―――うおー、頭が痛い。昨日は飲みすぎたか? ってか、やべぇ。昨日、居酒屋出てからの記憶が全くねーんですけど。 こんなんでよく帰宅できたな、俺。犬並みの帰巣本能だ。 ああ、朝日が眩しい。溶けちまう。俺は夜が好きなんだ。どっかいってくれ、太陽。 * 「ううん…」 俺 「おわっ!?…って加藤じゃねえか。驚かすんじゃねぇよ」 俺の隣のベッドにいたのは、親友の正志だった。茶髪のベリーショート。見間違える筈もない。 正志「おはよー、竜司。ってかなんでお前、俺の部屋にいんの?」 と、とぼけた顔でとぼけた事をいいやがる。ちなみに、竜司ってのは俺の名前だ。 俺 「ふざけんな、ここは俺の…」 言いかけて、違和感を覚える。 あれ?ここ、俺の部屋じゃなくね?そもそも、俺の部屋にはベッド1つしかないもんな。 じゃあやっぱ、ここは正志の部屋なのか? 俺 「わり、たぶん俺、間違えて…」 正志「あれー、ここ俺の部屋じゃないやー。ここどこー?」 あれ?正志の部屋でもねぇのか? じゃあ、ここはいったい何処なんだ? …考えてても埒があかねぇな。正志に昨日のことでも聞いてみるか。 こいつに期待はしてねぇけど、手がかりにはなんだろ。外に出てみるのが一番早いんだろうけど、心の準備ってやつがな。 俺 「なぁ、正志。昨日のこととか覚えてる?」 正志「えー、ごめん。居酒屋出てからのことは覚えてないやー。竜司は?」 俺 「俺もお前と同じだわ。起きたらここにいた」 正志「マジかぁー。うわー、ありえねー」 こいつも記憶にないのか。やべぇ、怖くなってきた。 ここは一体どこなんだよ。ってか、そもそも日本なのか? 家具とか家の造りが、普段目にしてるのと全然違うぞ。 ―――もしかして、拉致られた? 正志「ねーねー」 俺 「…なんだよ。今、考え事してんだけど」 正志「ちょっと外出てみよーよー」 うーん……。まぁ、ここにいてもしょうがねぇな。不安になるだけだ。うし、心の準備完了! 俺 「だなー。その前に、とりあえず着替えよ―か。俺ら、いつの間にかパジャマだし」 正志「うわ、ホントだー。誰かが着せてくれたんかなー」 そんなことを話しながら支度を済まし、ドアの前に立つ。 歯磨きくらいはしたかったけど、洗面所がねぇからしょうがねぇ。 そして俺は、ドアノブに手を掛ける。だが、そこで固まる。 目の前のドアを開け放つ勇気が、どうにも湧いてこねぇ。 もしも、そこが言葉も通じねぇ異郷の地だったら。もしも、ワケのわからん事件に巻き込まれてしまっていたら。もしも――― 正志「さっさと開けちゃいなよー」ドンッ 俺 「わッバカッ!!」 正志の糞バカに背中を押され、俺はドアを開け放った。 そこで目にした風景は俺の想像を遙かに上回るものだった。