エイコ Lv.8 HP:52 MP:0

武器:ホーリーランス 鎧:青銅の鎧 盾:なし 兜:ブロンズキャップ 装飾品:スライムピアス

特技 しっぷう突き おたけび



だんだん慣れてきたドラクエワールド、でもいくつか不満がある。
それは。
「あー、イカポッポ喰いてえな」
誰か私にもち米と醤油と日本酒ぷりーず。
「エイコ!! いーから戦闘手伝いなさいよ! だからいつまでもレベルが一桁なのよ!!」
ヘイヘイ、小姑もうるせえ。
仕方なく槍を繰り出してプチアーノンを撃破する。
ちょっと動いた方が、気もまぎれて胃もまぎれるのだろうが、重症だ。
仕方ない、やっぱりルーラは苦手だ。その直後に乗った船では見事に船酔いだ。

色んな敵が出てくる。さすが外海は違うねえ。
方位磁石はまっすぐ北を目指している。このまましばらく行けば……
「あ! 見えてきたでやんす! チラっと! ほらチラッと!!」
マストの上のヤンガスが暑苦しく叫ぶ。ヒョイヒョイと緑のたぬ……いや王様がそこへ上る。
「どうれ、おぬしじゃいささか心配じゃからのう……おお、見てみよ姫、あれなるが北の孤島じゃ」
「ヒヒ~ン……」
なんじゃあ馬姫、おめもあんべえわりぃが?(訳:お前も具合が悪いのか?)

「うわ、何かここまで邪悪な気配が漂ってくるわね」
魔法少女ゼシカりんがつぶやく。クー坊も大きく頷く。
「さすがだな、ゼシカ。俺も嫌な気配を感じていた。エイコには分からんだろう」
「それは仕方ないでしょ、エイコには魔力がないんだし」
私はロー●シアのおうぢさまと一緒で力馬鹿なんだよコンチキショー。
ちょっとコンプレックスだなあ、だってヤンガスだって使えるんだぞ、魔法。
山賊って魔法修行するのかあ?

「あっしのは我流でがすから、盗賊仲間に習ったでがす。
 もっとも、基礎だけ教わって、最近やっと戦闘で使えるようになってきたんでがすがね」
訊いてみると、そんな答えが返ってきた。ふーん、教わって出来るもんなんだあ。
「私も習いたいなぁ、メラぐらい使ってみたいぜ、チビっちゃいメラ出して、
 飲み屋でセンパイとかのタバコに火ィ点けてあげんの、かっけぇ~☆」
「……一瞬でも向上心があると思った私がバカだったわ、そんなヘンな事に使うなら教えない」
「何、ゼシカ、お前他人に教えられるの? 教えろよ」
「やあよ、マッチの代わりなんか教えられるもんですか」
「チェーケチー」

そんな話をしながら船はちんたらと進み、肉眼でもはっきりと島を捉える事が出来るようになった。
う、確かにもやってる。立ち木には葉っぱが見えず、空気もよどんでいる。
ん? 誰か人がいるように見えるが。
「おいヤンガス、アレ、人じゃねえか?」
「うーん、そうでがすねえ、占い師風のねえちゃんと、戦士風と僧侶風のオッサンがいるでがす」
ふん、いつも思うが、どーしてジジイの戦闘要員はいてババアはいねえんだろうな。
ま、たりぃからだろうが。

程なく船は接岸し、私は威勢良く船から飛び降りる。うッ、足にキタ。
でも地に足つくってのはいいもんだ。酔いも一気に醒める。
例の先着パーティは、こちらの様子に気付くと、ゆっくりと近づいてきた。
「なんだ、用があるのか?」
ヤンガスが警戒する。私も思わず身構える。 

「あ、怪しいものではありません、我々は……」
「こんなトコにいるだけで目いっぱい怪しいわ」
武器を携えた私とヤンガスにビビッたのか、僧侶風のオッサンが弁明した。
後ろの戦士は今にも剣を抜きそうである。占い師のねえちゃんがそれを止めた。
「我々は去るお方の依頼によりここへ参ったのです。しかし、ここより先へは進めませんぞ」
「何だてめえやんのか?」
「ち、違いますって!!」
気色ばむ私をねえちゃんが止める。だってそんなこと言われたらこれから戦闘だろうが。
「エイコ、ちゃんと話を聞いて、恥ずかしいから」
「交渉ごとは苦手だ。頭脳班、前へ」
無理やりゼシカとククールを前へ押しやり、ヤンガスと私は後退する。
視線を巡らすと、あからさまに空気の悪い島の様子に胸が高鳴る。
何かヤバイ匂いだ。この島は何かいそうだ。
「おいヤンガス、この島ヤベエな」
「だから来たんじゃないんですか、姉貴。エイトの兄貴がドルマゲスの野郎にとっ捕まってるんでがすよ?」
おおっとそうだった。長い船旅で忘れる所だった。

頭脳班の話をまとめると、どうやらこの先に進むには、とあるアイテムが足りないらしい。
しかし、まったく見当がつかない。
ていうか、その洞窟の入り口みたいなトコ、入れないの?
「話聞くだけじゃなくて、実際行ってみようぜ、どうなるか知りたいじゃん」
「私もそう思ったところよ、行ってみましょう」
ゼシカが賛同する。よっしゃ、じゃちょっくら見てみるか。
「待つでがす、あっし達も行くでがす!!」
「ホントに鉄砲玉だな、うちの女達は」
てめーの女になんかなったつもりはないぜ、ククール。
意を決して、洞窟の暗闇へと突入した。


あれ……?


体がふわりと宙に浮いた、ような気がした。
次の瞬間。

どしーん!!

「イッテエ!! 膝打った膝!! ……あいたた……アレ?」

すごい狭い空間に出た。薄暗い。夜明け前みたいに外が薄青い。
ん? ここ、どこかで……って。 

「ハァ?! ここ、私の部屋じゃん!!」

台所合わせて12畳1Rの北向きのじめじめとした安いアパート、
目立つ家具は小さいテレビとノートパソコンとソファベッド、
床に投げ出した組曲のスーツ、楽天で買ったコーチのバッグ、
テーブルの上にはサンドイッチと野菜ジュースとヨーグルト。

間違いない。

「うそ、でしょ? あッケータイ!!」

ヨーグルトの横に投げてあったケータイをひっつかんでがばりと開く。
日付は、飲み会の次の日、時間は夕方6時半だった。
ハッと自分の姿を見ると、いつもの寝る姿、パンツにキャミソール。

「な、なーんだ、夢かあ、いやあ、壮大な夢だっ……」
視線を自分の左太ももに移したとき、安堵の独り言を止めざるを得なかった。
毒矢頭巾にやられた矢傷の痕が、生生しく残っていたのだ。

思わず、ケータイをポロリと床へ落としてしまった。 

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