エイコ Lv.6
    HP:45 
    MP: 0

   武器:ホーリーランス
    鎧:青銅の鎧
    盾:キトンシールド
    兜:羽根帽子
  装飾品:スライムピアス

   特技:しっぷう突き



「エイコ、朝だよ、おーい」
あにいってんだ、まだよいのくづだでば。
「宵の口じゃないわよっ、起きてってば! うわ酒くさッ!!」

またこのパターンで起された。
「う、もう夜明けか? 今行くよ」
目をこすりながらむくりと起き上がる。草の上で寝転んだので、どうにも青臭い。

ところが、ゼシカの表情は厳しいままだった。
「何言ってるのよ!! もう夜なんか明け切っちゃったわよ!!」
「え?」
ゼシカの煽りの画がコワイ。恐る恐る尋ねる。
「あー、その……イベントは?」
「バウムレンの亡霊ならもうちゃんと成仏させちゃったわよ!」

……はあぁぁぁ、イベント見逃したあぁぁぁ!! 

あまりの事に呆然としていると、緑星人がやってきた。
「おお、エイコよ、おぬし、いま目覚めたのか?!」
「あーおうさま……」
「ぶひひーん!」
馬よ、馬姫よ、私の不幸がそんなにも嬉しいのか。馬刺しにして喰らうぞ。
「さあ、ラパンハウスへ戻るわよ!! ククール、ルーラお願い」
ゼシカは急いでいるようだが、まったく状況が読めない。
しかし、その不思議現象のイベントを見逃したというのは分かった。
あー……なんかもうやる気なくした。ハァ。
くたり、とその場にくずおれた。

「相当ショックだったのね。スゴイ楽しみにしてたしね」
「姉貴のそばにこれが転がっていたでがす。これ全部飲んでしまったんでげすね……」
「しかし、こんな酒を何処に隠しておいたのかのう」 

頭の上で色々声がするけど、もうしばらく寝かせて。

「姉貴、あーねーき、そろそろ移動するでがす、ラパンハウスに戻るでがす」
「あー戻ればー?」
もうぐだぐだだ、私、やる気ない、今日。
「エイコってばもー、何でこう寝起きが悪いのかしらッ」
「ブルルッ、ブルルッ」

突然、体が宙に浮いた。見上げると、ククールが私の体を抱えていた。
「うわッ、なッ?!」
「面倒かけてんじゃねぇよ」目を合わせず、ぼそりと言われた。
確か、このパーティでルーラを使えるのはこいつだけ……ってオイ!! まさか……
「行くぞ! ルーラ!!」

どひゅんひゅんひゅん!

「イーやーあぁーーあーたーしーたーかーいーのーキーラーーーイィーー」

切り立った岩壁に囲まれた神秘の場所に、私の叫び声だけが残った。

あー。
具合悪いから。

「エイコ、大丈夫? もしかしてルーラ初体験?」
「うんだ、はづめでだ」
「そうなの、二日酔いにルーラはちょっとキツかったわね」
「うんだ。キヅいってもんでね、あんべえわりィ。かまねぇでけろ」
「分かったわ、今日は休んでいて」

ククールが訝しげな顔をしてゼシカを見ている。
多分、私のネイティブな方言が通じているのが不思議なのだろう。
マイエラ修道院は世界各国から修行僧が集まってるんじゃねえのか?
田舎から出てきた人とかと接しなかったんだろうか。
……接しなかったんだろうな。

「じゃあ、オレとヤンガスでちゃちゃっとラパンハウスに行って来るから、
 ゼシカ、エイコを頼む。姫様とトロデ王も置いていくから、よろしくな」
「分かったわ」
あーすまんねー私が二日酔いにルーラでトドメさされたからって。 

「ちゃんと寝てろよ、エイコ」
いきなりククールがおにいちゃん的な発言をする。
「あーなんだいクー坊があいぎなりえらそうに」
弱弱しく食って掛かってみる。
「ゲッ、クー坊って何でげすか?」
変なポイントに過剰反応するヤンガス。
「あー? ククール坊やだからクー坊」
だんだん喋るの面倒くさくなってきた。
「あははー、いいねー、ねークー坊」
でもゼシカはノリノリだ。
「じゃああっしはヤン坊でがすか?」

しーん。そりゃあ天気予報だ。

「じゃ、行って来るから」
すちゃっと手を上げると、クー坊はヤンガスの首根っこをつかんでとっとと出発した。
「なーんででがすかー? ヤン坊、かわいいじゃ……」
「ハイハイいってらっしゃーい」
ゼシカが流しつつドアを閉めた。 


「やっと静かになったわ。まあ、ククールのルーラですぐ戻ってくるでしょ」
「ふむ……」
私は寝返りを打った。窓の外に木々が見える。
「あ、ここはベルガラックよ、戻って来たの」
何も言ってないのに、ゼシカが言葉をかけた。
伸び上がって窓の外をのぞいたので、場所を探ってると思ったのだろう。

「ねえエイコ。あなたホントに何者? っていうか、ホントにエイトじゃないの?」
うわ、きたよ。クー坊の次はこいつかよ。
「同じことクー坊にも聞かれたよ」
「何て答えたの? ククールにだけ教えたの?」
へっ?
「クー坊には何も言ってないっつか。別に何も言うことねえし……」
「うそ! だって色々知ってるわ、あなた。どうして?」

ああそうか、冒険を共にする前のエピソードについて、知ってるのが不自然なんだ。
こいつらにとってはあくまで「エイコ」は、
『サザンビークからここベルガラックまで10日程行動を共にした』だけなのに、
マイエラやリーザス、それどころか旅の始まりからのエピソードを知っているのが
不自然に感じてきたのだろう。
しかし、そこをどう説明したらいいか、だから面倒なのはイヤなんだよな。 

「どういう仕掛けなの? やっぱりあなた……」
「私がエイトだと、困るのはお前さんじゃないの?」
もう具合悪いとか言ってる場合じゃない。何とか言いくるめないと。
「何でよ」あくまで気丈な娘だ。まったく。
「だって、『エイト』だと男なんだよ? 男の人と宿屋に二人っきりで居ちゃっていいのか?」
「えッ?」
今度はゼシカがビックリする番だ。

「いい? 目の前にあるコト、それが現実なの。
 どーしてこうなったかとか、あーしたからこうなったとか、
 考えてもムダなコトってあるのよ。
 私は、ここにいる。ゼシカもいるし、ククール、ヤンガス、馬姫に王様も。
 それが現実なの。しょうがないの」

まるで自分に言い聞かせるような言葉が、私の口からすらすらと流れ出た。

「何で色々知ってるか、種明かしするよ。王様から聞いたんだ。
 あんまりいっぺんに教わったから、まだ混乱してるけど、
 この旅であんたたちに起こった事、大体教わったの」
「それじゃ……」
「あなたのお兄さんが残念なことになったこと、
 ククールが仲間になった経緯、
 王様のお城で起こった恐ろしい出来事、
 そして、そのことすべてにドルマゲスが関わっていること、色々聞いたの。
 ゼシカ、あなた若いのに大変な思いをしてきたのね」

ああ、私って詐欺師になれるかも。だってゼシカは胸を打たれたようにうつむいてるもの。

「ごめんね、エイコ。変な事言って。体調は大丈夫?」
「うん、だいぶよくなった。もう少しでククールとヤンガスも戻るでしょ。そしたら出発しよう」
「そうね、エイトと、ドルマゲスを探しに」
私は、ゼシカの固く組んだ両手をそっと手で包み込んだ。

あー、よかった、単純だなガキって。

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