塔を出た後、村に戻り一泊してから更に東に向かった。
塔の宝箱にあった鍵について村人に聞いたが、結局有力な情報は得られなかった。
爆弾ウニパン(7G)を食べながらだらだらと歩いていると、急に口の中が爆発した。
口から血が大量に出る。エテポンゲがゲラゲラ笑っているがそれどころではない。薬草で一命を取り留めたが、まだ口の中が痛い。このパン、爆弾入りかよ。何て物を売りつけるんだボケが。
取り敢えずエテポンゲを殴り倒した後、パン屋の主人に怒りを覚えながら歩いていると、山賊ウルフが目の前に立ち憚った。
7匹もいる。まずい。2、3匹ならなんとかなるが、この数は流石にきつい。
7匹が一斉に俺に襲い掛かってくる。
ちょっと待て。時代劇とかでもこういうのは一人ずつ斬りかかって……ぶべら!!
腕を、腹を、太ももを、次々に斬られる。ヤバイ。出血が凄い。
バギを唱えようとするも、山賊ウルフの連続攻撃に邪魔される。
ボロンゴが7匹の内の1匹に噛み付く。エテポンゲもマッスルダンスで2匹相手に応戦する。
山賊ウルフの戦力が分散したので、俺は素早くホイミを唱え、立ち上がって2匹を相手にする。
数が多く多少苦戦したものの、大きな怪我はなく無事に全滅させた。
ようやくチームワークが取れてきた様だ。エテポンゲも本気を出せばかなり強い。

昼過ぎ、城に到着した。
変態王の城とは違い城下町はなく、少し小さく感じた。
変態王の城と同じく中に自由に入れるらしいので、遠慮なく入る。
城に入る前に、棺桶を引き摺った青い服を纏った剣士とすれ違ったが、気にしない事にしよう。
兵士がエテポンゲを悪い魔物と勘違いした。エテポンゲが「ぷるぷる!僕悪い魔物じゃないよ!」と気持ち悪い笑顔で言っている。益々怪しい。
と言うかエテポンゲは一応人間だろ。自分で魔物認定しやがった。なんて奴だ。
城の中には、人が住んでいた。城の中で料理を作っていたり、ベッドで寝ている民間人がいる。
それにしても怪我をしている兵士が多い。そこら中の兵士が包帯を巻いている。医療室で寝ていたり、怪我が深く死んでしまった兵士もいるらしい。一体何があったのだろうか。
二階への階段の所で、兵士が道を塞いでいた。
「ん?お前も希望者か?」
兵士がそう言った後、大剣を構える。何だ、やる気か?
「死にたくなければやめておけ…。」
エテポンゲがそう言い、拳を構える。台詞が少しかっこいいと思ってしまった。大分毒されている様だ。
「ほう、相当腕に自信がある様だな…行くぞ!」
兵士が自分の身長を優に超える大剣で斬りかかる。俺は鋼の剣で大剣を止めた。
俺は余裕の表情を保つが、実は手が痺れている。当然だ。あの大剣に、こんな細い剣で対等に戦える訳がない。
俺が兵士の出方を窺っていると、城に引き篭もる自堕落人間達が、周囲に集まってきた。
いや、自堕落人間がどうかはわからない。社会に貢献している人達ばかりだったら、謝る。正直すまんかった。
「うおおー!!始まったぞー!!」
「やれー!!ぶち殺してやれー!!」
罵声の様な叫び声が飛び交う。
今分かった。ここに住んでいる奴らは極端にストレスが溜まっている奴らで、こうやって旅の戦士達が兵士に殺される姿を見て楽しんでいるんだ。
つまり、俺はこいつらのストレスを解消させる為だけに殺されるんだ…。

殺される訳にはいかん。こっちも本気で殺しにかかる。
俺とボロンゴとエテポンゲが一斉に突撃する。
「ちょ、お前ら!普通は正々堂々と一対一でたたk…」
問答無用で斬りかかる。三人の攻撃を一気にくらい、兵士は大量の血飛沫をあげると共に倒れた。
「き、貴様ら…卑怯だぞ…。」
「ずるい、卑怯は敗者の戯言。勝者こそが正しいのだ。戯け者が。」
エテポンゲが兵士の顔を踏んで、二階に上がっていく。何だか屁理屈の様な気もするが、まあいい。
山賊ウルフ戦の怒りをぶつけているのかも知れないな、と思いつつ俺も二階へ上がった。

自堕落者の住居二階から更に階段を上がり三階へ行くと、兵士二人が扉の前に突っ立っていた。
「ここにいると言う事は一階の兵士を倒した様だな。腕に自信はある様だ。だが、二人ではどうだ!?」
城の兵士スコット、ホリディが大剣を構える。またか。今度は観客がいないのに、また処刑か。
「やけておけ。お前らと俺とでは、格が違いすぎる。」
再びエテポンゲが妙にかっこいい台詞を言う。ヤバイ。かっこ良すぎる。俺を盾にしていた頃とはまるで別人だ。
が、さっきの様にはいかないだろう。今度は二人だ。どうしても戦力が分散してしまう。
ボロンゴとスコット、エテポンゲとホリディが一対一で戦い、俺が呪文で二人を援護すると言う作戦を立てた。
作戦通りに事が進んでいく。ボロンゴもエテポンゲも、大体互角と言った所か。
相手の実力が分かったところで俺がバギやスカラで援護をすると、徐々に戦況が有利になってきた。
「ベホマラー!!」
スコットがそう叫ぶと、スコットとホリディの傷が瞬く間に回復した。

「ふはははは!!甘く見るな!!」
兵士二人の大剣が、ボロンゴとエテポンゲの身に襲い掛かる。
更にスコットがバイキルトやルカナンを使い、ホリディもうまい所でスコットをかばうので、さっきまでとは一転し、一気に不利になった。
そろそろ俺が直で戦う時が来たか。
取り敢えずホリディはボロンゴとエテポンゲ二人で戦わせる。俺は一人でスコットと戦う。
宝の塔からここに来るまでに、密かに練習していた技があった。まだ完成には至っていないが、やってみる事にする。
俺は右手で剣を水平に持ち、精神を集中させる。
ギラ!!
俺の左手から小さな炎が現れる。単体にダメージを与えるメラとは違い、広範囲に効果がある呪文だ。
これを単に兵士にぶつけるだけではない。
炎を纏った左手を刃に近づけると、刃が炎で覆われた。
ギラと剣が合体して火炎の剣ってとこかな…更に…
こいつが火炎斬り!!!
スコットに斬りかかる。俺の鋼の剣は、スコットの左腕をいとも簡単に切り落とした。
腕をもがれてその場で悶え転がるスコット。まあ薬草で腕が生えるからいいだろう。
俺が開発した火炎斬りは、燃え盛る炎で肉を焦がし、刃で骨を断つ技である。普通に斬るより遥かに威力がある。
俺は攻撃の手を休めず、スコットの右足を火炎斬りで切断した。
「がはっ…ま、まいった…!」
スコットが薬草を取り出してかじる。すると左腕と右足がブチュブチュグチョと奇妙な音をたて、徐々に生え出した。生え方にも色々パターンがある様だ。いや、そんなギャグ的要素はいらん。
ボロンゴ達もホリディを倒した様だ。流石に二対一ではかなわないだろう。
「どうやら相当の実力者の様だ…。分かった。王様の所に案内しよう。」
ついてこいと言われる。何だ、今度は王直々に処刑か?そこまでして処刑したいのか?

王座の間には、王と王紀、大臣、兵士長がいた。王の前まで連れて行かれる。
「この者たちは試験に合格した者です。連れて参りました。」
「ごくろう、下がって良い。」
試験?何の試験だ?王直々に殺す価値があるかどうかの試験か?王は殺人鬼か?
様々な疑問が思い浮かぶ。一体何が始まるのだろうと緊張していると、王が口を開いた。
「君の様な若者が、洞窟の魔物を倒したいとは珍しい。感心な若者だな。」
洞窟の魔物?何の事だ?俺は知らんぞ。帰してくれ。
「だが、その前に兵士長ブラストと戦ってもらう。いいな?」
「今度は兵士長か…。ブラスト、貴様にも見える筈だ。死○星が…。」
ちょっと待て。状況を考えろエテポンゲ。今までの兵士達とは訳が違うんだぞ。
「甘いな…。世紀末の覇者ブラストが返り討ちにしてやろう。」
兵士長はノリが良かった様だ。助かった。

兵士の訓練場に案内される。ここでブラストと戦うらしい。
「三対一で来い。それで俺に勝てないと言う事は、洞窟の魔物にも勝てないと言う事だ。」
金髪の兵士長ブラストが大剣を構える。この隙のない構え方から、何となく風格を感じた。
「行くぞ!!」
ブラストは物凄いスピードで接近し、エテポンゲの腹を斬った。
「うぐ…あ………!」
エテポンゲがその場に倒れ込む。エテポンゲはそのまま気絶してしまった。
「おや、さっきまでの勢いはどうした?」
ブラストがニヤリと笑う。こいつ、今までの兵士達とはケタが違う。

俺はギラで剣に炎を纏わせ、スカラを俺とボロンゴに使って万全を尽くした。
俺とボロンゴは二手に分かれ、ブラストの左右から一気に突っ込んだ。
「甘いわ!!」
ブラストが回し蹴りを放つ。俺とボロンゴは吹っ飛ばされ、壁にぶち当たった。
さて、ここまで実力の差を見せつけられて、後はどう対抗しよう。策がない。
俺が壁にもたれかかって苦しんでいると、ブラストがこちらに近づいてきた。
ブラストが俺の前までくると、拳を強く握り腰を深く落とした。
これは、正拳突きか!?力勝負なら負けん!
俺も素早く立ち上がり同じ様に腰を深く落とし、ブラストが拳を突き出すと同時に俺もまっすぐに相手を突いた。
ドガァン!!!
お互いの拳が衝突すると同時に、二人とも吹っ飛んだ。
俺も痛かったが、ブラストもダメージを受けている。満更失敗でもなかった様だ。
ダメージが回復したボロンゴが、悶えているブラストに噛み付く。
俺は立ち上がれないので、バギで遠距離攻撃を試みる。
ブラストのダメージが蓄積されてきた。よし、倒せるかもしれん。
いつの間にかエテポンゲが意識を取り戻したようだ。ブラストに接近していた。
「よくもやりやがったな…死ねぇ!!」
「だが断る!」
エテポンゲがブラストを殴ろうとした瞬間、ブラストが五月雨剣を放つ。
ブラストの大剣は、エテポンゲの体を次々に切り刻んでいった。
エテポンゲが再び気絶する。こいつ、今回はやられ役だな。王や兵士長の前で偉そうな事を言うからだ。
座った状態で五月雨剣を放つとは、まだまだやる気らしい。

「少年よ、だらだらと戦っている暇はない。次の一撃で決めよう。一対一だ。」
俺が指名される。まあ確かに長期戦は面倒なので、俺は了承した。
俺とブラストが部屋の中央で対峙する。
「行くぞ、はああ!!」
ブラストが大剣を構えて突っ込んでくる。
バギ!!
俺は突っ込みながらバギを放ち、怯んだ所に火炎斬りを放った。
「ぐわあぁぁ!」
ブラストはその場に倒れこんだ。
「き、貴様、卑怯だぞ!呪文を使うとは!」
ブラストが切れている。が、俺は冷静に反論した。



ずるい、卑怯は敗者の戯言。勝者こそが正しいのだ。戯け者が。



言ってやった。言いたかったんだ。気分がいい。
エテポンゲがパクるなと喚いているが、ブラストが納得したので万事解決だ。

王に話を聞くと、どうやら南の洞窟に魔物がすみついていて危険なので、城と砂漠を繋ぐ洞窟を開放できないらしい。で、魔物を倒して死体を棺桶にいれ、城に持ち帰れとの事だ。
城に入る前にすれ違った剣士は、先に魔物に倒しに行った奴らしい。という事は一刻も早く奴に追いつかなければならないので、宿屋で休んでる暇はない。エテポンゲの鉄拳混じりの交渉で、ブラストから薬草とエルフの飲み薬を得た。ブラストは泣いていたがそこは軽くスルー。
防具屋で鉄の鎧と鉄兜を買い、薬草とエルフの飲み薬を飲んで万全の状態で城を出た。

Lv14
HP75/75
MP25/25
武器:鋼の剣 鎧:鉄の鎧 兜:鉄兜
呪文:ホイミ、バギ、ギラ、スカラ
特技:はやぶさ斬り、火炎斬り、正拳突き

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