おうやっと来たか。おせーぞてめーら。とっととやまたのなんとかってやつ倒して帰るぞ。
俺は寒いんだ。



ぃぎやぁぁぁぉおおおぁぁぁおううううぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!
パンツ。

ぞうぢょーーーーぢゃーーーーんんん!!!!!!
勇者。

二人とも俺の声を聞くなり涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして奇声を上げながら
飛びついてきた…おいコラ!あっ鼻水ついたきたねっつの!離れろ!あーもう!
こいつらほんと涙もろいな。何はともあれ俺たちはようやく合流した。

絶対来てくれるって信じてたんだ!

勇者が満面の笑みで言う。いいから顔ぬぐえ。まだ鼻垂れてんぞ。俺たちは嫌な空気が
プンプンする洞窟の中へ入った。なんて事はない普通の天然洞だ。

へックシュッ!クシャミが止まらない。勇者が総長ちゃんはこんな寒いのにそんな薄着でウロウロ
するから風邪ひくんだよとかぬかしやがる。いや誰のせいで…そういやこいつら二日間も何してた
んだろうか。ねーちゃんに聞いてみる。

やまたのおろちについて色々調べ事してたのよ。強敵だから。でもあまり有益な情報は
得られなかったわ。一つだけあったんだけど…弱点が

おいおい弱点だなんて有益この上ないじゃないか。さすがねーちゃん。

どうやらやまたのおろちの苦手な植物がこの辺に生えているらしいの。それをつかってつけたお酒を
使えばかなり動きを鈍くできるみたい…ただそのお酒探し回ったけど見つからなかったわ。
一軒だけ置いてるお店見つけたんだけど最後の一本旅の人にあげちゃったみたいで…
正攻法で攻めるしか無いわね。

うーむそんな貴重な酒を持ってくとはかなりの酒通の旅人ですな。しかしもしかしたら簡単に
退治できたかもしれぬのに実に残念ですな。


やべ。俺は持っていたビンをそっと捨てた。だって飲んじゃったんだもん…この二日間凍死せずに
すんだのもこの酒のおかげ…神酒だけあって確かに燃えるようなうまさだった…

総長ちゃんぶつぶついっちゃってるけど頭大丈夫!?もしかして風邪が頭まで回った!?

………。仮にそうだとしても普段のおまえらよりは正常な自信はある。絶対に。

そうして俺たちは巨大な門の前に着いた。

しかしでかい。しかも開いてない。鍵はかかってないようだがこんなもん開けれるか。
おいおいこれじゃ開かなねーぞどうするよ?なんだよ。はいはい。わかりましたよ。
俺とパンツは左右の扉の前に立つとあらん限りの力を振り絞って押した。
く…ピクリともしない。ねーちゃんが俺とパンツにバイキルトをかけた。力が漲る。
ふんッ…ぬうううう…ぬおおおおおぉおぉぉぉ…

血管がはち切れそうになりながら必死になる俺とパンツ。やがて扉は少しづつ開いていく。
ある程度開くとあとは惰性でわりと楽に開いた。

熱い。さっきまでの寒気が吹き飛ぶほど熱い。なんだこの熱気は。
そりゃそーだ。これは溶岩だ。所々地面の隙間から熱気が噴出している。
とにかく俺たちは進むしかない。汗を拭いながらひたすら歩いた。
そうしてたどり着いた先は行き止まりだった。一際大きな空洞で立ち止まった。
つーか熱いだけで何もねえ。
…ん?今微かに地面が揺れたような。いや気のせいだろう。気のせいという事にしておこう。

…やはり揺れている…。

……しかも徐々に振動が大きくなる。みんな終始無言だ。

ねえ…ちょっと…揺れてない…?

勇者がついに口を開く。あーあやっちゃったよ。こいつ明らかにズラの人に向かってカツラですか?
って聞くタイプだな絶対。ここは総長としてみんなを鼓舞しなければ。
先頭を歩いていた俺は振り返る。

いいかおまえら。例えこれから相対する敵がどんな怪物だとしてもだ。例えどんな
山のような化け物だとしてもな…鬼浜爆走愚連隊は最強だという誇りをもってだな…

なんだ?みんな目が点になっている。俺の顔になんかついてるか?そんなジロジロ見んな。
おっさんがガタガタ震えながら後ろを指差す。何だよまったく。
俺は後ろを振り返った。そしてとんでもないものを目撃した。

………ダッシュ……

俺が小さな声で呟くやいなやそれはそれは凄い速さで転進した。おそらくマッハはでていた。

むおおぉぉぉぉおおぉぉぉ!!!!!!!!!

全員さっきの扉をこえると一気に閉めた。今度はみんなで閉める。必死だ。
落ち着け。あまりの突然の出来事に引き返してきてしまった。逃げてどーする…

おーーーーーーっきかったねー

勇者が半笑いで言った。まあ確かに笑うしかない。冷静に記憶を呼び覚ましてみるが
とりあえず頭らしきものが三本見えた。あれに胴体がついて…うーん…
とにかくとんでもないデカブツだ。これは気を引き締めてかからなければ俺たち全員
あの化け物の胃の中に納まる事になる。

ガンッ!!!ガンガンガンッッッ!!!!!!

突然金属音が響き渡る。どうやらあのデカブツが扉を叩いているようだ。

ガンガンガンッ!!!!ガンッ!ガンッ!

…ちょっと様子見るか。

ガンッ!!!ガンガンガンッ!ガン!!!!!!

あーうるせえ!わかったわかった今すぐぶっ飛ばしやるから静かにしてろ!

俺が扉を開けようとするとねーちゃんに止められた。

待って…妙だわ。もう少し待ってみて。

暫くして音は消えた。どうやら帰ったようだ。

やっぱり。やまたのおろちは自分ではこの扉開けられないわ。

え?どういう事だ…?理解するまで三秒程かかった。つまりだ。あのデカブツは
自力でここを開けられない。でもはジパングを襲われている。

わかったでやんす!アイツは透明人間になって瞬間移動できて空を飛べるで
やんすね!?とんでもな化け物でやんすな!

…つまりだ。自力でここを出れないとなると何者かがここをいちいち開けている事になる。
そして国を襲わせていると。一体何の為にだ!?謎だらけだ。

どうやらやまたのおろちを退治すればいいだけの問題じゃなさそうね。

ねーちゃんが難しそうな顔をする。とりあえず俺たちは一旦引き返して出直す事にした。


パンツが腹が減ったとごねるので飯にする事にした。ここでいいんじゃないさっきも
寄ったしと勇者が立ち止まる。げっここは…ここは例の酒屋だ。ヤバイバレる。
おいここはやめて別のとこにしようぜなんか辛気臭い店だしってオイ!総長である
俺を差し置いて勝手に店に入るな!あーあ行っちゃったよ。

中に入るなり店長と目が合う。意味深な目で見つめる俺。いいかくれぐれも俺に神酒を
渡した事は喋るなよ…そんな視線。店長はコクッと頷いた。通じたようだ。
やはり真の男同士は目で語れるものだ。店長イカスぜ!あんたも漢だ!

あなたはさっきの!生きてたんですね…!神酒は役に立ちましたか!?

一気に俺に集まる視線。な…なんだよその目は!見るな!こっちを見るな!
まあいいわとりあえず座りましょうとねーちゃんが誘導する。

さて。うんそうだな。まあここは英気を養うためにまず一杯…ピシッ!
ねーちゃんの張り手が持ちかけた俺のグラスを叩き落した。やっべ目が座ってる。
仕方がないので酒は一旦諦めて真面目に会議をする事にする。

議題は二つ
・どうやってあのデカブツを葬るか。
・誰があの扉を開けて町を襲わせているのか。

デカブツは本気だせばどうかなるだろ?大体酒飲ませて動けなくなったとこ襲うなんて
男の闘い方じゃねえ!

…………。まあいわ。それよりも問題はあの扉。まず考えられるのは魔王軍。
でも私はこの線は薄いと思う。

…なんと。大本命をいきなり切り捨てやがった。てかありえねーだろ。わざわざあんな
化け物をけし掛けたり閉じ込めたり繰り返す様な奇特なバカは魔王以外いねー。

しかしねーちゃんが続ける。

魔王軍なら一気に滅ぼしてしまうと思わない?なぜ中途半端に襲わせるのかしら。
見たところこの町に目立った被害わないわ。生贄が要求されるくらい。
そんな回りくどい事をするメリットなんて無いわ。見せしめに一気に潰した方がいいもの。

……なるほどな。そう言われりゃそーだ。じゃあ一体誰が…
あの洞窟は普段人は近寄るのかとねーちゃんが店長に尋ねる。店長曰く国の御触れでなるべく
近寄らないようにとの事だそうだ。近づいたら牢ぶっこむぞって程でもないが、
あまりいい思い出の場所でもないので滅多に自発的に行こうという人はいないらしい。

益々行き詰る。いや行き詰るというよりはなんだろうこれは。強烈な違和感を感じる。
……………。まさかな。そんなはずはない。ねーちゃんと目が合う。どうやら同じ事を
考えていたようだ。

ヒミコの所へ行こう。

まさか国が犯人だとは思えない。ただこんな大掛かりな事をできるのは魔王軍かこの国の
機関かのどちらかだ。少なからず何かは知っているはずだ。

勇者とおっさんは難しい顔をしているが仕方ないと頷いた。パンツは寝ている。
俺達は店長一家に礼を言うと足早に城を目指した。

衛兵の制止を振り切り俺達は中に入った。そしてヒミコの前に立つ。
勇んで来たはいいものを何をどう説明しようか。やべこのままじゃまた只の侵入者だ。
と、ねーちゃんが簡潔に事情を説明した。ひみこはため息をつくとそこにいる全員席を
外せと命令した。

実は…確かにおかしいのじゃ。突然解けた封印。姿を見せるが実際大して暴れたりはせん。
しかし封書で生贄を出せと要求する。無論あの化け物がそんな事できるわけは無い。
その存在だけで国の民は脅えおる。

コイツは本当に何も知らなさそうだ。……………。よし。明日もう一度あの洞窟へ行こう。
面倒くせえ。ごちゃごちゃ考えるのはアイツをぶっ飛ばしてからだ!

すまんな勇者殿達よ。

勇者はいいんです頑張ってきますと笑顔で答えた。決戦は明日だ。



次の日。さすがに今日は誰一人寝坊する事はなかった。パンツですらキチンと起きたのだ。
奇跡。やれば出来るじゃねーかと話かける。ちょうちょが…ちょうちょが…
寝ぼけてるのか何言ってるのかさっぱりわからない。いや違うこれは寝ぼけてるのではなく
寝ているのだ。体は起きているが頭は寝ている。さすがパンツ侮り難し。

俺達は真っ直ぐ洞窟を目指した。中に入る。一度来ているので今回は進むペースが早い。
迷うことなく扉の前に到着した。一気に開ける。





最深部に奴はいた。咆哮が腹に響く。無意識に後ずさってしまう。チクショウ前に出やがれ
俺の足!みんな完全に気持ちが呑まれてしまっている。ここは先陣きって俺が行くしかない!

俺はダッシュで一直線にデカブツを目指した。ねーちゃんがすかさず補助呪文を唱える。

いくぜええええぇぇぇぇえええ!!!!!!!!
ガキィィィィィィィイイイインンンッッ!!!!

金属音が洞窟内に響き渡る。コイツなんて硬い皮膚してやがんだクソが!…え?

信じられない光景だった。俺の愛用ドラゴンキラーが真っ二つに折れた。

おいおい!ドラゴンキラーとは名ばかりか!いやいや有り得ないから!そしてデカブツと目が
合う。ゆっくり口を開ける。ははは…次の瞬間凄まじい炎が放たれた。一瞬にして目の前が
真っ赤だ。ねーちゃんが反射的にかけてくれたフバーハのおかげで何とか持ちこたえる。
が、痛い。超熱い。

隣では勇者とパンツが必死に切りかかっていた。炎をギリギリでかわしつつ刃を立てる。
しかし聞こえるのは乾いた金属音だけであまりダメージはないようだ。

…仕方がない。俺だってバカじゃない。こんな超規格外の相手に丸腰で挑んだりはしない。
昨日一晩考えて奥の手を用意しておいた。毒を以って毒を制す。目には目をデカブツには
デカブツを…!

ド ラ ゴ ラ ム !!!!

いや正直かなりの賭けだった。イケが一回使った呪文を見よう見真似で使うことは。
だがしかし!俺は!賭けに!勝った!ぬをををををおおおおおおおっっ!!!!!!!!

これは…凄い…!

ねーちゃんが唖然としている。そりゃそうだ。俺のドラゴラムはその辺の奴のとは
訳が違う。このデカブツを一目見たときから考えていた。こんな化け物に勝てるのは
ヤツしかいない…そう…幾度と無く日本を壊滅させかけ、終いにはニューヨークにまで
遠征かけた…

ドラゴラムは呪文を唱えた本人の能力やイメージが強く反映されるわ。
ただこれは…禍々しいというか何というか…そうこの世界の生物ではないみたい…!

当たり前だ!俺たちのヒーローをこんな世界のチンケな竜なんかと一緒にすんな!
今日俺は「ゴジラ」の名においてコイツを倒す!!!!!!!!!!!!!

野生の本能かデカブツは即座に俺を敵だと判断すると飛び掛ってきた。
それでもまだなおデカブツの方が二周りはデカい。だがしかし!ゴジラの名において
敗北は許されない!俺は正面から取っ組み合った。

ぐんむぬぬぬガアアアアアァああグアアああッッ!!!!!

巨体がぶつかり合う。もはや小細工無しの力と力の真っ向勝負!
俺の強烈なパンチが炸裂する!が、相手はたくさんある頭で同時に噛み付いてくる!
ぐッ…これはズルい…キングギドラですたら頭3つだったと言うのに…
俺は渾身の力で全身を叩きつける。体が小さい分小回りが利く。一撃の重さに劣るなら
こっちは手数で勝負だ!洞窟内に硬い皮膚と皮膚がぶつかり合う鈍い音がこだまする。
しかし徐々に押され始める。コイツは文字通り頭数が多すぎる!
ふんぐああぁぁぁぁぁ!!!これでどうだああああああ!!!!!!
力任せに一つの首を締め上げた。フロントチョークみたいな状態だ。そうとう苦しいのか
他の首が一斉に暴れだした。体中噛み付かれてボロボロだ。放さねえ!絶対放さねえ!
やがてゴキッと鈍い音があすると締め上げていた首の力が抜けた。

ぎゅアアアアアアァアアァ!!!!!!

さらに追い討ちと俺は口から強烈な炎を吐いた。温度でこそのダメージは薄いものの強烈な
圧力により相手は怯む。チャンスだ。一気にタコ殴りにする。俺の鉄拳連打が完全に相手を
捕らえた。

一瞬グッタリしたように見えた。まじかよ…コイツは一体何処までタフなんだ!?
直に体制を立て直し反撃に出てきやがった。残った口という口から猛烈な炎を吐く。
衝撃に押されて後退する俺。

バギッックロスッッ!!!!!

ねーちゃんの起こした真空波がデカブツの炎を切り裂き顔面に命中した!
助かったぜナイスねーちゃん!立て続けにパンツが同じ箇所に一撃を見舞う。
この首も動かなくなった。

お父さん…私に力をかして!…ラィッディイイイインンッッ!!!!

勇者が強烈な雷を落とした。こいついつのまにこんな強い呪文を…

ギャアアアアオオオオオオオオおおううウウウウ!!!!!!!

これはさすがにかなりのダメージを与えたようだ。悶絶するデカブツ。
よしここで俺が一気にカタをつけてやる!あれ?なんかコイツさらに巨大化してないか!?
デカブツの目線がどんどん高くなる…いや違う!これは俺が縮んでるんだ!!!

…元にもどっちまった…。だがこの好機は逃せねえ!炎が効かないなら逆を攻めるのみ!
くらえ!ヒャダイン!!!!!!氷の刃を含む猛吹雪がデカブツを包む。
凍ったせいなのかはたまた体力が尽きたのかデカブツは動かなくなった。
倒したのか…?おそらく一気にダメージをおって動かなくなっただけよ!ねーちゃんが
叫ぶ。膝の力がガクッと抜けた。ち…ちょいとばかし飛ばしすぎたようだ。
もう一息なのに!動け!ドク…ドク…とバカでかい心音が響く。デカブツの回復力半端ねえ。

ゆっくりとだが動き出しこっちを睨む。こいつどうしたら倒せるんだ!?

まずいわ!体力も回復力も異常だもの!このままでは競り負ける!

次の瞬間デカブツの振り回した頭により勇者とパンツが宙を舞った。
壁に打ち付けられ崩れ落ちる。どうやらパンツが自らを下敷きにして勇者をかばったようだ。
確かにこのままじゃこっちがもたねえ。クソこっちは
5人がかりだというのに…あれ?5人…そういやおっさんどこいった!?

総長殿総長殿…おっさんが話しかけてきた。てめえ無事か!?はい!身の危険を感じた故
あの岩の陰に最初から隠れてました!っていばるなそんなもん!…え!?なんだと?
おっさん曰くあの動きからして頭はたくさんあれど脳は一つらしい。で、その脳の場所だが
全部の首の付け根が怪しいらしい。ほんとか!?

間違いありません!あやつさっきからそこだけかばっておる!わしはずっと見ておった!

この際試してみるしかない。ねーちゃんに回復してもらう。ある程度はこれで動ける。
問題はどうやってその弱点を狙えるかだ。さてどうするか。今こっちの戦力は…
ねーちゃんはほぼ魔力使い果たし、パンツは完全に動けない。残るは俺と勇者。
勇者を呼び寄せる。俺がなんとかしてアイツの注意をひくからお前が剣で弱点を突け。
俺のドラゴンキラーは折れてしまったためこれがベストの選択だろう。
わかったと勇者が頷く。ここで失敗すると勝ち目は無い。気合入れてくぞ!

ねーちゃんが最後の気力を振り絞って竜巻を巻き起こす。デカブツの注意はこっちにむいたようだ。
勇者が駆け出す。よし後は勇者が回りこむまで俺がヤツを引きつけるだけだ。
とりあえず回りこんでることに気づかれてはいけないので派手なの一発かましとくか。
イオ!!!わざと爆発の中心手前にずらした。デカブツは口をこっちに向けると炎を吐く。

俺はフバーハを張ると後は仁王立ちだ。耐え切ってみせる!!!!
熱風が視界を塞ぐ。だがしかし俺は倒れん!!息切れか炎は止まった。
デカブツが大きく息を吸い込む。俺はポケットに詰めてあった薬草を全部口に押し込んだ。

ぐにゃあ!ぐるぢゃらごういびゃ!(コラ!くるならこいや!)

第二波がきた!俺は男の意地にかけて倒れん!…………ぬううううう………
意識が遠のきそうになる。勇者は!?勇者は今どこだ!?勇者がデカブツによじ登っているのが
見えた。もう少しだ。ちくしょうだが目の前の敵はまた大きく息を吸い込む…きた!!!!

やられてばっかじゃないぜ!ヒャダルコおおおお!!!!!!

冷気が炎を押し返す。ぐうううううううう!!!!…だめだ魔力がもたねえ…!
逆に押し返される。多少勢いは抑えられたようだ。なんとか踏みこたえる。

これはもう限界だ。視界がボヤける。デカブツが二重にも三重にも見える。ここまでか…。
総長!起き上がったパンツが体全体を引き摺りながら寄ってきた。そして俺の横に並ぶ。
次の一発が最後になるだろう。その間に勇者が一撃見舞えれば俺たちの勝ちだ。
パンツ!俺たちの根性をあのクソデカに見せてやるぞ!はいでやんす!俺達は肩を組むと
デカブツを睨み付けた!

怒号共に一際大きな炎が飛んできた。耐える耐える耐える!根性なら誰にも負けん!!!!!
全ての力を振り絞った。もはや体力は尽きている。だが時に気力は体力を凌駕する!!!!

イヤああああァァァァあああああぁ!!!!!!!

勇者の叫び声が聞こえる。どうなったんだ?炎が止まりそこに写ったのは深々とデカブツの
首元に剣を突き立てる勇者の姿だった。

さっきまでの激闘が嘘のように一瞬静まり返る。

……グ……グッウィヲヲオオオオオオオオオオオオ…!!!!!!!!!

明らかにさっきまでとは違う苦しみ方だ。七転八倒して大暴れした後、動かなくなった。
勝った…のか…?満身創痍の俺達が集まる。いやーいやいや凄まじい死闘でしたな!
…いや一人だけピンピンしてやがる奴がいた…だが突っ込む元気もねー…

デカブツはもう完全に動かない。コイツ…本当に強かったな。デカイとはいえこっちは五人がかりだ。
おそらく俺一人でタイマンはってたら勝ち目は無かっただろう。強敵だった。
できる事なら墓の一つでも掘ってやりたいがさすがに無理がある。俺達は洞窟を後にした。
みんな疲弊しきっているのか無言だ。おっさんは一人興奮しているが誰も聞いちゃいねえ。
入り口で立ち止まる。どうしたの総長ちゃんと勇者が振り返る。

イ オ ナ ズ ン  ! ! !

轟音と共に入り口が崩れる。数分後岩盤で埋め尽くされ完全に埋まった。
強敵との闘いに敬意を表してこの洞窟をデカブツの墓標にしてやろう。我ながら粋な計らい…
完全に気力も体力も魔力も使い果たした俺はその場で気絶した。

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