1月16日
カザーブ近辺に住むという熊をも素手で倒すと言う武闘家。
どんな男だろうか。
東洋の武術タイキョクケンを極めた達人なのだろうか、
黄金の国ジパングで伝わると聞くジュウドウの達人なのだろうか。
一度お手合わせ願いたい。
1月17日
ロマリアの遥か南の砂漠にあるというイシスという砂漠の国を目指すことにした。
ノアニールに行っても先が見えないし、やはり大きな町の方が情報も多いだろう。
それに、カザーブに居ても得るものが何もない。
道中、アッサラームという町があるとのこと。ここを中継地点にしてイシスを目指すことにする。
アッサラームと言えば、噂で聞いたことがあるが、どうも夜の方が賑わっているらしい。
一度は行ってみたいと思っていた町だ。
着くのが楽しみだ。
1月18日
取り合えずアッサラームを目指して東に進んでいたのだが
どうやら道に迷ったららしい……あたり一面雪景色だ。
進路を正すために南下をはじめたのだが、中々思うようにいかない。
この気温の中薄着で凍えそうになっているのに、さらにこの辺りの魔物はかなり手ごわいのだ。
先ほどなど自分の倍はあろうかというグリズリー三体に襲われた。
思ったよりも素早い動きで一体が突進してきた
私は鉄の槍を構え、紙一重で避けたのだが
一体目のすぐ後ろに二体目が待ち構え、その鋼腕を振りかざしてきた
間一髪奴の攻撃を盾で受け止めることが出来たが攻撃が重い・・・
受け止めた左腕が後ろに弾けるようにのけぞり、体制が乱れた
そこに最後の三体目が二体目の後ろに隠れ、牙を剥き倒れかけてる私の頭に噛み付いてきたのだ
必死だったのでその瞬間は覚えてないない
ハッと見ると灰色の毛皮の分厚い胸板に深々と突き刺さる鉄の槍だった
私は何とか覆いかぶさるグリズリーから槍を抜いて、息を乱しながらも残りの二体に身構えた
しかし奴ら見かけによらず何と狡猾な連中だろう
最初の攻撃も、巨体を活かし獲物に対し死角を利用して一直線で波状攻撃を仕掛ける戦法なのだ
およそ獣が考え付くような戦い方では無いのだが…
しかし今はそれどころでは無い・・・
先ほど不覚をとったが次はそうはいかない
再び一体目が大地を揺らし突進してきた
私は落ち着いて後ろに跳び、その獣の顔面にメラを放った
直撃とはいかなかったが動きを止めることが出来た
そして一瞬の隙をつき奴の懐に潜り込み右足を突く
苦悶の表情を浮かべた巨体は右足に力を込め、仁王立ちの様になり私をなぎ払おうとした
しかし私は更に屈みこみ、一体目の…さらに二体目の股もすり抜けた
完全に虚をつかれたらしい獣の背中に渾身の突きを入れる
奴の毛皮は随分厚いらしく、一瞬鉄の槍が曲がりそうになったが
手ごたえは十分だった・・・
この日記を書いているという事は私はもちろん健在だ。
背中を突かれた三体目は絶命し、手負いの二体目は戦意を喪失し森の中へ逃げていった。
死闘を終えた私はふと倒れている獣の毛皮に目がいく…
これほどの獣の皮を持ち帰ればそれなりの値になるだろうと考えた私は毛皮を拝借することにした。
まあ自分に商才が無いのは百も承知だが、これから目指す町アッサラームは市が盛んと聞く。
頭の中でそろばんは弾きながらクマの皮をはおり、改めて目的地へと向かうことにした。
P.S 日記を書きながら思ったこと・・・三体はちょっと多かったなぁ
1/19 晴れ
毎日暑い日が続く。
ロマリア東の大橋を渡ってからはそれなりに高地だと思うのだが。
熊の毛皮がやたら重く感じる。
アリアハンでは見たこともないような高さの山脈を左に見ながら、
アッサラームに向けてひたすら南下。
キャットフライ、あばれ猿など、以前はまるで太刀打ち出来なかったような敵が
次々に襲い掛かってくるが、今はそれほど怖くない。
落ち着いて一匹ずつ仕留めながら町を目指す。
図らずも、アッサラームに着いたのは夜。
噂に聞いたとおり夜だというのに祭りのような喧騒が街を包んでいる。
街に入ってすぐの宿屋に部屋を借り、大きな荷物を置いて外へ出てみる。
気候のせいだろう。
夜だというのに肌をあらわにした娘たちが
男の手を取り何やら怪しげな家に入っていく光景が見られる。
と、思っていたらこんな無骨な自分にも声をかける声があり、思わず身をすくめる。
「…お兄さん!気持ちいいことしない!?」
………妻よ、息子よ、神よ、我を許したまえ。
一人旅というものは本当に辛いものなのだ。
この土と血で汚れた体をたまにはいたわってやっても良いではないか…。
…などと思いながら、手を引かれるままに一軒の店に入ったら
俺と同じような風貌のおっさんが経営しているマッサージ屋だった。
本音を言えば少しガッカリもしたが、この親父、腕はめっぽう良い。
数十分の会話の中に、
東の山中の洞窟に暮らすホビットの話が出てきた。
どうやら、あの山を越えるにはそのホビットに話をつけなくてはいけないらしい。
魔王の根城がこの大陸の東にあるのなら、
いずれは寄ることになろう。記憶に留めておくことにする。
若く美しい娘に見送られ店を出る。体が軽い。
次に、この街の夜の名物らしい踊りを見る。
今まで見たどのモンスターとも、どの人間にも
似ていない腰の動きを見ていると、
また変な感情が湧き上がるがぐっとこらえ、劇場を出、宿屋に戻る。
明日は毛皮を売ったり、
情報収集をしたりして1日が終わるだろう。
1/20 曇り
宿屋の朝ごはんは
不思議な平焼きのパンと豆のスープにとろりとした果物。なかなかうまい。
宿屋の主人にあいさつをし街に出る。
朝とはいえ日差しが強いので、
皮の帽子を脱ぎ、街の人々がしているように白い布を頭にかけるとだいぶ涼しい上に、
なんだか自分が異邦人ではないかのような錯覚も楽しめて気分が良い。
街を端から歩いて見たのだが、この街の店はどこも怪しい店ばかりだ。
友達だから高く買え、買わないと死んでしまうなどとわめきながら、
眼光鋭いまま泣いたふりをするような連中ばかりが店主をしている。
恐ろしい街だ。
だが、被害にさえ遭わなければこれもまた経験と割り切れる。
この先どんな変わった街や人々、食べ物に巡りあうだろうか。
グリズリーの毛皮2枚はなんと1560Gで売れた。
この街でこんな暑苦しい毛皮を必要とする人間は少ないが、
世界中から訪れる商人たちには需要があるとのこと。
臨時収入があったので晩飯を少し豪華にしてもらう。
ぐんたいがにの岩盤焼は最高の美味であった。