太陽は高い位置から俺達を見下ろしている。
清々しい日差しがステンドグラスから差し込み、十字架を七色に照らす。
麗かな昼下がり…なのに、俺達の心はどんよりと淀んでいる。

サトチーの腕の中で一通り暴れ、突然電池が切れたように気を失ったブラウン。
ぐったりと動かなくなったブラウンは、シスター達によって治療を受けている。

「ブラウンちゃんは大丈夫。眠っているだけみたいですよ。」
寝室から出てきたマリアの言葉を聞いたサトチーの表情に安堵の色が浮かぶ。
恐らく、俺も同じ表情をしているだろう。

だが、マリアはその青い視線を床に向ける。
「ただ、目が覚めた時に正気に戻っているかどうかは…」
「…その心配はない…だろう…」

気落ちしたようなマリアの言葉を遮るのはスミス。
ブラウンが気になったのか、無理をして日光の中に歩み出たのだろう。
その濁った瞳を眩しそうにこすっている。

「…あの時…ブラウンはプロトキラーの一撃で気を失っていたな…
 …幼いモンスターにはよくある事だが…意識がない状態で強い魔性に触れた時…
 一時的にその意識が魔に支配される事がある…ブラウンの異変はそれだろう…
 意識が戻れば…魔性の呪縛からも開放されている…筈だ…」

…なるほどねぇ…って、俺にはさっぱり理解できない…

「ちょっと待って。あの場にいたのは僕達三人と、あの機械と兵士だけだよ。
 どこに強い魔性の発生源があったって言うんだい?」
サトチーの横槍に、スミスがちらりと俺の方を見る…え?俺?

「知らぬ…」

「……ていっ!」 びしっ!
「……なんのつもりだ?」

ヘンリーのチョップがスミスの頭部に打ち込まれる。
痛みを感じないスミスには全然効いてねえみたいだけど…

「なんのつもり?それはこっちのセリフだろうがよ。スミスの旦那ぁ。
 大層な講釈を並べておいて知らねえはなしだろうが。」
「…ふむ…ならば表現を変えよう…確信はしているが…肝心の確証がない…
 半端な考察を論じた所で…混乱を招くだけだろう…」

チンピラのように絡むヘンリーを冷静に受け流す。
スミスの言う事はもっともだが、どうにも釈然としない。

「…教会の空気は私には合わぬ…サトチー卿…私は馬車で待たせてもらう…」

うやうやしくサトチーに礼をし、修道院から出て行こうとするスミス。
開け放たれた修道院の門から差し込む太陽の光に、眩しそうに手をかざす。
貴族のような振る舞い…従者のような気配り…学者のような知性…
生前のスミスはどんな人間だったんだろう。

「…そうだ!スミス!」

俺の呼びかけに振り向いたスミスに駆け寄り、カバンから出した物を手渡す。

「サングラス…っていうんだけどさ、これを使えば眩しくないだろ?」
「…異世界の色眼鏡か…なかなか良いものだ…ありがとう…」

サングラスを装着したスミスに礼を言われ、思わず後ずさりする。

血色の悪い顔色…バサバサの髪の毛…ボロボロの衣服…そしてサングラス…
似合ってる…似合ってるんだけど…似合い過ぎてなんかヤダ。

        ◇           ◇
「しっかし、あれは説得って言うのかねえ。」
小さな鍵をチャラチャラと振り回しながらヘンリーに問い掛ける。

修道院を襲撃した兵士は、ヘンリーの説得で小さな鍵を俺達に手渡した。
『私は先代のラインハット国王に忠誠を誓った身。
 先代の王亡き今、私の主君はデール様ではなくラインハット王国そのもの。
 裏切りではなく、私は王国の未来の為にヘンリー様にこれを託します。
 …あ…だから…カエルはもう…ひいぃぃ…』

どう見ても拷問です。本当に(ry

「トムの奴もずっと苦しんでたんだろうな…」
真正面を見据えながら、ヘンリーが短く答える。

あの兵士もラインハットの異変には気付いていたに違いない。
異変に気付きながら、一介の兵士の身では何も出来ず…
愛国心と忠誠心の間で苦しんでいた。
―王国の未来の為― あれが彼の本音なのだろう。

「終わらそう。あいつの苦しみも…ラインハット王国の悲しみも全部。」
普段とは違う、静かなヘンリーの言葉で一気に気合が入る。

「俺も微力ながらお手伝いさせてもらいますぜ。お・や・ぶ・ん。」
「頼りにしてるぞ。なんてったって、ヘンリー様自慢の子分だもんな。」

緊張して然るべき状況を笑い合いながら歩く二人。
気が緩んでるわけではない。むしろ、千切れ飛びそうに張り詰めている。
それを隠すかのように、互いに笑ってみせる。

ウシッ!行くぞ。今度はこっちから仕掛ける番だ。

「なあ…念のためもう一度聞くけど…本当に飛び込んで平気なんだな?」
「平気だって。イサミは肝っ玉の小せえ奴だなあ。」

正直ビビってます。何にって…目の前で煌々と輝きながら渦を巻く水色の光。
これがトムから教えられた第二の抜け道。
修道院の南に広がる森からラインハット城の一室に繋がる旅の扉。
例えるなら転送装置みたいなものか…俺の世界には存在しないけど…

「…他に抜け道はないんだな?…マジでコレしかないんだな?」

自分でもヘタレだと思うが、デカイ洗濯機のような光景はマジで怖い。
そのデカイ洗濯機に飛び込もうと言うのだから、嫌でも慎重になる。

何度も念を押す俺に痺れを切らしたのか、ヘンリーが後ろから背中を押す。
「ほれ、チャッチャと行った行った。」
「…ちょ…ば…押すな!まだ心の準備がああぁぁぁ…」

濃淡のある水色が縞模様となって景色を覆い、次第に視界が水色の帯に侵食される。
どっちが上でどっちが下だかもわからない奇妙な浮遊感。
息は出来るので溺れる心配はないみたいだ…が……気持ち悪りぃ…

グニャグニャと捻じ曲がる視界にじっと耐えていると、靴の裏に固い質感を感じた。
水色の帯が霧散し、数秒前とは違った景色が視界に入る。

「な?大丈夫だっただろ?」
「…あぁ…大丈夫だ…けど…二度と使いたくねえ…」
「気分が落ち着いたら行くぞ。そろそろ予定の時間だ。」

本が散らばっている部屋…城の書庫だろうか?その部屋の扉をそぉっと開ける…
その動作は扉の向こうから聞こえる声によって止められた。

「やはりトムは裏切りましたか…まあ、予想通りですがね…」

「はぁ…この国は凄腕の軍師でも雇ってるのかよ?」

ヘンリーが観念したように扉を開ける。
扉の向こう側。中庭にずらりと並ぶラインハット兵。その後方に控える金髪の王。
いい加減、気が滅入る。こっちの手はお見通しってわけですかい。

「そんなに誉められる事でもないでしょう?僕は万が一を見逃せないだけです。」

壁のように立ち塞がる兵士達が俺達に槍を向ける。
冷たい笑みをうかべ、悦に入ったような表情で続けられる王の演説。

「万が一、プロトキラーが敗れたら…次はそちらが反撃に出てくるでしょう。
 聡明な兄なら、同じ失敗は避ける筈。前回と同じ道を使うとは考えられない。
 ならば、どこから浸入してくるか…不毛な読み合いは時間と労力の無駄です。
 経路を一つ残しておけば、相手は勝手にそこから侵入してくるのですからね。」
「君は敢えてトムさんに鍵を渡しておいた…って事かい?」
「兄を可愛がっていたトムの事です。彼が本気で兄に剣を向けるとは期待しません。
 あなた達は僕の期待通りにプロトキラーを撃退し、僕の期待通りに策を巡らせ、
 期待通りの方法で侵入してくれた。感謝しますよ。期待通りの働きをありがとう。」

「そりゃどうも。俺としても、お前が頭の切れる奴で良かったよ。」
ニヤリと笑うヘンリーに、怪訝そうな顔を向けるデール。

本当、期待通り…だとしたら悪い事したなあ。

死角で起こった異変…知っていた者はいても、気付く者はいなかった。
王の背後…中庭の一角の地面が跳ね上がり、地面の下から二つの影が飛び出した。

「鏡よ!力を示せ!!」

作戦成功。見事に釣り針に食いついた。
鏡を持った本隊はサトチー・ブラウンの二人だ。

兵達は突然の事態に反応できない。自分の世界に入っていた王は尚更だ。
中庭に構える隊列の背後を取ったサトチーが、ラーの鏡をデールに向ける。

太陽がもう一つ現れたかのような眩い光の奔流。
鏡から発せられた光の帯がデールを飲み込む。

旅の扉から侵入する俺達とは別に、地下から浸入していたサトチーとブラウン。
聡明で狡猾なデールの事、俺達が前回と同じ道を使うとは考えないだろう。
恐らく、兵を率いて扉の出口で待ち構えている筈だというヘンリーの読み。
なら、俺達が囮となってデール達の視線を集中させ、油断した隙を狙う作戦。

兄より優れた弟など存在しねえ!!…ちょっと違うか。

「う…ああああぁぁぁぁぁぁぁぁアアアァァァァ!!!」

王を包み込んでいた光が収縮し、次第に細くなる。
細く、それでもなお一点に集中する光の帯がデールの胸を突き刺す。

完全にもらった。不毛な読み合いは俺達の勝ちだな。

とさり…と、静かに王が倒れると同時に光は消えた。

「デール!!」
「大丈夫…呼吸はしっかりしているし外傷もない。命に別状はないよ。」

倒れたデールに駆け寄り、その身を助け起こすヘンリーと回復を施すサトチー。
兵士達は事態が飲み込めないのか、放心状態で動けない。
俺とブラウンは周囲を取り囲む兵士の動きに集中する。
烏合の衆と化した兵達をかき分け、無言のまま俺達の輪に入る女。
サトチーの手によって地下牢から助け出された大后。

母親だもんな。息子が心配にもなるだろうさ。

「…デール…」

顔に付着した埃を払うでもなく、薄汚いドレスのままゆっくりと近付く大后。
感動の対面ってヤツか…大后の手に握られたナイフの輝きが目にしみるねえ。

…ん?

…何でナイフ??

「デエェルウゥ!!」
大后が夜叉の形相でデールにナイフを振りかざす。
兵士達だけではなく、突然の事態に反応できないのは俺達も同じ。

…ただ一人を除いて。

何十年も前の無声映画のように流れる光景。
鈍い輝きを放つナイフが、デールの体に吸い込まれるように突き出される。
刹那、緑色の髪が鈍い輝きの前に立ち塞がり、狂乱する鬼女を突き飛ばす。
もんどりうって倒れる鬼女をに飛びかかり、組み伏せる緑色の髪の男。
鬼女を押さえつける腕から滲み出す真紅が緑色の髪に映える。

我に返る。
何が起こったのか理解できない俺の耳に狂騒が飛び込む。

「放せ!このガキだけは…」
「何を考えてるんだ!あんたはデールの母親だろ!!」
「黙れ!黙れ黙れ黙れぇ!このガキゃあ散々俺さまに歯向かいやがって。
 挙句の果てには俺様を牢になんぞぶち込みやがった。絶対に許せねえ!!
 こいつのお陰でラインハットを乗っ取る計画は全部ぶち壊しだ!!」

は?…何を言ってるんだ?ラインハットを乗っ取る?

「…見るに耐えませんね…」

澄んだ声…濁った声…どちらとも形容できる声。
いつからそこにいたのか、紫のドレスを身に纏った女がデールの傍らに佇む。
一般的な尺度でいえば綺麗の部類に属するであろう造形は作り物の様に冷たい。
その女は俺達に向き直り、目だけで笑う。それは心が焼かれるような残酷な目。

「少しだけお待ち頂けますか?今すぐにゴミを処分しますので。」

サトチーがビクリと大袈裟とも思える反応を示す。
俺もヘンリーも言葉が出て来ない…蛇に睨まれた蛙の心境ってやつか…

「俺様をゴミだと?このアマ…消し炭になって非礼を償えやぁ!」

大后の顔が、体型が、姿が変形し、その裂けた口から紅蓮の業火が迸る。
女は避けようとも防ごうともせず、そのまま燃え盛る炎に飲み込まれ…
炎が花火のように八方に散った。そこには先程の妖艶な女の姿はない。
四散した炎の中央から表れたのは…紫色の闇…

「ほっほっほ…道理はわきまえているようですね。正解ですよ。」

闇色の魔女がかざした手の先に現れたのは、紅い闇色の太陽。

「お前の言う通り、ゴミは焼却処分するのが正解ですからね。」
「な…何で大将がここに…話が違うじゃねえk…」

魔女が放つ紅い闇色の太陽は、悲鳴をあげる執行猶予すらも与えない。
肉の焼ける匂いと蒸発音だけを発し、大后であったモノは消し炭すら残さず消えた。

「ゲマァッ!!」

吼えるサトチーの瞳に、魔女が放った物と同じ色の炎が浮かぶ…そう見えた。

怒り…悲しみ…嘆き…恨み…一言では到底表現しきれない感情の色。
この世界に存在する全ての負の感情が入り混じった様な色。

怖い…

サトチーを初めて怖いと思った。

「ゲマ!お前だけはっ…!!」

感情をあらわに飛び掛るサトチーの一撃に対し、魔女は一息をついただけ。
そう、小さく息を吐くだけの動作にしか見えなかった。

ふうっ と、青白い吐息を一瞬吹きかけただけで、辺りの温度が急激に低下する。
チェーンクロスはガラスのように砕け散り、一瞬固まったサトチーが崩れ落ちる。

「ほっほっほ…10年振りの再会だというのに穏やかではありませんね。
意識だけは残しておきますから、少し頭を冷やしなさい。」

零下の余波は周囲一体を飲み込み、冷たく輝く風の牙となって中庭を吹き抜ける。
まぶたが、鼻が凍りつく。一瞬で意識から引っこ抜かれそうな寒風。
ブラウンと俺は身を寄せ合って寒さを凌ぐ事しか出来ない。

ヘンリーは倒れたデールに覆い被さり、冷気の直撃から弟を守っている。
その向こう側では、体を半分凍りつかせた兵士達が次々に倒れる。

シャレにならねえ…マジで殺られる…

痛いまでに全身を突き刺していた冷気が止み、再び顔を出す太陽。

格の違い…無防備な目の前の魔女が放つ強烈な重圧に足が震え出す。
居るだけ、そこに存在するだけで周囲を圧倒する絶対的な威圧感。
横に立つヘンリーとブラウンも同じく、その両膝がガクガクと震えている。

「お…お前がラインハットを狂わせてた元凶だってのかよ…俺達に何の恨みが…」

寒さのせいではなく、心の底から震える声で魔女に問い掛けるヘンリー。
対して、ゲマは俺達を見下したような高笑いを発しながら語る。

「ほっほっほ…勘違いなさらないで下さい。私はただの観客ですよ。
 私は王の傍で成り行きを見ていただけ、私自身は何も手を下していませんよ。
 先程のゴミも演技力だけはあったようですが、何も出来なかったようですしね。」
「だったら…デールは…そうだ!本物の大后はどうしたって言うんだよ!」
「言ったでしょう?私は居ただけですよ。大事な兄を失った子供の傍にね。
 ほぉっほっほっほ…やはり観劇は特等席で見なければ臨場感を味わえませんね。
 消えた兄を思う弟の気持ち、遠い地で弟を思う兄の気持ち、堪能させて頂きました。
 せめてものお礼です。受け取りなさい。」

魔女が指をかざす先、何もない空間から人の姿が現れる。
刺々しい鎖で空中に縛り付けられているのは、豪華な衣装を身に纏った初老の女。

「おやおや…大后を魔界に幽閉したのは失敗でしたか?呪縛が解けませんね。」
「て…てめえ…ふざけてねえでさっさと…」

ようやく搾り出した俺の声は魔女の一睨みで止められる。
情けねえ…

「それは、天空の剣…ですか?」

俺を睨みつける表情を緩め、笑みを浮かべる魔女。
魔女が指差すのは俺の背に納められた剣。

「天空の剣の剣閃は一切の魔を祓うと伝わりますが…果たしてどうですかね?
 その剣の力をもってすれば、大后を縛り付ける呪縛を解く事も可能でしょうが、
 ほっほっほ…貴方にその剣の力が引き出せますかね?」

俺の背に背負われた剣。
一切の魔を祓う天空の剣
嘗て、天より舞い降りた伝説の勇者が用いた剣。
この世界と魔界との境界を切り開く伝説の剣。

でも…今、この剣を振るう俺は…

するり と、鞘から剣を引き出し構える。
…が、この後どうすれば良い?

「イサミさん!母上を助けて!」
目を覚ましたデールの懇願が俺の目を覚ます。

「イサミ…お前は俺の子分だ…俺が見込んだお前なら出来る。」
肩を叩くヘンリーの言葉が俺の背を押す。

―!!!―
ブラウンの声援が俺の両腕を持ち上げる。

「…イサミ…君なら…大丈夫だ…」
凍てついた体のまま発せられたサトチーの激励が俺の中に火を点ける。

俺は天空の勇者なんかじゃない…普通の大学生で…今はただの住所不定無職異邦人。
でも、今の状況を何とかしたいと思うのは…親友の声に応えたいと思うのは…
親友を守りたいと思うのは…勇者なんかじゃない俺でも一緒だ。

やってやる!

―オオオォォォ!!―

咆哮と共に振り上げた俺の両腕に力が発現するを感じた。
力が腕から手を伝い、剣に流れ込むのを感じた。

「…ッリャアアアァァァァァ!!!」

真白い光景だけが目の前を支配する…何も見えない…けど、
一心で振り下ろされた剣の先から、全ての力が流れ出すのを感じた。
俺の中の色んな物が流れ出すのを感じた。

立っていられない疲労感…思わず膝をつく。
脱力感…俺の手から力が抜け、剣が音をたてて地に落ちる。
同時に、霧が晴れるように視界が元の色を取り戻す。

支えを失ったかのように落下する大后を、デールがギリギリで受け止めた。

ウシッ!…とか、やってらんねえ…マジしんどい。
いやいや、まだへばってられねえ。あの紫の鬼ババアを…

「ほっほっほ…見事に魔界の呪縛を解きましたか。しかと見届けましたよ。」

高笑いを浮かべる魔女に剣を向ける…ハッタリだけどな。
戦う力なんか少しも残ってやいねえ。

「無理はなさらない方が良いでしょう。ここで貴方達を殺す気はありません。
 残念ながら、そこまでの自由は許されていないようですからね。」
「待て!お前だけは絶対に…」

紫色の霧に包まれる魔女にサトチーが追いすがる。
その足はふらふらとしておぼつかず、再び地面に倒れ伏す。

「ほっほっほ…それではごきげんよう。サトチーと…ホコロビ…
 いずれまたお会いしましょう。それまでその命を大事になさい。」

紫色の霧の中、高笑いを残して魔女は消えた。

「ゲマ!…次こそは…必ず…」
サトチーが虚空に向かって吼える。

…あの鬼ババア、何がしたかったんだ?
全然、聞き足りないのに言いたい事だけ言って帰りやがった。

いや…ここでバトらなかったのは助かったけどさ…
次こそは、か…会いたくないな、出来る事なら二度と…

「後味悪りいけど、デールのやつも正気に戻ったみたいだし…これで一段落か。」

力が抜けたように座り込むヘンリー。
デールは子供の様な表情で大后に泣きすがっている。

「まあ…一件落着なのかな?」
「本当にありがとうな。これできっとラインハットも立ち直る。
 サトチーと、イサミと…この剣のお陰だな。」

地に落ちた剣を拾い上げ、俺に手渡すヘンリー。
その手から剣を受け取り、背中の鞘に戻す。

少しずつ傾きつつある太陽の光を受け、竜のレリーフがきらりと光った。



イサミ  LV 16
職業:異邦人
HP:4/77
MP:0/15
装備:E天空の剣 E鎖帷子
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌 足払い ―――

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