次の日の朝、変態王から宝の地図を貰った。 いや、地図はいらないからこの場で宝が欲しい。よこせ変態。 城の地下にある宝箱も持っていっていいと言った。そう言えばちらっと見た気がする。早速取りに行く事にした。 地下3つの宝箱の中にあったのは、5000G、魔法の聖水、小さなメダルだった。 因みに5000G札には盾を持った赤紫の豚の絵が描いてある。 俺達は変態王の城を出て、更に東へ突き進んでいた。 遠くに次の村が見えてきた頃、魔物に遭遇した。 …出た。スライムナイトとホイミスライム。 きやがれ。リベンジだ。そのニヤニヤした顔を真っ二つに斬り刻んでやる。 「イオ!」 スライムナイトがそう叫んだ直後、俺の周囲が爆発する。ガードに徹する俺。 かなりの痛みはあったものの、以前ほどではなかった。これならいける。 俺は鋼の剣を握り締め、ホイミスライムに一直線に突っ込んだ。 俺の鋼の剣は、ホイミスライムの頭から足を真っ二つに斬り刻んだ。 ホイミスライムは、悶絶する暇も叫ぶ暇もなく、絶命してしまった。 ふう、と溜息とついたところで、スライムナイトが襲い掛かってきた。 俺はすかさずバギを唱え、怯んだところを剣でぶった斬る。 あっけない。弱すぎる。いや、俺が強くなりすぎてしまったようだ…。 と調子に乗っているとまた強い魔物にやられかねない。 さっきバギを唱えた時すかさずと言ったが、実際は3、4秒かかってしまった。初級呪文でこれではダメだ。最終的には1秒以内に抑えたい。 村についた。大きな池。池を泳ぐ鯉。大きな石版。築100年のボロ家。 いや、最後の一つは確かではないが。 18、9歳ぐらいの金髪の青年が、池の鯉を捕まえて「今日の晩飯だ!」と言っている。アホか、何やってんだ。 暫く見ていると、青年が家の前で待っていた妹っぽい少女に鯉を渡し、「お兄ちゃんが毒味してね。」と言われている。ゲラゲラ。 今朝、変態王から宝の地図を貰ったが、実はこの町の真北に宝が眠っている塔があるらしい。 城から村までそれ程時間はかからなかったし、体力も温存しているので、今日の内にさっさと塔を攻略する事にした。 正午に差し掛かった頃、俺の目の前には巨大な塔が聳え立っていた。宝が眠っている塔だ。 塔に入ろうとするが、早速問題が発生した。 扉が開かないのだ。盗賊の鍵も鍵穴に合わない。どうしたものか。 暫く考え、俺の考えは一つに纏まった。 壊 し て し ま お う 。 俺は腰を深く落とし、まっすぐに扉を突いた! ドガァン!!! 扉にパンチをふち込んだ瞬間、轟音と共に衝撃波で扉が吹っ飛んだ。 扉の奥で待ち構えていた骸骨兵が吹っ飛ぶ。一石二鳥だ。 エテポンゲとボロンゴがビビっているが、気にしない。 俺は早く宝を手に入れる為、早足で塔に入っていった。 足が痛い。 塔は広さはあまりないが、階段が多い。と言うか階段しかない。螺旋階段が只管続いている。もう300段ぐらい上がったのではないのだろうか。 まあ塔の敵はマンドリルや腐った死体、ブチュチュンパなど大した事はないので楽なのだが。 それよりさっきから気になる事がある。 この塔は最上階にしか天井がないので、塔の上の方まではっきり見えるのだが、10m程上にある階段の所に魔物が見えるのだ。 ただの魔物じゃない。茶色の岩の魔物、ゴーレムだ。 昨日城の城下町で旅の戦士がゴーレムの話をしていたが、そいつはゴーレムに一撃で殴り倒されて命からがら逃げてきたらしい。 その戦士は見るからに旅に慣れた強そうな戦士だった。 エテポンゲに任せるか?任せておいて俺とボロンゴで先に行くか? 等と考えているうちに、いつの間にかゴーレムの目の前に来ていた。 ゴーレムは指をポキポキと鳴らし戦闘準備は万端で、「バッチリ殺してやるぜ!」と言った感じだ。その岩の中に本当に骨が入っているのか? いや、突っ込む所が違う気がするが、テンバっているので正常な思考ができない。 こっちはまだ戦闘態勢に入っていないのに、突然ゴーレムの鉄拳が降り注ぐ。 間一髪で避ける。どうやらスピードはない様だ。見た目通りだな。 パーティで一番スピードのあるボロンゴが、ゴーレムの頭に速攻で噛み付く。 ゴーレムは頭を押さえて悶えている。意外に弱いんじゃないか? 余裕だな、と思って鋼の剣を振りかぶった瞬間、ゴーレムが俺に圧し掛かってきた。 物凄い重圧で悶え苦しむ俺。この重さだ。並の痛さじゃない。 エテポンゲがヒャッホウ!と言いゴーレムに圧し掛かる。 いや待て、ゴーレムにもダメージがあるだろうが、それ以上に俺が痛い。 やめろお前。何度も踏みつけるな。いてて、お前ぶち殺……… 次の瞬間、ゴーレムのエルボーがエテポンゲに襲い掛かる。 エテポンゲは直撃を受け、5m程吹っ飛んだ。物凄いパワーだ。 ゴーレムが更に重圧をかける。なんか体がミシミシいってるんだが。まさか骨が折れるなんて事はないよな。 ボキッ! 左腕に激痛が走る。ヤバイ。曲がってはいけない方向に腕が曲がってしまった。 ゴーレムが不敵に微笑む。野郎、なめやがって。 方法がない訳ではない。が、バギ程度では吹っ飛びそうにないので、また新しい呪文を使わねばいけないのだ。幸運が3度続くのだろうか。 ま、何でもいい。気楽にやろうぜ気楽に。 台詞と状況が全く合っていない気がするが、取り敢えずやってみようか。 俺が唱えた呪文、それは…。 スカラ!! 何も起こらない。ゴーレムも一瞬怯んだが、再びニヤリと笑い重圧をかける。 ええい、イメージが悪かったか。やはり戦車の弾の直撃を受けて無傷、というのでは無理だった。 いや、普通に考えて十分なんだが。もっと強そうなものは………。 !! これだ! スカラ!! 次の瞬間、俺の体が赤い光に包まれた。 成功だ。さっきまで悶える程痛かったが、今は十分耐えられる程度だ。 イメージしたのは、ゴキブリを踏み潰して精神的に無傷、というものだ。 ちょっとズレている気がするが、使えれば何でもいい。 俺はボロンゴに、ゴーレムに噛み付く様指示した。 ボロンゴの鋭い牙がゴーレムに襲い掛かる。 3、4度噛み付いたところで、ゴーレムは叫び声をあげる。かなりのダメージを受けている。 俺がバギでトドメをしようとした瞬間、エテポンゲのタックルがゴーレムに直撃し、絶命した。 「ヘッヘッヘ、俺俺、俺がゴーレムを倒したんだぜ。」 得意気になるエテポンゲ。その憎たらしい顔に鉄拳をぶち込んでやろうか、と思った。 自分にホイミをかけると、腕が元通りに戻った。普通に動く。 最上階に着いた。しんどい。500段は登った。足が震えている。 最上階の中央には、黄金に輝く宝箱が置いてあった。 俺は早速開けてみる。鍵がかけてあるかと思ったが、普通に開いた。 中には、小さな棒が入っていた。何か書いてある。 「アイス棒 あたり」 ……………。 嫌がらせか?変態王の嫌がらせか?それとも別の奴か? 俺が怒りで震えていると、後ろから足音が聞こえてきた。 「おい、そこに入っていた宝を置いていきな。」 そこには、確かに化け物がいた。 パンツにマスクに斧…。ば、化け物め…。また変態か? 変態が自分語りを始めた。 名はカンダタで、世界中に子分がいる大盗賊らしい。 いや、聞いてない。というか、お前の子分になりたいなんて、余程のアホだな。その子分達。 「タイマンだ。来い。」 カンダタが斧を構える。タイマンとは、見かけによらず正々堂々としている。 いや、普通に考えて3対1で戦おうとは思わないか。 こいつは恐らく戦士系。そして俺は魔力が切れた。となれば、確実に肉弾戦になるだろう。 カンダタが激しく斧を振りおろす。速い。俺は紙一重で避けた。 この野郎、見かけによらずスピードがある。さすがは盗賊だ。 はやぶさ斬りでも、俺がわずかにスピードが上回る程度だった。 はやぶさ斬りは攻撃力が低いので、何度攻撃しても倒せない。体力を消耗するばかりだ。 痺れを切らし、俺が渾身の一撃を与えようと剣を振りかぶると、カンダタはその隙を突いて素早く斧を振り下ろした。 ズシャッ 俺の腕が切り落とされる。しまった。これで五体不満足になってしまった。今後人々に出会う度に、哀れみの目で見られるのだろう。 いや、それどころではない。出血が凄い。失血死してしまう。 俺は袋から薬草を取り出し、かじった。 ナ○ック星人の如く腕が生える。良かった。体液の様なものは出なかった。出たら精密検査をするところだった。 俺はカンダタの隙を突き、素早く後ろに回りこんで首にチョップを放った。 その場で膝をつくカンダタ。 俺は腰を深く落とし、まっすぐに相手を突いた。 ドガァン!! カンダタの背中が反り返り、その場に倒れて気絶した。 腕を切られたお返しに、脇腹を思い切り蹴る。カンダタはゴロゴロと転がり、下に落ちてしまった。 ……………。 ちょっと待て。ここ高さ何十mもあるんだぞ?そこから落ちてしまったと言う事は…。 ……………。 悪かった。殺すつもりはなかったんだ。安眠してくれ。 塔を降りる前に再び宝箱を確認すると、小さな鍵があった。 確認しておいて良かった。宝箱の大きさの割に小さいからわからなかった。 何の鍵かは分からないが、一応貰っていく。 その後、カンダタの事で暗い気持ちになり、満身創痍の体を引き摺ってゆっくりと塔を降りた。 一階でカンダタがでかい口をあけていびきをかきながら寝ているとも知らずに。 Lv12 HP38/66 MP1/18 武器:鋼の剣 鎧:鱗の鎧 兜:木の帽子 呪文:ホイミ、バギ、スカラ 特技:はやぶさ斬り、正拳突き