朝起きると自分の家に戻っていた。などと言う事は無く、やはり昨日泊まった宿屋にいた。 目をこすりながらベッドから起きる。外がうるさい。何があったか知らんが、とりあえず俺は宿屋を出る事にした。 いや、その前に部屋のタンスを調べてみる。何かあるかもしれない。 タンスを調べてみると銅製の剣がしまってあった。他の客が忘れたのだろうか。俺は銅の剣を取り出し、握り締めた。丁度良い長さと重さだ。 もう一つのタンスを調べた。エッチな下着を発見した。誰の物かは知らないが、貰える物は全て貰う主義なので、両方貰っていく事にした。 外に出ると、畑の所に人が集まっていた。暇なので行ってみる。 「また魔物にやられた!」 「罠も全く意味が無かった…。どうすればいいんじゃ…。」 どうやら畑が魔物に荒らされたらしい。作物が全て無くなっている。 「あの魔物を倒してくれる者がいれば…。」 「私達には無理だ…。あんな化け物を倒す事など…。」 相当深刻な事態らしい。しかし俺には関係ないので旅立つ事にする。 俺が村を出る為歩き出そうとしたその時 「おお、旅のお方!まさか魔物を倒して頂けるのですか!?」 長老らしき人物が俺に話し掛けてきた。何故魔物を倒しに行くと思ったんだろうか。まさか銅の剣を持っていたからか? 俺は否定しようとしたが、周りを見ると村人全員が期待の眼差しで俺を見ていた。まずい。断りにくい。 仕方ないので了承だけして、村を出たらそのまま次の町に向かおう。俺ははい。と返事をした。 「ありがとうございます!魔物を倒して頂けたらお礼は是非します!」 お礼? そうして俺は今、村を出て畑を荒らす魔物がいるという、西の洞窟へ向かっている。 長老から草を2枚貰った。体の怪我を瞬時に治す薬草らしい。どうも胡散臭い。 銅の剣を握り締めながら歩いていると、魔物に遭遇した。紫の覆面を被っていて、かなり大きいきづちを持っている。1m以上ある。 俺はきづちに警戒しながら、魔物に斬りかかった。 魔物は避けようと言うそぶりは見せたが、簡単に命中した。どうやらデカイきづちのせいで素早く動けないようだ。 魔物が体勢を立て直し、持っていたきづちを振り下ろした。やはり振り下ろす速度が遅く、簡単に避ける事が出来た。 俺は余裕で倒せると思い、スピードで魔物をかく乱し、次々に攻撃を当てていった。 が、さっさと倒さなかったのがいけなかったのだ。いきなり魔物の目つきが鋭くなり、物凄いスピードできづちをブンブン振ってきた。 速い。さっきの何倍の速さだろう。俺は避ける間もなく、顔面にきづちがぶち当たった。 その場に倒れ、鼻が折れて血がダラダラ出る。歯も折れてしまった。昨日の青い流動体の攻撃の比ではなかった。 段々意識が薄れてくる。ああ、ここでゲームオーバーか。コンティニューはナシだ。グッバイ俺の人生。 そうだ、確か薬草があった。どうも信用できんがこれに賭けるしかない。 長老から貰った袋の中から薬草を取り出し、かじる。まずい。小学生の時、消臭していないトイレの匂いがするお菓子を食べた事があるが、あれに似た味だ。あの時は誰も食べなくて冷蔵庫に保存していたので、冷蔵庫を開けて中を漁るのが本当に辛かった。 薬草を飲み込んだ途端、意識が完全に回復し、折れた鼻と歯もすっかり元に戻っていた。凄い効果だ。 俺は速攻で立ち上がり、魔物に斬りかかった。 突然起き上がったので、魔物は避ける事ができずに真っ二つに斬られた。 魔物はその場に倒れ光となって消え、お金が出現した。4Gだ。 金を袋に入れ、更に西に向かった。 洞窟に入ると、何故か明るかった。明かりもないのに何故だろうか。まあそんな事はどうでもいい。さっさと魔物を倒してお礼を頂きたい。 さっきからニヤニヤ笑っている青いコウモリが俺の頭の上を飛び回っていたので、チョップで払い落とした。こんな奴も魔物なんだろうか。 暫く進むと宝箱が2個置いてあった。大層な箱だが、誰が何の為に用意したのかが気になる。 左の宝箱を開けると、革のムチが置いてあった。銅の剣の方が強そうだが、とりあえず貰っておく。 右の宝箱を開けると、そこには確かに顔があった。何だこの宝箱は。ビックリ箱か? 「グハハハハ!また欲深い人間が現れたな!」 どうやら魔物の様だ。喋れるとは、相当知能が高いのだろう。 「貴様も死ね!ザ…」 台詞の途中で蓋を閉め、左の宝箱にあった革のムチで縛って開かない様にした。さっき何か言っていたが気のせいだろう。 更に進むと正方形の大きな部屋に出た。何故か知らんが今までの凸凹の壁と違って綺麗だ。 部屋の奥を見ると、今まで戦ってきた魔物より一回りも二回りもでかい魔物が待ち構えていた。 黄色い体毛に赤い鬣、鋭い牙を剥き、こっちを睨みながら唸っている。血祭りにあげてやると言わんばかりの形相だ。 とりあえず逃げても無駄そうなので、剣を構える。効くがどうかは分からないが。 魔物がゆっくりと迫ってきた。魔物退治なんか引き受けるんじゃなかったと初めて思ったのはこの時である。 などと考えてももう後の祭りなので、ヤケクソで正面から突っ込んだ。 ザクッ 腹に違和感を感じる。何だろう。何が起こったんだ? 腹を見ると、魔物の鋭い爪が俺の腹に突き刺さっていて、血がドクドク流れ出ていた。 魔物の爪が俺の腹から抜けると同時に、俺はその場に倒れ込む。 今度こそゲームオーバーだろうか。これだけの出血量だ。薬草を飲んで助かるのか。 期待半分諦め半分で薬草を食べた。すると、腹の出血が止まり、傷が見る見るふさがって痛みも消えた。 一体この薬草にはどんな成分が含まれているのだろうか。便利すぎて恐い。副作用とかありそうだ。 魔物がすぐ傍にいたので、俺は立ち上がって転びそうになりながらも部屋の入り口に逃げた。 このままでは勝てないと思った俺は、袋を漁った。 4G エッチな下着 小さなメダル しまった。準備不足にも程があった。自信過剰の戦士より酷い。仕方ないので、エッチな下着でも投げてみた。 するとどうだろう。魔物がその下着を嗅ぎ出したではないか。しかも突然表情が変わり、俺になつき始めた。俺の足に頬擦りをしている。 どう言う事だ。何故あの下着を嗅いで俺になついたんだ。俺は昨夜何をしたんだ? …昨日普通に寝た記憶しかないので、これ以上気にしない事にした。気にしたら負けかなと思っている。 それより今こいつは隙だらけだ。一撃で倒せる。 俺は剣を強く握り締めて思い切り振りかぶった。 ………。 ダメだ。いくらさっきまで俺を殺そうとしてた奴でも、こんなになついている奴を殺す事なんて出来ない。仕方ないので、殺したと言う事にしてお礼だけ頂くとしよう。 ついてくる魔物、いや虎?を追い払い、俺はさっさと洞窟を出た。 赤く染まった夕日を背に、俺は早足で平原を歩く。 そろそろこの世界から抜け出す方法を、本気で考えた方が良いのではないだろうか。 こんな世界にいたらいくつ命があっても足りない。これからもっと強い魔物が現れるかもしれない。 元の世界に戻る方法を探す旅にでも出るか…。しかし方法が無かったらどうする?こんな危険な世界で一生暮らすのか? …まあいい。考えるのも面倒だし、なる様になるだろ。 村に戻ると、長老が不安そうな顔で待っていた。 「ま、魔物を倒したんですか?」 俺はコクリと頷く。 「あ、ありがとうございます!本当にありがとうございます!」 ペコペコとお辞儀をする長老。夕飯を用意してありますのでどうぞお入り下さい。と言い、長老は村で一番大きな家に入っていった。俺も続いて入る。 中に入ると、真ん中のテーブルに夕飯が用意されていた。スープやサラダが並べられている。 よく考えたら朝から何も食べていなく、物凄く腹が減っていたので、俺はすぐに椅子に座り肉にかぶりついた。 晩飯を食べ終わり、お茶をすすっていると、長老がどこからともなく一枚の紙を取り出した。 「お礼の1000Gです。お受け取り下さい。」 1000と書いた、紫の鬣がある筋肉質の白い馬の絵がかいてあるお札を渡された。1000Gと言うのはどの程度の価値があるのかはっきりとはわからないが、宿屋に333回泊まれるという事は相当の大金だろう。俺はありがたく頂いた。 長老が今日は泊まっていって下さいと言ったので、好意を受け取る事にした。 今日でこの世界に来て2日だ。時間が経つのが遅く感じる。もう1週間以上いる様な気分だ。 とりあえず村の北の方に山があるので、明日はそこへ行く事にする。 明日は今日以上に疲れそうなので、早く寝る為にベッドにダイブした。 Lv3 HP26 MP0 武器:銅の剣 鎧:布の服