「ジロウ聞いて。僕の大冒険した物語を!」
「冒険なんてどこでしたのタロウお兄ちゃん。」
「不思議な世界だよ。僕はそこでお嫁さんまで貰ったんだ!」
「わー! お兄ちゃん現地妻ゲットだね!」
「ジロウ、どこでそんな言葉覚えたの?」
「それでそれで、その世界でどうしたの?」
「いろんな人や犬に助けられていろんなところを冒険したよ。」

「知らない人ばっかりで寂しかった?」
「はじめはね。でもみんな親切だったよ。それにね。」
「それに?」
「しなのさんとヨウイチさんっていうこっちの世界の人もいたんだ。」
「お兄ちゃんと同じようにその世界に行っちゃったんだね。」
「そうみたい。それでね、僕はその世界で石版を手に入れたんだ。」
「石版?」
「うん。それでおうちに帰れるっていう話だったからね。」
「ふーん。不思議だねー。」

「でもね。石版で帰れるっていうのはサクヤって人の嘘だったんだ。」
「えー、悪い奴だね。」
「しかもね、石版は魔王を復活させるためのものだったんだ!」
「怖いよぉ! でも、魔王って何?」
「凄く悪い奴だよ。僕が吠えたおかげで復活を阻止したんだぞ。えっへん!」
「お兄ちゃんすごいねー。」

「それからみんなでサクヤと戦ったんだ。酷いんだよ。嘘ばっかりつくんだ。」
「サクヤというよりヤクザだね。」
「最初は仲間の振りをしていて最後に正体を現したんだ。」
「飼い主に手をかまれるとはこのことだね。」
「そうだね。……あれ、ちょっと違わない?」
「そいつはお兄ちゃんがやっつけたの?」
「やっつけたのは勇者さんたちだよ。でも僕も活躍したんだぞ。」
「魔王は復活しなかったんだね。」
「ううん。最後は魔王が復活して僕はこっちに帰ってきたんだ。」
「なにそれー。」
「あのね。魔王は勇者に倒されなきゃいけないんだって。」
「うーん、不思議な世界は複雑だね。」
「魔王が復活して全てが元通りになって僕も帰ってこれたんだ。」

「ところでさお兄ちゃん。」
「なんだいジロウ。」
「お兄ちゃんが吠えなきゃもっと簡単に帰ってこれたんじゃないの?」
「駄目ー! それは言っちゃ駄目なの!」

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