奥さんが元夫に謝りたいと言って涙を流しながら見舞いの許しを請う。 当然関係者は怪しんだ。この状況では奥さんが報復しかねない。 本来許されなかったが、奥さんが嘘をついているように思えなかったことと、元夫が動かないことがあってこちらの監視を許してもらう約束で受け入れられた。 遮断機を使って金属探知器を欺いてナイフを持ち込み。監視係が目を離した隙に夫を殺害。 監視員は二人いたが、状況から油断していたうえ、下剤の入った手作りクッキーを食べさせられたため役をなさなかった。 奥さんは、こんなことをしたのにのんきに眠っているのが許せなかった。自分の手で殺してやりたいと思った。といっている。 「あの男は苦しんで死んだ?」 「麻薬や鎮静剤の多用、麻痺していて苦しまなかったかも知れませんね。」 「そう。」 「男のしたこともああですし、罪は考えたよりは軽くなるでしょう。」 「そう。」 「犯行が計画的なのと、23年前浮気してますね。その時は元旦那さんに問題があったとは証明しにくいことです。そこでちょっと突っ込まれるかも知れませんが。」 「あの人自分のどこが悪いのか、何で愛想尽かされたのかちっとも気づいてないのよ。だから我慢ならなかったの。」 「はい。」 元夫についての愚痴は何度も聞いた。 奥さんによると、結婚生活は自分に何もさせてもらえず退屈で、さらに行動の節々からにじみ出る食わせてやっているという恩着せがましい夫の態度が嫌で嫌でたまらなかったらしい。 「どうしろって言うんでしょうね。この年でもう三度目の結婚なんて、無理よ。」 「その点で保護が得られると思いますよ。」 「あいつは最後まで苦しまなかったのね。」 話を変えた。 「苦しかったと思いますよ。生前、ひどい目に遭ってましたから。」 「あなたには解らないのよ。あの人は自分で責任を負うことがないの。逃げるだけよ。 人から誉められたいだけなの。誰も愛していないのよ。 それに、そこまで言うなら遺体の写真を見せて。」 「 」 「問題はないでしょう。見せなさい。それに私は被害者で、元妻よ。」 「 はい。」 もう目覚めない男をみて女は叫んだ。 不可思議な理想世界に逃げ込み、ついには逃げ切った男は、実に幸せそうな顔をしていた。