「あああああああああ! そうだよ、銅の剣はスーファミじゃねえか!」

 そんなわけでこんにちは。俺です。
 俺は今、ガライの町に来ています。
 いきなりで申し訳ありませんが、とんでもない勘違いをしていました。
 ガライの町にある鍵を使って入る建物内。そこに宝箱が三つあるのは皆さんご存知のことと思います。
 約600G、銅の剣、たいまつが入ってると思って来たわけですが…… S F C 版 と 勘 違 い 。
 中には10G、薬草、たいまつの3つ。……鍵一個と引き換えと考えるとどう考えても損だよなあ。
 仕方ないのでさっさと建物を出る。
 唖然としている宝箱の持ち主らしき親父はスルー。
 私の宝箱が……と呟いてるのは気のせい気のせい。

 この建物内に入る=ガライの墓で銀の竪琴を取りに行く、なんだけど今の俺は無理。
 棍棒と皮の服装備の俺に過度な期待はしないように。

 ともあれ、目的の一つは果たした。
 残る目的はある剣士の捜索。

「……って簡単に見つかったよ」
 武器屋の隣に、目的の剣士はいた。
 にしても、何と声をかけたらいいのか。
 すいません、ちょっとお時間よろしいですか。……これじゃキャッチだな。
 こんにちは! 竜王を斃しに行く途中なんですけど、どうやって斃せばいいのか教えてくださいm(_ _)m
 ……どこの厨だ。
 調べたけどわかりませんでした。
「俺に何か用か?」
「うぉう! 脅かすな!!」
 どう声をかけるべきか俺が迷っていたら剣士から声をかけてくれました。

「ええと……人違いだったら申し訳ない、みやおうさん?」
「いかにも。俺はみやおうだが――」
 ファミコン神拳110番創成期の一人、ミヤ王。
 平成生まれのお子様達にはわからないだろう。詳しくはググれ。

「ワケあってあんたを探してた」
「俺を? 何のためにだ?」
「竜王を斃すために、あんたら――ゆうてい、みやおう、キムこうの力を貸して欲しい」
「なにい?」
「俺の仲間になってくれ」
 ファミコン神拳110番のメンバーである堀井雄二、宮岡寛はドラクエの製作に関わっていた。
 彼らがドラクエに自己を投影させたのかはわからない。
 十中八九お遊びだろうが。
 ともあれ、ドラクエ製作陣が仲間に加えておいて損はない。たとえ別物であってもだ。

「冗談ではないようだな。……話を聞かせてもらおうか」

 ・俺が異世界から来たこと。
 ・竜王を斃すことしか俺が元の世界に戻る可能性がないこと。
 ・俺の世界ではこの世界は創作物であること。

 ミヤ王に語ったことを今北産業用にまとめておく。
 創作物と表現したのはこの世界ではゲーム云々で説明するよりも手っ取り早いと判断してのことだ。
 ゲームとはなんだと聞かれても困るしな。

「嘘ではないようだな」
 黙って俺の話を聞き終えたミヤ王は、じっくりと考え込んでから口を開いた。
『私は異世界から来た人間です、元の世界に帰るには金正日を斃すしか方法はありません。一緒に北朝鮮を攻めましょう』
 なんて言われたら正気を疑うだろ?
 誰だってそーなる。俺もそーなる。
 しかし、ミヤ王は信じてくれたようだ。
 流石はファミコン神拳110番。

「ゆうていとキムこうの居場所も知っていると言ったな」
「ああ。ゆうていはマイラ、キムこうはリムルダールにいる」
「間違いはないな?」
 真面目な顔で聞くミヤ王に頷いてみせる。
 ミヤ王がガライの町にいたように他の2人もそれぞれの町にいるはずだ。……確証はないけど。

「竜王を斃す斃さないは俺一人では決められん。二人と合流してからになるが……」
「……ま、リムルダールまでの仲間ってことでもいいさ」
 ここにいる「みやおう」とファミコン神拳の「ミヤ王」は別人。
 だが、現実のミヤ王をモチーフとしている以上、決して見捨てるはずがない。
 3人揃った時は竜王打倒に力を貸してくれるはずだ。

「こっちは実戦慣れしてないんで色々と迷惑かけると思うがよろしく頼む」
 そう言うと、ミヤ王は男らしい笑みを浮かべて、気にするなと言ってくれた。
 いい奴だ。
 ミヤ王になら掘られてもいい。
 実際にそうなったら全力で貞操を守るが。

「マイラにゆうていがいるんだったな」
「ああ。明日、マイラを目指そう」
「今からでもかまわないぞ」
「俺がかまうんだよ。ラダトームから全力疾走はしんどいわ」

 ともあれ、こうしてミヤ王が仲間になった。

ミヤ王のステータス
攻撃力:あたたたっ
防御力:あたっ
素早さ:あたたっ

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