「筒井康隆風」の物語

投稿期間 2005/05/04
スレッド 『もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら』

「オトマリハヨンゴールドデス」
俺は頭を掻き毟った。
「目が覚めたら知らない世界の宿屋にいたんです」などと言ったら、
きっとあのデブでハゲな課長は「ははあ、ついに君も気が触れてしまったようだ。
夢と現実の区別くらいはちゃんと付けたらどうかね」と嫌味を言うに違いない。
「オトマリハヨンゴールドデス」
「4ゴールドで泊まれる事はもう知っている。266回も聞いた。俺も馬鹿ではない。
大抵の物事は一度聞けば理解できる。問題はここがどこか、なのだ。
何度も言うように今日俺は大事な会議がある。9時までに出社して準備をしなければならない。
こんな場所で宿屋の店番をしているおまえにはわからんだろうが、
何か失敗をするたびに嫌味なハゲに胃壁をすり減らされるんだ。
聞こえてるのか?それともおまえは聾なのか?」
「オトマリハヨンゴールドデス」
「ははは、これで267回目だ」どうやら俺は白痴の聾に267回も話し掛けていたらしい。
壁に向かって話しているようなものだ。
「いいかこの片端。俺は7時に起きて身だしなみを整えて、朝飯を食い、
8時には駅に向かう。すし詰めの通勤電車に30分も揺られて出社するんだ。
息の臭いデブに嫌味を言われ、OLに話し掛ければセクハラと言われる。
何がセクハラだ。腐ったバナナみたいな顔しやがって。おまえの顔がハラスメントだ。
そして今日みたいな会議があればデブ、ハゲ、嫌味の三拍子揃った愚鈍どもに向けてプレゼンをするんだ。
わかるか、この精薄。ここはどこだ。どうやったら東京に戻れるんだ」
「オトマリハヨンゴールドデス」
ついに俺はおーいおーいと泣き出してしまった。
それが元の世界に戻れないという悲しみではなく、会社に行けないという悲しみである事に気付いて更に泣いた。
「オトマリハヨンゴールドデス」
複雑な感情が入り混じった俺の脳に270回目の声が響いた。
「オトマリハヨンゴールドデス」 

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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら@2ch 保管庫