#02 バトランド城門前 御触書 WANTED 錬金術師ユーリル 賞金 60,000G 罪状 国家反逆罪 詳細 錬金術による超高度な技術を持つ。狡猾で凶暴。要注意。 魔族の王や伝説の地獄の帝王の化身という噂もある。 弟子一号(恐らく仮名) 賞金 30,000G 罪状 国家反逆罪 詳細 錬金術師ユーリルの弟子。ユーリルと行動を共にしているものと思われる。 温厚な性格と優れた美貌。正体は魔物という確かな筋からの情報もある。 #03 『デスピサロ様……ただ今バトランド方面より緊急に連絡が入りました』 「……申せ」 『はっ!実は…………』 「……何?……それは確かか?」 『は……はっ、左様でございます!』 「――確かに、聞いた。下がれ」 『はっ、そ、それでは失礼します!』 「……大洞窟を一撃で埋没させる程の爆発に空を自由に行く飛行機械……。人間がそのような力を……? ……イムルの宿の事といい、流石にこれ以上捨て置く訳にもゆかぬな。 バトランドは列強ゆえ、今は絡め手で攻め、精鋭を回すのは避けたかったのだが……。 ……おのれ、何処の誰かはわからぬが、私の邪魔はさせぬぞ……。」 #04 とある旅人の手記 その1 ○月△日 人間の体にも大分慣れてきた。 情報収集と仕事探しの為、バトランドへ向かう途中、崖下で瀕死の男の人を救助した。 ――思えばこれが運の尽きだった。 ○月○日 男の人はユーリルさんというそうだ。 ライアンさんとはまるで性格が違うけど、とても頭の良い人で、 不思議な知識や技術をたくさん知っている。 僕はいつかライアンさんと再会したときに少しでもライアンさんの力になるために、 ユーリルさんに弟子入りすることにした。ユーリルさんも快く了承してくれた。 よかった。ライアンさんとは違うけれど、この人もとてもいい人だ。 ○月×日 お金を稼ぐ為に、師匠といっしょにバトランドの城下町でお店をすることになった。 旅を急ぎたい気持ちもあるけど、本当に人間として生活しているようで実はちょっと楽しみ。 明日からがんばるぞ。 ○月□日 思ったよりも人間の生活というのは大変だ。来る日も来る日もお仕事ばかり。 確かに色々教わったけど、こんなに働いてばかりで皆、つらくないのかな? ○月△日 一日の労働時間が16時間というのは普通にあり得ないらしい。 師匠に問い質した所、師匠はすごく嫌そうな顔で、「ちっ、気付きやがったか」と舌打ちした。 ライアン様。僕は今日はじめて殺意という衝動を覚えました。 △月□日 もう人間は嫌だ。ホイミスライムに戻りたい。 △月△日 いつの日か……。いつの日か……。 □月○日 ニンゲン怖い。ニンゲン怖い。ニンゲン怖い。ニンゲン怖い。 ニンゲン怖い。ニンゲン怖い。ニンゲン怖い。ニンゲン怖い。 ニンゲン怖い。ニンゲン怖い。ニンゲン怖い。ニンゲン怖い。 ニンゲン怖い。ニンゲン怖い。ニンゲン怖い。ニンゲン怖い。 ニンゲン怖い。ニンゲン怖い。ニンゲン怖い。ニンゲン怖い。 □月△日 ――ごめんなさい、ライアン様。もう貴方に顔向けができません。 世の中には、魔物よりも人間よりも遙かに恐ろしい存在がいるということを心の底から思い知りました。 さようなら、ライアンさん。旅の無事と勇者様に会えることを心よりお祈りしています。 僕も精一杯逞しく生きていこうと思います。ええそれはもう全力で。 そしていつの日かあの腐れ―――――――― (インクが飛び散っていてこれ以上読むことができない)