振り向いて下をみると、緑色の魔物が目の前に居た。何時の間に・・・ 「見慣れない格好の者じゃな。察するにお前はこの辺の者ではないな?」 喋る魔物も居るもんだな・・・弱そうだから少し話を聞いてやるか てか、周りから変に見られてたんだな、俺って・・・ まぁ、俺の本来の世界の格好だから奇妙な格好にも見えるのはおかしくないだろう 更に魔物の言葉は続き 「旅の者なら、一つ聞きたい。この辺に道化師のような格好した奴を見なかったか?」 道化師?あぁ、ピエロみたいな奴ね。 「いや、見た事が無い。それよりお前は何なんだ? 村の前で常駐して、お前みたいな魔物が村の近辺に居たら傭兵かなんかに襲われるのがオチだぞ?」 どうやらこの魔物はトロデ──トロデーン城という城の城主らしい 元々は人間だったが、道化師──ドルマゲスという魔法使いによって、この様な姿になったらしい 城もそいつのかけた呪いにより人々がイバラとなり、魔物の蔓延る城に化したのだそうだ さっきまで気づかなかったが、馬車に繋いである馬もじつはこのおっさんの愛娘で トロデーン城と同じような大きな城の王子と結婚する筈だったらしい それで生き残った兵士エイトと道中で出会った山賊と旅をしているらしい あまりにも言ってる事が生々しいので、俺も嘘とは思えなくなってしまった そして、とても彼らが哀れになってきた 俺にはバトルレックスを倒すという目標があった しかし、それは単なる憎しみに駆られた復讐ではないのか? 倒しても何になる?───小さな満足感に浸るだけだろう。 生物を殺す、この行動を楽しみにしていた自分を想像したら自分が怖くなってきた 宿の寝床に就いた俺は、イバラ化した人間を想像して中々眠る事が出来なかった 周りに迷惑をかけるかもしれないが・・・・ どうやら新たな目標が出来たようだ─── 早朝、俺はリーザス村の教会に行った それにしても、この村は過疎地域だからといってこの狭さは何なんだ・・・ 10分もあれば踏破できる村なんて始めて見ましたよ。えぇ 木で出来た両扉を開けると、小さい教会ながらも崇拝者専用椅子・女神像やらが 揃っている感じだった。 ───そこに彼女は居た うはw美人www 『あのー・・・』 「ここは、神にみちびかれし迷える子羊たちのおとずれる場所。 わが教会にどんなご用でしょう?」 『え、え~っと・・・先日はどうも有り難うございます・・』 やべぇ・・女性と会話する事無いから緊張するよ・・・こんな俺様無職童貞22歳 「あら?え~っと・・・」 「あ!思い出しました!トラペッタの・・・」 『はい、そうです。本当に有り難うございました。 貴方が助けてくれなかったら、どうなるか分かりませんでした。』 どうやら覚えてくれていたようだ。「あの時は、本当に驚きましたわ。 薬草を摘みに行ってたら黒いカタマリがあって・・・」 『それが俺・・・だったんですよね』 黒いカタマリか・・・ 無理はないか全身に炎を浴びてそのまま放置だったらそうなる罠 「はい。でも、わざわざ私に言わなくても宜しかったのに・・・ 貴方を見つけたのも、助けたのもどれも神の御導きです」 『神・・・ですか でも、有り難うございました』 う~ん、トラペッタの神父も言ってたような・・・ 無宗派の俺には何とも言えませんな 聖戦の名の下に戦争仕掛けてくるところもあるしな・・・ でも、本当に俺は感謝している こうして居られるのも彼女のおかげなのだ 俺はお礼を済ませ、像に手を合わせた。南無阿弥陀仏・・・これしか知らん それから俺は、一先ず昨夜のおっさんのところへ向かった 俺がおっさんの処に向かうのは訳がある 一つ。おっさん達を助けたい これは純粋にそう思った。 でも実際に行こうとするとなると体が重い。ハテ? 二つ。安全の確保 彼らは旅慣れていそうだ。剣を握った事の無い俺が、フラフラと旅をしているようでは 絶対に道中で絶命する。先日のように誰かが助けてくれる・・・ってことも恐らく無いだろう それに、元の世界に帰れる方法も分かるかもしれない 道化師だっけか。それを追うとなるとそれなりに世界中を歩かなければならない筈だ その道中で何らかの情報も手に入るだろう 一人より二人。二人よりも三人。三人より・・・た~くさんって訳だ ・・・まぁ、この二つの中で断然後者の方が強い訳ですがね 携帯の時計を見ると、九時を回ったところだった 俺は外に出るとキョロキョロと周りを見ておっさんを探した ───居た。 門から十数メートル離れた先の、門とは言えぬようなアーチ型の木で出来た柱に馬を留めて 中で鍋をカンカンと相変わらず耳障りな音を立てて叩いていた 『よぉ、おっさん。』気配が無かったのか、ビクッと跳ね此方を向いてきた 「なんじゃ?お前は? ・・・あぁ、昨夜の者か。今から発つのか?」 『おっさん・・・俺も一緒に連れて行ってくれないか? 正直、昨日の話を聞いておっさん達を助けてやりたいって、思ったん───』 言い終わらないうちに、おっさんが口を割ってきた 「ダメじゃ!ダメじゃ!!ワシらの旅は、遊びじゃないんじゃぞ? お前のような奴は足手纏いになるだけじゃ!!」 『ちょっと待てよ。俺だって本当は旅なんてしたくはないさ。 でも、旅をしなければいけないんだ』 「・・・ワケありのようじゃな。 どれ、話してみよ」 『信じてもらえないかもしれないが、実は俺はこの世界の者ではないんだ 自分がどうしてここに居るのか、ここが何処なのかサッパリ分からないんだ そんな時におっさんに出会った。しかも聞けば、旅をして歩き回っているという だから、おっさん達に付いて行けば何か情報も掴めるかもしれない・・・ だから、頼む。俺を連れてってくれ』 おっさんは少し考えて頷いてこう言った 「う~む。異世界の者というのはにわかに信じ難いが その格好を見ればそれも頷けるな・・・」 しばらく黙った後、こう付け足した 「・・・分かった。付いて行きたいのであれば、付いて来い 但し、それなりの覚悟が必要じゃからな!」 俺は、心の中で大きくガッツポーズをした