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1/21 晴れ

数日かけてアッサラームの南を歩いてみることにした。
宿の主人に今日の分の食事と、干し肉と木の実を大量にもらい街を出る。

すぐ海に突き当たったので、海岸に沿って南へ進む。
この辺りでは、アッサラーム周辺では
見かけなかったモンスターを時折見かける。
バリイドドッグの亜種だろうか?
毛並の赤い巨大犬が群れで歩く姿を見かけ身を潜める。

どこまで行っても海岸線。昼過ぎに、海へ入ってみる。
よもや、1月に海水浴をする機会があるとは思わなかった。
改めて土地の違いを感じる。
水は少し冷たいがとても気持ちいい。

小さな木陰で軽く食事と昼寝をしたあと、海岸線に沿ってまた歩き出す。
そのあとは夜遅くまで歩を止めず、
岩陰を利用してテントを貼り、寝る準備をした。
1/22 雨

久しぶりの雨。とは言え霧雨程度の雨。
遠めにも目立つ巨木の下で雨宿り。

周囲に落ちていた、まだ濡れていない枯れ枝や木の葉を拾い集め焚き火を起こす。
そして、直前に倒したキャットフライの腕を切り落とし、
木の枝で翼をぴんと伸ばして塩を降り、遠火で炙る。

しばらくすると羽の部分がパリパリになり、腕からはじゅうじゅうと脂が滴り始める。
鼻がひくつくほどのいい匂いが漂ってくる。
アッサラームの宿屋の主人から聞いた食べ方だがなんともオツなものだ。

熱々をさっそく頬張ってみると、うまい。
翼部分は歯を当てれば割れる薄さと固さで、香ばしさがたまらない。
腕の部分では特に肉球部分のとろりとした食感がうまかった。

やはり土地の人間は土地のモンスターの調理法を心得ているものだ。
陽が沈んでから雨がやんだので、荷物をまとめ、しばらく南へ歩いた。
1/23 晴れ

湯冷ましを飲み、干し肉と3種の木の実で朝飯にする。
よく噛み食べる。

そういえば、モンスター達は普段何を食べているのであろうか?
人間が襲われる話はよく聞くが、
その人間が食べられたという話は、襲われる話ほどには聞かない。
機会があれば観察してみよう。

荷物をまとめひたすら南下していくと、
夕方頃にようやくこの巨大な半島の最南端へと到着する。
噂に聞いていた通り、遠く南西の空が怪しい暗雲に覆われているのが微かに分かる。
あの暗雲の下に魔王の根城があるのだろうか?
それとも他の何かが待ち受けているのか?

真上に視線を移すと、
夕陽で朱色に染められた大きな雲たちが速い速度で東に流れていく。
視線はそのままで地面に寝転がり、しばらくアリアハンのことを考える。
息子は元気でいるだろうか?妻は泣いていないだろうか?
じいさんはまだ生きているだろうか…?

少し感傷的になっていると何者に声を掛けられる。
驚き、半身を起こして後ろを振り返ると、旅慣れた感じの若者が笑顔で立っていた。
話を聞くと、名をハリスと言う26歳の傭兵らしい。
確かに、鎖かたびらの腰に挿した細身の剣が様になっている。

素性はともあれ久しぶりの人間の客人に心が浮き立ち、晩飯を共にする。
ハリスにもらったキャタピラー団子がうまい。外はカリッと、中はとろり。
ハリスと遅くまで語りあい、笑いあった。
自分がこんなにおしゃべりだったとは。
1/24   晴れ

ハリスと別れ際にお守りの薬草とある書物を貰った。

『呪文[聖風] 1巻』

開くと文字が沢山書いてあった
実際本を見ながら呪文を唱えることはできる。
しかしそれは魔物からしばらく目を離すこととなり、普通暗唱をするのだ。

呪文の暗記はとても難かった(私だけかもしれない…)。
とりあえず暗記を終え、試しに暗唱に取り掛かる。
…多少つっかかる部分はあるが、なんとか唱えられそうだ。
呪文は覚えれるだけでなく、それに相応した知能と精神力が必要だ。
私はこの呪文に認められることができるのだろうか…。
1/25 快晴

アッサラームより南西を目指すが、見渡す限りが砂漠で休める場所が見付からない。
先程食べた団子で手持ちの食料も底を付き、しばらく狩ることにした。
臭い袋を地面に置き、獲物がかかるのを待つ。
10分間読書をしていると、サソリ1匹と地獄のハサミが1匹かかっている。
地獄のハサミを鉄の槍で突くと、貫通した(偶然柔らかいところを突いたのだろうか)。
サソリを見ると、なんと大王ガマがのんびりと食べているではないか。
後ろから槍で突くと、舌で反撃してきた。私はそれをかわすと、もう一撃槍をぶち込んだ。
大王ガマはぐったりした。その後、驚くことに大王ガマは口から金を吐き出したのだ。
たった23Gだったが、旅人から奪ったのだろう。
火付けはアッサラームで購入した爆弾石を使ってみる。
(爆弾石とは爆弾岩を砕いた物で、世界中に普及しているが高価な品物だ)
爆弾石と爆弾石を打ちつけると簡単に火花が散った。
それを獣の皮に当て、炎を作る。
地獄のハサミは生の方が美味しい。
貫通させた傷口からナイフで殻を剥ぐ。すると中から瑞々しい白い肉と汁がジュワーっと出てきた。
大王ガマは丸ごと焼き、肉をナイフでさいの目切りにする。
噛み難い肉だが、これもまた汁が堪らず美味い。
そうこうしているうちに日が暮れていた。
辺りも大分涼しくなり、満腹になった私はうとうとしている。
すると、火に集まって来たモンスターの大群が!
…暴れ猿2匹にミイラ男が3匹
じりじりと迫ってくるモンスター達。
私は薪として燃やしていた檜の棒をミイラ男の1匹に投げつけた。
ミイラ男は一瞬怯み、すかさず鉄の槍を入れる。しかし暴れ猿の1匹に持たれ、引っ張り合いになったが負けてしまった。
もう1匹の暴れ猿に後頭部を殴られ、ミイラ男2匹からボディーブローを入れられる。
鉄の槍を奪われた私は、やけくそながらも神に祈りながら呪文を唱えた。
刹那、時間が止まると思うと、私の体の周りに風が巻き起こっているのを感じた。
風は私の体から離れると、ミイラ男を一撃、切り裂いた。
驚いた暴れ猿は逃げ、鉄の槍を手に取ると、私は呆気に取られている。ひどく体がだるい。

私の記念すべき初めての呪文…『バギ』との出会いだった