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テレレレ テッテテー♪ 昨日とは違うBGMがかかっています。昨日は華やかな明るさのある曲でしたが、今日はどちらかというと素朴な感じがします。 「やあっ旅人さん。目を覚ましたかい。外は魔物がでて危ないからこれを持って行くといいよっ。 それから橋を渡るともっと強い魔物がでるからいかない方がいいよっ。」 そういうと男は、背中にしょっていた空の袋の中に竹竿と布で作った白い服と10枚のコインらしきものを入れてきました。 なんだか変な感じですが、危害を加えそうな感じがないので安心しました。 しかし安心もつかの間、私は落胆しました。男は規則的に足踏みをしていました。ため息をする私にはお構いなしです。 それでもお礼を言って、袋に入れたがらくたを丁重に断ろうとしたのです。すると 声が出ません。多少ショックですが、思えばこの世界で言葉は意味をなさないとも思いました。 試しに男にしゃべるようにと視線を交わすと、全く同じことを繰り返しました。あはは。 ところで崖から落ちたはずの私には傷一つ痛むところ一つありませんでした。服はもはや原形をとどめず、ズタズタのボロボロになっているのにです。 どうも、よく考えましたが、どうやらこの世界では死ねないようです。 っっっっふっざ けんなぁあああああ!!!!! 声は出ないが、叫んでいるかのように顔がゆがんでいただろう。速く、強い、そして焦燥のためリズムの崩れたじじんだをした。 そのリズムに腹が立った。気に入らない。袋の竹竿を振り回すたたきつける。壺がいくつか壊れ、種のようなものがこぼれる。 聞いたことがある。人を殺すときは切るのではなく 突け、と。他には何も思いつかなかった。それだけが頭を巡るのだ。あのときもそうだった。 らったああえあああああああああああ・・・・ぁぁぁぁ・・・ 声は出ない。代わりにキューィとかヒューという音がのどからする。死ねないくせにのどが痛い。勢いをつけて向かうはさっきから胸くそ悪い足踏みを繰り返している糞野郎。 男はよけなかったし抗わなかった。だが竹竿が男に当たることはなかった。強い力で竿が動かない。何かに守られているようだ。 気に入らない気に入らない気に入らない!あたりをがんがんと殴る。蹴る。痛い。さらに気にくわないことに男はさっきと同じことを話した。おまえに話しかけたんじゃない。馬鹿にしやがって。もう一 度殴ろうとしたが、殴れないので壺をたたき割った。沢山沢山割った。 はあ。はあ。はあ。ああぁああああ・・・・。 ぅううう・・・。すまない。すみません。あなたには本当にお世話になったのに「やあっ旅人さん。目を覚ましたかい。外は魔ry」 私はなんてことを。許してください「やあっ旅人さん。目を覚まry」仕事がうまくいかなくて、あなたならわかってくれるよね?辛いんです。私は不幸なんです。 彼は声が出ていないことに気づいていなかったが、声を出していてもその懺悔を気にする人はいなかった。 かつて妻が額を割って血を流して、子供は意識を失って眼を開けたまま倒れていたときも、同じように誰も聞いていなかった。 どこの世界でも彼の話を聞くものはいなかったのだった。