆の上、貴賓席は舞台を見下ろす。
そこにいたのは、先日のエンドール王室の式典に出席した
ガーデンブルグとバトランドの要人たちと、傍で佇む彼らの従者。

『BG連合』・・・・それは、バトランドとガーデンブルグの頭文字から生まれた名称。
山脈に阻まれながらも、北方の海と細長い川を介して両国は長き絆を育み・・・・・
それは現在、両国の教育分野にも波及している。

貴族1「いやー、相変わらずそちらの戦士ゴークの強いこと! バトランドの誇りですな」
貴族2「ほっほっほっ。しかし明日の相手、貴国の魔導師レレンドには勝てるかのう。
    二人の対戦成績は今、そちらの二連勝中ですじゃ」
貴族1「きっとまた名試合になりましょう。・・・・・おお! 次は魔法使い対決ですか。
    ぜひ熱い呪文の撃ち合いを・・・・ドラの音が待ちきれませんなぁ。はっはっは!」

貴族3「もう、あなた。 少々はしたないですわよ。家の外では静かにと言ってるでしょうに。
    そうそう、魔法使いといえば。 お二方のお耳にはもう入っていますかしら?
    最近我が国に、クリフト猊下がお越しになられたようですわよ」

貴族4「ほう? それは初耳ですね」
貴族2「ほっほっほっ。わしはご主人殿から少々聞き及んでおりますぞ。
    公にはされてないそうですな」

貴族1「どうやらプトマ先生をお尋ねになったようです。
    先生方は最近、野盗コルトバ一味を討伐しましてねぇ」
貴族3「山に囲まれた我が国に、ああいう輩はホント困りますわ」
貴族2「わが国でも悩みの種ですじゃ。・・・・ただ、最近は世界の海もいろいろありましてな」
貴族1「ほう? スタンシアラのことですかな?」

貴族2「そこもそうじゃが、レオ王国の方もいろいろあるようでしてな。
    そのスタンシアラからの流れ海賊がいよいよ増えてきておると。
    まぁあそこは、テララテパ巡航船事業の中心地ですからの。
    事業を興したレオ王国の先王、女王様も予想してらしたことですが」
貴族4「他には、策定中の新たな海洋事業に関しても、互いに思惑があるようです」

貴族1「しかし、海洋国家スタンシアラも相変わらず、大変ですねえ」
貴族2「同情を禁じ得んのう。大昔から巣食う魔物が、勇者様の旅の後も残っておる。
    そんな場所はあの海だけ。まぁ、きゃつらと渡り合う海兵もさすがじゃが」
貴族4「ピサロ殿が亡くなり、いよいよどうなるのかと思いました。
    息子の方が変わらぬ魔界の統治を約束してくれて、一安心です」

貴族3「でも・・・・・・わたくしやっぱり怖いですわ。マモノ」
貴族1「ははは。慣れてしまえばどうってことないさ」
貴族2「今の奇跡の時代なのかもしれんのう・・・・・・。
    皆さん、今の我々の幸せに乾杯とゆきませぬか」
貴族1「ええ、もちろん」

彼らは手元のグラスを掲げ、互いに目配せする。

「「「「 乾杯 」」」」

やがて、勇者の故郷と名高いブランカの酒が、紳士淑女の口を潤した。

30 名前:[5/5] 修士 ◆B1E4/CxiTw :2010/11/14(日) 11:32:47 ID:jjpRn/gv0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

いつからだろうか。
スタンシアラの城下町、アクアロッズ。その背後の山の監視施設に、
何やら見かけぬ顔が出入りし始めたという。そして、
知らぬ間に山の一部が鉄線で囲われていたのを、麓の住人が発見したという。

いつからだろうか。
大海に面した湾の一つに、王国の監視所と銘打つ施設が建設されたという。
母なる海を注視する兵士たちは昼夜を問わず立ち並び、
その様はさながら不夜城であるという。

いつからだろうか。
その監視所から少し離れた磯に面する崖に、小ぶりな監視所が建設されたという。
それ以後、崖の面する湾内は、入場が厳しく制限されたという。

―――――サントハイム 魔法学校 居住区内修道場――――――

バル「ヒャダイン!」

居住区内の屋外練習場で、バル君は呪文をいくつも唱えている。
窓の向こうのその光景を横目に、僕は部屋の椅子に腰かけ、
膝の上に本を置き、詠唱の練習のため、頭の中にイメージを集中させている。
これはメラという、極めて簡単な小さい炎の呪文だ。

思えば僕は、一歩違えばただ時が過ぎ去るのを待つだけの、
ボーっとした、夢か現かわからない日々を過ごしていただろう。

例えば風邪を引いた日の早朝。
白む空を見て、普段の自分を正常な世界に留めているもの
それは日常の忙しさなのだと漠然と思い、横たわる体に夢の風を受け、
ああこれが自堕落というものの姿かと感じ取る。その、諦めに似た気持ち。

・・・・・・・・どうやらこの生活は、まだまだ続きそうだ。


・・・・・・・・・・・そして、ある者には緊迫した、
またある者には悠々とした31ヶ月が過ぎ去った。


アーシュ
HP 14/14
MP  1/1
<どうぐ>携帯(F900i) E:絹の服 トルナの靴 バンダナ


注:4レス目投下分が3/5となっていますが,4/5の間違いです.失礼しました.

31 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/11/24(水) 03:21:36 ID:iiGb8qZr0
遅くなりましたが投下乙です

32 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/11/27(土) 21:13:24 ID:TZjgpG820
    \           ヽ         |         /             /
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       閑 散 と し た ス レ に  救 世 主 が ! !
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 ゙、   `ー--<´   /      ̄| | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | ̄       ゙、  >−一'′   ,'
  y'         `ヽ/     /  | |        | | ヽ      ヽ '´         イ

33 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/12/05(日) 11:16:31 ID:Lv679V7i0
ダレモイナイ
ぬるぽするならいまのうち

34 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/12/05(日) 11:52:44 ID:UaMFVhhs0
がっ
見ている人がちゃんといるのだ

35 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/12/08(水) 17:37:54 ID:0DRntM8Q0
保守





ぬるぽ

36 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/12/08(水) 18:52:33 ID:blPkIqXR0
がっ

37 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/12/15(水) 14:28:20 ID:b7zj2ztx0
保守・・・・いたしますの

38 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/12/23(木) 10:28:06 ID:lKTGhnwl0
保守

39 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/12/27(月) 14:19:04 ID:4yKEZqTc0
保守しますの

40 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2010/12/31(金) 14:52:10 ID:GXTiXpIs0
眼が覚めるとそこは地下室であった。ナナシ49世(以下N)「あれ、窓が無い、玄関も。」
そこにホテルのメイドと思しき若い女性の姿があった。N「チェックアウトしたいのですが」
メイド「ここは地下2階です。この階段を2つ登れば窓口ですよ。それからそのすぐ近くには
ビュッフェがあります。ここは新鮮な魚介類が売り物です。」
空腹に耐えかねた彼は言われるままにビュッフェへと向かうのであった。

さて、この街はどの作品のどこでしょう?

41 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2011/01/02(日) 00:56:26 ID:hQZbhez9O
ぬるぽ

42 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2011/01/02(日) 10:20:36 ID:Hzh57qtt0
ガッ

43 名前:[1/8] 修士 ◆B1E4/CxiTw :2011/01/05(水) 02:12:21 ID:UpO1TqDS0
前回>>26-30

【崩れ落ちる英雄】

ゾク「33か月前。我々は、外世界からの干渉の存在を示唆する証拠を得た。
   それは、無名書の解読による新たな知見である。
   ただしこの外世界はアーシュ、お前のそれとは異なるものも含むと推察される。
   そのことは後に話そう。

   お前が初めて『無名祭祀書』に触れたとき教えたな。これらは謎多き書籍だと。
   実はその少し前、レオ王国の所有するその一冊が解読されていた。
   その書には、魔導の大いなる祖と敬愛される賢者トートに関して、
   曖昧ながらも恐ろしき事実が示唆されていた」

ダグフ「我々がこれまで、数々の伝承や書に見てきた彼の姿は、英雄的であった。
    しかしこの無名書には、それと異なる、無視できない記述が存在した。
    『その活躍は、償いきれぬ彼の原初の罪と生きる罪を忘れさせるように
    大きく賞賛された』、と。

    そしてレオ王国が導いた一つの仮説。それは、彼の人間としての評価を
    根底から覆し、他の無名書の解読と併せて、この仮説はほぼ確定した。
    別の箇所に記載されていた彼の呼称『長爪の賢者』と、二つの罪。
    原初の罪とはすなわち、『裏切り』だ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・2週間前。

昼から夕方に差し掛かる時間帯。
その人を最初に見つけたのは、どうやら僕のようだった。
道の通っていない裏の林から出てきたその人を見て、僕とバル君は少し戸惑う。
その顔が、紫がかった黒さと異様に細長い耳を持っていたからだ。

それはこれまで幾度か見かけた、ダークエルフという種族のものだった。
彼らはエルフと同様、老いが表れにくいのだが、
エルフのような数百年の生は持たず、人間と大差ないという。
だから、皺がわずかに刻まれた目の前の顔は、壮年ではなく老年のものに違いない。

そして、ただの布切れのようなその身なりは、以前旅の扉を訪れた際に鉢合わせた、
ゴッドサイド出身の修道者を思い出させた。
その彼が、バル君を見て言う。

?「・・・・・その服装は先生のお弟子さんだね。
  すまないが、ひとつ頼まれてくれるだろうか。クリフト先生か、
  無理なら・・・・ダグファとゾクのどちらかでもいい。
  ノームが来たと伝えてくれ。・・・私は2号館の1階にいる。
  ・・・・先生方の研究室はまだあそこにあるのだろう?」

その人(ダークエルフ人というべきか)が衰弱していることに、僕は気づいた。
僕と大差ない上背を保ってはいるが、棒切れ一本の支えなく立つ様が奇跡に思える。
それが老体の印象を僕らに与え、そして何よりその表情は疲労、労苦の塊だった。

ノーム「心配ない」

僕らの心を貫く言葉だった。・・・・・やがてその人は、再び歩き出す。

バル「あ、ご無理はなさらずに!」

慌ててバル君がそばに付き添う。
どうやら、僕が急ぎ学校に戻る係となったようだ。今の時間だと先生は・・・・・

44 名前:[2/8] 修士 ◆B1E4/CxiTw :2011/01/05(水) 02:13:44 ID:UpO1TqDS0
・・・・・・・・・・・・・・・・

『本当に、そう名乗ったのだな!』

僕の知らせを聞いたゾクさんの、最初の言葉だ。
傍にいたダグファさんは黙っていたが、同じ気持ちだったのだろう。
僕に強い視線を向けていた。

一階には既に、あの人とバル君が椅子で待っていた。
すぐに右手の廊下からクリフトさんが、ペトロさんと、
クリフトさんを呼びにいったダグファさんを連れてやってくる。

ノーム「皆様お久しゅうございます。お元気そうで」

二、三の社交辞令が交わされた後、ダグファさんが、
クリフトさんの部屋に向かおうとノームさんに促す。
そして三人が、上階への階段に進み始めた。

ゾク「二人ともありがとう。
   ペトロ。先生との話が中断してすまなかったな。
   我らは少し席を外す」

先の三人にゾクさんも加わり、僕ら三人が残った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

廊下の途中で不意にノームは立ち止まり、話を始めた。
聞けば、彼はまず先生と二人で話したいという。
その言葉に三人は少々戸惑ったようだが、
互いの顔を見合わせると、結論は早かった。

クリフ「・・・・わかりました。
    二人ともありがとう。後は私で大丈夫だ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ペトロ「ごめんなさい。よくは知らないの。でも・・・・私が来たばかりの頃、聞いたわ。
    昔先生から独立した人に、そういう名前を。ほらアーシュ、あなたの部屋。
    あの部屋は前に、あの人が使っていたのよ。あれはええと・・・・・何年前かしら」
ゾク「24年になる」

振り返ると、ゾクさんが戻ってきていた。

ゾク「まあ独立か。ノーム先生もここを離れた一人でな。
   お前が来るよりも10年前も前に、ここを旅立った。
   まだ私の経歴が、武闘家としての方が長かった頃だ。
   当初は、どこを訪れたとか、どこを後にしたとか、
   そんな話を人づてによく聞いたものだ。

   ダグファやお前のような実践技術ではなく、魔導知識に大変造詣が深いお方でな。
   当時それは、師であるクリフト先生を超えるとも評されていた。
   ・・・・正直言って、まだご存命とは思わなかった。
   もうかなりのご高齢・・・・・90に近いはずだ」

45 名前:[3/8] 修士 ◆B1E4/CxiTw :2011/01/05(水) 02:16:50 ID:UpO1TqDS0
・・・・・・・・・・・・・・

クリフトはノームの弱々しい動きを気遣い、ソファへ座るよう促す。
ノームも限界だったのか、静かに腰を下ろした。

ノーム「おお・・・・久しぶりにご尊顔を拝見しました。
    幼少の頃、一度だけお目にかかったことがあります。
    ご高齢だったが、それでも聖女のような雰囲気をまとっておられた。
    ・・・・・あれからもう、何十年になるでしょうか」

それは、壁に掛かった大きな肖像画の顔。
向かいに座ったクリフトもまた、その褐色の老婦人を見つめていた。

クリフ「ミネアさんと二人、北の賢者、南の賢者と呼ばれた時代もあった」
ノーム「先生はまだお元気そうで」

クリフトは、その言葉の奥に潜む言葉に返すように、腕の紋章を見せる。

クリフ「私も年だよ。もういろいろなところにガタがきてる。
    ・・・・・ふふ。・・・・・これを言いだして出して何年になるだろう。

    でもこの紋章は色あせない。
    彼女が亡くなった後、これが呪いの刻印に見えたこともあった。
    友の消えゆく様を見届ける宿命の刻印だと。・・・・・昔の話だ。」

ノーム「・・・・・・お伝えしたいことがあります、先生。
    ここに無名書を持参してきました。旅先で発見したものです。
    ついに解読に成功いたしました。
    私が得た知見をどうか、先生のお耳に。
    そして・・・・・再び旅立つ私をお許しください」

・・・・その日ノームが語ったことが世に洩れることは、ついぞなく、
歴史の闇に消えることになった。


・・・・・・・・・・・・・コン、コン。

ダグフ「・・・失礼します」

ダグファが部屋に入ると、つい先ほどまでノームが着ていた布切れが、
主人の体だけ失ったかのように、無造作にソファの上にあった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ゾク「結論を述べよう。
   賢者トートは、人間ではなかった。そして彼こそ、
   忌まわしき魔物帝国にて魔王の右腕として働き、奴隷を虐げていた者だったのだ。
   彼・・・・いや、彼という呼称すら正しいのかわからないな。

   とにかく、彼がいつ帝国に現れたのか、それはまだ不明だ。
   確かなことは、人の生の及ばぬ永きにわたって彼は帝国に存在し、
   そして最後には、帝国を裏切ったということ。
   さらに彼は、帝国の者からも『知の彼方の使者』と呼ばれ、恐れられていた。
   その記述に類似し、真実を掻き消すように幾通りも書かれた、魔物と彼の関係。

   我々の常識は今、崩壊の危機にある。
   そう、賢者トートが、『別世界の生き物』である事実によって。
   そして我々はそれこそ、『生きる罪』の意味ではないかと考えているのだ」

46 名前:[4/8] 修士 ◆B1E4/CxiTw :2011/01/05(水) 02:17:59 ID:UpO1TqDS0
・・・・・・・・・・・・・1週間前。

昼の光が降り注ぐ会議室。
毎日この時間は、クリフトと3名の弟子が集い、
学園の運営をはじめとする諸連絡が交わされている。
バルはこの会議に参加していない。彼はまだ若すぎるのだ。

ゾク「失礼します」

まず最初はゾクが

ダグフ「失礼します」

数分ののちにダグファが

ペトロ「失礼します」

最後にペトロが入室してくる。

クリフ「・・・・それでは始めましょう」

・・・・・・会議は粛々と進み、1時間ほどで散会となる。
ダグファは研究室へ戻り、ゾクは担当する講義の準備へ。
そしてクリフトとペトロは、クリフトの部屋に向かっていた。
会議の中で、この後二人で話し合うことが決まったためだ。

・・・・・・・・・・・・

ペトロ「失礼します」

クリフトが部屋に入るのに続き、彼女が部屋に入る。

クリフ「ちょっと待っててくださいね」

彼は中央の応接机を挟んだ向こうに進む。
それを見て彼女は、少し気を落ち着けたのだろうか、
入ってすぐ横の本棚をふと見た。

ペトロ「そういえばせんせ


ヒュン!!


・・・・・そのとき彼女は、その体に不釣り合いなほど素早く、体を左に逸らした。
間一髪のところで彼女は、壁に突き刺さる黄金の矢を交わす!

ペトロ「な・・・・え!?」

壁の矢からゆっくり動いたその視線の先には、
彼女の一瞬の隙を突いて虚空から魔法の矢を呼び出し、
今も矢を放った左腕を前に突き出している、師であるはずの男の姿があった。

47 名前:[5/8] 修士 ◆B1E4/CxiTw :2011/01/05(水) 02:19:31 ID:UpO1TqDS0
クリフ「私がわからないとでも思ったか」
ペトロ「!」

クリフ「君は昨日、一昨日と体調を崩していたね。部屋で臥(ふ)せていたとか。
    迂闊だった・・・・君を気遣って面会に行かなかったからね。
    だが・・・・・こうして目にした以上、私は騙されないぞ。
    答えてもらおうか。ここへ何しに来た。
    そして・・・・・本物のペトロはどこだ!」

?「そ・・・・な、何のことなのか、理解しかねます」

・・・・・・・・・ふと、彼女は彼から視線をわずかに外す。
それは、百戦錬磨の者こそ気にする動きだった。
その視線に彼が一瞬つられる・・・・その瞬間だった!


シュッ!!


彼女の体が、クリフトの横を通り抜け、正面の窓へ飛び跳ねる!
彼は体をぐるりと反転させ、その手から威圧の呪文を放った!
それを見ていた彼女は、進路をとっさに変更し、左へ逸れる。

一瞬の間も置かず彼女は、執務机の左から、低姿勢で走り出す。
それは、クリフトが反転した方向とは逆。視界が切れるその空間を狙うもの。
彼女は一瞬だけ、腕を左右に振る! クリフトの迎撃は一瞬遅れた。


ドシュッ!!


小さな手から飛び出したそれは、ヒャドという小さな氷の呪文。
彼女はクリフトの動きを鈍らせ、その脇を通り抜けようとした。
しかし直後、彼女の目の前に黄色の矢が、柵を形作るように降り注ぐ!
彼女が一瞬止まると、再び上方から、彼女の四方を囲うように矢が降り注いだ。

彼女は矢を左右に交わし後ろに飛び戻ると、再び窓から飛び出そうとする。
しかしそれは叶わなかった。そこには既にクリフトが、封印の呪を施していたのだ。

そして彼女は一瞬で考え直し、炎が広がる閃熱呪文、ギラを放つ!
クリフトの眼を熱と眩しさで曇らせつつ、机の上から彼を飛び越そうとする彼女。
間髪おかずクリフトは、その手から、竜巻の呪文バギを繰り出す。
彼女は、羽織っていたローブを翻してその突風を受け流し、空中で方向転換をする。

面高の低い応接机と、向かい合うよう置かれたソファ。
その傍らに着地するまでの一瞬の間。今度の彼女はイオの弾幕と、
先ほどのバギで舞い上がった机の上の本を一冊、彼に投げつけた。
次こそはと、彼女は壁に向かって一直線に飛びつつ、拳に力を込める。

しかし、彼女の動きは捉えられていた。
クリフトは一瞬で攻撃を払いのけ、彼女の動きに割り込むように突進した。
体位を整え彼は彼女の前に立ちふさがり、その両手首を掴み取ろうとする。

・・・・・・応接机の傍ら。先ほどと一転し、
組み合う二人の小手先で、小さな動きが繰り広げられ・・・
やがて、クリフトが彼女の腕を完全に掴み取る。

ギ、ギ・・・・ググ・・・・
皮膚のしなる音が聞こえ、力の攻防はここに拮抗した。

48 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2011/01/05(水) 02:45:23 ID:PWjkd3fe0
乙です!

49 名前:[6/8] 修士 ◆B1E4/CxiTw :2011/01/05(水) 08:09:37 ID:UpO1TqDS0
?「・・・・・っく・・・・」
クリフ「モシャスに・・・・・マヌーサの呪文を重ねたな。
    ペトロの色をまとったか。だが、・・・・くっ・・・・私には効かない」
?「・・・・っち!・・・・あるいはとは思っていたが・・・」

その言葉が言い終わる間もなく
透明な脱皮を行うかのように、彼女の顔が上から変わり始める。
それは、彼女を包んでいた呪文を彼女自身が解除したからだろうか。
そこに現れたのは、赤毛のペトロとは似ても似つかない、短い金髪の女性だった。

二人が強烈に睨み合っていたのは、ごく短い時間だったはず。
それでも、彼女が意を決し頭突きをしてクリフトの目線の下に潜り込み、
彼の拘束を素早く解いたとき、互いの息は肺の奥であがっていたに違いない。

・・・・それでも彼は、その足掻きを逃がさなかった。
一瞬振り返った彼女の動きを読んでいたかのように、
その両袖と肩の肉に、今度は赤い矢を何本も突き刺した。

・・・・・・・・・・・・・

?「・・・はぁ・・・・うう・・・・・?」
クリフ「力が入りませんか? 呪文を封じる力です」
?「・・・・・・・・・」

彼女は身をよじり、その拘束具合を確かめる。
肘から先は動かせるが、矢の先端部に手を動かそうとすると
なぜか力が抜け、だらんと落ちてしまう。
要所に物理的拘束を加えた、汎用性の高い術のようだった。

?「・・・・・・・・・」
クリフ「ペトロはどこだ」
?「・・・・・・生きてると思う?」

このとき、彼女の挑発にいささか気を荒立たせてしまい、
そのぎりっと握られた拳の真意を見抜けなかったことが
彼の最大の過失となった。

彼女の右肘から先だけが力強く振りあがるのと、
最上階に座すこの部屋の天井に、空につながる穴が
強烈な音を伴い開かれたのは、ほぼ同時だった。

武闘家の技にわずかに目を細めつつ、クリフトは手のひらを彼女に向ける。
彼女の右腕は完全に体に張り付き、動かなくなった。

クリフ「もしまた動けば、呼吸以外の全ての動きを封じます」

・・・・・そして、彼女の力は目に見えて抜けていった。

50 名前:[7/8] 修士 ◆B1E4/CxiTw :2011/01/05(水) 08:10:49 ID:UpO1TqDS0
ふぅ、と彼は一息吐いた。
これで一応は落ち着いただろう。
あとは彼女の四肢をさらに強力に拘束にし、ダグファかゾクを呼べばいい。
そして一刻も早くペトロの安否を確認しなければ。

・・・・・・そのとき、穴を開けた際の一瞬の隙に乗じて取り出したのか、
ローブで覆われた彼女のもう片方の腕に、何かが握られているのを、彼は知った。

一条の考えがクリフトの頭をよぎる!
すぐに彼は、彼女を完全に拘束するため、呪文を発動した。
しかしわずかの差で、彼女の持つそれは宙に投げられた。


ビュン!!


彼女の姿は、一瞬にして上方の彼方へと消え去った。
その左腕から投げられた『キメラの翼』の効力によって・・・・・。

彼は残された穴を、自らの不備を強烈に責めつつ見上げていたが、
最後の大きな物音の在処を探しに、同じ階の者たちが扉を叩いたのを聞くと、
きりっと表情を正し、扉を開けた。

クリフ「驚かせてすまない。ダグファとゾクを呼んでほしい。大至急。
    それと、後でペトロの部屋に行く。
    ・・・・え?彼女? ここにはいないよ」

・・・・・・・・・・・・・・・・

その後、眠りの呪をかけられ
部屋のクローゼットに押し込まれていた、ペトロの姿が発見された。
それは、いかなる呪文をもはねのける特殊な効力を持ち、
彼女はしばらく間眠り続けることとなった。

やがて、ペトロを名乗っていた女のおおよその行動が判明した。
体調を崩したと称した彼女は、それでも少しは勉強したいと言い、
関係者だけが入れる書庫から、近年新たに加えられた書ばかりを
何冊か持ち出していた。それらの中には、
『アーシュの知識を記載した一連の書籍』が含まれていた。

ノームの二度目の旅立ちと、ペトロを名乗った女の行動。
やがてクリフトは、未来の接合点において
これらに奇妙なつながりが生じる可能性と、
アーシュの存在の意味を強く感じ取ったのである。

51 名前:[8/8] 修士 ◆B1E4/CxiTw :2011/01/05(水) 08:13:22 ID:UpO1TqDS0
・・・・・・・・・・・・・・・

クリフ「ペトロは今も、部屋で眠っている。
    あの偽者の狙いは、君の知識だった。

    そしてもう一つの問題だが、無名書に記されているのは
    君の世界のものだけではないと、我々は解釈している。
    少なくとも、賢者トートは君とは別の世界から来た可能性が高い。

    さっきガーデンブルグのハルサのことを話したね。
    彼がもし本当に別世界の知識を得ているとしたら、
    それは、これらとはさらに異なる世界のものかもしれない」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

細かい話はもう思い出せない。
いろいろなことを一気に聞かされたからだろう。
でも、最初のやりとりだけは鮮明に覚えている。
昨日僕らは、あの会議室に呼ばれたんだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

クリフ「バル。君は来月に立身の儀を迎えるね」
バル「は、はい。来月で21になりますので・・・・・」
クリフ「君を大人として迎える最後の儀式だ。君は我々と、同等の立場になる。
    そしてこれから話すことは、我々が共有すべきことだ」

ゾク「アーシュ、君もだ。
   君にまだ望郷の念があることは、我々も承知している。
   心して聞いてほしい」

そして、円卓の向こうに座るゾクさんが、口を開いた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『――それでは、先日送付いただいた論文に対する質問書をお送り致します。
今回も詳細は別紙をご参照ください。
差し当たり、論文の2ページ目、装置駆動部の詳説が話題の中心となっております。
それでは、毎々のことで恐縮ですが、ご回答をよろしくお願い致します。

ファン・モール学園科学研究所 所長:バーズ』


アーシュ
HP 17/17
MP  5/5
<どうぐ>携帯(F900i) E:旅人の服 ゾロフの靴
<呪文> ホイミ メラ

52 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ :2011/01/05(水) 17:21:22 ID:lQA07nXq0
投下乙です。
緊迫した戦闘シーン、そしてついにアーシュさんの知識が世界を変えるところまできましたね。
次回も楽しみにしております^^

末筆ながら、作者さんやこのスレの皆さまにとって有意義な年になりますよ〜に♪


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