次の日メイサさんにシェーナの街を案内してもらった。
なんでもライフコッドで祭があるのは今から3日後らしい。

「でもバザーは今日でおしまい、商人達は皆必死よ、きっと良いお買い物ができるわ」

そういったメイサさんの笑った横顔は少し寂しげだった。
バザーが終われば、ここにいるほとんどの人がいなくなるのだろう。
少し複雑な感じだった。
プレイ中にこんな事を考えるなんてなかったから。

「今日は何を買うつもりなの?」

「へ、あ、と…武器とか、薬草を調達しようかな~…っと」

考えている最中に話かけないでもらいたかったなぁ、なんて思いながら歩いていると辺りから商人の声が飛び交う。

「さぁ安いよ!安いよ!薬草が安いよ!薬草6こと聖水1つ!あわせて50Gだよ!」

「革の鎧が230Gのところ200Gだぁ!さぁ買った買った!」

「革の盾が115Gだ!」

とりあえず

「メイサさん」

「何かしら?」

「つかぬ事をお聞きしますが…どれがどのお金に相当するのでしょうか?」

私はこの世界の通貨をよくわからないのだ、財布の中に入っているお金が使えなかったら…とりあえず財布の中身をメイサさんに見せる。
100円玉と10円玉ばかりが入った恥ずかしい財布だったが、その100円玉と10円玉が両替の対象になるとは意外だった。

「案外お金持ってたじゃない!」

「それはどうも…アハハ…」

占めて1250G
とんでもねぇ…ありがとう愛と信頼のゴールド銀行。
お札に至っては「何?この紙きれ」と一蹴されてしまった、が、まぁそれは元の世界に…

「戻れるのかなぁ…」

「え?」

ふと放った一言。
それと共に涙が流れた。
メイサさんが私を落ち着かせようと懸命に話かけるが、その内容はまともに聞こえていなかった。

…
……
………
…………
……………

「…落ち着いた?」

「うん…」

心配そうに私の顔を見る1人と1匹。
私はたまらなくなって話したのだ。

起きたらトルッカの宿にいたこと、自分の姿が他の人に見えてなかったこと、サスケに出会ったこと、夢見る井戸に飛び込んだことも、冠職人のおじさんを助けたことも、全部、全て。

「頑張ったんだね」

馬鹿、そんな事言わないでよ、私の緩んだ涙腺からさらに涙が分泌されるじゃないか。
涙でまた顔がぐしゃぐしゃになる。

「…じゃあこれからどうするの…?」

そうだ、泣いていても元の世界に戻れる事はないだろう。

「とにかくライフコッドへ行きます…もしかしたらヒントがあるかもしれない…」

「そう…頑張ってね…!」

「はい!」

そのあと薬草セット6セット分と大きめのリュックサック、水と日持ちのよさそうな食糧を購入した、武器はめぼしいものが見つからなかった。
地図はメイサさんからせんべつとして買ってもらった。
その日、疲れた私は食事をとる事なく眠りについた。

そして次の朝、朝食中、私はライフコッドに向かうとメイサさんと冠職人のおっさんに言った。
朝食を済ませると貸してもらっている部屋に戻る。

昨日買った薬草セットの1つをコートのポケットに入れ、財布と残りの薬草セット、地図と食糧はリュックの中に詰め込んだ。
これに私の命がかかっていると言っても過言ではない、それから靴の紐を解けないようおもいっきりかたく締める、まるで自分自身に言い聞かせるように。

「入るわよ」

どうぞ、と私が言うと青色のワンピースのような服と一降りのナイフを持ったメイサさんが入ってきた。

「ちょっとしたものだけど…役に立つと思ったから持ってきたわ」

「ありがとう、メイサさん」

なんでもこの世界での旅人の基本的な装束らしい。
元着ていた服はメイサさんの家に置いていく事にした。
宿代には不十分だとは思うがこれが精一杯だった。

青色の服に袖を通すと、麻が入っているのか、少しチクチクとした。

私の旅が始まるんだ、不安より期待の方が大きすぎるような気がした。

モンスターの知識もあるのだからと言うのが要因だろうか、私は着替えを済ませると後ろから視線が。

 人
(゚д゚)

「こっち見んなw」

旅に乙女心はいらないとわかった。
服にはソードベルトなるものがついていたのでナイフはそこにいれる事にする。
リュックを背負い、サスケを肩に乗せる、ついにお別れだ。

メイサさんには気をつけてねとか忘れないでとか、辛くなったら来てとか言われた。
おっさんも、また来いと行った、その時に髭面の間から涙が見えていたのがわかった。

歩き出した時、後ろからメイサさんの声が聞こえる

「行く前に、名前、教えて」

私の名前…

「星良[セイラ]!星に良いって書いて星良!」

「また会おうね!セーラ!」

こうして私の長い旅が始まった。

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