「…………何なんだ、今の夢は」 イムルの宿の寝台から身を起こし、少年は心底げんなりとぼやいた。 未だ部屋は暗く、当分夜が明ける様子は無い。 「ん……」 彼の声に反応したのか、傍らの褐色の美女が身じろぎして目を開けた。 「ああ、すまないミネア。起こしてしまったか」 「……いいえユーリル様。むしろ恐ろしい夢から現実に引き上げてくださって、助かりました」 ユーリルと呼ばれた少年は苦笑する。 仲間の内で唯一自分の秘密を知る、神秘的な美女を抱き寄せ軽く唇を重ねると、悪戯っぽく微笑んだ。 「そんなに恐ろしかったか?それより僕はあの狂ったエルフの女が口に出していた名前の方が気になったよ」 「ええ……本当に不思議な夢です。彼女もデスピサロと敵対しているのでしょうか?」 「さぁ?セリフだけを聞けばそんな感じだったけど」 何がおかしいのか、ミネアの髪を透きながらくすくす笑う少年。 逆に、ミネアの方は少年の胸にすがりつき、小さく震えた。 「ユーリル様……私は恐ろしいのです。 あなた様に出会って自分の運命を見出した時点で、先を見通せなくなるのは覚悟していました。 ……ですが、それとは別に、何か運命が大きく乱れているような気がしてならないのです!」 ミネアの怯えた声を聞きながら、少年の笑みはさらに深まった。 「運命が乱れている……か。そんな事は僕が一番良く知っているよ」 「あ……」 失言を悔いるようにミネアが唇を噛む。 「――そうだ。何がおかしいって、今僕がこんな所に居るのが一番おかしいんだよ!」 「申し訳ありません、ユーリル様、申し訳ありません……!」 突如熱に浮かされたような少年に必死にすがりつくミネア。 だがすぐに少年は正気を取り戻した。 「……ああ、ごめん。また取り乱しちゃったね。君の傍だとどうしても気が緩む」 「いいえ、今のは私の失言でした……。本当に申し訳ありません」 「もういいって!……それよりあの夢、現実だと思うかい?」 「ええ、恐らくは。それも今この時に起こっている出来事という可能性もあります」 その答えを聞いて少年に笑みが戻る。 「面白いな……。奴の情報は少しでも欲しいし、次の目的地はこれで決まりかな?」 「はい。あのような奇怪なオブジェを持った塔は目立ちましょう。必ず何かしら手がかりはある筈です」 「うん。それじゃあ明日も早いし、そろそろ寝直そっか?」 「…………はい、ユーリル様」 ユーリル? 勇者? HP:134 MP:153 装備:E破邪の剣 E鉄の鎧 E鉄の盾 E鉄仮面 呪文:【炎熱】メラミ・ベギラマ・イオラ 【回復】ベホイミ・キアリー・キアリク・ザメハ 【蘇生】ザオラル 【補助Ⅰ】ラリホーマ・マヌーサ・マホトーン 【補助Ⅱ】スクルト 【その他】モシャス