―――何だこりゃ?
目に入ったのは、見渡す限りの草原。遠くにはでっかい城(?)みたいなもんが見える。さらに遠くには…何だありゃ?塔か?
まぁ、それだけでもここが日本じゃねぇことは解るんだが、問題はそこじゃねぇ。
青くてプルプルした気持ちわりぃ物体やら、やたらでかいなめくじやらが、
嬉しそうにそこら中を跳ねまわってやがることだ。

…ああ、これ夢だわ。最近疲れてるもんなぁ…。だからこんな幼稚な夢を見るんだ。
よし、決めた。冬休みには、久々に実家に帰ろう。たまにはゆっくりして、親孝行でもしてやらなきゃな。母さん、元気かなぁ…。

正志「ねーねー」

うるせぇぞ、夢の住民。俺は今、てめぇの相手をしてる暇はねぇんだ。

正志「あの青いの、スライムだよな?で、その横にいるのがファーラット。かわいーな
ー」

ああ、スライム。ドラクエの。そういやそうだな、似てるわ。
ホントに幼稚な夢見てるなぁ、俺…。

正志「なんかこっちに向かってきてるよー。逃げよーよー」

ほっとけ、どうせ夢だ。痛みなんざ感じねぇし、運がよけりゃ目も覚めるかもな。
ん?頭の中に数字が…?HP 30 MP 0?
さすがは夢。ここまでゲーム通りとは。

正志「わ、来たー!!竜司、そっちにスライム行ったよー!」

だから、大丈夫だっての。夢の中でまでうざったい奴―――
ド ン ッ !
次の瞬間、俺はあばらに強い衝撃を受け、2,3m吹っ飛ばされていた。

クソが、なんだよこれ…!!めちゃくちゃ…痛ぇじゃねぇか…!
呼吸が……できね…ぇ!夢じゃ…ねぇのかよ…!!

正志「りゅ、竜司!誰か!たっけてー!!」

* 「おーい!大丈夫か!?」

ん…この声…誰か…きてくれ…たの…か?
これが…大丈夫な様に…見え…るのかよ…クソが…。
ぜってーアバラいってるぞ…これ…。痛恨の…一撃ってやつか…。

* 「大丈夫じゃないみたいだな…ホイミ!」
ん…?あ、あれ…!?痛くねぇ!!
すげぇ!これは…呪文か!?

* 「これでだいぶ良くなったはずだけど…」

顔を上げ、俺を助けてくれた男を見る。やたら毒々しい色遣いだな…特に髪。
真っ青はねぇだろ…。まぁ、助けてくれたわけだし、礼は言っとくか。

俺 「ありがとな。助かったわ」
* 「礼は後でいい!今は敵を倒すことだけ考えて!」

倒すっつったってなぁ…元剣道部員とはいえ、素手じゃ到底無理だろう。

* 「何してんだ!その腰の剣は飾りか!?」

何言ってんだ、剣なんてどこに…。あ、あれ?
刀がある…。そんなバカな、ついさっきまでは無かっただろうが!

正志「戦おう、竜司!元剣道部員、なめんな!」
俺 「あぁ!?」

見れば、正志は既に刀を抜き、正眼に構えている。
なんて適応力のある奴だ…バカの癖に。
しょうがねぇ。俺もぼちぼち行くか。死にたくはねぇしな。
しかし、いきなり武器が現れるとは。しかも、「刀」なんて俺らにお誂えの物が。
都合が良すぎねぇか?やっぱ…夢なのか?

* 「早く!」

分かったよクソが。そう急かすな。
考えてても仕方ねぇ。やっぱりここは、戦うしかねぇか。得物もある事だしな。
腹を括った俺は、腰に差した刀を抜き、右上段に構えた。息を整え、心を落ち着ける。
そして…

「りゃあ!!」

気合を発する!心なしか目の前の青い化け物が、怯んだように感じる。
その機を逃さず、抱えた刀を振り下ろす!

「っ面ーーーん!!」

ビチャア!と水を叩いたような音がした。
命中。当然だ。こちとら、高校時代は掌が豆だらけになるまで、何万回、何憶回と練習
してたんだ。化け物如きに、避けられてたまるか。

口の辺りまで真っ二つになったスライムは、一度、二度と点滅したかと思うと、幻か何かのように消え去っちまった。

…ん?頭の中に文字が流れ込んできやがった。なんだこれ?…
「スライムAをたおした!」 だぁ?…ゲーム通りってことか。ご親切にどうも。もう何が起きても驚かねえよ。
正志の方を振り返ると、あいつもちょうど化け物を始末し終わった様だ。荒い息をついている。

普段はとぼけてるが、やる時はやる奴だからな。
「スライムBをたおした!」アナウンス(?)が聞こえた。
正志「竜司!今、変なのが頭ん中にきた!すっげー!」
俺 「俺もだよ。何なんだろうな?」

で、あのツンツン青髪野郎は、と。
今まさに、モコモコした緑色の化け物(ファーラットだっけ?)に止めを刺そうとしている所だった。
手にした剣で、化け物を袈裟掛けに斬りつける。化け物は、俺の時と同じように、明滅して消えた。
「ファーラットをたおした!」

どうやら、これで全部片付け終わったようだ。…ああ、疲れた。
ひと息ついていると、そこでまた、アナウンスが流れる。
「まもののむれを やっつけた!
 それぞれ 10ポイントの けいけんちを かくとく!
 りゅうじは レベル2に あがった!
 りゅうじは メラを おぼえた!」

ああ?俺か?…そういや、なんか強くなった気がするぞ。
メラってあれか?火の呪文か?
そんなことを考えていると、頭の中に、また何かが流れ込んでくる。
…どうやら今度は、呪文の使い方を教えてくれるらしい。
…えーと、何?「メラを使いたいと念じ、相手に手をかざす」…か。
随分と簡単だな、オイ。まぁ、今はMPが無いから、使えないんだろうな。
…なんだかんだ言って、適応しつつあるな、俺も。

「まさしは レベル2に あがった!
 まさしは ホイミを おぼえた!
 8ゴールドを てにいれた!」

今度は正志か。あいつはホイミ、か。イメージ合わねぇな、オイ。

どうやら、あの青髪はレベルアップしねぇらしいな。
元のレベルが高いからか。

正志「竜司ぃ!俺、レベル2だってさー!ホイミ覚えちゃったー!!ホイミ!ホイミ!
   あれ?MP足りないや!あはは!!」
俺 「うるせぇよバカ」
正志とそんなやりとりをしていると、先ほど助けてくれた青髪が、話しかけてきた。

* 「いやー、強いな、あんたら!レベル1とは思えないよ!こりゃ、助けなくても
   よかったかな?」
などと笑っている。親しみやすそうな奴だ。
俺 「いや、危なかったよ。ホントにありがとな。えっと―――」
そういや、こいつの名前、聞いてねえな。
俺が困っていると、青髪はそれに気付いたのか、自分から名乗ってくれた。
* 「ごめん、まだ名前を言ってなかったな!俺はボッツ!ライフコッドのボッツだ!
   よろしくな!」

ページ先頭へ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら@2ch 保管庫