昨日は散々しごかれたな・・・。 あのくそ女容赦なく切りつけてきやがって!模擬刀っつったって重量あるんだからいてーし変な所に食ったら死ぬっつーの! ?「お・・・さ・・・。」 だいたい師範代だかなんだか知らねーが偉そうにご託並べやがって・・・。 ?「おきゃ・・ま・。」 クソッ!いつかボコボコに負かして犯してやる! ?「お客様、起きてください」 ・・・うるせえ、誰だ? ?「お客様、もうチェックアウトの時間ですよ」 人が気持ちよく寝てんのに誰だ?意味わかんねー事言いやがって、ここは俺の家だろ? ?「いい加減起きてくださいよ!何時だと思ってるんですか?」 俺「うるせえーーーーーー!!」 安眠を阻害され半分キレながら飛び起きる。 ?「うひぃぃぃぃーーーーーー!」 俺「??・・・お前・・・、誰だ?」 目の前には真ん丸の体に真ん丸の顔、その顔を引きつらせながら転がるボールみたいなおっさんがいた。 店主「あービックリした、誰だ?じゃないですよここの店主です。もうチェックアウトの時間ですよ?とっとと出ていってください」 俺 「あ?何わけわかんねー事言ってんだ?ここは俺の家だろ、オメーが出ていけよ」 店主「あなたこそ何を意味がわからない事を・・・。ここは私の宿です、さあ!さっさと出ていってください!早くしないと憲兵を呼びますよ?」 俺 「憲兵だぁ?なんだそりゃ?警察みたいなもんか?」 店主「さあ!早く!さあ!さあ!!」 俺 「わかった、わかった」 真ん丸親父の勢いに押され何も理解できないままとりあえず部屋から出る、振り向くと親父は俺の事を睨みつけながら後ろを歩いてついてきてカウンターらしき場所に入っていく・・・。 『いっぱいいっぱいだな、ちったー痩せろよ。』 親父は台帳に何かを書き込み、俺の顔を見て咳払いを一つ。 店主「ゴホン、おはようございます旅の人、昨夜は良く眠れましたか?」 俺 「目覚めは最悪だったがな」 店主「そんな事は聞いてません。では、マタイラシテクダサイ」 唸るほどの棒読みだ、清々しくもある・・・。 しかし一体どういう事なのだろうか?夢でも見てんのか?それともアヘンでも吸っちまったか? 『昨日はあのくそ女にボコボコにされて、気絶して・・・。』 沸々と怒りがこみあげてきた。 『クソッ!まあいい、で、恐らくは兄弟子が部屋まで運んでくれたはずだ』 そう、俺は自分の部屋で寝ていたはずだ!だが目が覚めて現れたのは真ん丸親父・・・。 『あのくそ女の新しい亭主か?奴はデブ専だからな。だがあのおっさんは自分の宿と言っていたな・・・。』 やはり考えれば考えるほど事態が飲み込めない。『とにかくここから出よう、まずはそこからだ!』 なんとなく振り返ると真ん丸親父が満面の作り笑いでこちらに向かって手を振っていた。 叩き斬ってやろうかと思ったが、いきなり人を斬るなんて俺の武士道に反する。こみあげる怒りを抑え、眼前の薄汚い扉を開けた。 「・・・、参ったなこりゃ・・・。」 見渡す限りの緑が目に痛い。 『参ったな、全く見覚えが無い場所だ・・・。』 思わずその場にへたりこむ、頭を抱えパニックになりそうな頭を懸命に整理しようとする。 『ここはどこだ?全く想像つかんな・・・、そもそも俺は城の稽古場で剣術の修練をしていたはずだ・・・。』 何をどう考えてもこの場所にいると言う事実を説明出来ない、男はまた考えだした。 『もう一度最初から思い出そう、城の稽古場であのくそ女と模擬刀で打ち合っていた・・・。で、あの馬鹿力で叩きのめされて・・・。』 男の脳裏に不吉な考えが浮かび上がる・・・。 『ま、まさか・・・、俺は死んだのか?奴に殺されたのか??なんてこった・・・。』 『いや、俺がそんなやわな男である筈がない。きっと夢か何かだろう。』 『とりあえず腹が減ったな、それに酒も飲みたい』 男は立ち上がり先程の宿屋に入っていった。 俺 「親父!酒だ!あとなにか肴も持ってこい!!」 店主「貴方は何を考えているのですか?ここは宿屋であって酒場ではありませんよ!」 俺 「酒と食い物くらいあるだろ、なんか持ってこい」 店主「ここにはお客様に出す食事しかありません、貴方が泊まると言うなら食事くらい出しますが・・・。」 俺 「いや、眠くはないから泊まる気は無い」 店主「でしょうねぇ・・・。ならば町に行ってみてはどうですか?」 俺 「何!町があるのか!?」 店主「この宿から東に半日ほど進んだ所にかなり賑わった町がありますよ」 俺 「そうか!そこに行けば美味い酒と食い物もありそうだな!うむ、親父!世話になった!」 店主「気を付けてくださいね」 意気洋々と店を飛び出した男、彼の足ならば半日とかからないだろう。 途中獣の気配を感じたが特に出くわす事もなく、半日とかからずに町に到着した・・・。 ~アリアハン~ 『ずいぶんデカイ町だな、城下町か・・・。』 入口すぐ左手に酒場を発見、「ルイーダの酒場」 『ルイーダの酒場ねぇ・・・。まあ酒だ酒!』 ルイーダ「ハーイ、いらっしゃい」 俺 「おう、ねえちゃん酒だ酒をくれ。」 ルイーダ「お酒を出すのもいいけどさ、あんた先に登録書を出すもんじゃ無いかい?」 俺 「登録書?なんだそりゃ?」 ルイーダ「あんた大丈夫かい?冒険者の登録書だよ。何年も前から世界中でやってんのに」 俺 「聞いたこともないな、ここでできんのか?」 ルイーダ「あんた本当に大丈夫かい?相当な田舎者なんだね。このご時世にここまで何にも知らない男がいたとはね・・・。」 俺 「なんでもいいからとっとと登録ってやつをしてくれ!」 ルイーダ「はいはい、わかってるわよ。で、あんた名前は?」 俺 「カイエンだ」 ルイーダ「カ・イ・エ・ンっと、珍しい名前だね。で、職業はなんだい?」 カイエン「侍だ」 ルイーダ「侍?なんだいそりゃ、どんな事をやるんだい?」 カイエン「侍とは、弱きを助け、悪を斬る者だ。行動ももちろんそうだが志もたk」 ルイーダ「騎士みたいなもんだね、はいはい・・・。」 カイエン「騎士とはなんだ?俺は侍だ!」 ルイーダ「あーはいはい・・・。ハイッ登録終了よ。」 カイエン「むぅ・・・。」ルイーダ「これが、登録書よ。」 カイエン「うむ・・・。」 ルイーダ「それにしてもあんたずいぶん変わった剣を持っているのねぇ・・・。ちょっと見せてごらんよ」 カイエン「やめろ馬鹿女!武士の魂に気安く触るな!!」 ルイーダ「馬鹿女ですって!そんな事言うならお酒も食べ物も出さないし登録も抹消するわよ!?」 カイエン「ぬう・・・。食べ物をくれないのは困る、ここに来てから何も食ってないのだ・・・。だが刀は触らせん!これだけはダメだ!!」 ルイーダ「そう・・・、まあいいわ。ちょっと待ってなさい今何か持ってきてあげる。」 カイエン「すまんな」 そう言ってルイーダはカウンターの奥に入って行った。 『しかし・・・、ずいぶん変だな、夕方の酒場なのに誰もいない。それに壁一面似顔絵にわけのわからん説明文』 おもむろに一枚剥がしとってみる。 『なになに?エリス17歳ピチピチの魔法使いで~す(はぁと)レベルは1だから魔法はまだまだだけど、恋の魔法はレベル99よん(はぁと)・・・、なんだこりゃ?』 ルイーダ「お待たせ、ってダメよ勝手にとっちゃ~。」 カイエン「ねえちゃん、こりゃなんだ?」 ルイーダ「ル・イー・ダよ!それはね、勇者様に対する冒険付き添いの嘆願書よ」 カイエン「勇者?嘆願書?」 ルイーダ「あきれた、あんた本当になんにも知らないのね。テドンにでも住んでたのかしら?」 カイエン「??」 ルイーダ「はぁ・・・、説明してあげるわ。」 カイエン「頼む。」 ルイーダ「最近この世界に自ら魔王と名乗る奴が現れたのよ、で、その魔王討伐の為に各国の王様達が共同で作ったのが世界勇者連盟なの。」 カイエン「ほうほう。」 ルイーダ「各国の王様に勇者と認定された人達はこの酒場みたいに冒険者登録所で仲間を募って旅に出る。その付き添い嘆願書がそこに貼ってあるのよ。」 カイエン「ほー、でもさっきのエリスとやらは使い物になるとは思えんな、それに文章の書き方も間違ってる、はっきり言ってアホだ。」 ルイーダ「それが悩みの種なのよー!勇者様と一緒に旅をするってのは大変な事なのよ?魔王に対抗するって事は世界中の魔物に喧嘩を売るようなもんよ。」 カイエン「そりゃそうだ。」 ルイーダ「それだけ大変な旅をするんだから見返りも凄いのよ、金品の受け渡しは原則禁じられてるんだけど世界中どこへでも顔パスで行けるしどこへ行っても超VIP待遇だしね。認定された勇者の中にも表向きだけ魔王討伐を装って裏でいろいろやってるのも多いのよ。」 カイエン「ふーん」 ルイーダ「付き添い志望の中にもそんな甘い汁を吸いたいって輩が出てくるってわけ。」 カイエン「なるほどねぇ・・・。」 ルイーダ「そうそう、あんたも嘆願書作る?」 カイエン「カ・イ・エ・ンだ、俺は別に興味ない。」 ルイーダ「いいじゃない、作るだけでも・・・、ねっ?」 カイエン「なんか気持悪いな、まあいいだろう。」 ルイーダ「うふっ、じゃあまずはレベルからね・・・。ちょっと目を瞑って。」 カイエン「む?こうか?」 ルイーダ「そう、それで何も考えないで心を開いて・・・。」 カイエン「・・・。」 ルイーダ「いくわよ?・・・。」 ルイーダは紙とペンを手元に置き、カイエンの頭に手をかざし何か呪文らしきものを唱えはじめた・・・。 ルイーダ「我、識別の神ディルナと経験の神ソロンの名において汝の全てをここに記す・・・。」 カイエン『おおっ!なんか暖かい・・・。』 ルイーダ「・・・ふう。」 カイエン「終わったのか?」 ルイーダ「ええ、もう終りよ。」 カイエン「で、どうなんだ?」 ルイーダ「どれどれ・・・えっ!!」 カイエン「なんだ、どうした?」 ルイーダ「レベル78・・・あんたムチャクチャね。」 カイエン「それは凄いのか?」 ルイーダ「凄いも何も、レベルだけならあんた世界一よ。」 カイエン「何?」 ルイーダ「他のステータスも信じられない程高いわ、HP8000とか・・・、あんた人間?」 カイエン「失礼な事言うな!」 ルイーダ「あんた一人でも魔王を倒せそうね。」 カイエン「そうか、そんなに俺は強かったのか・・・。」 『ピンポンパンポーン』 カイエン「なんだ?」 ルイーダ「来た・・・あの女だ・・・!って事はあんたまさか!!」 ルイーダと二人で酒場を飛び出す、街の住人皆が空を眺めている方を見ると空に女性が映し出されていた。 ? 『はぁ~い、皆元気してるぅ~?皆のアイドルルビスちゃんでぇ~す!』 カイエン「なんだこの頭の悪そうな女は・・・。」 ルイーダ「創造主ルビス、神よ。」 カイエン「神だと!?」 ルビス 『今日はねぇ~、新しい異世界人が来たから皆に紹介するねぇ~。』 ルビス 『カイエンちゃんって言ってぇ~なんとレベルが78もあるのよぉ~!すっご~い。』 カイエン「ちょっと待て、異世界人ってなんだーーーーー!!」 ルビス 『カイエンちゃんはぁ~、えふえふって世界から来てもらったの。だからこの世界とは強さの桁がぜんぜん違うの。』 ルビス 『カイエンちゃんがその気になると魔王ちゃんなんて一撃なんだよぉ~。』 ルビス 『でもねでもね、それだと魔王ちゃんが可哀想だしぃ~、だ・か・ら、カイエンちゃんはルビスの魔法で弱くしちゃうの、えいっ!』 空に映し出された女がそう言った瞬間! カイエンの体を光が包みこんだ! カイエン「うぉぉぉぉぉーーーー!」 ルビス 『いきなりレベル1にしちゃうのも可哀想だから2にてあげたわ、キャ~ルビスちゃんったらやっさし~い!』 ルイーダ「ルビス!あんたあたしの体を元に戻しなさいよ!」 ルビス 『その声はルイーダちゃんね、なんのことぉ~?』 ルイーダ「とぼけるんじゃないよこのアホ女!『ルイーダちゃんってばおっぱい重くて疲れちゃうでしょ?ルビスが軽くしてあげる(はぁと)』なんて気まぐれであたしを貧乳にしやがってぇぇぇ!」 ルビス 『アホ女だなんてひっど~い!ルビスはルイーダちゃんの事を思ってやってあげたのに~。』 ルイーダ「誰が頼んだ馬鹿女!」 ルビス 『アホ女の次は馬鹿女ですって!酷いよルイーダちゃ~ん・・・。』 ルビス 『もう知らないっ!』 ルイーダ「あっ、待て!逃げるな!!」 空に映し出された女性は消えた・・・。 カイエン「おい、俺は本当に弱くなったのか?」 ルイーダ「そうね、本当にレベル2だってんならそこら辺のスライムにも苦戦するくらい弱くなったわ。」 カイエン「スライムとはなんだ?強いのか?」 ルイーダ「世界最弱の魔物よ。」 カイエン「なッッ!!」 ルイーダ「同情するわ・・・。」 カイエン「俺が異世界人ってのは本当か?」 ルイーダ「あのアホ女は神なのにアホなのよ、前にも数回あったけど気まぐれで召喚されたのね・・・。」 カイエン「なんてこった・・・。」 ルイーダ「自分は魔王に幽閉されてるのに一体何を考えているのかしら?頭がおかしいとしか思えないわね。」 カイエン「あのアホ女にもう一度会えば俺を元に戻してくれるのか?」 ルイーダ「さあね、でも殺せば元に戻るんじゃない?」 カイエン「そうか・・・。よし、殺そう!」 ルイーダ「あたしも付いていくよ、もう我慢の限界だわ。」 カイエン「そうと決まればすぐ出発だ!」 ルイーダ「待って、勇者も連れていった方が何かと便利よ。えーっと・・・、おい、そこの見習い勇者!名前は?」 勇者 「(ビクッ!)はい!アレンと言います!」 ルイーダ「アレンね、いい事?たった今から私とアレンとカイエンがパーティよ?おわかり?」 アレン 「はっはい!!」 ルイーダ「わかったらさっさと私の酒場で嘆願書にサインしてきなさい。」 アレン 「ひっ!」 ルイーダ「早く!」 アレン 「ヒイィーー!!」 カイエン「おい、あんなガキで大丈夫なのか?」 ルイーダ「勇者として認定されている人間ってのは素質を見込まれているのよ、だからあんな子供でも鍛えればそれ相応にはなるわ。」 カイエン「ほぅ、相応ねぇ・・・。」 ルイーダ「どれ程になるのか?まではわからないけどね。」 カイエン「頼りねえな。」 ルイーダ「今のあんたよりは強いわよ?」 カイエン「本当にショックなんだ、それは言わないでくれ・・・。」 ルイーダ「ふぅ・・・。まあまずは訓練もかねてナジミの塔へ行くわよ?あんたも一から鍛えなおさなきゃならないしね。」 カイエン「クソッッ!ぜってぇ許さねえぞアホルビス!」 カイエン Lv78→2 Hp8000→28 Mp600→8 装備 無銘の刀・着物 ルイーダ Lv12 Hp76 Mp28 装備 皮の鞭・木綿のメイド服・シルバートレイ アレン Lv5 Hp36 Mp14 装備 ひのきのぼう・布の服・お鍋の蓋