「今日はもう寝るかな……」 俺は、あまり意味の無い独り言を呟きながらパソコンの電源を切って、 そのまま、歯も磨かずにベッドにダイブした。 俺はニートだ。 格好良く言えばNEET……いや、大して変わらんな。 まだ17歳だってのに学校にも行かないで、毎日家でダラダラと過ごしている。 部屋から出るのは、ご飯と風呂の時だけ。 外に出るのは、コンビニにジャンプを買いに行くときだけ。 金は親から貰ってる。 働くつもりなんてさらさら無いし、これからもそれは変わらないと思う。 だって汗流して頑張ったって、少しも面白くないし。 (あーあ、もっと面白い世界に生まれたかったなあ) そんな戯言を考えながら、俺はいつの間にか深い眠りについてしまった。 深い眠りから覚めて、俺は大きく伸びをする。 今日もまた、退屈な一日が始まるのか……そう思うと憂鬱だ。 「おはようございます、旅のお方」 「あー、おはよ……ん?」 誰だお前。 目の前のおっさんにそう言おうとして、初めて異変に気が付いた。 「どこだここ?」 俺はキョロキョロと周囲を見る。 まるで洞窟の中みたいに、岩の壁に囲まれている小さな小部屋。 その中に簡素なベッドが二つ置いてある。 「いやですねぇ、宿屋に決まってるじゃあないですか」 おっさんが気味良さそうに笑う。 待て待て。 俺、いつ宿屋になんかに泊まった? 昨日、確かに自分の部屋のベッドで寝たはずなんだが。 心の中でツッコミを入れながら、自分の服装を見てみる。 寝たときの上下ジャージの姿ではなく、滅多に着ないお気に入りの一張羅を着ている。 いつ着替えたっけ? これ何かのドッキリ企画か? 「どうかしましたか?」 ドッキリの看板を探していた俺に、おっさんが話しかけてくる。 「あ……何でもない、です」 とりあえず適当に返事をしておいた。 「ありがとうございました。またおこしください」 一先ず俺は現在地を確かめようと、宿屋から出た。 「えーと……どこだよここ」 外に出ても、ここが何処なんだか、どうして俺がここにいるのかさっぱりわからん。 唯一わかったのは、ここが山で、さっきの宿屋はやはり洞窟の中だったと言うことだけだった。 「夢じゃないみたいだな……」 何度か自分の顔を殴って確認した。 これは夢じゃない、現実だ。 現実だとしたら、何で俺はこんな所にいるんだ? 親がニートな俺に愛想を尽かして山に捨てたか。 ありそうで怖い。 夢遊病患者の様に、ふらふら歩いて来てしまった。 これは無いな。 「まぁ、何でもいいや。どうにかして家に帰るか」 これ以上考えても無駄そうなので、俺は山を降りて家に帰ることにした。 山を降りれば、町か村かがあるだろう。 そこで警察にでも行って、家に帰してもらおう。 そう思いながら、俺は山にあった階段を下りようとして、ピタリと足を止めた。 階段の下のほうに、変な生き物がいたからだ。 マンドラゴラがあらわれた! 続く 名前:俺 職業:ニート HP:13 MP:0 装備:お気に入りの一張羅 現在地:ライフコッド周辺・山肌の道