当面の目標に「エイト探し」を加えたところで、 所詮、今日もひたすら歩き続けるのである。 目の前に次々と現れるモンスターをぶっ飛ばしながら。 あー私はあんまりぶっ飛ばしてないけどね。 「なあんでマペットマンの様子を見てばっかりいるのよエイコ!!」 「だって冷めるストーリーってどんなのか気になるじゃん」 「姉貴、あれはホントにつまらないから見なくていいでがす」 「オレなんか愛の物語とかいうので寝ちまった事あるぜ」 とりあえず、大きな袋の中をまさぐり、私が装備出来そうな物を引っ張り出す。 装備できるのと出来ないのがあるらしいが、基本的にエイト準拠らしい。 「ねーねーこの鎧、激重なんだけど、他のないの?」 「兄貴のお下がりで一番いいのはそれでがす、ガマンするでがす」 「でも帽子と盾が見事にミスマッチね」 「他の鎧や服はまだまだ高いからな、槍とは合ってるぞ」 装備は、ホーリーランスに青銅の鎧、キトンシールドに羽根帽子、そしてスライムピアス。 奇妙この上ない。ていうか槍の初心者に盾まで持たすな。ゼッタイ攻撃力下がってるよ。 「どりゃー! しっぷう突きィィ!」 「でやー! かぶと割りィィ!」 「何で先に攻撃しちゃうのバイキルトー!!」 「すっかりツッコミだなゼシカ、かえん斬りッ」 ベルガラックの真南の山の上にあったトラ屋敷に行った。 楽しみにしてたんだよ、キラーパンサーに乗って走れるって雑誌で読んで。 ゲームではそこまでまだ行ってないけど、 実体験に勝るものなし。いいじゃないのドラクエワールド。 「で、その木の所まで行けばいいのね」 なんとなくえらそうに言ってみる。大人の世界は気圧されたら負けだ。 「でもそんな場所、この近くにあったかしら」 「とにかく行ってみるしかないな、それに像ならなんとなく見覚えがある」 すげえなククール、私は見覚えないぞ。 「じゃ早速そこへ向かうでがす!!」 ヤンガスは立ち上がり、今にも駆け出さんばかりである。 「人の話聞いてねえだろハゲデブ。明け方だっつーの」 「あっしはハゲではないでげす!!」 そんな私らの会話を聞いて、ゼシカはクスリと笑った。 「ホント、エイトとは正反対の性格ね。でもいいコンビだわ、あなたたち」 あーなんか上から物を言われたカンジ。やなカンジ。 「じゃあ、オレ達はオレ達でいいコンビかな?」 どさくさにまぎれてククールゼシカに絡む。いやムリだろ。 「そんなことより早く案内してよ、場所分かるのあなただけなんだから」 案の定、さらりとかわされた。 舌打ちしながらククールは重い腰を上げた。 とにかく、エイトを見つけないことには、 私の冒険は果てしなく続いてしまうのである。 それは困る。 早いとこ、高速移動手段を入手せねばならんのだ。 「まあ、移動してる間に日が暮れるだろ。今夜は野宿かな」 ククールが振り向きもせずあっさり言い放つ。 げッ、野宿かよ。やだなあ。まあ、明け方着くってのよりはいーけど。 ゲームをプレイしてる時には思わなかったけど、 夜も歩き回ってそのまま夜明け、なんて実体験したらかなり死ぬ。 朝まで飲んだくれるのとはまた訳が違う。 飲んでる時は飲み屋なりカラオケなりにいるから屋内だけど、 こいつら徒歩で移動なのだ。運動不足の現代人には結構来る。 「分かったわ、じゃあそこに着いたら準備しましょ」 ゼシカはあっさりしたものだ。どの辺が良家の令嬢なのか。 ヤンガスは元山賊だけあって、野宿など屁でもないらしい。 ていうかククールだって修道院だか教会だかにいたんだろ? 「不満そうだなエイコ、お前、育ちがいいのか?」 ククールが絡む。私はよっぽど不満そうな顔をしていたらしい。 「別に、普通だと思うけど。ていうかこっちにもっと育ちがいいのがいるだろ」 馬姫と緑っちは貴族っつーか王族だろうが。 「ああ、ワシらはだいぶ慣れたから心配無用じゃ」 「ブルルッ」 あっそ。 程なく、そのバなんとかというキラパンの出る場所を発見した。 キラパン像は案外不便な場所に点在しており、方向音痴の私には どうしてココがその場所に当たるか見当もつかなかったが、 ククールが言ってるから大丈夫だろ。 「じゃあ、今日はここで夜を明かすでがす。馬姫さまもおっさんも休むでがす」 いきなりヤンガスが仕切る。 お前、私と同じで場所なんかワケ分かんなくなってたろ。 「山賊サンが方向音痴って聞いた事ないわ。よくあんな迷路みたいなパルミドに住んでたわね」 ゼシカは同じことを思ったらしい。「サン」付けは明らかにイヤ味だろう。 「ち、違う、あれは……」 「あーそれよりさあ、寝床作ろうよ寝床。私、少し離れないと蹴り入れるよ」 何かを弁明しようとしたヤンガスも、私の寝相と寝起きの悪さを思い出したのだろう、 慌ててその辺の草や枯れ枝などを整理し始めた。いい傾向だ。 まだここまでゲームでは進んでないけど、 店頭プロモとかで見たシーンがグルグル頭の中で回っている。 どのシーンだろう、アレかな、ソレかな。 もう早くキラパンに乗ってみたくて、それに不思議体験したくて。 わくわくする私に、なんだか他のメンバーは呆れ顔のようだ。 「何か楽しそうねエイコ。そんなに楽しみなの?」 「やーだってこんな体験てなかなか出来ないじゃん」 「ふーん、子供みたいな所もあるのね」 うるさいゼシカ、お前にオトナのロマンが分かってたまるか。 ごろりと横になって眠りにつくことにした。 しかし、そんなに簡単に眠れる訳もなく、程なくむくりと起き上がった。 みんなまだ休む準備をしていたと思ったら、あっという間に床についたらしい。 まあ、起こせば起きるかも知れないが。 「おーい、ヤンガスー、寝たのかー?」 しかしヤンガスの返答は「グゴゴゴゴ」という荒くれ者のようなイビキだった。 「あー、どーしよっ。酒でも飲むかあ」 道具に隠してた酒を引っ張り出す。 たまには星空の下で月見酒ってのもいいだろ。 外で飲む酒は格別だった。 ベルガラックのバーからくすねたグラスが、 月の光を反射してキラキラきれいだ。 干し肉をかじり、ぐいっとグラスを仰ぐ。 思えば奇妙な世界に迷い込んでしまった。 もう10日も経っただろうか、あっちではきっと私を探してるんじゃないかなあ。 ていうか、なんでコレが現実なんだ? 何で……げんじつ…… ぐう。