「◆WVtRJmfCVI」の物語

投稿期間 2005/03/16 ~ 2005/03/31
スレッド 『もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら』

 外が騒がしくて目が覚めた、目覚めの悪い朝だ。
 しかし、起きてみたのはいいが、枕や体に密着するベットの感触が違う。
 首を左右に振ってみる、いや、思い切り見覚えのない家だ、俺の家にはあんなタンスはない、と言うか、賃貸だ。
 酒を呑んだ覚えはない、だから、間違って他人様の家に上がり込んでしまった可能性はない。
 とりあえず、起きて窓を開けるために体を起こす、歩くと床がカツカツ鳴る。
 バタン、簡易的な鍵のかけられた窓を開けると、そこには日本では考えられない風景が広がっていた。
 小さな農村のようだが、明らかにここは日本じゃない。
 まず、日本には上半身半裸のマッスルは歩いていない、牛舎なんて初めて生で見た、さっきからうるさいのは黄色かかった鶏か。
 とりあえず、とんでもないどこかのド田舎なのは分かった、ただ、時間が分からないのはかなりマズイ。ポケットをまさぐって、携帯電話を取り出す。
 ・・・・圏外だ。あたりまえか、電柱なんか一本も立ってないし、電波塔も勿論無いだろう。
 さらに予想外だったのは、時計表示が消えていたことだ、ディスプレイには暗号のような文字がただ書いてあるだけだ。
HP14MP0
Eしふく
Eスニーカー
Eやすもののゆびわ
タバコ
ライター

一体どうなっているんだ

 携帯のディスプレイに表示された謎の文字。HP?MP?見覚えのある文字だが、思い出せない。
 とりあえず、悩んでいても仕方ないだろう。俺はせらせらとそよ風が吹き込む窓を閉じ、一回に降りた。
 幸い、村人は日本語で会話しているみたいだ。土地も分からず、言葉も分からなかったら自殺すら考える所だ。
 宿屋のテーブルで朝食を取っている小太りの男に話し掛ける。
「なぁ、あんた、ここはどこだ?」
「寝呆けてるのかい?ここはアルバート家が統治してるリーザス村だよ」
 益々知らない土地だ。リーザスなんて浮いた名前。日本にあるか?
 セントレアだか南アルプスだか、そんな市町村はどっかにあるみたいだが、少なくとも俺はリーザス村なんて知らない。
「兄ちゃん、旅人のくせに軽装だが、ここからトラペッタやポルトリンクに行く時は魔物に注意しなよ、最近は関所が破壊されたり、昼から魔物がうろついたり物騒だかな」。
 マモノ?マモノってあの魔物か?キーワードが追加されるたびに頭の中が混乱する。
 とりあえず、外に出よう。どうなっているんだ。
「お、おい。兄ちゃん!!」
 宿屋の中から、声が聞こえるが、もはや俺の耳には届いていない。
 右を見ると、やたら巨大な屋敷が見えた、これがさっき言ってたアルバートって家か。確かに裕福そうな家だ。
 魔物に気を付けろと言われたが、所詮小動物か犬だろう。問題ない筈だ。
 焦って宿屋を飛び出してしまったが、心を落ち着かせるためにタバコに火を点ける。
 カチッ。ボッ
 ジッポーライターとタバコがあって本当によかった、これは手放せない
 と言っても、こんな世界にタバコの自販機が置いてあるとは思えない。葉巻くらいならありそうだが。
 携帯灰皿に吸い殻を押しつけ、農場を走り回るガキを尻目に、ゲートを潜る


「また、来てくださいね」
 入り口にいた女性にそう言われたが、もうこの村には帰ることはないだろう。
 気候は穏やか、日も出ていて暖かい。ここら辺は恵まれているみたいだ。
 さっきは気が付かなかったが、塔も見える
 とりあえず、世界地図みたいな物があれば便利なんだろうが、残念なことに持ち金が無い
 辺りを見回していると、死角から音がする
 カサッ。カサカサ
 ・・・・誰だよ。でも、この動き方は人間らしくない
 これが魔物って奴か?
 ガサッ。
「誰だっ!」
 音がする方向に向き直るが、何も居ない

「・・・・気のせい、か?」
 そして、目線をずらした瞬間、鳩尾に深い痛みが走った
「おっふ・・・・」
 紫と白のストライプの。猫?みたいな魔物が、俺の腹に突き刺さっている。気が付いたときには、一メートルくらい弾き飛ばされ、腰から勢い良く落ちた
「クソッ。なんだアイツ!」
 落ちた目線を上に上げると、興奮している魔物がかなりの勢いで突き進んでくる
「うおっ!?」
 体を転がし体当たりを回避する、くさむらまで退避するも、まだこっちを狙っている
「ギャア!」
 奇声を張らせ、三度突撃してきた、冗談じゃない、さっきは必死だったから感じなかったが、まだ腹部が割れる思いだ
 次ぎ食らったらやられる。そう思った俺はとっさに体を起こして、右足を振りかぶる
 猪突猛進。体格の大きな相手にも怯まない敵。俺だってビビッている場合じゃない
 腹部に向けて跳ね上がる魔物に向かって、俺は足を振り上げた。

 ズン。鈍い音と共に、魔物が地を転がる。よし、効いているみたいだ
 断末魔を響かせ、悶えながら絶命する魔物。うまく急所に入ったのかもしれない
 魔物の死体は光となって消えた、跡にはキラキラ光る何かが
 拾うと、それは金貨のようだった。20G。多いのか少ないのか。有り難く頂いておこう
 路地に腰掛ける。ありえない何かとの戦いに、体は疲弊していた
 節約しようと誓ったのにもかかわらず、早くも二本目のタバコに走ってしまう
 思い返せばこの一時間。どれだけの体験を俺はしたのか、目が覚めてみれば知らない土地、外に出れば見たこともない野蛮なモンスターに襲われ、そして そいつを退治した
 奇妙なものだ。そして、体を起こそうとしたその時、頭にぬるりとした感触が走る
 ねぷん。
 俺の頭が青色の液体に包まれた。急すぎる視界の変化に、俺は一瞬でパニックに陥る
「・!?、。!?」
 息ができない。いきができない。いきができない。
 首が絞まる。首がしまる。くびがしまる。
 引き剥がそうにも剥がれない、掴めない。
 死ぬ。そう頭が冷えた瞬間。俺の手が勝手に動いた
 ジッポーライターに手がのび、それが俺の頭を覆っている液体に着火された
 ジュアッ。小さく振動したかと思うと、頭からそれは滑り落ちた
 ・・・・スライムだ。俺は知っている、頭から落ちたそのモンスターを。それと同時に、俺はすべてを理解した。そうか。この世界は・・・・ドラクエの世界か
 光になっていくスライムを凝視しながら、俺は握り締めていたゴールドを地面に落とした

 スライムを撃退するも、満身創痍の俺は、歩くことすらままならないくらいだ
 かといって、このままここに居ては、またいつあのモンスターに襲われるか分かったものではない
「ハァ・・・・ハァ・・・・情けない・・・・」
 普段のヘビースモーキングの賜物か、体力は激減している。ゲームのくせにうらめしい
 千鳥足ながら、壁をつたって、リーザスまで戻ろうとする
 だが、少し勇み足過ぎた、たった五十メートルの距離が千里に感じる
 今更さっきのタックルのダメージが効いてきたみたいだ、口から血がパタパタ落ちる、右足の膝に感覚が無い
 体が熱を籠もって、呼吸が荒い。
「冗談じゃない・・・・なんで・・・・こんな所」
 フッ。俺の目から光が消え、そのまま道端に倒れてしまった

「・・・・生きているのか?」
「分からん、だが、まだ血は渇いていない。ここに倒れて時間は経っていないようだ」
「おい。聞こえるか?おい。」
 頬に二三度、小さな痛みが走る。「うっ」と小さなうめき声をあげ、俺は意識を取り戻した
 だが、未だに視界が暗い。相手の顔が見えない
「瞳孔が開いている・・・・毒にやられたな」
「薬草と解毒草を磨り潰して煎じた薬だ。飲め」
 唇に竹の感触、程なくして、暖かい液体が俺の口に入り、自然と喉を通っていく
「ヴっ。げふっ、あふっ・・・・」
 苦い、そして草の強烈な匂いが俺の胃を刺激する
 苦しそうな数回のせきで、俺の口からは血と一緒に緑色のたんが出てきた
「出たな。よく効いている証拠だ」
「トム、助けたのはいいが、どうするんだ?」
「この大陸では見ない、異国の服装だな。軽装だが旅人だろう。少し戻れば村だ、今日はそこで休もう」
「まだお日様は高いけど」
「なら一人でポルトリンクまで行け。このまま歩けば夜には着くだろう」
「冗談。日が沈めばモンスターも数が増える。それに、夜になったら定期船だって出ないだろ」
 二人の男の会話を最後まで聞くことはなく、そのまま俺は静かな眠りに入った

「もし、もし、お連れの方。もし。」
 若い女性の呼ぶ声に釣られ、俺は重い目蓋を開いた
 さっきの飲まされた薬が効いたのか、視力が回復した
 横に立つ女性の顔を見ると、ホッとしたような顔をしていた
「全然起きてくれませんから、心配しましたよ」
「あ?・・・・あ、あぁ。悪い」
 意識が途絶えてどれくらいの時間が経ったのだろうか、外の景色は暖かい
 どうやら、さっきの村に戻っているようだが、あの時助けてくれた男が運んでくれたのだろうか
 体を起こそうと、腹筋に力を入れるが、ボケた頭が一瞬で覚醒するような痛みが走る
「!?うぁ!?」
「あ、ダメですよ。重傷なんですから!」
 よくよく体を見てみると、肩から腹部にかけて、包帯がびっしり巻かれている
「お連れの方々は、村の方を散策されてますが。あなたはどうなされますか?」
「どうなされますか?って。こんな体じゃどうしようもないだろ」
「あ、そう言う事ではなくて。お食事、なさいますか?って事です!」
「あ、あぁ。なら。もらおうかな、食事」
 そう言うと、宿屋の女性は嬉しそうにほほ笑み、一階へ下りていった
 ふと、ベットの横を見てみると、小さなナイフが一本置かれていた
 手紙も一通
 引きちぎれそうな体を起こし、それに手を伸ばす
「旅の者へ。行き倒れた所を私たちがリーザスまで送り届けた。怪我の治療のために、失礼とは思ったが色々調べさせてもらった。」
 携帯やタバコは抜かれてない、本当に最低限だったんだな
「その際。どうやら武器を持っていないようだったので、力になるかは分からないが。ブロンズナイフを一本置いていく。そして、もし旅路に困っているなら、暫らく私たちと同行してはどうだろうか。返答は夜に聞こう。」
 研き、鍛えられたブロンズナイフを手に取り軽く振ってみたりする。
 手に馴染む、モンスター相手には心許ないだろうが、無いよりはいいだろう
 手紙を見ていると、階段からさっきの女性が上がってきた
「はい。コーンスープとお薬です」
 湯気を立ち上らせ、香ばしいコーンの香りが空腹の俺を刺激する
 ゴクリと思わず生唾を飲む。ナイフと手紙を置き、早速一口いただく
「・・・・美味い」
「ありがとうございます。食べおわったら、少し外の空気も吸ってくださいね」
「あぁ。そうさせてもらうよ」
 俺はぺろりとスープをたいらげ、薬もゴクリと飲み干す、体の調子が見る見るよくなっている
「凄い効き目ですね・・・・あんなに血色の悪かった顔が、もうこんなに・・・・」
「あぁ、こんな薬は初めてだ、心なしか、傷の方も。」
 包帯を解いてみると、紫色に腫れていた腹の傷が塞がっているようだった、直に取り込んだお陰か、効き目も強いようだ
「あ、お連れの方が帰ってきましたよ」
 階段を上がる音。さっきは顔を確認できなかったが、俺を助けてくれた人らしい
 一人は初老のたくましい男性。もう一人は、俺と同じくらいの年の男だ
「もう調子はいいようだな。」
「お陰さまで」
「金は請求しないが、あんたはどうするんだ?まさかこの土地に永住するつもりもないだろ」
「・・・・」
 俺は考えた、だが、もうそんな事は意味はない
 多分、俺がここに居るのは間違いなんかじゃない。きっと夢でもない
 だからなんらかの意味がある。俺はそう、信じることにした
 否定したら、それは何となく、俺自身の存在を否定しているような。そんな気がしたから 「同行させてもらいます、多分、それが最良の選択だと思うので」
「私の名前はトム・ワーカーだ。よろしく頼むよ」
「俺の名前はアーサー・ワーカー。こう見えても、隣のオッサンの息子なんだぜ」
 あぁ、そう言えば、俺の名前を教えていなかったな
「俺の名前は渡部淳。よろしくな」
 こうして、俺はワーカーの旅の仲間になった。だが、その夜。アルバート盟君。ゼシカ不在の中。事件が起きるのを、ただ一人として予知できる人間は居なかった
 ワーカー親子と同行する事になった俺は、移送された宿屋で明け方を待つ事になった
 何の宿命だか知らないが、俺は今知らない世界に生きている。恐らく俺の世界の常識はまったく通用しないと考えていいだろう。
 現に常識ハズレの怪物や、致死の状態から回復させた薬草。軽くK点は越えている
 実にリアルで、実にくだらない世界だ
 しかし、そんな俺でも、夜になれば静々と明かりの消える世界に順応し、深い眠りへ落ちていった

 カーン・・・・カーン・・・・
 何の音だろうか、俺の安眠を妨げる
「出せー!出してくれー!」
 小さな孤島、洞窟内の穴から、濁った声がこだまする
 気味が悪い。ここはどこだよ
 ふと、声が聞こえた
「煉獄島からは出られない。きっと、このまま・・・・」
 煉獄・・・・島?
 カーン・・・・カーン・・・・
「起きろ!魔物が出たぞ!」
 アーサー・ワーカーが鉄鍋を鳴らして俺を叩き起こす
 空は闇。まだ夜中みたいだ
「魔物って・・・・聖水を弾く魔物はここには居ないってさっき」
「レベルが違うんだよ!山の主が出たんだ!」
「主?」
「そう、主だ」
 俺は言われるがまま外に連れ出された、村は松明の明かりで照らされ、私兵団が慌ただしく動き、女性、子供を村の中心へ誘導していた
「ゼシカ様が居てくれれば・・・・」
「弱音を吐くな!たかだか二匹の魔物に何を・・・・」
「アークデーモンとボストロールのどこが「たかだか」なんですか!!」
 シン・・・・ざわざわ煩かった広場に一瞬の静寂
「嘘・・・・お父さんが・・・・」
「ママー、パパの方が強いよねー?」
「・・・・」
 馬鹿だな、何で自分から不安を煽ってるんだよ
「アツシ、俺も親父の所に行く、オマエはあそこで待っていてくれ」
「ハッ、冗談だろ?何で女子供しかいない避難所に、俺が居残らなくちゃならねーんだよ」
役には立たないだろうが、怪我人の避難くらいなら出来るはずだ
「・・・・分かった、革の盾とブロンズナイフ、忘れずに装備しておけ」
「あぁ、分かった」
 腰に巻いたバックルから盾とナイフを取り出す
 軽装で、俺でも知ってるあの怪物に対し、果たして何かの役に立てるのか
 我ながら無謀な行為だが、今更だが馬鹿らしい、あのまま逃げればよかったのに
 山麓の道なき道を疾走する俺とアーサー
「ハッハッはっ」
「どうする?休むか?」
「ウルサイ、余裕だ」
 しんどい。やっぱり逃げればよかった
 と思っているうちに、林を抜けて、採掘所に辿り着いた
 その場は正に惨劇。トラペッタ師団、ポルトリンクに着港していた兵士との連合軍をもってしても、ゆうに三メートルを越える化け物二匹に手も足も出ない状態だった
「アヘ、ニンゲン、ウマイ、バラス」
 ボストロールは正に無邪気に暴れ、槍部隊を一閃でなぎ払い、よだれをバタバタ垂らしてケタケタ笑っている
「ムハハハハ!下らん!下らん!下らんぞぉぉぉ!」
 アークデーモンは仁王立ちの姿勢で師団の攻撃を肉弾で弾き返していた
「剣が刺さらないぞぉぉぉぉ!」
「怯むなー!矢を絶やすな!」
 山に囲まれた広い採掘所で、必死に戦うも、全くと言っていいほどダメージがない。いや、正確には目に見えた傷が付かないといったところか
「ウハッ、イダダキ!」
 ボストロールがこんぼうを大きく振りかぶり、餅を打つ姿勢になった
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃ!」
 見兼ねたアーサーが林から飛び出し、突撃した
「馬鹿野郎、盾を合わせてダメージを分散させるんだ!」
 ダメだ、断末魔やモンスターのおたけびにかき消されて聞こえない
 それに、的になっている兵士は士気がガックリ下がり、完全に腰が引け、一部の兵士は尻餅すらうっている
 流石に敵が強すぎるか
「チィ!そこをどけぇ!」
 武器、防具を放り捨て、兵士を掻き分けて先頭に立った
「プッチンツブレロォ!」
 振りかぶりはスローだったのが、振りおろしは異常なスピードだった
 ゴァァァァァと空気を裂くこんぼうを、アーサーは
「大・・・・防御ぉぉぉぉぉぉ!」
 両腕で受けとめた
 衝撃波が数十メートル離れた俺の所にまで届いた
 煙が巻きあがり、一瞬すべての戦いが止まった
 爆心地にいるアーサーは死んだ。だれしもがそう思ったが、その煙を裂き、アーサーが吠えた
「せいッ拳・・・・突きイィィィィィ!」
 煙が一蹴され、アーサーの右手がボストロールの腹部を抉り飛ばした
 完全にカウンターを取ったアーサー。アーサーはそのまま支持を出した
「今だ!メラを集中させてぶつけろ!」
「行くぞ!メラ!」
「メラ!」
「メラ!」
「メラミ!」
 十人の兵士のメラと、アーサーのメラミが合体し、一つのメラゾーマになった
「ウガ、ウガァァァァァ!」
 メラゾーマは巨大な火柱を立て、ボストロールは黒焦げになってしまった
「ハッ、どーよ。おたくの木偶の坊は炭になっちまったぜ」
 鼻で笑い。アークデーモンを挑発するアーサー
「フン、甘いな」
「何?」
「貴様の統率力は見事だ、しかし・・・・」
 アークデーモンは指をチッチッチッと揺らし、いやらしく笑い飛ばした
「貴様の父親は何処に行った」
「!?」
 そう言えば、先程からオッサンの姿が見えない。まさか
「貴様・・・・まさか・・・・」
「綺麗に消えたな。イオナズンの破壊力には我ながらほれぼれする」
 ドッ。地を蹴る鈍い音、アーサーは既にアークデーモンの懐に入っていた
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 再びせいけん突きのモーションに入るが、遠くから見ていた俺にはアーサーの危機が手に取るように分かった
 アークデーモンのしっぽが、激しくスイングして、アーサーの横腹を抉る
「べふぅ」
 血を吐き出し、アーサーは物凄い勢いで弾き飛ばされた
 数メートル飛んだところで、指を地面に突き刺して無理矢理態勢を直すアーサー。しかし、口からは血がデロデロ流れている
「クソッ」
 アークデーモンの注意がアーサーに向いていると感じた俺は、アーサーが捨てた剣を拾いに走る
 だが勿論。アークデーモンにバレてしまった
「ゴミ虫が」
 アークデーモンの右手が俺の方へ向いた
 キュイィィィィン。右手に魔力が集まり。無慈悲にも、それは放たれた
「メラゾーマ!」
「に、にげぉ・・・・あつ・・・・しぃ」
「クッ」
 剣と盾を拾う、だが、本物の剣はかなり重い。抱えて走るのはキツそうだ、そして、目線を上げると、俺に向かって赤い弾丸が迫ってきた
 本物の火球が俺に迫る。体感は松阪のストレートより早い
「嘘・・・・マジかよ!」
 咄嗟に盾を構える。メラゾーマが直撃するが、何の奇跡かメラゾーマが消滅してしまった
「ま、マジかよ・・・・」
 勿論俺のやったことではない
「フ、敵の死体を確認せずに勝利宣言とは、多少あさはか過ぎたのではないかね」
 俺の背後の採掘洞窟から、トムが飛び出してきた
「ま、マジックバリアだと!」
「そう言うことだ!」
 いつの間にか、俺が抱えていた剣が鞘だけになっていた
「はやぶさ・・・斬り!!」
 疾。十字斬りが、アークデーモンのバトルフォークごと引き裂いた
「ば・・・・馬鹿な・・・・」
 トムの猛攻は終わらない。剣を捨て、気合いをぶつけた
「ぬぉぉぉぉぉぉ!」
 全力で真空波を発生させる。翼をもぎ、体をずたぼろに引き裂き、アークデーモンは俯せに倒れた
「・・・・すげぇ」
 言葉に詰まる。確かにイオナズンを食らったのだろう。トム自身も大ダメージを受けている
 それでこの大逆転。正に奇跡だ
 死んでしまった兵士もかなり居るが、よくここで食い止めたものだ(俺は全く役に立ってなかったが
 緊迫した空気が切れ。思わず尻餅を付いてしまう俺
「ハハッ、力が・・・・入らねぇ」
 苦笑する俺を、生き残った兵士とアーサーは渋い顔で見ている
「・・・・どうしたんだ?」
「後ろだ!アツシ!」
「え?」
 ズッ
 後ろからキツイ衝撃が走る。ハンマーで背中を打ちぬかれた気分だ
 地面を転がる俺は、俺を蹴り飛ばした相手の正体を見た
「ボス・・・・トロール・・・・」
 そいつは黒焦げになっても、まだしぶとく生きていた

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