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2/11 晴れ

打ち寄せる波の音で目が覚めるというのは良いものだ。
それに新鮮な魚介料理の香りが混ざっているのはなお良い。
軽い歯ごたえの柔らかいパン(生地が幾層にもなっていた)
と香ばしい焼き魚、クラゲのスープで朝食を取る。

朝食後少し街を歩くと、
若い恋人同士が海辺のテラスで幸せそうに何かを語り合っていた。
この国もまだ魔王の被害が深刻ではないのだろう。
だが、遅かれ早かれこの国にも魔王の手が伸びるに違いない。
船を持つこの国の王が、魔王の根城に関する情報を知っていることを願う。

ポルトガ王との謁見の時間。
驚いたことに、王は自分の名も、旅の目的が魔王討伐であることも知っておられた。
だが期待した船を貸して頂くことは適わなかった。
その代わり、アッサラームの東の山裾の洞窟に住むホビットの話を聞かされた。
名をノルドという王の古い友人らしく、紹介無しではその洞窟を通ることは出来ないらしい。
紹介状を頂き、大事にしまう。

王の話によると、魔王は南の大陸の中央に拠点を置いているらしい。
以前アッサラームの南を調査した時に見た
空の怪しい陰りはやはり魔王の根城からのものだったか…。

その他の話は食に関するものばかりであった。
なんでも東の国には刺激の強い食べ物が多く、王の大好物らしい。
そのコショウというものを山ほど持ち帰れば、船のことも考えてやらんでもない…とのこと。
本気か冗談か判りかねる…。

明日はノルドの洞窟へ向かおう。
2/12 曇り

ポルトガは瓶の文化が発達しているので、
マリン亭の主人に昼と夜の分の食事も作ってもらい、大きめの瓶を背負って出発。

アッサラームまではキメラの翼を使うことにした。
市場の雑貨屋でキメラの翼を買い、街外れへと向かう。
ここは人も空気も心地よい街で、こんな旅じゃなければもっと長居したかった。
いつか家族を連れてゆっくりと楽しみたいが、それも魔王を倒してからだ…。

ポルトガの街外れまで行き、
キメラの翼を握り締め、アッサラームのあの雑踏を思い浮かべて、翼を掲げる。
一瞬の浮遊感があり、目を開けるとそこはもうアッサラーム。
思い浮かべたのが夜のあの喧騒だったので、昼の街並み軽く違和感を覚える。

洞窟へ向かう前に、ホビットのノルドの事を
知っている者がいないか街を歩き回ってみる。
すると、とある怪しげな露天商の老主人が手招きをしてくるので付いて行ってみることに。

…これが間違いだった。
小さな家に招かれてすぐに怪しげな酒を飲まされ、
ほとんどノルドとは関係ない話を延々聞かされるはめに。
こちらが口を挟む間もなく、矢継ぎ早にまくしたてるため席を立つことも出来なかった。
そして酒のせいかいつのまにか眠りについてしまったらしく、
目が覚めたら夜になっていた。なんということだ…。

目が覚めたら覚めたで頭痛がする。
しかたなく宿を取り、早めに寝ることに。
2/13 曇り

朝起きてもまだ頭痛が止まず。
宿の主人に壷から汲んだ冷たい水をもらって一息で飲み干し、一息つく。
1日無駄にしてしまったので、朝飯を済ませ、早々に準備をしアッサラームを出発。

暴れ猿やキャットフライも敵ではなく、昼ごろには山の麓にたどり着き、
麓の森に沿って歩いてたら洞窟を見つけた。
人…ホビットだが…が住むだけあって荒れた様子もなく、中も少し明るく見える。

小さい洞窟で、大人が3〜4人も歩けば幅いっぱいになりそうだ。
数分歩くと左手奥の明かりが強まってきた。
ノルドを驚かさないように「誰かおらぬか?」と声をかけながら進む。
左に曲がると中ぐらいの大きさの部屋があり、一人のホビットがこちらを睨んでいた。

ノルドどのですかな?と声をかけると、
「いかにもわしがノルドじゃが、あんたは…?」と警戒を解かない。
ポルトガ王は友人だと言っていたが、人間嫌いなのだろうか?
と思いながらふところに仕舞ったポルトガ王からの手紙を取り出そうとすると…それがなかった。

慌てて他のポケットや荷物入れを探してみるがどこにもない。
「いや…私はアリアハンから来たオルテガと言う者で、ポルテガ王の紹介を受けてここへやってきた」
と言おうとするも、妙に慌ててしまい舌がうまく回らない。
ノルドを見ると明らかに不審者を見る目をしており、壁の斧にも目をやった。

なんとか落ち着いて、一から事情を説明するとなんとか話を聞いてもらえたが、
やはり王の推薦状を持っていない者を通すわけにはいかないらしい。
ポルトガに一度戻るべきかと悩んでいると、ノルドがこう言った。
「しばらくわしの仕事の手伝いをせんか?」

というわけで、手伝いと引き換えに洞窟を通してもらうこと。
さて、これからどうなるやら。
2/14 雨

昨日寝る前に考えたが、
紹介状はアッサラームの老人に取られたのだろう。
モンスターが凶暴なこの辺りでも、鉄の装備に身を固めた戦士はそうはいない。
怪しい酒で酔いつぶし、金目の物を盗ってやろうという魂胆だったのか…。
あんな物に口を付けた迂闊な自分が許せない。

…朝からノルドの手伝い。
イシス・ポルトガに行ってたので気付かなかったが、先日この地方で少し大きな地震があったらしい。
街はほとんど無傷だったが、震源地に近かったこの洞窟では
奥のほうで大規模な落盤があったそうで、それをどかす仕事だ。

奥へ行ってみると確かに洞窟は埋まっており、
さすがに怪力のホビットでも一人では難しそうだ。
紹介状があったとしてもこれでは通ることは出来ない。

結局、昼飯を挟んで一日中ずっと岩運び…。
たまの一休みで外に出ると木陰が涼しいことだけが救いだ。
晩飯に出た岩盤焼は美味であったが、さすがにくたびれてしまった。

明日に備えて早めに寝よう。
2/15 晴れ

ノルドはすごい男だ。
旅に出て一月半、自分も相当に逞しくなったと自負していたがとんでもない。
自分が苦労して運ぶような大きさの岩を、2つ両肩に乗せてのっしのっしと運んでいく。
もしかしたらホビット族の背が低いのは
重いものを持ちすぎたせいではないだろうか…?

一度打ち解けるとノルドは気のいい男であった。
ホビット族の文化のこともよく話してくれるし、なにより口笛が旨い。
この狭い洞窟の中で、汗臭い男2人が
ただひたすら岩を運んでいたら気が滅入ってしまうところだったが、
ノルドの陽気な口笛のおかげでずいぶんと疲れが和らいだ。

とはいえ、岩は運んでも運んでも、文字通り山ほどある
基礎体力を鍛える修行だと思い、頑張っていこう。

今日は聞けなかったが、
明日はポルトガ王と知り合ったきっかけでも聞いてみよう。